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キャノボ時のウェア選びの考え方
キャノンボールの制限時間は24時間。距離は500km超。
24時間走り続けるということは、朝も夜も走るということ。当然、その際に気温差があります。また、500km超の距離を日本で走ると、山を避ける事は出来ません。山の上では当然気温が下がるため、ここでもまた気温差の問題が出てきます。
厄介なことに、昼夜の寒暖差+標高の寒暖差がダブルで効いてくることもあります。これらをやり過ごして走り続けるためのウェア選びは、達成にとって重要な要素です。
本記事では、挑戦時のウェアを「どう選ぶか」「どう運用するか」について述べていきます。
気温変化のファクター
キャノボ挑戦時における気温変化について、要素別に考えていきます。
季節
一番大きなファクターは季節です。
これまでのキャノボの成功率を見ると、成功率が高いのは春と秋。逆に低いのは、夏と冬です。
夏は寒さに凍える可能性は低いものの(箱根の頂上で雨に降られるとあり得る)、発汗量が増えますし、体温が上がりすぎると熱中症の危険性があります。水分補給のための停止時間も増えます。
冬は夏と逆で、寒さへの対策の難しさが原因と思われます。特に箱根周辺は一桁気温前半からマイナスになることもあり、相当の対策をしても低体温症等でリタイヤする方が多いです。また、トイレが近くなることで停止回数が増えるデメリットもあります。
その点、春と秋は走りやすい気温であることが多く、気温変化が身体に対して致命的な影響(熱中症や低体温など)を与える確率はかなり低くなります。
このため、本記事では「春と秋の時期に挑戦する場合」にフォーカスして説明していきます。
昼夜の気温差
春や秋でも、昼夜の気温差があります。
ブルベをやっている方には常識ではありますが、一番気温が下がるのは明け方です。逆に一番気温が上がるのは、14時頃です。昼間に20℃を超えていても、明け方に一桁気温……というのはよくある話です。
また、沿岸部と内陸部では、昼夜の気温差の幅も変わってきます。一般に、以下であると言われています。
・内陸部: 昼夜の気温差が大きい
標高による気温差
もう一つ気をつける必要があるのは、標高による気温差です。
一般に、「標高が100m上昇すると、気温は0.6℃下がる」と言われています。キャノボのコースでは、箱根周辺の標高が約800mあります。箱根前後の小田原・三島はほぼ標高0mなので、下界と頂上では約5℃の気温差が生じることになります。
昼夜+標高
キャノボで厄介なのは、気温差が「昼夜+標高」のダブルで効いてくることがある点です。
春・秋の気温変化は、同じ地点ならば、1日で10℃前後に落ち着くことが多いです。しかし、ここに標高と、沿岸部・内陸部の差による気温変化がプラスされるとどうなるでしょうか?
24時間の間に、20℃以上の気温の変化が起こることも有り得ます。
特に、最高標高の箱根を深夜~明け方に走る場合は気温差が大きくなりがちです。ただでさえ寒い夜の時間に、標高の高い場所に行くのだから、それはもうかなり寒くなります。GWの時期、朝6時頃に箱根を走ったことがありますが、Garminの表示していた気温は2℃でした。
逆に、箱根を昼間に走ることが出来れば、気温差の影響はぐっと小さくなります。しかし、箱根を昼間に走ると、他の場所で渋滞の影響や眠気などが出てきやすいのがキャノボの難しい所です。つまり、ウェア選びはスタート時間選びと併せて考える必要があります。スタート時間をどう選ぶかについては、以下の記事を参照してください。

気温変化に対応するウェアリング
前述の通り、キャノボでは24時間の中で気温変化が20℃以上に達することがあります。また、たとえ箱根を昼間に抜けたとしても、昼夜の気温差があるので、24時間の気温変化は10℃以上あることがほとんど。
こうした大きい気温差に対応できる(=温度調整が可能な)ウェアを選ぶ必要があります。
以下は、2~25℃を想定した私の場合のウェアの選び方です。
上半身
ジャージ: 夏用長袖ジャージ(薄手のもの)
グローブ: インナーグローブ + ショートフィンガーグローブ
下半身
ソックス: 夏用ソックス
予備ウェア
薄手のウインドブレーカー(畳むと拳くらいの大きさになるもの)をサドルバッグ等に入れておくと良いです。山の上~ダウンヒルの防寒用です。
こちらの商品はかなり小さくなる割に、最低限の撥水性能も備えているので、にわか雨にも対処可能です。本格的な雨には対応できませんが。
あと、薄手のネックウォーマーがあると、ウインドブレーカー1枚で凌げない寒さでもなんとかなったりします。
実際のウェア例
2011年4月30日 1:00出発で「東京→大阪キャノンボール」を実施した際の私のウェアを紹介します。
当日の気温データ
この時の気温データは以下のとおりです(Garmin調べ)。
最低気温: 2.0℃ (箱根 5:50頃)
当日のウェア
ヘルメット | OGK REDIMOS |
インナー | CRAFT ZERO EXTREME |
ジャージ | SPECIALIZED TEAM |
タイツ | PEARLIZUMI PRESERVE |
グローブ | イチーナ ピタクロ(インナーグローブ) ErgoGrip EBK902 |
ソックス | SPECIALIZED BG SOCKS |
シューズ | SHIMANO M075(SPD) |
反射ベストについて
私がキャノボに挑戦していた当時は、反射ベストを着ている人はほとんどいませんでした。しかし、現在はブルベ経験者の人の挑戦が多いためか、反射ベストを着て走ることが当たり前になってきています。安全性を考えると、着た方が良いと思っています。
この辺りについては、別記事で詳しく触れています。
まとめ
キャノボ挑戦時のウェアは、かなりの温度幅に対応できるように決める必要があります。「昼夜の気温差+標高による気温差」の最大値に対応できるだけのウェアで臨みましょう。
また、スタート時間によって、一番寒くなる箱根(+三重~大阪の内陸部)の通過時間は変わってきます。「どの時間帯に一番寒くなるか?」も加味してスタート時間を変えるのも戦略の一つです。また、箱根よりも標高が低い(最高標高500m程度)御殿場を通過するルートを使うのも手ですね。
「どの辺りで何℃くらいになるか?」を知るのには、以下のアプリが便利です。有料ですが、キャノボ挑戦前にはぜひこちらで色々シミュレートしてみましょう。

追記
Jimmyさんよりご指摘を頂いたので追記します。
後半は寒さの耐性が弱くなるので防寒対策が大事になりますね。
自分の場合、100kmのHRは140台で、400kmには120台まで落ち、体感で3度程度低く感じます。なのでOTの明け方に箱根超えというのはやりたくないですしやれてないです。— Jimmy@253万Drop (@JimmyYN4) May 4, 2020
HR=心拍数のことです。これは確かにそのとおりで、キャノボの後半って心拍数が上がらなくなる事が多いんですよね。
どういうメカニズムでそうなるのかは分かりませんが、心拍数が上がらなくなると体温を上げづらくなります。そうなると、体感温度も下がるわけです。
私がフレッシュで大阪スタートのチャレンジをした時は、朝6時出発でした。箱根の通過時間は午前1時頃です。この時もやはり寒くて、芦ノ湖畔のセブンイレブンで新聞紙と軍手を購入したことを思い出しました。軍手はグローブの上から身に着け、新聞紙はジャージの中へIN。未だにツール・ド・フランスの山岳ステージの頂上で見られるあの光景を実際にやりました。

「キャノボ後半は体感温度が下がる」ということも、是非頭に入れておいてください。