いってこいビワイチ1000 : 1日目 石和温泉~名古屋(0~332km)

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10/5 4:45、起床。

朝食を食べ、準備をする。前日の夜に降っていた雨は上がっており、どうやら1日目は雨の心配は無さそうだ。それどころか、台風に吹き込む風の影響で一路追い風予報。これはツキが向いてきた。

ジャージ一枚の晴天向け装備で外に出る。路面は少しウェットだが、気温も丁度良い。憂鬱だったクローバー1200のスタートとはえらい違いだ。

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5:30よりブリーフィング開始。主催スタッフから注意点が読み上げられる。

 「台風が近づいていますが、我々からは中止のアナウンスは出しません!
  各自で安全に配慮した判断をしてください。」

さすがランドヌ東京、慈悲(?)は無いか……と思った刹那、スタッフが次に発した言葉にどよめきが起きた。

 「ただし! 今回はそんな皆さんへのボーナスとして、

  PC2より後のPCは全て通過チェックにします。

  良く考えて走ってください。」

これは有難い。「通過チェック」とは、「通過証明が必要だが、足きりタイムの設けられていないチェックポイント」を指す。通常のPCは足きりタイムがあり、それを超過するとその場で失格となる。今回のPC2は310km地点に設けられており、そこまでは足きりタイムがあるが、それ以降は制限時間は事実上無くなるということになった。多少遅れても、ゴール地点に75時間以内に辿りつけば認定されるということである。

運営側の意図を察すると、「台風で走れないほどの雨が降った場合に安全な場所に退避して、走れるようになったらペースを上げて挽回せよ」と言うことだと思う。今の所、予報的にはそこまで酷い雨に降られそうにはないものの、台風が気まぐれで進路を変えたら一時的に進めなくなることは十分考えられる。出来ればホテルで寝ている間に過ぎ去ってくれるのが理想だが……。

ブリーフィングが終わると車検が始まり、いよいよスタートの時間を迎える。

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1日目は、石和温泉から名古屋までの332km。最初の100kmは下り基調、その後はほぼ平坦というコースプロファイル。睡眠時間を稼ぐために、なるべく早く走りきりたい。

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10/5 6:00、スタート。今回もクローバー1200同様、最初から妻とは別々だ。今日の目的地は名古屋・金山。332㎞を走る。

スタート直後は石和の街中を走るので信号が多いが、やがて笛吹川沿いに出ると走りやすい道になる。橋が現れるたびにアップダウンが繰り返されるが、基本的には海に向かって下り基調の道である。ここで同じ時間の後のウェーブで出発した、ゆーさくさんが凄い勢いで走ってきて追い抜いて行った。……彼は膝の爆弾持ちのはずだが、大丈夫だろうか? 遠ざかる背中を見送る。

鰍沢口から先は笛吹川が富士川に名前を変える。ここから蒲原まではブルベではお馴染みの道だ。だが、甲斐岩間を過ぎたあたりで見慣れない横道へと入った。直後、目の前に壁が。ブリーフィングで注意された坂はここか。15%程度の斜度がある上に、苔が生えているので滑る滑る。後輪から荷重を抜かないように気を付けながら何とかシッティングで登りきる。下りは先週の台風24号の影響か、落ち葉や枝が見られた。ここは慎重に下る。

身延町の中心は、つい先日「ゆるキャンスタンプラリー」で来たばかり。身延の街を越えると少し大きな坂があるが、以後は基本的に下り基調で標高を徐々に落としていく。VCRあおばのジャージを着たチタンバイク乗りの人と抜きつ抜かれつを繰り返しながら、最初のチェックポイントまで。

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8:45、通過チェック: セブンイレブン富士川松野店(76km地点)に到着。さすがに下り基調なだけあって、グロスAve27km/hと良いペース。食事などを手早く済ませて先を急ぐ。

富士川橋まで来てしまえば、ここから先は勝手知ったる東海道。ゆったりと蒲原・由比の街並みを走っていく。この辺りは昔からファンである漫画家、くぼたまこと先生の地元(私のHNも彼の作品に由来している)。そのことをツイート使用かと思ったが特に信号に引っかからないまま寺尾交差点までたどり着いてしまった。押しボタン式信号で対向車線に渡り、太平洋岸自転車道に入る。

