「東京~大阪」ルート トレンドの歴史(1969-2020)

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キャノボ研究サイトらしく、自転車による「東京~大阪」チャレンジのルートの歴史を紐解いてみようと思います。

1960年代より始まった、自転車による「東京大阪」という挑戦。歴史を調べてみると、その時代によって、選択するルートにトレンドがあることが分かりました。

この記事では、時系列で「東京大阪」ルートのトレンドを追いかけてみたいと思います。

目次

前置き

まず、「東京~大阪」の歴史は下記記事に年表形式でまとめておりますので御覧ください。

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本記事では、1969年から2020年に至るまでの「東京~大阪」ルートのトレンドの変遷を解説しようと思います。

本ページに埋め込まれているRide with GPSのルートデータは、短時間で引いたルートのため、間違っている箇所がある可能性をご留意ください。そのままGPSに入れても使えないルートであるということです。

 

1969~2006年: 東京~大阪タイムトライアル時代

まだ「東京~大阪キャノンボール」の名前が生まれる以前は、国道1号線(以下、R1)をトレースするルートが主流でした。

R1ルート 概要

距離: 約554km
獲得標高: 約2400m
経由地: 東京~箱根(R1)~浜名湖(南側)~名古屋(R1)~鈴鹿峠~京都~大阪
2020年現在ではほとんど使われなくなっています。
現在から見ると、距離も長く、獲得標高も大きい難コースと言えます。京都という大都市を経由するので渋滞・信号も増えます。

トレンドとなった理由

1969~2006年までの残っている走行記録を調べると、全てが京都経由となっています。当時も伊賀を抜けるルート(R25~R163)は存在していましたが、あえてそれを使っていなかったようなのです。

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1973年に「東京~大阪タイムトライアル」で20時間50分の記録を出した橋本さんという方がいます。橋本さんは走行担当で、作戦を立てたのは植原さんという方でした。

その植原さんは伊賀ルートの存在は知っていましたが、「ルートを変えてしまったら藤田さんの記録と前提が変わってしまうから」という理由でR1ルートを採用したと言っていました。あくまでチャレンジの条件を揃えるためのルート選定だったということですね。GPSや地図サイトなんてものも無いので、ルート研究が難しかったのもあるかもしれません。

その後に挑戦した大塚さんや井手さんにはルート選定の理由までは聞いていませんが、恐らくは同じ理由だったのでしょう。「東京~大阪間をいかに短時間で走るか」ではなく、「国道1号線をいかに短時間で走るか」を競い合っていた時代という背景が理由と言えそうです。

ちなみに、この時代は「東京→大阪」方向が主流であり、「大阪→東京」の記録はほとんど残っていません。そして、この時代はサポートカーを伴走させるのが当たり前でした。

 

2006~2011年: キャノンボール初期

2006年、2chに「東京⇔大阪を1日で走る」スレッドが立ち、「キャノンボール」という呼称が生まれました。

この時点では前述の「東京~大阪タイムトライアル」のことを知っている人は全くおらず、「自転車で東京大阪を24時間以内に走るなんて出来るはずがない」と思われていました。実際には既に37年も前に達成されている話だったのですが。

走行ノウハウの蓄積なども全く失われており、再度ゼロから研究がスタートしています。調べてみると、1980年頃のサイクルスポーツには前述の植原さんによる「耐久ランのノウハウ公開」という記事があり、東京~大阪間の走り方についても触れられていたりするのですが。

そして、「いかに早く走るか」だったタイムトライアル時代と違い、「24時間以内に走る」ことが目的に変わっています。また、サポートカーを付けずに独力で走ることが一般的となりました。

