VOLT800の高速充電要件

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VOLT800の高速充電の要件を実験から推測しました。

目次

実験の動機

2記事続けて実験ネタです。

VOLT800の充電が遅い

前の記事で、VOLTシリーズの旧バッテリーを様々な充電器で充電する実験を行いました。

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ここで困ったのは、「VOLT800の充電が遅い(0.5Aしか出ない)」ということです。

私はこの電流チェッカーで充電時の電流を計測してるわけですが、0.5Aしか出ていないわけですね。

本来、VOLT800は1Aでの高速充電に対応しているはず。一体何がおかしいのか?

説明書を読んでみる

困った時は説明書を見るのが定跡でしょう。

下記はVOLT800の説明書からの抜粋です。

VOLT800説明書より引用

ここを見ると、VOLT800の充電時には3種類の状態があり、スイッチを兼ねているインジケータで判別できることが分かります。

インジケータ 状態 電流
点灯 低速充電 0.5A
ゆっくり点滅 高速充電 1.0A
消灯 充電完了

私がVOLT800を充電している時は↓の写真のような状態でした。

スイッチの部分がインジケーターなのですが、「点灯」状態。これは「低速充電」モードであるということです。

1Aの高速充電時には、ここが「ゆっくり点滅」状態になるようですが……ここのインジケータが点滅しているところって見たことがない気がしてきました。

もしかして私はずっと低速充電で使っていたのでは……?

高速充電と低速充電では、充電に掛かる時間が倍違います。ブルベ中にこの差は大きいので検証して見る必要がありそうです。

高速充電モードになる組合せを探してみる

そこで、家にあるUSBのACアダプタとmicroUSBケーブルをかき集めて、高速充電になる組み合わせがあるかを調べました。

いくつかの組み合わせを試してみると、「ANKERのACアダプタ」+「CATEYEのケーブル」でインジケータ点滅を確認!

こんな感じで点滅します。これが高速充電のサイン。実際に電流を測ってみても約1A流れていました。

ANKERとAUKEYのACアダプタ

左が高速充電出来たANKERのACアダプタ、右が低速充電となったAUKEYのACアダプタです。

右のAUKEYのアダプタは、これまで600km以上のブルベでは必ず持ち歩いていたものです。ブルベ中の宿泊ではこれでVOLT800を充電していたわけで、ずっと低速充電だったということですね……なんてこった。

電源とケーブルの組み合わせ実験

どうやら、電源とケーブルの組み合わせの相性で充電速度の高速/低速が決まるようです。

そこで、6種類の電源(ACアダプタ4種/モバイルバッテリー2種)と4種類のmicroUSBケーブルを用意し、すべての組み合わせを試してみることにしました。

実験内容

充電対象のVOLT800は同一個体を使用。

電源(ACアダプタ/モバイバッテリー)を6種類、ケーブルを4種類、計24通りの組み合わせを試します。

実験方法

下記手順で実施します。

  1. 電源とケーブルをVOLT800に接続する。
  2. VOLT800のインジケータの点灯(低速充電)/点滅(高速充電)を記録する。

電源とケーブルを変更しながら24通りの組合せをテストします。

電源

電源はACアダプタ4種類、モバイルバッテリー2種類です。

① AUKEY「PA-U32」

中国「AUKEY」の超小型USB ACアダプタ。

ポート数は2(USB-A×2)。最大5V/2.4A。

② EC Technology「C10-SS3U」

中国「EC Technology」のUSB ACアダプタ。

ポート数は3(USB-A×3)。最大5V/4.0A(3ポート合計、1ポート最大は2.4A)。

③ ANKER「A2620」

中国「ANKER」の超小型USB ACアダプタ。

ポート数は2(USB-A×2)。最大5V/2.4A。

ANKER独自のPowerIQという急速充電テクノロジーが搭載されています。

④ PLANEX「PL-WUCH03」

日本「PLANEX」の小型USB ACアダプタ。

ポート数は2(USB-A×2)。最大5V/2.0A。

⑤ Auskang「WT-H369(5000mAh)」

中国「Auskang」のモバイルバッテリー。容量5000mAh。

ポート数は2(USB-A×1、USB-C×1)。最大5V/2.4A。今回はUSB-Aからの出力でテストします。

⑥ ANKER「AstroE1(5200mAh)」

中国「ANKER」のモバイルバッテリー。容量5200mAh。

ポート数は2(USB-A×1、USB-C×1)。最大5V/2.4A。

ACアダプタと同じく、PowerIQという急速充電テクノロジーが搭載されています。

ケーブル

microUSBケーブルを4本用意しました。

① CATEYE「ライト付属ケーブル」

日本「CATEYE」のライトに付属していた充電用ケーブルです。純正品とも言えます。

恐らく、充電・通信の兼用ケーブルです。

試しにこのケーブルでパソコンとEDGE530を接続してみたところ、EDGE内のファイルをパソコンで表示可能でした。

② RouteR「超急速充電microUSBケーブル」

日本「ルートアール」の、充電専用ケーブル。

通信機能は使えず、普通のmicroUSBケーブルよりも一回り太いのが特徴です。

③ Tronsmart「Micro USBケーブル」

中国「Tronsmart」のケーブル。コネクタが金メッキされています。

充電・通信の兼用ケーブルです。

④ ダイソー「高速充電・通信ケーブル」

日本「ダイソー」のケーブル。

充電・通信の兼用ケーブルです。

実験結果

実験の結果です。

サマリ

まず最初に結果のサマリを示します。

CATEYE
付属ケーブル
RouteR
充電専用
Tronsmart
充電/通信
DAISO
充電/通信
AUKEY
「PA-U32」
低速 低速 低速 低速
EC Technology
「C10-SS3U」
低速 低速 低速 低速
ANKER
「A2620」
高速 低速 高速 高速
PLANEX
「PL-WUCH03」
高速 低速 高速 高速
Auskang
「WT-H369(5000mAh)」
低速 低速 低速 低速
ANKER
「AstroE1(5200mAh)」
高速 低速 高速 高速

