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【レビュー】アースブルー「プロテクト J1」
評価:5
アースブルーの皮膚保護クリーム。スポーツで発生する皮膚のすりむけを防ぎます。
プロテクトS1の強化版で、耐水性を追加し、より長時間効果が持続するように改良されています。
購入動機
元々、私はアースブルー製品のプロテクトS1を愛用していました。
TJARのゴールで社長と知り合う
2014年、知人が参加していたTJAR(トランスジャパンアルプスレース)のゴールに行った所、アースブルーの社長さんがいらしていました。
「S1を愛用しています」と話すと、「使用体験記を書いてもらえませんか?」とのご依頼が。帰宅後、すぐに体験記を提出しました。体験記は未だにアースブルーのサイトに掲載されています。
ちなみに、その体験記の最後に私はこう書いていました。
そんな素晴らしいプロテクトS1ですが、一点だけ要望があります。保護効果の持続時間をもっと延ばしたバージョンを開発して頂けないでしょうか?
プロテクトS1の体験記より
公称の持続時間は3~4時間とのこと、通常のスポーツであればその時間内に完結するのですが、ロングライドの場合は先述のように1日中走り続けることもあります。デリケートな部分に塗る必要があるため、コンビニのトイレなどで塗り直しを行うのですが、これを1日数回行うのは結構大変なのです。寝起きに塗れば1日中効果が持続してくれると最高なのですが……。
「プロテクトS1(長時間バージョン)」の登場を期待しております。
この内容はTJARのゴール会場でも直接お伝えしたのですが、あらためて体験記にも書いて強調しました。
この体験記がサイトに掲載される際には先方のコメントが追加されていました。
さらにドキッとしたことは、保護効果をさらに持続する製品を開発してほしい、との要望を挙げられたことです。今後、スポーツ業界ではウルトラマラソン、トレイルラン、日本横断山岳マラソン(TJAR)、極地マラソン等のより過酷なスポーツレースが開催される頻度が高くなると予想されます。それだけに皮膚へのダメージも深刻になるはずですから、現行のS1よりもさらに長時間持続タイプの皮膚保護クリームの需要が高まって来ることでしょう。
プロテクトS1の体験記より
すでにアースブルーはそれに向かって、走り出しています!
アースブルー側としてはこうした持久スポーツ界からの要望を受けて、強化バージョンの開発に乗り出している……とのことでした。
PBP(2015年)で発売前のJ1をテスト
翌年の2015年4月。初のPBP(パリ・ブレスト・パリ)に参加するために準備していた所に、アースブルーから宅配便が突然届きました。
箱を開けてみると、当時はまだ発売前だった「プロテクトJ1」と、テストレポートの依頼状が。
「S1より更に長い時間効果が持続する新製品を開発している」という話は体験記のお返事の中で聞いてはいましたが、それがようやく完成したとのこと。
折角なので、「PBPの本番で使った結果をレポートさせて頂く」と連絡し、実際にPBP本番で使用。無事完走し、帰国後にレポートを提出しました。
PBPで使ってみて非常に良かったので、以後は自費で購入して使い続けています。2019年、2023年のPBPにも持参して使用しました。
製品概要
2023年までは80ml容器と35ml容器のバージョンで販売されていました。
2024年からリニューアルし、90ml容器/45ml容器/15ml容器のバージョンで販売されています。
主に持久系スポーツにおける「皮膚の擦れ」による小さな怪我を防止する目的の製品であり、以下の効果が謳われています。
- 擦りむけ防止
- 汚れ・臭い防止
- 手荒れ(肌荒れ)防止
適するとされているスポーツは以下の通り。
- マラソン
- トレイルラン
- 自転車
- 登山
公称の持続時間は7~8時間程度とされています。
使用感
主に、ロングライド時の股擦れの防止に使用しています。
質感・香り
特に香りはありません。シャモアクリームにはメントール配合のものが多いですが、私はアレが苦手なので無臭であることを気に入っています。
