【実験】自転車用ベルの音量測定

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クラス2の騒音計を使って、自転車用ベルの音量を測定してみました。

本記事で公表する数値は、あくまで個人の趣味・研究(日常生活における単位の使用)としての検証結果であり、計量法上の「取引または証明」に用いるものではありません。
また、厳密な無響室での測定ではないため、メーカー公称値や公的な適合証明を代替するものではなく、あくまで参考値としてお考え下さい。

目次

実験の動機

まずはこの実験を行おうと思った動機から。

自転車ベル(警音器)について

自転車用ベル(警音器)というものは、公道走行時は常に装着することが義務付けられているものです。

以下に、道路交通法の条文を示します。

車両等の運転者は、法令の規定により警音器を鳴らさなければならないこととされている場合を除き、警音器を鳴らしてはならない。ただし、危険を防止するためやむを得ないときは、この限りでない。

「法令の規定により警音器を鳴らさなければならない」とされているのは、「警笛鳴らせ」という標識がある場所を指します。この標識はかなりレアで、私も数回しか出会ったことはありません。

なので、この標識に出会った時には、ここぞとばかりにベルを鳴らしまくることにしています。公道上では滅多に出来ないことですからね。

音、小さくない?

でも、この標識に出会うたびに思うことがあります。

「この自転車のベルの音量で、果たして対向車が来ていたとして気づくんだろうか?」と。

相手がバイクや自転車ならなんとか聞こえるでしょうが、自動車ならば壁を一枚隔てることになります。エンジンの音もあるでしょう。それを突き抜けてドライバーに音を届けることが出来るのか。

「警笛鳴らせ」の標識がある場所は、大抵物凄く静かな場所ではありますが、それにしても手元にある自転車のベルの音量は小さいのではないか、と長年思っていました。

JIS規格の音量規定を調べてみる

日本の道路交通法や条例では、自転車用ベルの音量についての規定はありません。一方、JIS規格「JIS D9451 自転車-ベル」には音量についてdB単位で規定されています

「JIS D9451 自転車-ベル」は2024年に改定されており、まさに音量の部分に手が入っていました。差分をまとめると以下の通りです。

スクロールできます
年次規格音量規定
(2m地点)
備考
2007年JIS D 9451:200775 dB(A)以上下限のみ。上限規定なし。
(参考: jbpi.or.jp)
2024年JIS D 9451:202475 dB(A)以上
95 dB(A)未満
従来の下限を維持、上限95 dB(A)未満を追加。
(参考: jbpi.or.jp)

2024年の改訂では、それまで定められていなかった上限値が定められました。下限値については変更されず、「2m地点で75dB以上」という基準が維持されています。

上限値・下限値は、自転車用ベルの国際規格「ISO14878」のクラス1カテゴリと同じ値に合わせられました。

ちなみに、PBPの国・フランスでもベルは装着義務があります。なぜかPBPのルールでは触れられていませんが、義務です。そしてその条件は「50m先から聞こえる音量であること」と結構厳しい内容になっています。

手元のベルの音量を調べてみよう

この基準以上の音量であるからと言って、「警笛鳴らせ」の場所で対向車に聞こえるのかは分かりません。ただ、他に基準らしい基準もないので、まずはこのJIS規格の値と比べてどうなのかを確認してみることにしました。

これまで、音量の測定にはスマホの騒音計アプリを使っていましたが、さすがにそれは測定値が不正確すぎるだろうと。そんなわけで、専用の騒音計を買うことを思い立ちました。

一応「クラス2」の騒音計と説明書には書かれていますが、校正証明書は付属していません。計測値は「目安」程度に考えたほうが良さそうですが、スマホアプリよりは仕事をしてくれるはずです。

騒音計を用いて、写真の5種類のベル+Canyonのバーエンドベルについて音量の測定実験を行いました。

測定対象ベル一覧

測定を行う6つのベルについての紹介です。

CATEYE 「OH-2400」

CATEYEの定番ベル。通称「ピッコロベル」。

単体でもハンドルに取り付けられますが、同社のライト用マウント「フレックスタイト」のベルトに取り付けが可能であることが特徴です。

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MKS 「AERO BELL」

MKS(三ヶ島ペタル)のベル。

実際のエアロ効果は分かりませんが、他社のものよりも流線型の形状をしています。同形状のチタンベルも存在。取り付け場所はハンドルです。

knog 「Oi Large(旧型)」

knogのベル。2017年に購入した旧型です。現在は「クラシック」と呼ばれています。

Oiにはノーマルサイズとラージサイズがありますが、こちらはラージサイズ。取り付け場所はハンドルです。

knog 「Oi Prima Large」

knogのベル。2025年発売で、Oiの改良バージョンになります。

「WAVETEKハンマー」という新しい打ち子を採用することで、旧型に比べて5dBほどの音量アップに成功しているとのこと。取り付け場所はハンドルです。

CloseTheGap 「HideMyBell」

ClosetheGapの、サイコンマウント内蔵ベル。

あまり言及されることはありませんが、ヨーロッパでもベルの装着は義務です。そのため、ベルをスマートに取り付け可能な製品として生まれたのが「HideMyBell」と呼ばれるこちらのマウント。VisionのMetronハンドル専用モデルが手元にあったので実験対象としました。

