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PBP攻略のためのToDoリスト
PBPの前年までにやることの紹介です。
大会前年まで
次のPBPまであと4年あります。それまでは、経験を積んで引き出しを増やす期間になります。
コンスタントにブルベに参加する
日本にブルベを持ち込んだ井手マヤさんの名言に「ブルベの練習はブルベでやる」というものがあります。
これは私もそのとおりだと思っていて、自分で計画するロングライドとブルベでは異なる点があります。例えば以下のような点です。
- 開催日時が決まっているので、天気を選ぶことは出来ない。与えられた気象条件の中で完走する必要がある。
- 同じコースを同じタイミングで走っている人たちが複数いる。その中でゆるい協調が発生することもある。
- ブルベカードを常に携帯する必要があり、チェックポイントに必ず立ち寄る必要がある。
国内ブルベとPBPでは異なる点も多いのですが、どちらも共通のルールのもとに運営されています。PBPを目指すのであれば、経験を積む・走力を維持する意味でコンスタントにブルベに参加したほうが良いと思います。
私の場合、「毎年SRを取得できる程度にはブルベに参加する」ことにしています。
よく「PBPは1200kmで12000m登るので、ヒルクライムトレーニングをした方が良い」と言われますが、これは半分正解で半分間違いな気がしています。
後述しますが、PBPのコースは「標高差100-200mのアップダウンを何度も繰り返す」コースです。5km以上の登りというのはほとんどありませんし、距離が長い登りは斜度が緩やかです。コース上の最高標高が350mしかないので、長くて急な登りは設定できないのです。
長い上りをマイペースで登るよりも、短い時間に何度も上り下りを繰り返すようなコースで練習するのが一番PBP対策としては実践的。しかし、首都圏ではなかなかそういうルートが無いのが難しい所です。
1000km以上のブルベに参加する
PBPの制限時間は90時間です。時間で見ると4日で終わりそうに感じられますが、PBPは夕方スタートなので5日間にまたがります。
3日目以降からロングライドのステージが変わる
個人的には、ロングライドは3日目から「ステージが変わる」感じがあります。
2日目までで終わるライドであれば、勢いでなんとかなってしまいます。スタートまでの食事と睡眠がしっかり摂れていれば押し切れます。
しかし、3日より長いライドの場合は、「走り始めた以後の行動が体調に影響してくる」と言いましょうか。ライド1日目に偏った食事をしていると、3日目になって内臓が不調になったりします。ライド1日目に睡眠が足りていないと、3日目の昼あたりに眠気に襲われたりします。
3日目をいつもの調子で走れる人は、それが一週間になっても大丈夫だったりします。しかし、3日目で調子が崩れてしまう人は、日が進むごとに調子が悪化していく可能性が高いです。
1000km以上のブルベの経験が必要
PBPは5日間にまたがります。予行演習として長距離ブルベに参加し、「3日目以降に自分がどうなるのか」を知っておく必要があると思います。その経験を通して、どうすれば3日目以降に調子を崩さなくて済むのかを考え、自分なりのルーティーンを確立する必要があるでしょう。
ブルベの場合、3日目以降を迎えるには1000kmのBRMか、1200km以上のLRMに参加する必要があります。
1000km以上のブルベに参加すると、内側(自身の体調面・精神面)の問題に加えて、外部(雨・風・気温や、メカトラ等)の問題にも直面する可能性が高いです。こうしたトラブルに対処した経験は、自身の「引き出し」として蓄積されます。自らの引き出しを増やす意味でも、1000km以上のブルベを経験しておくとPBPの完走には役立ちます。
ちなみに、私は2019年PBPから2023年PBPまでの四年間には1度も1000km以上のブルベには参加していません。2019年以前に7~8回の1000km以上ライドの経験があったので、そちらの経験を活かしてなんとかしました。
走力は乗らないと衰えますが、技術的な引き出しは一度獲得すればそうそうなくならないものです。過去に経験済みの方は、無理に1000km以上のブルベに参加する必要はないかもしれません。
1000km以上のブルベを前年に走っておく特典
PBPはスタート時間を自分で選ぶシステムとなっています。15分ごとに300人ずつスタート。2023年の90時間部門の場合、一番早い組が17:30スタート、一番遅い組が21:00スタートでした。
PBP開催の前年度に長い距離カテゴリのブルベを走っているほど、スタート時間を選択の優先権が与えられるシステムになっています。次回も同じかは分かりませんが、多分同じである可能性が高いです。
各組には上限人数が設定されており、その上限に達すると後の人はその組を選ぶことは出来ません。早いもの勝ちです。毎回、早い時間帯の組から埋まる傾向があります。早い組が有利とは限らないんですが、何故かそうなっています。
参考までに、2023年のPBPにおける優先順位を以下に示します。
2022年度のブルベ認定状況 | プレレジの開始日付 |
BRM1000km、またはRM1200km以上を完走 | 2023/1/14 |
BRM600kmを完走 | 2023/1/28 |
BRM400kmを完走 | 2023/2/11 |
BRM300kmを完走 | 2023/2/25 |
BRM200kmを完走 | 2023/3/11 |
認定なし | 2023/3/25 |
この表を見ても分かる通り、1000km以上のブルベを前年度に走っておけば、一番早くスタート時間を選ぶことが出来るわけです。その意味でも、2026年に1000km以上のブルベを走っておくのは有効です。