最近、この由比~興津間の太平洋岸自転車道を走る機会は多いのだが、毎度道沿いの「スマル亭」を見るたびに悲しい気分になる。スマル亭は静岡ローカルの蕎麦屋チェーンで、24時間営業が特徴。これまでのキャノンボールやTOTで何度も横を通ってきたが、夜間通過時の明るさが印象的だった。しかし、2017年10月の台風で高波の被害を受け、休業中となっている。もう一年が経つが、残念ながら再開の目途は立っていないようだ。

三日後に宿泊を予定している駿河健康ランドの脇を抜け、再び国道1号へ。ここで、先行していたゆーさくさんに追いついた。やはり序盤の飛ばし過ぎで膝に少し痛みが出ているようだ。声を掛けてパスする。

清水駅前で東海道を外れ、御前崎方面へ進路を取る。予報通りに追い風が強まってきた。これは海沿いのR150も快適に走れるかもしれないと気分を盛り上げる。

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10:22、PC1: セブンイレブン清水折戸2丁目店(109km地点)に到着。ここは浜名湖鰻600でもPCだった場所。ただ、PCを出た後のルートが若干違うので気を付けなければならない。

スマホを見ると、妻は1時間ほど前に最初の通過チェックに到着したようだ。ここまでで差は1時間弱、なかなか良いペースだ。

PCを出て走り出すと、明らかに背中に追い風を感じる。どうやら予報は大当たりのようだ。台風様様である。……もちろん、後で台風による足止めを食らうことにもなるのだが。

R150を飛ばし、大崩海岸へ。浜当目トンネルへの登りでも追い風が若干のアシストをしてくれ、楽に登ることが出来た。あっという間に焼津へと至る。焼津港への道も引き続き追い風だ。小川港へ入る道に左折するときにそのまま直進してしまったランドヌールがいたが、彼は無事にコースに戻れただろうか。

気持ちよく海沿いの道を飛ばし、吉田町に入る。この辺りは東海地震に備えた施設が多く、100人は乗れそうな幅と高さを持つ歩道橋などがいくつも建てられている。走るたびに防災施設が増えている気がするが、今回も見覚えのない人口の山を持つ公園が増えていた。本当は神奈川とか東京の沿岸部もこれくらい備えないといけないのだろうけど……。

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12:46、通過チェック: セブンイレブン御前崎港店(171km地点)に到着。ここも浜名湖鰻600でPCだったコンビニである。ここまでのグロスAveは25.2km/hと、見積よりも大幅に早い。追い風ボーナスの凄さが数字にも表れている。今夜の睡眠時間はかなり長く取れそうだ。

ここまで休みなく走ってきたので、このPCではシューズを脱いでゆっくり弁当を食べる。前回のクローバー1200で足裏の痺れが出たため、今回は出来る限り足裏を開放する作戦だ。

コンビニを出て御前崎の岬を折り返しても追い風は続く。ただ、台風の影響で波が高く、ところどころ堤防を乗り越えて道が水浸しになっている。思わぬところで泥除けが活躍した。

浜名湖鰻600で宿泊した「くれたけイン御前崎」前を通過し、浜松入り。天竜川を渡る遠州大橋を歩道で越え、浜松入り。中田島砂丘周辺の道は交通量が少なく、個人的には好きな道だ。この辺りで驚いたのは、止まっていた信号がいくつかあったこと。前週の台風24号の影響で浜松周辺では停電被害が起きていると聞いていたが、一週間近く経っても続いているとは思わなかった。

弁天島で久々の東海道に復帰し、ここから新居関所前を通過する。通常の東海道ルートであれば潮見坂を通過するが、今回は新所原駅を経由するルートが指定されていた。このルートはキャノボでもショートカットルートとして使われることもあり、「鷲津~新所原ルート(新居町~二川)」のページで紹介している。

しかしこのルート、随分と信号に引っかかる。以前走った時はここまで信号が多くなかった気がするのだが……タイミングの問題だろうか。夕暮れ時なのもあってか、渋滞に信号で結構なロスが生じた。キャノボならば素直に東海道を走った方が早いかもしれない。

名鉄豊川線を渡り、姫街道に入る。信号待ちをしていると、後ろから声を掛けられた。「肉の王」ことオフロスキさんだった。解説しておくと、「いきなりステーキ」で食べた肉の量ランキングで全国トップを数年間維持している「肉食獣」である。600㎞までのブルベならば、走行前に1350gのステーキを食べ、走行中は水分以外は摂らない。まさに「人外」と言える御方。走りもめっぽう早く、こうして1時間早くスタートしたはずの私に追いついてくるほど。この時点で走行距離は250㎞で、経過時間は10時間半。御前崎で休んで多少平均速度は落ちたとはいえ、Ave23.8km/hとキャノボ達成並のペースは維持していたはずなのだが……。いやはや、恐れ入った。