キャノンボールは初期から「大阪→東京」の方が割合が多かったと記憶しています。風向きの重要性は最初から認知されていたようですね。

R1ルート(改良版) 概要

距離: 約552km
獲得標高: 約2300m
経由地: 東京~箱根(R15)~浜名湖(南側)~名古屋(R1)~鈴鹿峠~京都~大阪
ほとんど東京大阪TT時代と同じですが、「東京~横浜間はR15を使用」する方が主流でした。ちなみにR15は旧東海道なので、東海道に近づけたルートになっています。
また、「平成宇津ノ谷トンネル」が出来たことで、宇津ノ谷峠を通らない分、若干獲得標高が減りました。

トレンドとなった理由

前の時代に引き続き、R1ルートが主流でした。

理由は単純に「分かりやすさ」だと思います。ルート研究もそれほどされていない頃ですし、ようやくルートラボの前身である「AlpsLab」が登場してきた時代。まだまだ研究が不足していたため、青看板を見ればある程度走れてしまうR1ルートが選ばれていたのだと思います。

箱根に関しては、R246ルートを使う人も一部いました。しかし、関西は京都周りのルートを取る人が大半でした。薄軽筆入れさんや、関西在住の方はR25~R163(伊賀越え)のルートを既に使っていたようです。

2010年に初めて私が達成した時に使ったルートは、上記ルートを下記の京都抜け道ルートでアレンジしたルートでした(約548km)。

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2012~2017年: 箱根旧道+伊賀越えルート

2012年頃からは、京都を通らずに木津・伊賀を抜ける「伊賀越えルート」が主流となります。箱根も、R1ではなく箱根旧道を使う人が増えました。

2010年にAlpsLabがYahooに買収されて、「ルートラボ」となったことが一つの契機となり、ルート研究や比較が容易になったことが理由ではないかと思います。より楽に攻略するためのルート研究が行われ、この時点では「伊賀越えルートが有利」という結果に落ち着きました。

伊賀越え+箱根旧道ルート 概要

距離: 約523km
獲得標高: 約2500m
経由地: 東京~箱根(旧道)~浜名湖(南側)~名古屋(R1)~伊賀~木津~大阪
箱根旧道を通ることで、R1比で-5km。富士市街を回避して吉原駅の南を抜けることで-2km。京都を回らず伊賀越えにすることで、R1比で-22km。合わせて-29kmです。
また、渋滞しがちな藤沢~大磯区間をR1ではなくR134で回避するルートが主流でした。

トレンドとなった理由

伊賀越えルートは京都周りのR1ルートに比べると獲得標高が200mほど増えるということが知られていました。

このため、当初は「平地が得意ならR1が有利、ヒルクライマーなら伊賀越えが有利」と考えられていましたが、どちらのルートも走った結果「どうやっても伊賀越えの方が早い」という結論になりました。やはり22kmという距離差と獲得標高200mでは、22kmの距離の方が比重が重いということですね。信号の数に関しても明らかに伊賀越えルートの方が少ないことも分かってきました。

また、前述の通りルートラボが発達したことにより、様々なルートが検討されるようになります。その中で、「箱根はR1よりも旧道の方が早いし獲得標高も少ない」「藤沢~大磯はR134の方が信号も渋滞も少ない」等の結果が出て、徐々に早いルートが確定していきました。

私は2014年と2015年のフレッシュで「大阪→東京」を走りましたが、その際にはこちらのルートを採用しています。

 

2018年: R246+伊賀越えルート

更にルート研究が進み、2018年頃からは「箱根を迂回する」R246ルートが主流となりました。

R246+伊賀越えルート 概要

距離: 約522km
獲得標高: 約2500m
経由地: 東京~二子玉川~御殿場~浜名湖(南側)~名古屋(R1)~伊賀~木津~大阪
距離・獲得標高ともにほぼ「箱根旧道+伊賀越え」ルートと変わりません。
R246は最高標高は500m程度と低いものの、アップダウンが多いルートです。最終的な獲得標高は箱根旧道を通った場合とほぼ同じになります。
獲得標高を一括払いするのが「箱根旧道」、分割払いするのが「R246」だと言えます。

