超小型の電動携帯ポンプ「nano Fumpa」をテスト

現時点で世界最小クラスの電動携帯ポンプ「nano Fumpa」を購入しました。

公称100g、実測99gでツール缶にも入るサイズ感です。

購入まで

まずは購入までの話を。

小型電動携帯ポンプへの期待

我が家には携帯ポンプが40本以上あります。言うまでもなく、これらは全て人力です。

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ただ、数年前から「電動携帯ポンプ」なる選択肢が出てきており、個人的に注目していました。

その端緒となったのが、2017年に発表された、「Fumpa」です。

cyclowired

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2019年には日本にも入ってきまして、私も某ショップで「mini Fumpa」を触らせてもらったことがあります。

ものすごく空気充填時の音が大きく、重量も普通の携帯ポンプよりも重い190g程度、価格は25000円ということで購入には至りませんでした。

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その後、Aliexpressで公称166gの携帯ポンプを発見して買ってみたものの、実際に届いたのは400g以上のどでかいサイズのもの。完全に詐欺でした。

2022年末、CYCPLUS「CUBE」が発表される

しばらく動きのなかった電動携帯ポンプですが、2022年末に大きな動きがありました。

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それがCYCPLUS「CUBE」です。公称97g。

クラウドファンディングでの発表ということで「ちょっと怪しいかな」とは思ったのですが、CYCPLUSはサイクルコンピューターでそれなりに実績のある企業ということで出資済みです。

一応、予定では今月(2023年3月)届くはずですが、まだ音沙汰がありません。

ひっそりと発売されていたnano Fumpa

そして2023年3月。何となくAmazonを見回っていたら、「nano Fumpa」なる製品を発見。

miniは知っていましたが、nanoは初耳。スペックを見てみると、公称「100g」。スペック的にはCUBEと真っ向勝負となりますね。

Fumpa Pumps USA

  nanoFumpa is the ultimate pocket pump! It has been designe…

正式なリリースは発見できませんでしたが、どうやら2022年5月24日には既に発売されていたようです。WebArchiveのキャッシュに残っていました。

発売から1年近くは経とうというのに、これと言った記事もレビューも見当たりません。一体どういうことなのか?

Amazonには昨年の暮れに入荷していたようですが、こちらもレビューはなし。とは言え、Fumpaは実績があるので変なものは出してこないでしょう。

価格もかつてのminiよりも10000円安い15900円。これなら買ってみようという気にもなります。

CUBEを注文しているのでどうしようかと思いましたが、比較の意味で一つ持っておきたい。

ということで、Amazonに注文してみました。

nano Fumpa

nano Fumpaの概要について見ていきます。

価格

2023年3月6日現在のAmazon価格は15900円です。

本国価格は99ドルですが、現在1ドル135円なので、あまり差額はないと言ってよいでしょう。

スペック

nano Fumpaの公称スペックを、対抗馬となりそうなCUBEと並べる形で紹介します。

nano Fumpa CUBE
重量 100g 97g
電池容量 7.4V/250mAh
リチウムポリマー
7.4V/300mAh
リチウムポリマー
充電端子 USB Type-C USB Type-C
充電時間 45分 20分
本体サイズ 57.0*47.0*26.0mm 65.0*46.5*28.0mm
対応するバルブ 米式、仏式 米式、仏式
最大気圧 110PSI
(7.6気圧)
100PSI
(6.9気圧)
充填速度 700x23Cタイヤを、100秒で6.2気圧 700x25Cタイヤを、90秒で5.12気圧

サイズも能力も大差ないように見えます。

大きく違うのは充電速度ですかね。CUBEのほうが充電速度は早いです。一般に充電速度が早いほどバッテリーの劣化も早くなるので、そこは両社の思想の差でしょう。

なお、この製品は元々「e-bike向け」と謳われています。小型なので高圧には向かないので「ロードにも使えるけど、低圧運用向けだよ」と書かれています。

ファーストインプレッション

とりあえず家で使ってみてのファーストインプレッションです。

パッケージ

パッケージ裏側は説明。

何故か現在の公式サイトの記載とちょっと違います。パッケージには「最大80PSI」とありますが、公式サイトの仕様は「最大110PSI」です。仕様が変わったんでしょうか?

パッケージの中身はこちら。

  • 説明書(英語・日本語)
  • 本体
  • キャリーバッグ
  • Type-Cケーブル

キャリーバッグは「少し丈夫なジップロック」といった感じ。

重量

公称100gで実測99g。優秀です。

前作「mini Fumpa」が公称190gだったので、約半分の重量になったことに。

この重量だと、大抵の手動携帯ポンプよりも軽いはずです。

大きさ

mini Fumpaよりも更にひと回り小さくなっています。

口金の部分が若干邪魔ですが、何とかこの手のツールケースにもギリギリ収まる大きさになりました。

口金部分は外れるので、使わない時は外しておいても良いかも?

