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前照灯に点滅機能が付いたのはいつからなのか?
自転車ライトの前照灯の点滅機能がいつ頃から登場したのかを調べてみた記事です。
まえがき
昨日の記事でも触れましたが、La routeさんの企画でキャットアイのライト開発者の方々にインタビューをさせて頂く機会がありました(記事は近日公開予定)。
そこで驚いたのが、「前照灯の点滅機能は割と最近登場したものである」ということです。
かつての前照灯には点滅機能が無かった?
キャットアイの方がインタビューの中でこんなことを言いました。
「ライトの点滅ができるようになったのはLEDを使うようになってからです。」
これを聞いてびっくり。
私が自転車を始めた2009年の段階では、自転車ライトの前照灯には点滅機能が付いていました。
個人的には「点灯」で使うことがほとんどで、「点滅」で使うのは昼間の峠の下りで対向車にアピールする時くらいのもの。
とはいえ、点滅機能というのは当たり前のように搭載されているもので、はるか昔から存在するものだと思っていました。
前照灯に点滅機能がなかった理由
キャットアイの方に詳しくお聞きしてみると、以下のような理由であるとのことでした。
- かつて、前照灯は光源としてハロゲン電球を使っていた。
- 回路を追加すれば、ハロゲン電球でも点滅を実現することは可能。
しかし、ハロゲン電球で急激なON/OFFを繰り返すとフィラメントが飛んでしまうことがあるため、やらなかった。- LEDではそういった心配がないので、昼間の存在アピール用に点滅機能を付加した。
言われてみれば確かにその通り。
調べてみると、過去のハロゲン電球時代には、交換用の電球も販売されていたようです。LED時代しか知らない私からすると、ギャップを感じますね。
点滅機能はいつ付いたのか?
そうなると、気になってくるのは「自転車の前照灯にはいつ頃から点滅機能が付いたのか」ということです。
この手の自転車ライトに関する「世界初」は大体キャットアイが達成していたりするので、CATEYEの製品の歴史を遡れば大体いつ頃から登場したかが掴めそうです。
以降、「自転車の前照灯に点滅機能が付くまで」の歴史について、関係ありそうな話を時系列で見ていきます。
自転車の前照灯に点滅機能が付くまで
自転車の前照灯の点滅機能登場までに関係のありそうな出来事を見ていきます。
1962年: 赤色LEDが発明される
1962年、GE社のニック・ホロニアック氏が赤色LEDを発明します。
LEDの中でも赤色は登場が早く、既に60年前には登場していました。
赤の光といえば、自転車においては尾灯(テールライト)に使われる色です。このため、尾灯にはLEDが比較的早く採用されました。
一方、前照灯に必要なのは白い光。白い光を実現するためには、光の三原色である赤・青・緑の光が必要です。
赤は比較的早く実用化されましたが、青色LEDが実用化されるには30年の月日を要することになります。
1972年: 黄緑色LEDが発明される
1972年、アメリカのジョージ・クラフォード氏により黄緑色LEDが発明されました。
1993年: 青色LEDが実用化される
1993年、日本の中村 修二氏が実用的な青色LEDを開発しました。
これによって、白色光を構成する、赤・青・緑の全てのLEDが揃いました。
なお、95年には青色LEDの技術を使って純・緑色のLEDも開発されています。
1995年?: CATEYE「TL-LD120」発売
正確な発売時期は不明ですが、CATEYEで一番古くからラインナップされているテールライト「TL-LD120」が1995年前後に発売されています。

こちらの記事を書く時に発売時期を自転車文化センターで調査した結果、1996年には少なくとも販売されていたことを確認済みです。
Web Archiveの製品ページを見ると、この製品の特徴は以下のとおりです。
- LEDを3個使用した高輝度、低電力消費デュアルモードライト。
- 点滅モードで100時間、点灯モードで50時間使用可能(アルカリ電池使用時)
- 点灯・点滅はボタン一つでカンタン切り替え。
- シートポスト・シートステーに取付。
- ポケットやカバンに取り付けるクリップ付き。
ということで、LEDを使っており、点滅機能を備えていることが明言されています。
前照灯よりかなり早い段階で、尾灯のLED化と点滅機能の実装は達成されていたようですね。
前照灯に比べるとそこまで光源の明るさが必要ないので、尾灯には採用しやすかったのだろうと思われます。