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CANYON 「RING Bar End Bell」

Canyonのバーエンド用ベル。バーエンドキャップの代わりに取り付けます。

主に本国の通販でしか販売されませんが、Canyonが出展するイベントで販売されることもあります。

実験

それでは実験をして行きます。

本実験では、JIS D 9451(自転車-ベル)の規定をベースにしつつ、個人による検証としての再現性と精度のバランスを考慮した独自プロトコルを採用しました。

測定環境

測定機材と測定条件は以下の通りです。

測定機材

前述の通り、クラス2の普通騒音計を使用します。

設定は以下の通りです。

設定項目内容
周波数補正A特性
(人間の聴覚特性に合わせた補正)
動特性FAST
(サンプリング周期: 125ms)
測定値MAX
(最大値を計測)
暗騒音30-40 dB
(6畳の自室で測定)

測定条件

イメージ図・実際には部屋の中心で測定

JISの試験の内容に近づけるため、以下の環境で実施しています。

環境内容
測定スペース室内・六畳間
部屋の中心部分に自転車をおいて測定
測定距離1m
(ベルから騒音計マイク先端までの距離)
測定高三脚の先に騒音計を付け、ベルと同じ高さに合わせる
取付方法基本はハンドルに取り付けて鳴らす。
バーエンドベルは、バーエンドに取り付けて鳴らす。
マウント付属ベルは、ハンドルの高さから手持ちで鳴らす。

測定手順

最初は「単発で10回鳴らして平均を取る」方法で実施しようと考えていました。しかし、思いのほか打ち損じが起こる確率が高く、計測値がかなり上下にブレることが判明しました。

このため、「5連打して、その時のMAX音量を結果として採用する」方法を選択しました。JIS規格では「4秒間で10連打」の方法を取っていますが、その半分の試行回数として簡易化しています。

この「5連打」を1セットとし、1つのベルに付き5セットの測定を実施。5セットの平均値を、ベルの音量として採用します。

実験結果

実験結果は以下のようになりました。数値の単位はいずれもdB(デシベル)です。

スクロールできます
製品1回目2回目3回目4回目5回目平均値
CATEYE「OH-2400」80.581.981.980.283.181.5
MKS「AERO BELL」90.592.092.991.992.091.9
knog「Oi Large」77.876.281.178.479.678.6
knog「Oi Prima Large」82.380.083.483.382.882.4
CloseTheGap「HydeMyBell」84.081.380.880.584.382.2
CANYON「RING Bar End Bell」87.583.387.785.585.785.9

JIS規格の基準では、「2m地点での音量が、75dB以上 95dB未満」と定められています。

今回は測定距離が半分の1m。dBの値は、距離が半分になると6dB増加します。つまり、今回の実験であれば「81dB以上 101dB未満」であることが求められます。

今回の結果で言うと、knog「Oi Large(旧型)」以外は、この範囲に収まっていました。車の中の人に聞こえる音量であるかはさておき、JISの考える最低音量はクリアしているものが多そうに見えます。

なお、同じ条件でスマホアプリによる測定を実施してみましたが、騒音計に比べて8-10dB程度低い値が表示されました。
時間変化の具合を見るだけならスマホアプリでも足りるかもしれませんが、絶対値を見るのには向かないことが良く分かりました。

音量以外の評価

今回の主目的は「音量」の評価でしたが、実験をしていく中でベルの評価軸が他にも色々とあることに気づきました。

別の評価軸

別の評価軸を2点紹介します。

確実性

色々とベルを鳴らしてみると、「上手く鳴らすのが難しい」ベルと、「必ず上手く鳴らせる」ベルがありました。

「上手く鳴らすのが難しい」ベルの一例が、knogの旧型Oi。

打ち子が左右方向にも微妙に動いてしまうので、丁寧に鳴らさないとベルの中央を打ち抜けません。中心を外すと音量はあまり出ないことになり、今回の実験結果を見ても音量の分散が大きくなっています(76.2-81.1dB)。

