ZIPP 303S(フックレスリム)に試乗

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横浜のワイズロードで行われた、ZIPPのホイール試乗会に参加してきました。

目的は、フックレスリムを採用した入門シリーズの「ZIPP 303S」。自分のフレームで新技術を試すことが出来ました。

目次

参加動機

新潮流になりそうな技術「フックレスリム」を試すのが今回の目的です。

イベント概要

11月7日、8日にワイズロード横浜店で開催された、下記のZIPPの最新ホイール試乗会に参加しました。

Y's Road 横浜ワールドポーターズ...
【横浜店✕ホイール試乗】11/7(土)8(日)は憧れのZIPPホイールが試せる試乗会を開催! フックレスリムを採用...  ワイズロード横浜店の花井です!   10/30にリニューアルOPENし様々なイベント、セールを開催しているワイズロード横浜店。   今回ご紹介させていただくイベントは最新ZIPP...

注目すべき点は、「フックレスリムのホイールを自分のフレームで試乗できる」という所です。ここに惹かれて、イベントに赴きました。

フックレスリム

フックレスリムはその名の通り、タイヤを引っ掛けるフックが存在しないリムを指します。ロード界隈では、GIANT・ENVE・ZIPPが発売しています。

フックなしでタイヤを固定できるのか?と思うのですが、「低圧のチューブレスタイヤならOK」とのこと。今回試乗した「ZIPP 303S」の最大空気圧は何と5気圧。これまでのロードタイヤでは考えられないほどの低圧です。

フックレスリムの利点としては以下が挙げられます。

・軽い
 → フックが無い分軽量化でき、フックありに比べて前後で100g程度軽い。
・値段が安い
 → 不良品率が低くなるため、製造コストが下がり、売値も下がる。
 → 今回試乗した303Sは、ZIPPなのに14万円ほど。
・転がり抵抗が低い
 → タイヤの変形量が減るため、転がり抵抗が減る。
・乗り心地が良い
 → 低圧かつエアボリュームが増えるため、乗り心地が良くなる。
などなど、色々と利点があります。
良いことづくめに見えますが、「チューブレスタイヤしか使えない」という短所もあります。クリンチャータイヤも使えないことはないようですが、公式には不許可。とはいえ、これは普段からチューブレスタイヤを使っている人には短所にはなりませんが。
あと、今の所、ZIPPから販売されているフックレスリムのホイールはディスクブレーキ専用です。リムブレーキ用は販売されていません。GIANTにはリムブレーキのフックレスホイールもあるようです。

参加レポート

試乗会が行われたのは、10月末にワールドポーターズの6階に移転した「ワイズロード横浜店」でした。

今回はフックレスリムを試すのが目的なので、ディスクロード「INFINITO CV」で現地へ。

試乗ブースへ

ワールドポーターズと言えば、有名なショッピングビル。果たして自転車を持ち込めるのか?と思いましたが……

なんと専用エレベーターが。さすがワイズさん、整ってらっしゃる。

 

6階のワイズロードの奥に、ZIPPのブースが用意されていました。実はZIPPのホイールって試すのが初めてだったりします。

ホイール取付

代理店の方に「303Sを試乗したいです」と伝えると、ホイールを交換してくれました。ひとつ上のグレードである「303 FIRECREST」もあったのですが、私が買えるとしたら303Sの方なので、そちらの試乗を優先しました。

ローターが私のフレームと同じく前後160mmだったので、特に苦労なく交換完了。

付いているタイヤは、ZIPPのTangente Tubeless 28C。一応25Cから取付可能だそうですが、推奨は28C。これが一番空力的によくなる組み合わせだそうです。

空気圧を聞いてみると、「3.5気圧です」という驚きの回答。街乗りMTBくらいの空気圧ですが、手で握ってみるとそこまで柔らかくはありません。

ZIPP 303S装着の図。なかなかカッコいい。けど、前後のホイールでデカールがズレてる。ミス個体を試乗用にしているのかな?

