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あのブランドは今
「最近名前を聞かないな」というブランドのその後を調べてみました。
なお、本記事で取り上げる各ブランドの状況は2023年2月現在の情報となっています。
あのブランドは今
先日、少し前(2014年頃)の自転車雑誌を読んでいたところ、「最近名前を聞かないな」というブランドが結構多いことに気づきました。
一世を風靡したブランドでも数年後には見なくなってしまうことが自転車業界ではよくあります。
あのブランドのその後はどうなったのか? 気になって調べてみることにしました。
「会社の倒産」、「自転車事業からの撤退」、「代理店が手を引いた」など理由は様々。また、一度撤退して復活したブランドもあります。
あまり年代を広げすぎても手に負えないので、対象は「ここ10年で一度は名が知られたブランド」とさせて頂きます。
会社倒産・ブランド消滅・製造終了
会社倒産または消滅してしまったと思われるブランドです。
KUOTA
イタリアのKUOTAですが、現在は自転車の製造を終了している模様です。
2010年頃には圧倒的なコストパフォーマンスのフルカーボンバイク「KHARMA」で人気を博したKUOTA。
ディスクロードへの追従も早く、割りと最近までフレームを発表していたイメージがありますが、2020年頃を最後にニューモデルの発表が無くなりました。
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「撤退か?」と噂になっていましたが、2022年4月に代理店であるINTERMAXの今中代表より「製造終了」が発表されました。
イタリアの公式サイトも消滅しており、Facebook公式ページも2019年を最後に更新が止まっています。
KEMO
イタリアのKEMOですが、親会社ごと消滅している模様です。ちなみにKUOTAのエンジニアが興したブランドだったりします。
2014年のサイクルモードで上陸が発表されたKEMO。日本では「ケモナー」なる言葉がちょうど流行っていたこともあり、一時期は結構見かけるブランドでした。
現在は公式サイトが消滅、Facebookの公式ページも2017年を最後に更新が止まっています。なぜか日本の代理店のサイトは生きていますが。
国際商標を検索してみると、KEMOのブランドを持っているのは「SINTEMA SPORT SRL」という会社。しかし、こちらの会社は閉業しています。
なお、この会社はKUOTAのブランドを持っている会社でもあったようです。
MAD FIBER
どこの国の企業かは良く分からないのですが、コンプレッション構造のカーボンスポークを採用し話題となったのがMAD FIBERです。
2012年ごろから出回り始めたMAD FIBER。当時はまだまだ珍しかったカーボンクリンチャーをラインナップしていました。
超軽量で人気を集めましたが、日本で展開を始めた翌年の2013年には早速経営が行き詰まってしまったようです。
Wizard
日本の「みどり製作所」が展開していたブランド・Wizard。
お手頃な価格のウェアが人気で、オリジナルのカーボンフレームなども販売されていました。
残念ながら「みどり製作所」は2017年に倒産しています。
ASTUTE
イタリアのサドル専業ブランド「ASTUTE(アスチュート)」。
2013年に上陸。カラフルかつ、乗り心地の良いサドルとして人気を集めました。
しかし、2019年に事業停止。日本では取り扱いが止まりました。
尚、ASTUTE社につきましては事業再開に向け更生手続きを進めておりますため、事業再開の折には改めてご報告いたす所存でございます。
と書いてありましたが、2023年現在も再開した様子はありません。
Selev
イタリアのヘルメットブランド「Selev」。
イタリア国内での自社生産にこだわり、優雅なデザインで支持を得ていたブランドです。
詳細は不明ですが、2017年に廃業となっています。
自転車事業から撤退したブランド
自転車事業から撤退してしまったブランドです。
GRAPHITE DESIGN
日本のグラファイトデザインもかつては自転車事業に参画していました。
ゴルフクラブで有名な同社ですが、そこで得たノウハウを生かして「しなり」を重視したフレームを製作。一時期は実業団チームへの供給も行われており、好評を博しました。
しかし2016年、不採算を理由に自転車事業からの撤退を発表。
ただし完全に撤退したわけではなく、ハンドメイドフレーム用のカーボンパイプの供給は継続されているようです。
Pioneer
日本の電機メーカー「Pioneer」もかつて自転車用製品を展開していました。
代表製品はクランク型パワーメーター。
Pioneerではパワーメーターと呼ばず「ペダリングモニター」と呼んでいました。「ペダリングのスムーズさを数値化する」という独自の機能がその理由です。
主に競技ユーザーに受け入れられ、かなりの人気を博しましたが、2020年に自転車事業からの撤退を発表。ペダリングモニターの技術はシマノに継承されることが発表されました。
Dura-Ace R9200シリーズのパワーメーター付きクランクには、Pioneerの技術が入っているようです。
NEILPRYDE
マリンスポーツで有名なNEILPRYDEが自転車事業に参入したのは2011年のこと。
日本では2014年より販売開始。早くからエアロフォルムのロードバイクを販売し、「ALIZE(後にスペシャに訴えられてNAZAREに改名)」は特に日本でも人気を集めました。