トレンドとなった理由

東京~大阪間で最大の難関である箱根。出来れば避けて通りたい……

そういった人はキャノンボールが始まった当初から一定数おり、数人は箱根を北から迂回するR246のルートを使って挑戦していました。ただ、その当時のR246ルートは以下のように、戸塚まではR246は使わないルートとなっていました。

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近代のR246ルートは、日本橋から沼津まで、ほぼずっとR246を走り続けるルートとなっています。

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更に、自転車通行不可の区間が含まれる静岡県内のR246を迂回する、K394ルートが主流となりました。

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前述の通り、獲得標高や距離は、箱根旧道もR246も大差ありません。R246は長い距離を掛けて獲得標高を稼ぐわけで、急勾配はほとんどありません。一つ一つの坂も小さいので、勢いで登れてしまう坂が多く、足へのダメージが少ないのがトレンドとなった理由でしょう

 

2019~2020年: R246+R23+伊賀越えルート

ルート研究は加速し、更に短距離化が進みます。

これまでずっとR1ばかりを使ってきた名古屋周辺にメスが入り、R1よりも1本海側のR23を使うことが主流となりました。

R246+R23+伊賀越えルート 概要

距離: 約517km
獲得標高: 約2500m
経由地: 東京~二子玉川~御殿場~浜名湖(南側)~名古屋(R23)~伊賀~木津~大阪
名古屋周辺はほぼ平坦なので獲得標高的にはR1とR23では大差がありません。
距離の差はかなり大きく、5kmほど短くなります。

トレンドとなった理由

R23ルート自体は2017年頃から走る人がチラホラと現れ始めました。

R23はかなり自動車寄りに作られた道路で、自転車通行不可の区間や、避けられない階段等もあります。そのためずっとブラックボックスになっていたのですが、走る人が増えて徐々に自転車が走る場合のルートが確立されていきました。

複雑ではあるものの、やはり5km短縮というのは大きく、採用する人が増えたものと思われます。

 

今後の展望

今現在もキャノボルートの研究と試走は進んでいます。

今後、流行りそうなルートについて触れておきます。「R246+R23+伊賀越えルート」に加えて以下の2つのルートを採用した場合、総距離は約510kmとなります。

浜名湖の北を抜けるルート

これまでずっと浜名湖の南側を通るのが普通でしたが、近年は浜名湖の北側を抜ける人が増えています。

ルートは主に二通りで、以下のルートがあります。

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どちらのルートも、5~7kmという大幅な距離短縮が見込めます。ただし、路面状態があまり良くないことや、獲得標高が多いことで敬遠されてきました。

ただ、5kmという距離はかなり大きいのでこちらを採用する人も増えることが予想されます。

静清バイパスの側道を抜けるルート

キャノボにおいて、意外と時間を食うのが静岡駅周辺です。

なんだかんだで70万人の人口を誇る政令指定都市。幹線道路であるR1は信号も多く、渋滞も多いものです。

そこで、R1の北を走る静清バイパスを使います。本道は自転車通行禁止である箇所が多いため、大部分は側道を使うことになります。距離は短くなり、信号の数も少なくなります。ただ、ルートはちょっと複雑そうですが。

本サイトにはまだこのルートを解説した記事はありませんが、そのうち掲載する予定です。

 

まとめ

「東京~大阪」ルートのトレンドの移り変わりについて時系列に説明しました。

↓は、本記事で解説した5つのルートを一つの地図に纏めたものです。各ルートの変化がよく分かると思います。

キャノボの開始から14年ほどですが、開始時の550kmが現在では510km近くまで短縮されました。距離にして40km。1時間半~2時間分の距離が消滅したことになります。

その分、ルートはかなり複雑になっています。GPSが進歩したとは言え、事前に調べたり試走しなければ、なかなかミスをせずに走り切ることは難しいでしょう。

チャレンジの際には是非、ストリートビュー等での予習と、試走などでの確認を忘れずに行ってください。

 

著者情報

年齢: 36歳 (執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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