硬質なツール缶にも一応は入ります。が、普通はツール缶の口は一段小さくなっているので、口金部分を通すのが大変です。

充電

前作まではmicroUSB端子だったFumpa。

時流に乗って、Type-C端子に変更されています。

公称充電時間は45分ですが……。

実測すると、3950秒=66分ほど掛かりました。公称値よりは明らかに遅いですね。

電流は0.6Aほどしか流れていません。電池の消耗を避けたかったのかもしれませんが、ちょっと盛りすぎということに。

空気充填

使用方法ですが、口金の横にあるスイッチを長押しします。

一旦、起動音がしますが、そのままボタンを押し続けないと起動しません。ちょっと分かりにくくはありますね。

起動後は空気の充填が開始されますが、50秒で自動的に電源オフになることに注意が必要です。恐らく発熱対策でしょう。

充填能力

内幅15mmのナローリムに、前提内幅17mmの25Cタイヤを取り付けた状態でテストしました。

3セット(150秒)の充填で、6.13気圧まで充填できました。これだけ入れば十分です。

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ただし、同じだけの空気を入れても、空気圧はタイヤ幅やリム内幅で変化します。

実戦投入する前に、「自分が使っているタイヤではどの程度の空気圧まで上げられるか」をあらかじめテストしておくべきでしょう。

この手の携帯ポンプの宿命ですが、内部にコンプレッサーを内蔵しているため、騒音が爆音です。

動画にしましたので、一応見てみてください。音量注意。

ちょっと夜中に家の中では使えませんね。あと、野外であっても街中で使うのはためらわれます。それくらい爆音です。mini Fumpaよりはマシな気がしますが。

コンプレッサーがフル回転するので、本体はものすごく熱くなります。

その影響か、本製品は金属バルブ以外に使用できません。つまり、樹脂バルブのTPUチューブはNGということですね。

1セット目(50秒)では大したことはないですが、2セット目、3セット目とどんどん熱くなります。最終的には60℃くらいになってそう。

使用する際にはグローブが必須です。

その意味では、最初から専用シリコンカバーを付けてくれるCUBEは良心的かも。

振動

コンプレッサーがかなり振動する上に口金のロック機構もないため、手で抑えておく必要があります。

振動するものを手で握り続けなければいけないので、手には振動のダメージがしばらく残ります。何とか握らなくても固定できればよいのですが……。

cyclowired

インターバイクでイノベーティブ・アワードを獲得した電動エアポンプFumpa Pumpsの国内展開が開始されている。手のひ…

こちらの記事によれば、フルサイズの「Fumpa」は20秒、ミニサイズの「mini Fumpa」は50秒ほどで実用的な空気圧まで上げられるようです。

これに対し、「nano Fumpa」は150秒。持っていなければいけない時間が3倍長い。小さくなると能力が落ちるのは仕方ないですが、悩ましいですね。

電池の持ち

50秒×8セットまでは使えました。その後は起動しなくなったので、電池切れだと思います。

25Cタイヤなら6気圧までを2回半行けそうです。

補助チューブ

本製品は口金にネジが切られていないため、補助チューブの類いが非常に使いにくいです。

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一応これは仏式の口金に使える補助チューブなので、使えなくはないです。

ただ、この状態で充填してみたところ、口金からの圧力に負けて補助チューブがスッポ抜けました。

口金がねじ切り対応だったら良かったんですけどね。口金の中身をひっくり返して米式にした上で、ねじ切りがあれば色々な補助チューブが使えたんですが。

まとめ

サイズは文句なくコンパクト。よくぞここまで小さくしてくれました。しれっと発売されましたが、この小型化の技術は凄いと思います。

価格的にも「手にとっても良い」という価格まで下がってきました。

そのサイズのトレードオフとして充填能力はそこまで高くありません。充填時間が長くなるため、振動と熱に長時間耐える必要があります。

ただ、恐らくライバル製品となるCUBEもスペックを見る限り、その部分は大差ないと思います。振動も熱もそうそう減らせないだろうし、充填能力はnano Fumpaと似たようなものだからです。その対策としてシリコンカバーを最初から付けたのだと思いますが。

とりあえず、なかなか面白い製品だと思います。手を離した状態で充填できる方法が見つかれば実用性も上がるはず。

もう少し使い込んでから詳しくレビューを書く予定です。

著者情報

年齢: 38歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。


この記事を書いた人
ばる
ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019年の2回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)