質感は、それなりに固めのゲル状です。
左がプロテクトJ1、右がプロテクトS1です。S1は乳液状ですが、J1はチューブ入りニンニクくらいの固さがあります。この固さが長持ちの理由だと聞いた気がします(公称持続時間は、「S1が3-4時間」「J1が7-8時間」とされている)。J1の方はS1に比べて耐水性が強化されています。
広範囲に塗り伸ばしやすいのはS1、少々伸ばすのが大変なものの長時間持続するのがJ1です。なお、S1もJ1もワセリンのようなベタつきや油っぽさはありません。
使用方法
ロングライドの走行開始前に、鼠径部(レーパンと擦れる)と坐骨(サドルに当たる)周辺に塗り込んでいます。製品カテゴリは「シャモアクリーム(レーパンのパッドに塗るクリーム)」にしていますが、本製品は皮膚側に塗り込みます。
冬場なら400kmの走行後、夏場なら200kmの走行後を目安にトイレ等で塗り直すことが多いです(汗の増える夏場の方が塗り直しのスパンは短くなる)。
製品の説明には「効果的なご使用方法」として以下の手順が書かれています。
- 部位の汚れを落とし、乾かします。
- 皮膚が摩擦・ふやけ・乾燥を受けそうな部位に適量を塗ると、3~5分後に保護膜を形成して、保護作用が表れます。
割と大事なのが1の話。持久スポーツの皮膚トラブルは大体以下のフローで起こります。
- 度重なる摩擦で皮膚に小さな傷が生じる。
- 傷に雑菌が入り込む。
- 炎症を起こす。
プロテクトJ1は皮膚に保護膜を形成して「小さな傷」が生じることを防ぐものです。ただ、全ての傷を防ぎきれるとは限りません。それに備えて、保護膜の下に入り込む雑菌をできうる限り消しておく必要があります。
私がロングライドの最中にプロテクトJ1を塗り直す前には、「除菌可能なウェットティッシュで患部の周辺を拭き取る」手順を入れています。風呂やシャワーを利用できる場合は、それでもOKです。
また、私は足の小指がシューズと擦れて痛みが出ることがあります。それに備えて、小指にもプロテクトJ1を塗り込んでいます。
効果
皮膚の痛みが如実に減ります。
前述の通り、皮膚上に薄い保護膜を形成して擦れを防ぐという仕組み。皮膚同士や、皮膚とレーパンが擦れて起こる傷を防いでくれるため、ロングライドで数百kmを走行後に起こる股や坐骨の痛みの発生を予防できるわけです。
尻の痛みはペダリングを阻害します。また、「尻が痛いので立ちこぎに頼る」時間が長く続くと膝や足裏に負荷が掛かり、故障に繋がります。「シッティングで長時間ペダリングを持続可能にする」ことは、最後まで故障なく完走するためには必要なこと。その根本である皮膚の擦れを防ぐために本製品は役立ちます。
姉妹製品であるプロテクトS1に比べて2倍の持続時間(7-8時間)を謳っています。汗をかく夏場でなければ、もう少し効果は持続する印象があります。冬場は400kmごと、夏場は200kmごとに塗り直します。
プロテクトS1に比べると持続距離が1.5~2倍になったため、塗り直し回数が半減しました。
携帯方法
35ml、80ml容器ともに持ち歩くには少し大きいため、私は20ml容器をダイソーで買ってきて小分けしています。このサイズならば、ツール缶やサドルバッグにも問題なく入ります。
20mlあれば、PBP1回(1200km)は問題なく持ちました。
現在は15ml版(5個セット)も出ているので、そちらを購入しても良いかもしれません。90ml版を買うよりは少し割高ですが。
成分の変化
今回のレビューを書くに当たって、初期版と現行版で成分の変化があったことに気づいたので書き留めておきます。
初期版 | 現行版 |
---|---|
水 | 水 |
セタノール | セタノール |
ステアリン酸 | ステアリン酸 |
– | ベヘニルアルコール |
グリセリン | グリセリン |
ミリスチン酸イソプロピル | ミリスチン酸イソプロピル |
ポリパーフルオロメチルイソプロピルエーテル | ポリパーフルオロメチルイソプロピルエーテル |
シルセスキオキサン | シルセスキオキサン |
ミリストイルプルラン | ミリストイルプルラン |