一番上手く鳴らせたケースでは、基準の81dBを超えているので最低限の性能は出ていることになりますが、それを再現するのが難しかったです。

逆に「確実に上手く鳴らせる」のが、同じくknogのOi Primaです。

新採用の「WAVETEKハンマー」という打ち子は、左右にブレることがなく、確実にベルの中心を打ち抜いてくれます。また、ベルに当たる部分も金属化されており、音量がアップするようになっているわけです。音量の範囲も80.0 – 83.4dBと狭い範囲に集まっていました。再現性が高いということです。

初代Oiについては見た目こそ革新的でしたが、ベル本来の使い勝手の意味では課題が残ったのでしょう。制作側として、その課題に向き合った結果がOi Primaだったのだと思われます。

音の持続性

次に気になったのが、音の持続性。いわゆる「残響」というやつです。

以下の動画は、今回テストした6個のベルを鳴らした様子です。順番は、CATEYE→MKS→旧型Oi→Oi Prima→ClosetheGap→Canyonです。

聞いていただくと分かりますが、残響の残り方にかなりの差があることが分かります。

例えば、MKS「AERO BELL」。最大音量は今回テストした中でも最大だったものの、「チンッ!」と一瞬で音が消えてしまいます。

一方、knog「Oi Prima」は、最大音量こそ大きくはないものの「チーーーーーーーーン」と10秒以上に渡って鳴り続けます。

一瞬で消えてしまう音は、路上の他の音に紛れやすいはず。ある程度、残響が残る方が自転車用ベルとしては好ましいように思います。

総合評価

以上の評価軸を加味して、今回の実験による私の評価を一覧表にまとめました。

スクロールできます
製品名1m地点の音量
(5回平均dB)
確実性音の持続性所感
CATEYE 「OH-2400」81.5標準的だが、余韻はやや短め
MKS 「AERO BELL」91.9×瞬間最大風速型
knog 「Oi Large(旧型)」78.6×雰囲気は良いが、実用面では不利
knog 「Oi Prima Large」82.4バランスがよく、実用性が高い
CloseTheGap 「HideMyBell」82.2悪くないが、音の残り方はやや弱め
CANYON 「RING Bar End Bell」85.9実用性が高く優秀

今回の軸で評価すると、knog「Oi Prima Large」とCanyon「Ring Bar End Bell」が高評価となりました。

ただ、実際に私が一番使っているのはCATEYE「OH-2400」です。音量・持続性・確実性は今ひとつではあるのですが、「ライトといっしょに付けられる」という使い勝手があまりにも大きい。鳴らす機会はほぼ無いので、設置のしやすさの比重がどうしうも高まってしまうんですよね。特にサイコンやライトでハンドル周りが埋め尽くされているランドヌールに取っては、「場所を取らない」という価値はプライスレスです。

性能で言えばknog「Oi Prima Large」は最高の一角だと思われるのですが、ハンドル上の15mm幅を占有してしまうのがネック。この15mmはライトやマウントを付けるのに使いたいスペースなのです。

もう1つ、現在私が使用しているのが、Canyon「Ring Bar End Bell」。Oltre XR4にステム一体型のエアロハンドルを付けてしまったために、ベルのチョイスが難しく。バーエンドは空いていたので、そこにフィットするCaynonのベルを採用しました。

Canyonのバーエンドベルは重量もそこまで重くなく、性能的にも優秀です。ただし、入手性がとんでもなく低いので中々オススメしにくいのが難点ですね。欲しい人はサイクルモードの開場時間直後にCanyonブースに行くことをオススメします。

まとめ

ベル6種の音量を計測する実験を行いました。

厳格な実験ではありませんが、概ねどのベルもJIS規格の下限以上の音量は出ていそうであることが確かめられました。唯一平均値では下限を割った旧Oiについても、丁寧に中央を打ち抜ければ下限を超えます。

ただ、この音量で本来の用途(「警笛鳴らせ」の場所で鳴らす)の要件を満たせているのかは良く分かりませんでした。個人的には、「1mで81dBでは車には聞こえないだろう」と思ってます。現実的には、見通しの悪い山道を走る場合には、デイライトなど別の手段で存在を知らせたほうが良さそうです。

最後になりますが、ママチャリであろうとスポーツ自転車であろうと、ベルの装着は義務です。4月から急にそうなったわけではなく、昔からベルの装着は義務でした。必ず付けて走るようにしましょう。

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著者情報

年齢: 41歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。
# これまでに著者が乗ってきたスポーツ自転車の履歴はこちらの記事にまとめています。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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