試乗

試乗時間として許されたのは30分間。短時間ですが、自分のフレームで試せるというのは嬉しいですね。

試乗コースは、山下公園前を抜けて、「港の見える丘公園」まで行って折り返す約5kmを選択。山下公園前の荒れた道路で快適性を見て、港の見える丘公園前の激坂でヒルクライム性能を見ようという考えでのコース取りです。

普段履いている「RACING ZERO CARBON DB」と比較してのインプレッションを以下に書いていきます。

乗り心地

28Cという太さによるエアボリューム、3.5気圧という低圧も相まって、乗り心地は非常に良いです。

山下公園前の荒れた路面も、振動を相殺する素材を使ったINFINITO CVと組み合わせると綺麗な路面であるかのように感じられるほど。レーゼロカーボン+チューブレスタイヤの組み合わせも試したことはありますが、乗り心地は格段に303Sの方が上ですね。

3.5気圧という低さから「ボヨンボヨン沈み込むのではないか」と警戒していましたが、サイドのヨレは感じませんでした。確かに低圧向けに設計している感じがあります。

加速性能

これはあまり良くなかったです。レーゼロカーボンのほうが上。さすがに相手が悪い気がしますが。

スピードに乗るまでがモッサリしています。私のようなロングライドメインの使い方であれば本来気にしなくてよい所なのですが、ファストラン時代の癖が抜けずに信号発進で加速してしまうので、どうしてもこういう所が気になります。

スポークは、ストレートプルではなく、Jベンドの一般的なもの。これもモッサリ感の原因のひとつな気はします。

加速がイマイチな点は、既に303Sに乗っているゲン君が「タイヤが悪いのではないか」と言っていました(下記の記事参照)。

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組み合わせ的には、SCHWALBE PRO ONE TL EASYの28Cがオススメとのこと。ちなみに、この翌週開催された「なるしまフレンド」におけるZIPP試乗会では、PRO ONEが装備されていたとか。そっちで乗ってみたかった。

巡航性能

巡航スピードに乗せるまでは大変でしたが、35km/hを過ぎた所でのスピード維持はたしかに楽。転がり抵抗の小ささが出ている気がします。荒れた路面でも減速しにくかったです。

前輪のスポークが24本と多めなので、空気抵抗が大きいのでは?と思いましたが、リムとタイヤの太さで相殺されている感じですね。

こちらも多分タイヤを変えたら更に向上しそうな気はします。

登坂性能

加速性能と同じく、こちらもイマイチ。タイヤのヨレは感じませんが、登りにパワーを要求される感じ。

総評

巡航性能と乗り心地にパラメータを振ったホイールという印象。

14万円という価格なので色々と制限が掛かっている部分もあるように感じますが、フックレスの旨味は感じられたと思います。

加速性能を求めるなら、やはり一段上のFIRECRESTのほうが良さそうですね。時間が無くて乗れませんでしたが、特に私のように体重がある場合には剛性を上げている上位モデルの方が合うのでしょう。

なお、試乗が終わってレーゼロカーボンDBに戻して走ってみた所、加速の鋭さに驚きました。なんだかんだでハイエンドホイールですしね。

まとめ

なかなか新鮮な体験をさせてもらいました。

フックレスリムはまだまだ出始めたばかりで完成形とは思えませんでしたが、旨味はハッキリと打ち出してきていましたね。巡航性能と乗り心地を重視する方には適した選択肢だと思います。

……その性能ってまさにブルベのようなロングライドに適した性能だとは思うのですが、個人的にはやはり「チューブレスタイヤしか使えない」というのがまだネックですね。

ブルベ界隈でも完全にチューブレスに移行した人はそれなりにいます。私も今年に入ってから再度チューブレスに挑戦してはいますが、まだまだ出先でトラブルが合った場合に上手く復帰できる自信が持てず、ブルベはクリンチャータイヤで参加し続けています。

ネックに感じられるのはリムとタイヤの相性(これが悪いと空気漏れが起こりやすい)です。タイヤの規格団体であるETRTOが先日新しい規格を発表し、その中にはフックレスリムに関する規定も含まれていたようです。相性問題が無くなれば、トラブル率も低下するはずなので、ブルベでも使いやすくなります。将来的に導入する可能性は大いにありますね。

著者情報

年齢: 36歳 (レビュー執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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