Muc-off「BIG BORE Lite」ファーストインプレッション

この記事は約 9分で読めます。

Muc-offから新たに登場したチューブレスバルブ「BIG BORE Liteバルブ」を買ってみました。

目次

購入まで

まずは購入までの経緯を書いていきます。

武蔵小山「ハイロード」の閉店セールへ

6/30、武蔵小山のスポーツ自転車店「ハイロード」の閉店が発表されました

ハイロードは、私も10年前に初訪問。その後も何度か訪れたショップです。

8/31の閉店まで、店舗在庫の半額セールを行うとのこと。こちらのショップは非常に品揃えがユニークだったこともあり、ご挨拶がてらショップに伺ってみることにしました。

店主さんは私のブログも読んでくださっているようで話が弾みました。

その中で「ちょっと面白いアイテムがあるんですよ」と店主さんからご紹介いただいたのが、今回の記事で取り上げるmuc-off「BIG BORE Lite」です。

定価は8910円と、チューブレスバルブにしてはかなり高額。しかし、半額セールならばということで買って試してみることにしました。

製品ラインナップと購入モデル

muc-offのBIG BOREシリーズはバリエーションがかなり多いです。コックが存在する関係上、通常の仏式バルブよりもリムとの相性がシビアなので注意が必要です。

BIG BOREシリーズには3種類あり、「対応リム」「対応ポンプヘッド」がそれぞれ異なります。

モデル名対応リム対応ポンプヘッド流量(仏式比)
BIG BORE Lite仏式バルブ用リム仏式ポンプヘッド230%
BIG BORE Hybrid仏式バルブ用リム米式ポンプヘッド254%
BIG BORE Ludicrous米式バルブ用リム米式ポンプヘッド264%

上2つは仏式バルブ用のリムに対応しており、一番下だけは米式バルブ用のリムに対応しています。仏式よりも米式のほうがバルブステムが太いので、リムとバルブの太さを合わせる必要があります。

BIG BOREバルブの最大の目的は「バルブの空気流量の増大」です。これによってビードを上げやすくし、シーラントが詰まりにくくなります。

ここでいう流量は「空気の勢い」と捉えてください。
通常の仏式バルブはバルブコアによって通路がかなり狭くなっているため、空気が勢いよく流れません。
BIG BOREバルブはバルブコアが存在しないため、空気が勢いよく流れるわけです。
その結果として、ビードが上がりやすくなり、ポンピングに必要な力も小さくなります。

ただ、ポンピング回数は変化しません。空気が漏れていなければ、1回のポンピングで入る空気量は代わりませんからね。

バルブステムが太いほど空気の流量が増えますし、システム的には仏式バルブよりも米式バルブの方が流量が増えます。ただ、我が家には仏式バルブ対応のリムしかありませんし、ポンプヘッドもほとんどは仏式用です。

となると、この中では「BIG BORE Lite」を選ぶのが良さそうだと考えました。流量的にはBIG BOREシリーズの中では最小ですが、230%もあれば十分でしょう。

また、各シリーズにも数種類の長さのバリエーションが存在しています。

サイズ対応リムハイト
Small-20mm
Medium20-25mm
Large25-30mm
XL30-50mm
2XL50-58mm
3XL60-68mm

MTB側を意識した製品なのか、かなり低いリムハイトから対応しています。

私の手持ちのホイールは35-50mmのハイトのものしかないので、「XL」サイズを選びました。

Muc-off「BIG BORE Lite」

Muc-off「BIG BORE Lite(XL)」のファーストインプレッションです。

シーラントを入れての実運用までは行えておらず、リムにバルブを取り付けてタイヤに空気を入れる時点までテストしています。

パッケージ

パッケージ内容はこの通り。

バルブ本体、専用工具、根本のスペーサー2種類。そして何故かステッカーが4枚。

構造

BIG BOREバルブの特徴は、「ボールバルブを採用している」「バルブコアが無い」という点です。

仕組みを簡単な図にしてみました。

真ん中に筒状の穴が開いたボールが入っていて、コックを回すとそのボールが90°回転する構造です。水道の蛇口みたいな感じですね。

ダイアテックサイトより引用

左が通常の仏式バルブで、右側がBIG BOREバルブです。

通常の仏式バルブにはバルブコアというものがバルブステムの中心に存在しているため、空気が流れにくくなっています。その点、BIG BOREではボールバルブ中央を空気が直通するので、空気が流れやすいというわけですね。

