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WheelTop「EDS」 実走試乗レポート
無線変速システム「EDS」をようやく実走でテスト出来たのでレポートを書いていきます。
EDS テストライドキャラバン
2024年4月末、話題の無線変速システム、WheelTop「EDS」が発売となりました。
ローラー台でしか試乗できなかったEDS
これまで何度かEDSに触る機会がありましたが、全て室内ローラー台でのテストのみ。
これは、日本国内で無線通信効きを使う際に必要な「技適」の認証を取得手続き中だったからです。場所と日時を限定した特例制度(→技適未取得機器を用いた実験等の特例制度)を申請していたとのこと。
技適認証完了、実走試乗も可能に
技適の認証も終わり、ようやくデリバリー開始。ということは、野外で試乗が可能になったということです。
発売を記念して、東京・京都・山梨でテストライドキャラバンの実施が決定。その東京会場となったのが、矢野口のコーダブルームショップでした。
5/6、コーダブルームショップに赴き、EDSの実走試乗を行いました。
EDS 実走試乗レポート
前述の通り、試乗会場は矢野口の「コーダブルームショップ稲城店」。
コーダブルームは、日本の自転車会社「ホダカ」のブランド。そのホダカがWheelTopの国内代理店ということで、ここでの開催ということになったようです。
試乗用フレーム&コース
今回用意された試乗用フレームは、コーダブルームのアルミフレーム「STRAUSS RACE2」。
油圧ブレーキ用のレバーが付いている機体が2台(500サイズ/465サイズ)。ワイヤーブレーキ用のレバーが付いている機体(430サイズ)が1台用意されていました。
私の身長からすると500サイズが適正ということで、油圧ブレーキ用のレバーが付いた機体を選択。約30分間、7kmの試乗を行いました。
試乗コースは、尾根幹~稲城駅周辺の丘陵地です。登りの感触や下りでのブレーキ性能を見たかったので、長めの登りを含んだアップダウンコースにしました。
レバーの感触
まずはレバーの感触から。担当スタッフの方は、ブリフター(ブレーキ+シフター)と呼んでいました。
左レバーはボタン1つ。右レバーはボタン2つ。
レバーフードの握り心地はなかなか良かったです。油圧用としては細め。シマノの油圧レバーだと存在するホースのケーブルの出っ張りが無かったことが握り心地の良さにつながってる気がします。
「レバーフードはちょっと感触が硬い」とスタッフの方が仰っていましたが、私はそうとも感じず。写真のようにフードを交換する際には硬そうですが、握り心地はそうでもなかったです。
油圧用レバーの重量は公称で422g。重量的にはシマノの105Di2と同程度。ダンシング時には特に重さを感じません。
ちなみにワイヤー引き用レバーの重量は376g。こちらの機体には乗っていませんが、単体で油圧用とワイヤー引き用を持ち比べると、ワイヤー引き用のほうが明らかに軽かったです。
変速性能
ローラーの試乗でも感じていたことですが、リヤの変速は十分な速度。
フロントの変速はローラー台では「遅い」と感じましたが、実走なら「こんなものかな」という感じ。シマノの電動よりは遅いですが、機械式変速とは同等じゃないでしょうか。
残念ながら試乗した個体はアウターの4/5/6段目の位置が合っていない感じでした。試乗後にスタッフの方にそれを話すと、「後ほどアプリから調整します」とのことでした。このあたりの調整は全部アプリからやるんですね。
気になったのが油圧用レバーが「逆に動く」点です。シマノやカンパの油圧レバーでもこういう動きはあるんですが、それにしても動きが大きい。変速をしようとするとレバーが前側に動いてしまい、変速に失敗することがありました。
なお、ワイヤー引き用レバーはこうした動きはありません。私が買うとしたらこちらのレバーなので、その点は良かったです。
ブレーキ性能
ワイヤー引き用レバーは各社のブレーキキャリパーと互換性がありますが、油圧用レバーはWheelTopのディスクブレーキキャリパー専用です。今回メインで試乗したのは油圧用レバーなので、ブレーキ性能についても触れておきます。
製品版もやっぱりゴルフボールのようなディンプル付きのブレーキキャリパーでした。
正直、シマノのロード用油圧やEQUALブレーキに比べると性能はイマイチです。効かないわけではなく、カックン気味。コントローラブルではない。
ただ、今回は何故かリヤブレーキだけベスラのロード用のブレーキパッドが付いていました。フロントはWheelTop純正のブレーキパッドです。ベスラのロード用はかなりコントローラブルなパッドなので、フロントよりは減速調整がしやすく感じました。