しかし、創業者たるニール・プライド氏が2015年に退職。NEILPRYDEからも2018年を最後に新モデルの発表が無くなりました。
創業者はいなくなりましたが、現在でもNEILPRYDEはマリンスポーツの世界では健在です(公式サイト)。
なお、ニール・プライド氏は退職後に、息子のマイク・プライド氏と共に新ブランド「CHAPTER2」を立ち上げました。こちらも日本では人気が高まっているブランドです。
DOPPELGANGER
日本のドッペルギャンガーも実は2020年3月で自転車用品の販売から撤退したようです。
特に告知などは出ていませんが、自転車用品はすべて「販売終了」ページに移動していました。
製品ラインナップを見ると現在はモーターサイクル用品のみとなっています。
SKINS
コンプレッションウェアで有名だった、オーストラリアのSKINS。
一時期はサイクルウェアも販売していましたが、現在では事実上の自転車業界から撤退状態にあります。
きっかけになったと推測されるのが、2011年のUCIルール改正です。コンプレッションウェアをレースで使うことが禁止され、事実上SKINSは締め出されました。
2012年、SKINSはUCIを相手取って訴訟を起こしています。
自転車業界から事実上の撤退後もSKINS自体は継続していましたが、2019年には破産を申請。
現在は香港の会社にブランドが買収され、継続しているようです(公式サイト)。サイクルウェアの展開はありません。
日本を撤退したブランド
自転車業界での事業は継続しているものの、日本には現在代理店が存在せず、小売店では手に入らないブランドです。
Eddy Merckx
ツール5勝の偉大なる王者の名を関したフレームブランド・Eddy Merckx。
長らく日本ではフカヤ(旧・深谷産業)が代理店を務めていましたが、現在は取り扱いブランドにEddy Merckxの名前がありません。
ほかの代理店が引き継いだという情報もなく、現在は日本で手に入らないブランドとなっています。
本国では元気に活動中(公式サイト)。しかしラインナップはかなり減ってますね。
BLUE
アメリカのフレームブランド・BLUEも最近国内では見かけなくなったブランドです。
かつてはゼータトレーディングが国内代理店を務めていましたが、2011年モデルを最後に更新が止まっていた様子。
本国では活動しており、ディスクロードも販売しています(公式サイト)。
THOMPSON
ベルギーのフレームブランド・Thompsonも撤退してしまったブランドの一つ。
HAMASHOという会社が代理店をしており、カラーオーダーシステムなどで人気を博しました。
2019年頃までは国内取扱があったようですが、現在は代理店契約が終了している模様。
本国ベルギーでは未だにブランドは活動中です(公式サイト)。
GORE BIKE WEAR
GORE-TEXで有名なGORE社が自ら展開するスポーツウェアブランドが「GORE BIKE WEAR」です。
素材屋が展開するブランドだけあって、素材を知り尽くした高性能な製品が特長でした。グローブやジャージは私も何度か購入したことがあります。
しかし2021年をもって日本市場を撤退。というか、どうもアジア全体から撤退した模様です。欧米でしか手に入らないブランドになってしまいました。Wiggleなどでは買えますが、悲しいものです。
なお、現在の正式名称は「GORE WEAR」となっています。
日本を撤退後、再上陸したブランド
一旦日本からは撤退したものの、その後で再上陸したブランドの紹介です。
FFWD
オランダのFFWDは一度日本を撤退後、再上陸したブランドの一つです。
コストパフォーマンスに優れたホイールを販売しており、2010年代前半に人気を博しました。
私が初めて購入したカーボンリムのホイールもFFWD。熱には弱かったですが、良いホイールでした。
RIDLEYの国内代理店でもあったジェイピースポーツがFFWDを取り扱っていましたが、2020年頃に取り扱いが止まっています。
ジェイピースポーツ自体が厳しかったようで、同社が抱えていたRIDLEY・スピードプレイも代理店が変更になっています。ジェイピースポーツの公式サイトも消滅。
FFWDは宙に浮いたままでしたが、2021年にライドアンドスマイル社が代理店を引き継ぎ、再上陸を果たしました(公式サイト)。
Bryton
GPSサイコンブランドのBryton。
2012年の初上陸時はラピエールやサーベロを扱う東商会が代理店を務めていました。
この頃のBrytonのGPSサイコンの品質はとにかく低く、マウントなどを含めて不具合が多発。すぐに名前を聞かなくなり、倒産したのかと思っていました。
しかし、Brytonは死んでいませんでした。2017年に再上陸。品質もずいぶんと良くなったようで、Garminにかなり追いついてきた印象です。
当サイトにおいて実施したアンケートでは、Garminに次ぐシェア2位を獲得。日本ではすっかり定番のサイコンとなりました。
まとめ
「昔はよく目にしたあのブランドは今どうなった?」を調べてみました。
今回気づいたのは、「日本から消えたブランドの中でイタリアンブランドの占める割合が異様に高い」ということ。
恐らくイタリアの会社が潰れやすいということではなく、日本ではイタリアンブランドが売れやすいので歴史が浅くても代理店が付きやすいのが理由なのかなと推測します。
愛用したブランドは長く続いて欲しいと思うものですが、生き馬の目を抜く自転車業界。10年後には今有名なブランドが「あのブランドは今」と言われているかもしれません。
著者情報
年齢: 38歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。