ジメチコン | ジメチコン |
グリチルレチン酸ステアリル | グリチルレチン酸ステアリル |
グリセレス-25 | グリセレス-25 |
酢酸トコフェロール | 酢酸トコフェロール |
ミリスチン酸 | ミリスチン酸 |
ミリスチン酸ポリグリセリル-10 | ミリスチン酸ポリグリセリル-10 |
トリデセス-4カルボン酸Na | トリデセス-4カルボン酸Na |
TEA | TEA |
トリクロサン | – |
– | フェノキシエタノール |
– | ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル |
トリクロサンが使われなくなり、ベヘニルアルコール・フェノキシエタノール・ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルが追加となっています。
使われなくなったトリクロサンについては2016年にアメリカで使用禁止になったことがキッカケで日本でも使用を自粛する流れとなったようです(参考: 厚生労働省)。
追加となった各成分について調べた結果が以下です。
ベヘニルアルコールは恐らく「より伸びやすく」なるように追加されたように見えます。初期版は伸びがイマイチでしたが、現行版は改善されているように思います。それでもS1の方が伸びますが。
あと2つの成分は「防腐」の目的で使われることが多いようですが、細かい効果を見ると以下のように記載されています。
防腐に関しては、フェノキシエタノールはグラム陰性桿菌、カビに対して優れた抗菌効果をもつ防腐剤であり、一般に防腐目的でパラベンをはじめとする他の防腐剤と併用して用いられるほか、パラベン不使用(パラベンフリー)をコンセプトにした製品に用いられています。
化粧品成分オンラインより
防腐に関しては、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルは真菌(カビ、酵母)に対して優れた抗菌活性をもつことから、防腐剤として様々な製品に使用されています。
本来は防腐剤なのだと思いますが、本製品では抗菌効果(雑菌の繁殖を防ぎ、炎症を防ぐ)作用を狙っているように見えます。本製品は医薬品ではないのでそういった効果は謳えないはずですが、「結果としてそうなっている」というテイなのでしょう。
なお、使われなくなったトリクロサンも目的は「防腐」でした。
別用途
自転車では主に股擦れの防止で使われることが多い本製品ですが、メンテナンス時にも役立ちます。
メンテナンス前に本製品を手に塗り込んでおくと、チェーンオイル等の油汚れが皮膚に染み込むのを防ぎ、汚れが落ちやすくなります。手荒れの防止にも。
元々、プロテクトS1は医療や製造の現場で一日に何度も手を洗う人たちの手荒れ対策として生まれた製品なので、ある意味でこちらが正しい使い方かもしれません。
まとめ
元々存在していたプロテクトS1も素晴らしい製品でしたが、プロテクトJ1は更に長時間競技に特化した特性を持っています。
発売からそろそろ10年。トレイルラン・ブルベ界隈からの要望をしっかり聞いて生まれた製品だけあって、今ではすっかりブルベでも一般化した印象があります。誕生に少しだけ関わった身としては非常に嬉しく思っています。
そして、何気に途中で製品の改良が加えられていたことにも今回気づくことが出来ました。「初期版の頃より炎症が起きにくくなったような……」と思ってはいましたが、この改良を見ると気のせいではなかったようです。
これからもブルベやファストランではプロテクトJ1のお世話になります。
評価
対象モデル: アースブルー「プロテクト J1」
年式: 2023年
定価: 1980円 (80ml版)
購入価格: 1760円 (80ml版/2023年8月購入)
価格への満足度
発売当初から比べると少し高くなったが、効果を考えると他を使えない。
総合評価
長時間スポーツに特化した性能を持つ皮膚保護クリーム。ブルベには必携。
著者情報
年齢: 39歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。