ここからしばらくオフロスキさんと二人パックで走行。豊橋の街中に入ると一気に信号と交通量が増える。

今回のビワイチ1000では、豊橋~名古屋区間においては、国道1号線を執拗に避けるルート取りがされていた。豊橋市内も1号線は通らず、259号線と県道496号線を通る。ただ、この県道496号線を走行するのは少し楽しみであった。この道は旧東海道なのである。いつも1号線で豊橋を通過してしまうが、そこで通る吉田大橋は旧東海道ではない。その一つ隣の「豊橋(とよばし、と読む)」こそが旧東海道。豊橋市の名前の由来にもなった、由緒ある橋である。

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ちょうど、豊橋を渡るところで夕暮れ。せっかくなので写真を撮った。

豊川市内は夕方の市街地ということもあり、渋滞。オフロスキさんが「私は次のコンビニでトイレに入りますんで」というものの、中々都合よく左手にコンビニはない。そうこうしているうちに、国府駅前から旧東海道の御油宿入り。このルートは昨年の東海道600で通った道だ。御油の松並木の中途半端な石畳が懐かしい。御油の街中でコンビニを発見したオフロスキさんとはここでお別れ。一人での走行が始まる。

御油宿の隣の赤坂宿を越え、名電長沢駅前で国道1号線を横断する。この信号がやたら長い。と言うか、何度も国道1号線を横断することになるので、そのたびに押ボタン信号である。交通量の少ない道を通したいのはわかるけど、ちょっとこれはストレス。後から知ったが、ここは地下道を使って横断するほうが全然早いらしい。

名電長沢駅前の横から、東名高速の側道入り。この道を通るのは初めてだが、とにかく暗くて狭い。そして地元の抜け道として使われているのか、交通量は少なくない。狭い道で対向車が多いので結構リスキーな道に感じた。自分は国道1号線のほうが好きだ。

本宿駅から先は少し道幅が広がり、走りやすい道になった。オフロスキさんが再び追いついてきてトレイン復活。快調に距離を稼いでいく。

岡崎駅周辺で再びの市街地走行。そこから有名な豊田市に入る。いつも国道1号線しか走らないので、豊田市を通過するのは初めてだ。なんとなくだが、車優先の空気を感じる。豊田市を出れば、PCはもうすぐだ。

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20:08、PC2: セブンイレブン東郷三ツ池4丁目店(316km地点)に到着。今回の時間制限があるチェックポイントはここまで。次以降のチェックポイントには時間制限が無くなる。

道中そんなに飛ばしたつもりはないが、ここまでのグロス平均は22.8km/hとかなり良い値が出ている。やはり追い風の効果は凄い。

あと17kmでホテルなので、補給を軽めにとってそそくさとPCを出る。予定よりも2時間くらい早い進行だが、睡眠時間は多ければ多いほど良いのだ。オフロスキさんとほぼ同時に出発したが、彼はPC直後の健康ランドに吸い込まれていった。「平針東海健康センター」なる施設らしい。いつか使うかもしれないので覚えておこう。

さすがに名古屋市内に入ると信号も交通量も多く、中々進まない。この辺りは土地勘もないので正直どの辺りを走っているかも分からない。ひたすらホテルまでの残り距離が減るのを楽しみに走った。

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21:05、金山プラザホテル(332km地点)に到着。予定では23:50着だったので1時間45分早い。ホテル別館の会議室を専用の駐輪場として用意してくれたとのことで、そちらに運び入れる。ホテルの受付の方がロード乗りらしく、色々と話が早かった。

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エレベーターに貼られていた注意書き。やたら絵の上手いスタッフが居るようだ。

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往復宅急便で送った荷物は部屋に運び入れ済み。さっさと水風呂を入れ、その間に充電作業を進める。更に、ウェア類を洗濯して部屋干し。この部屋は明日まで連泊で抑えているので、明日戻ってくる頃までには乾いているだろう。乾燥機を使う時間が省けた。

妻の動向を確認すると、大体50kmほど手前にいるようだ。同じく金山のホテルを抑えているはずだが、この分だと到着は1時頃だろう。予定よりは1時間早い到着なので上々である。

22:30、就寝。起床予定は5:00。なんと6時間半も寝られる。ブルベ中とは思えない。追い風に感謝しながら、あっという間に眠りに落ちた。

(つづく)

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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