フロントの効きはカックン気味でしたが、リヤはそうでもなく。ブレーキパッドをシマノやベスラのものに変えることで、ブレーキ性能は改善するかもしれません。
パッドとローターの間隔は十分に確保されており、スプリントのような動きをしてもパッドとローターが擦る音はしませんでした。
下ハンドルを握った際のレバーの遠さも試してみましたが、特に遠さは感じませんでした。
制限事項
試乗開始前にスタッフの方に言われたのが以下の話でした。
フロントインナーの状態で、リヤのトップ2枚には入らない仕組みになっています。その組み合わせはチェーンがダルダルになっちゃうので。
そのギヤ比を使いたい場合には、フロントアウターでリヤをロー側にして対応してください。
「入らない」というのがどういう状態か気になって実験してみました。
まず、「フロント: インナー」の状態で、リヤのギヤをどんどん上げていくと……リアディレイラーは10枚目で止まりました。11枚目と12枚目には移動してくれません。なるほど、これが「入らない」状態。
次に、「フロント:アウター」の状態で、リヤをトップギヤに変更。そこからフロントをインナーに変速しました。
すると、リアディレイラーが勝手に動き、10枚目にチェーンが移動しました。なるほど、こういう意地悪にもちゃんと対応してくれるようです。
消耗品など
ホダカとしてはアフターサポートにも力を入れたいとのことで、基本的に全てのアフターパーツ(レバーそのものやフードなど)の在庫を持つようにするという話をしていました。
パーツ単位で壊れる・消耗することは、この手のレバーでは確実にあることなので、そこが考慮されているのは良いことです。
EDS以外の感想
この記事の中心はEDSですが、ちょっと他のパーツが印象的だったので書いておきます。
今回の試乗フレームはSTRAUSS RACE2。今どきフレームセットで10万円を切る激安アルミフレームです。
……が、これがなかなか良かったんですよね。
大出力で踏み込んだときこそ「ちょっと撓むかな」という感触は合ったものの、その他は製品名の「RACE」に恥じない性能を持っていると思います。ハンドリングはクイック気味でしたが、レース用という用途であれば、このくらいのほうが良いのでしょう。
そして偶然にも、今回対応頂いたホダカのスタッフの方がこのフレームの設計者の方でした。
お話を聞くと、このフレームは「スプリント用というよりは逃げ用」に設計したとのことで、私の感想は妥当だったようです。
ちなみにワイズロードのイベントで妻がこのフレームに試乗した際には、「ディスクロードに乗るならこれが良い」と言っていました(私はサイズが無くて乗れず)。その時は、「10万のフレームがそんなに?」と思ったんですが、実際に試乗してみると納得感はありましたね。
フレーム重量は1400g程度、そしてこの値段でフルカーボンフォーク(重量は350g前後)が付くというのがすごい。
あと、ホダカのオリジナルブランド「P&P COMPONENTS」のショートノーズサドルが思いのほか良かったです。
「ZEROS」というモデルですが、座り心地が良かったです。クロモリレール採用なので250gとそれなりに重いですが、チタンレールのモデルとか出たら欲しいですね。
まとめ
WheelTop「EDS」の実走試乗レポートでした。
私が買うとしたら「ワイヤー引き用」のレバーなのですが、今回はフレームサイズの関係で「油圧用」のレバーを使うことになりました。結果的にブレーキ性能も試せたので良かったかもしれません。
とりあえず私の用途であれば走行には問題ない性能は出ていそうです。一方、飛行機輪行の際のバッテリー問題だけは気になるところ。eTapならばバッテリーを外せばよいのですが、EDSは特許の関係でバッテリーが抜けないので。その辺りの問題がクリアになれば本格的に購入候補になると思います。
現状「無線対応でワイヤー引き用レバーを出している」という点で、個人的にはかなり評価しています。SRAM以外が見捨てている領域なので。そして、実はEDSにおいてはワイヤー引き用が一番売れているようでした。
あと、今回はホダカの設計者の方とお話できたのが収穫でした。やっぱり昨今のフレームは「タイヤサイズから設計が始まる」ということを言っておられ、「やっぱりそうなんだ」と納得。色々とフレーム設計の際の苦労話も伺えて貴重な時間でした。
雨が降りそうだったので行くかどうか迷ったのですが、行って良かったです。良い連休最終日となりました。
著者情報
年齢: 39歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。