1996年: 白色LEDが実用化される
1996年、ついに白色LEDが実用化されました。
これにより、ようやく前照灯にLEDを使うという選択肢が出てきたわけです。
2001年: CATEYE「HL-EL100」発売
2001年10月、CATEYE初のLEDを使用した前照灯「HL-EL100」が発売されます。
CATEYEのLED前照灯の型番には「EL」が付きますが、その第一号がこれ。ちなみに最新のVOLT800 NEOの型番は「HL-EL475RC」です。
白色LEDの実用化から5年足らずで製品採用というのは中々のスピード感ではないでしょうか。
Web Archiveの製品ページを見ると、この製品の特徴は以下のとおりです。
- 業界初!LEDヘッドランプ
- 高輝度ホワイトLED3個使用。
- 大幅UP!点灯時間約30時間。
- 電球交換が不要。LEDの特徴として光源の寿命が、一般的な電球より非常に長い為、電球交換が不要で大変経済的です。
- 更に固定しやすくなったH-30ブラケット採用、飛び出し防止のロック機構装備。
- 左右の角度調節が可能。
「業界初」という売り文句にどこまで信憑性があるかは分かりませんが、確かに当時のサイクルパーツカタログを見ても他社はLEDライトをラインナップしていないようです。
自転車の前照灯としては、恐らくHL-EL100が第一号製品なのでしょう。
ただ、この製品には点滅モードは搭載されていません。
2003年: CATEYE「HL-EL200」発売
2003年12月、CATEYEとしては3代目となるLED前照灯「HL-EL200」が発売されます。
Web Archiveの製品ページを見ると、この製品の特徴は以下のとおりです。
- オプティキューブ・レンズテクノロジー
キャットアイ独自の『オプティキューブ・レンズテクノロジー』により、LEDの光を効率良く集光させる事で、通常のLEDの約2倍の明るさを実現しました。- 点滅モード内蔵
LEDの視認性の良さを生かし、昼間や夕暮れに使用すれば一層安全性が高まります。その場合点滅モードのみで連続約220時間使用できます。- 取付やすい新型ブラケット(H-32)
ブラケットのクイックレバーを回しレバーを倒すと。ドライバーを使わずにしっかりとハンドルバーに装着出来ます。また、レバーを起こすとブラケットが緩み、ランプの角度調整が簡単に出来ます。
ということで、ようやく点滅機能が登場しました。
説明を見ると、登場当初から夜間用ではなく、昼間や夕暮れの被視認性向上を目的としていたことがわかりますね。
私が自転車を始めて最初に買ったライトがHL-EL130。
買ったのは2009年だったはずですが、点滅機能が登場したのはそのわずか6年前だったということ。登場したての機能であったことになります。
おまけ: 前照灯ではないフロント用LEDライト
実は、前照灯ではないものであれば、白色LED使用のフロント用ライトはもう少し早い段階で発売しています。
それが、「TL-LD120-F」というモデル。
1995年頃に発売された尾灯「TL-LD120」の筐体をそのまま使用した、フロント用のセーフティライトです。
あくまで被視認性の向上を目的としたものであり、前照灯ではないという位置づけでした。この製品には点滅機能が付いています。
具体的な発売時期は不明ですが、2001年5月の段階で既にキャットアイのホームページに掲載があります。「初のLED前照灯」であるHL-EL100の発売が2001年10月なので、それよりも少し早い段階で発売されていたようですね。
十分な明るさが必要とされる前照灯と違い、セーフティライトの明るさはそれほど求められません。白色LEDが前照灯として必要な明るさを手に入れる前でも、セーフティライトであれば製品化出来たものと思われます。
まとめ
以上、私の調査では、「自転車の前照灯に点滅機能が搭載されたのは2003年」という結論になりました。
当たり前のように思っていた前照灯の点滅機能は、登場して実はまだ20年しか経っていなかったのです。
2001年から2003年の間に点滅機能を搭載した自転車用の前照灯がキャットアイ以外から販売されていた可能性はありますが、少なくとも2001-2003年のどこかが最初と見て間違いないと思います。
「白色LEDの実用化」、そして「自転車ライトへのLED採用」という技術革新の結果、点滅機能が搭載されたことが分かりました。
著者情報
年齢: 38歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。