集団走行に慣れる
後述しますが、PBPでは集団に上手く乗れるかどうかで結果がかなり変わります。
PBPの序盤では数十人規模の集団で走ることになりますが、そこで慌てないためにも集団走行の経験は有ったほうが良いでしょう。
集団走行のスキルも「引き出し」の一つと言えます。一度覚えれば中々忘れませんが、ブルベだけに出ていると中々習得できるものではありません。
レース経験のある人に教えを請うか、サーキットで行われる練習会(こちらやこちら)に参加するのが良いと思います。あとはサーキット系のエンデューロレースにエントリーして経験を積むのも良いと思います。
ホテルを予約する
PBPでは2種類のホテルを予約する必要があります。
「滞在拠点となるホテル」と、「道中の仮眠で使用するホテル」です。後者は必ずしも予約する必要はありませんが、抑えておくと有利になります。
人気のあるホテルはかなり前から予約で埋まってしまうので、1年以上前から備えておく必要があります。
滞在拠点となるホテル
PBPは、大体開催の1年くらい前にスタートとなる街が発表されます。過去のスタート地点の街は以下の記事にまとめています。

次回2027年PBPのスタート地点発表は、恐らく2026年8月頃のはずです。直近2回は「ランブイエ」という街をスタートしているので、次回もランブイエスタートになる可能性は高いでしょう。
スタート地点の街が発表されたら、とりあえずその街のホテルを予約することをオススメします。ランブイエの場合、ホテルの数は多くありません。割とすぐにPBP前後の予約は埋まってしまいます。
Booking.comなどであれば直前までキャンセル料がかからない場合もありますので、予約だけして後から考えるのが良いでしょう。
道中の仮眠で使用するホテル
PBPではPC内の仮眠所で寝る人がほとんどだと思いますが、日本国内のブルベと同じように「ルート沿いのホテルを予約して寝る」という選択肢もあります。
2023年のPBPでは復路のみルデアックのホテルを予約しましたが、とても快適でした。PBPの仮眠所はイビキの大合唱なのですが、こうしたプライベート空間を走行時間中に確保できるのは非常にありがたかったです。
やはり皆考えることは同じで、PBP期間中のルデアックのホテルはかなり早い段階で埋まってしまいます。今回私が抑えたホテルはPBPの1ヶ月前オープンということで奇跡的に予約できました。
道中のホテルを予約する場合に気をつけたいのは、「フランスのホテルは深夜に到着してもチェックインできない可能性が高い」点です。日本のホテルは深夜でも対応してくれることが多いですが、フランスでそれは期待できないということです。
私がルデアックで利用したホテルには自動チェックイン機があり、深夜でもチェックイン・チェックアウトが可能でした。
こうした機械があるか、もしくは深夜でも対応してもらえるのか、事前にホテルにメール等で問い合わせをしておく必要はあると思います。
周囲への根回し(追記)
この項目は一度下書きでは書いたものの、趣味の範囲の外に言及する話なので一度は消したものです。ただ、やはり必要だろうというご意見を頂いたので復活させました。
PBPは8月の下旬に行われるのが通例です。2023年大会は8/20(日)にスタートし、8/24(金)にゴールする5日間のスケジュールでした。厄介なのは、日本のお盆休みの翌週開催であるということです。
PBPは毎回旅行会社によるツアーが開催されますが、その渡航スケジュールをカレンダー上に表すとこんな感じになります。
8/18(金)の朝に日本を出国し、8/26(土)の夕方に日本に帰国するスケジュールです。日付にすると8日間。余裕を持った日程にすると10日間になります。
サラリーマンであれば8/18(金)は夏休みの人が多いはずですが、8/21(月)~25(金)まで5日間の休暇を取得する必要があります。しかも夏休みの翌週です。この休みを確定させるためには、かなり前から周囲への根回しを行う必要があります。
出来ればPBPの前年くらいから徐々に周囲との調整を進めて行って下さい。
職場
まずは職場に対する根回しは必要になるでしょう。
労働者の権利であるのだから有給休暇が残っている限りは好きな時に休みを取ればよいのですが、日本の社会では中々それも難しいものです。
私の場合は、PBPの前年から「8月の後半は休暇を取得するので不在です」ということをあらかじめ宣言。仕事についても、その時期に自分がいなくても回るように徐々に調整をしていました。それに加えて、
「実は来年、フランスで開かれる自転車の世界大会に日本チームの一員として出ることになりました。」
「その大会に出るために来年前半は予選会にも参加する必要がありまして……」
とか2019年大会の前には上司に話したような気がします。嘘は言っていません。
2023年大会は、たまたま勤続15年で連続5日間の休暇を取ることが義務付けられていたので、ありがたくPBP期間に使用しました。
なお、こういった調整が不可能な仕事に就いていた人がPBPのために転職したという例も実際にあります。どうしても参加したいという人はそういった手段もあります。
家族
職場だけではなく家族に対する調整も必要になると思います。
同居家族がいる方は約10日間は家を開けることになるわけで、その点をあらかじめ断っておきましょう。絶対安全なイベントではありませんし、その点についても伝えておいたほうが良いと思います。
私の知っている中では、PBPを家族旅行にしてしまったという人もいました。そういうアプローチもありですね(物凄くお金は掛かったようですが……)。
日本に家族を残して参加する場合、お土産は忘れないようにしましょう。