読み取れる法則

今回の結果から、以下のことが言えるのではないかと考えました。

  1. 充電専用ケーブルは必ず低速充電になる。
  2. ANKERのPowerIQ対応電源は(充電専用ケーブルを使わなければ)必ず高速充電になる。
  3. 高速充電するためには、電源とケーブルが両方とも適合品である必要がある。

それぞれについて考察を書いていきます。

① 充電専用ケーブルは必ず低速充電になる

今回は4本のケーブルをテストしましたが、RouteRのケーブルだけは「充電専用」でした。他のケーブルは「充電・通信兼用」です。

かつてスマートフォンの充電端子の主流がmicroUSBだった頃、この充電専用ケーブルは大活躍をしていました。普通の通信にも対応したケーブルよりも明らかに充電時に流れる電流が多かったのです。

しかし、VOLT800の充電時には逆に「どんな電源と繋いでも低速充電にしかならない」という結果になりました。

このことから予想されるのは、「VOLT800は通信機能を使って低速/高速充電を切り替えているのではないか」ということです。

この仮説が正しいならば、通信機能を持たない充電専用ケーブルは最初から高速充電の対象とはみなされないでしょう。

VOLT800で高速充電を行いたい場合、「充電・通信兼用のケーブルを使う必要がある」と言えそうです。

ちなみに、私はブルベ中にRouteRのケーブルを持ち歩いてVOLT800を充電していました……どんな電源を持ってきても低速でしか充電できてなかったことに気づいて愕然としています。

② PowerIQ対応電源は必ず高速充電になる(通信ケーブルを使った場合)

今回、電源側にはANKER製品を2つエントリーしました。

充電専用ケーブルを使った場合のみ低速充電となったものの、充電・通信兼用ケーブルを使った場合には2製品とも高速充電となりました。

今回テストしたACアダプタ・モバイルバッテリーともにANKERの独自技術である「PowerIQ」に対応しています。

PowerIQは、Anker独自の急速充電テクノロジーで、AnkerのモバイルバッテリーやUSB急速充電器に搭載されています。
このテクノロジーのスマートな点は、iPhoneやGalaxy、Kindleをはじめ、ほぼ全てのスマートフォンやタブレット等に対応できるように設計されているところ。
PowerIQを搭載したモバイルバッテリーやUSB充電器にはスマート充電チップが組み込まれており、このチップが接続された機器を即座に認識し、その機器に適した最大のスピードでの急速充電を可能にしています。

ANKERサイトより引用

ということで、「機器に適した最大のスピードでの急速充電を行う」という機能がVOLT800に対しても発揮されたことになります。

この際にスマート充電チップが充電対象の製品とやり取りをするのに通信機能が必要であるため、充電専用ケーブルでは低速充電になってしまうのでしょう。

一方、特にそうしたスマート充電機能対応を謳っていないPLANEXのACアダプタも高速充電は可能でした。こちらが高速充電となった理由はまだ分かっていません。

一つ言えるのは、「VOLT800と通信して大電流を流す交渉が出来る電源」じゃないと高速充電にはならないということですね。

VOLT800のマニュアルには「USB充電器の能力が高い場合には高速充電が可能です」という記載がありますが、今回用意した電源は全て2A以上を流せる能力があります。それでも、高速充電が可能な電源と、低速充電しか出来ない電源に分かれました。

これは単純に上限のアンペア数が高いだけではダメで、+αの条件が必要ということなのでしょう。

③ 電源とケーブルが両方とも適合品である必要がある

今回は電源とケーブルの組み合わせを試しましたが、どちらか一つでも高速充電の条件を満たしていないと低速充電になってしまうようです。

「通信機能を持ったケーブル」と、「VOLT800と通信して大電流を流す交渉が出来る電源」の両方を揃える必要があるということです。

まとめ

意外とVOLT800を高速充電するための条件はシビアであることが分かりました。

ケーブルはVOLT800に付属するものを使えば一番確実なはず。

問題は電源であり、「VOLT800と通信を行い大電流を流す交渉が出来る電源」が必要です。とりあえず、ANKERのPowerIQ対応品であれば問題なさそう。ANKER以外でも同様のスマート充電技術を搭載しているメーカーはあるので、そうしたメーカーのものを使えば良さそうです。

最終的には、電源とケーブルを現物合わせで高速充電が出来ることを確認し、その組み合わせで持ち運ぶ必要があるでしょう。

VOLT800は今年のPBPにも持参予定なので、高速充電可能な電源とケーブルを組み合わせてフランスに持っていこうと思います。

なお、VOLT800 NEOは今のところ、家にあるどの電源(2A以上に対応のもの)・ケーブルを使っても高速充電されているように見えました。Type-Cにも充電専用ケーブルなるものがあるようなので、そちらだとどうなるかは分かりません。

著者情報

年齢: 38歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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