仏式バルブと比べて230~264%の空気流量を実現しているとのことです。

こちらが「開放」の状態。穴が直通しています。

こちらが「閉鎖」の状態です。穴が塞がっています。

重量

実測重量は、セットで18.3gでした。

見た目がかなりゴツいので「さぞ重いだろうな」と思ったんですが、そこまでではありませんでした。チューブレスバルブのボリュームゾーンよりやや重いかな、という程度です。見た目ほど重くない

家にあったPanaracerのチューブレスバルブと、SHIMANOのチューブレスバルブ(WH-R8170の付属品)も計測。Panaracerはかなり軽く、SHIMANOはかなり重いです。

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取り付け

取付時の写真を取り忘れました。

こちらの記事の中段「装着方法」の動画を見て、その通りにやりました。

コック部分がリムを通らないので、この部分は一旦外してバルブステムだけをリムに通します。その後で、コック部分を取り付けます。

空気を入れる

さて、空気を入れていきます。

今回は試しに、Cog’sのフックレスリムにiRC「Formula Pro S-LIGHT TLR」を取り付けてビード上げを実施してみました。「ビードが上がるか?」を確かめるだけで、外で走るわけではないので、シーラントは入れていません。

手順

BIG BOREバルブで空気を入れる手順
  1. ポンプの口金をバルブに取り付ける
  2. バルブのコックを開く
  3. ポンピングを行い、規定の空気圧まで入れる
  4. バルブのコックを締める
  5. 口金をバルブから外す

手数自体は通常の仏式バルブと同じ。手数が減るクリックバルブとは異なる点ですね。

ポンピング

さて、仏式バルブ用のHIRAMEを使って空気を入れていきます。

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効果として謳われている通り、確かにポンピングが軽い。ポンプのハンドルを押し込む際に引っかかりがなく、小さな力でチューブに空気が送り込めています。これが流量230%の効果か。

クリックバルブも「150%の流量」を謳っていましたが、こちらはポンピング時の効果を感じることが出来ませんでした。80%の違いは大きいようですね。

なお、「ポンピングの回数が半分になる」と書いている記事も見かけましたが、それは誤りです。ポンピングに必要な力が減るだけで、ある気圧に達するまでに必要なポンピング回数は変わりません。

そして、フロアポンプでチューブレスタイヤのビードが上がりました。仏式のチューブレスバルブではビードが上がらなかった組み合わせなんですけどね。これも流量が230%になったことの効果でしょう。

ポンプヘッドとの相性

効果はしっかりあることが分かったBIG BOREですが、ポンプヘッドとの相性があります。空気が入らなかったり、充填途中で圧力に耐えきれずヘッドが外れたりします。

家にあった各種ポンプヘッドとの相性を確認した表を以下に示します。

ポンプヘッド相性備考
HIRAME「横型ポンプヘッド」きつく締めないと、空気圧に負けて外れる
Panaracer「ワンタッチポンプヘッド」×隙間から空気が漏れる
airbone「クイックポンプヘッド」×付かない
CYCPLUS「延長ホース」
Trisports「お助けチューブ」
COOSPO「X1付属 延長ホース」×隙間から空気が漏れる
SHWALBE「タイヤブースター」×付かない
Panaracer「デジタルタイヤゲージ」強く手で抑えてないと、空気圧に負けて外れる

ということで、「使えない」組み合わせもかなり多かったです。ネジ込み式のポンプヘッドとの相性は良い場合が多かったですが、COOSPOの電動ポンプに付いていた延長ホースは隙間から空気が漏れました。

私がメインで使っているHIRAMEのポンプヘッドにはロックの強さをアナログで変えられる機能がありますが、それが緩めだと空気圧に負けてポンプヘッドが外れてしまいました。そうなるとバルブコアが存在しないので、爆音とともに空気が一気に抜けます。ロックを強めにしたら外れなくなりましたが、ビクビクしながら使うことになりました。

通常の仏式バルブとは微妙に先端の形状が異なるため、上手くロック出来ないことが多いようです。なんで形を合わせなかったんでしょうね?

運用ミスの怖さ

BIG BOREバルブは、通常の仏式バルブと空気を入れる際の手順が異なります。怖いのが、「手順前後」です。

いつものクセで、ポンピングをして空気を入れた後にコックを閉めることなくポンプヘッドを外したら、当然のように空気が全て抜けます。シーラントが入ってなければ良いですが、入っていたら……部屋中がシーラントまみれになるでしょう

また、先程の私のように「あまり相性の良くないポンプヘッド」を使っていたら、空気充填中にポンプヘッドが外れて、これまたシーラントまみれになる可能性があります。

慣れてしまえば間違えないとは思います。ただ、ふとした時にやってしまわないか、ちょっと心配ではあります。

空気を抜く

バルブコアがないので、空気を抜く時もかなり早いです。

コックを90°捻ると完全に穴が直通しますが、角度を変えていくと、少しずつ空気圧を落とすことも出来ます。

空気を抜く様子を撮影してみました。最後の直通時、実際にはかなり大きな音がしています。

価格

冒頭にも書きましたが、定価は税込8910円です。

昨今、お高くなったとはいえ、チューブレスバルブは高くても4000円程度。その倍です。定価だとちょっと買う気は起きなかったと思います。

まとめ

とりあえず、バルブを取り付けて空気を入れる所まではやってみました。ただ、実際に走れる状態にする勇気が起きませんでした。

チューブレスレディタイヤで走るにはシーラントを入れる必要があります。私は何度か「意図せぬ空気全抜け」をやらかしたので、いつかシーラントを部屋中に撒き散らす未来しか見えませんでした。


「空気の流量を向上することで、ビードを上げやすくする」「ポンピングを軽くする」「シーラントを詰まりにくくする」という開発目標は十分に達成されていると思います。

ただ、この中で最大のメリットと言える「空気の流量を向上することで、ビードを上げやすくする」については、バルブコアを抜いた仏式バルブでも同じこと。

そして、一度ビードを上げた後はバルブコアを付けてしまえばシーラント大噴射も起きません。確かにバルブコアがあるとポンピングは重いし、シーラントが隙間に詰まります。しかし、シーラント大噴射のリスクと天秤にかけると「仏式バルブで良いや」という気がするのも事実。

勝手に弁が閉まる仏式バルブコアの仕組みって、いわば「安全装置」だったんだなと。今回思い知りました。


私が一番イマイチだと思ったのは、仏式ポンプヘッドとの相性。

持っていないので想像でしか無いのですが、ネジ込みが前提の米式ポンプヘッド用の「BIG BORE Hybrid」の方が相性問題は少ない気がします。手順前後によるシーラント大噴射は避けられませんが、ネジ締結なので意図せずポンプヘッドが外れるような事態はまず起きないはず。


面白い製品でしたが、このままお蔵入りになりそうです。ただ、こういう製品は実際に触ってみないと自分の運用に合うか分からないので、触ることが出来て良かったです。

そして、逆説的に「バルブコア(安全装置)が付いていて、流量がそれなりに増えて、手数も減るクリックバルブって優秀なのでは?」と思えてきました。シーラントの詰まりはどうにもなりませんが、平均点は一番高いバルブシステムな気はします。あ、でも空気圧を落とすのはやりにくいか……。

著者情報

年齢: 40歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。
# これまでに著者が乗ってきたスポーツ自転車の履歴はこちらの記事にまとめています。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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