ホイールバッグが付属しない時代

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ロード用の完組ホイールについて、近年のホイールバッグ事情を調査してみました。

目次

この記事を書いた経緯

まずはこの記事を書こうと思った経緯から。

ダイソー製品のホイールバッグ流用がバズる

先日、きなこさんのこちらのツイートがバズっていました。

「ダイソーで売っている300円の袋がホイールバッグにぴったり」という内容です。

大半の方はナイスなアイデアとしてこのツイートに反応していましたが、その一方で「ホイールバッグならホイールに付いてくるからわざわざ買わなくても」という反応をしている方もそれなりにいらっしゃいました。そしてその反応をしている方は昔からロードバイクに乗っている人が多い様子。

ホイールバッグの付属事情

ホイールバッグは付いてくる場合と付いてこない場合があります。手組ホイールでは当然付いてきませんが、完組ホイールでも付く場合と付かない場合に分かれます。

完組ホイールを購入したケースにおいて、私の経験で言うと以下の通り。

購入年ブランドモデル名バッグ付属バッグ構成
2010MAVICKSYRIUM ELITEなし
2010SHIMANOWH-6700なし
2011CampagnoloEURUS Mega 2way Fitあり1本用×2
2012FFWDF6Rあり2本用×1
20163TDISCUSS TEAM 35あり1本用×2
2016FulcrumRacing ZERO Carbonあり1本用×2
2017CampagnoloSHAMAL ULTRA Clincherあり1本用×2
2019FulcrumRacing 3 C17なし
2020TOKENKONAX PROなし
2020CampagnoloRacing ZERO Carbon DBあり1本用×2
2021HUNTAerodynamicist 44なし
2022MACIVKSYRIUM SL DBなし
2022SHIMANOWH-R8170なし

13セット買って、ホイールバッグが付いてきたのは6セット。付いてきたのはミドルグレード以上のものばかりです。

ミドルグレード以上でも付属しないものもありましたが、その辺りはブランドによっても傾向が分かれそうです。

また、「時代的な背景もありそう」という感触もありました。ここ数年、かつてはホイールバッグを付けていたブランドも付けなくなったようなイメージがあります。あくまでイメージなので、ここはちょっと調査してみようと思い立ちました。

アンケートを取ってみる

残念ながらメーカーサイトを見ても付属品までしっかり書いてあるケースは多くありません。

そこで、今回はアンケートで情報を募ってみることにしました。

最近の傾向を知りたかったこともあり、「ここ3年」という縛りを付けさせてもらいました。

総投票数は1663件ですが、うち22.7%(377票)は回答閲覧用です。これを除いた結果を整理すると以下のようになります。

選択肢得票数 (比率)
付属した392票 (30.5%)
付属しなかった894票 (69.5%)
合計1286票

なんと、ここ3年でホイールを購入した人の7割が「ホイールバッグは付属しなかった」と回答していました

もう少し付属するケースがあるのでは……と予想していましたが、思った以上に今は「ホイールバッグが付いてこない時代」になっているようです。

次章では、アンケートにお寄せ頂いたコメントとともに、ブランドごとの傾向を見ていこうと思います。

ブランドごとの傾向

アンケートにお寄せ頂いたコメントから、各ブランドごとの最近の「ホイールバッグ事情」を分析してみます。

公式サイトで情報を公開しているブランドはそちらの情報も記載します。

SHIMANO

シマノの場合、伝統的に「デュラのみバッグ付属」「アルテ以下はバッグなし」であるようです。

確かに、私が10年以上前に購入したWH-6700(アルテグレード)にもバッグは付いていませんでしたし、2年前に購入したWH-R8170(アルテグレード)にも付いてきませんでした。

シマノ公式サイトには特にバッグの有無の記載はありませんが、Amazonの製品情報を見るとデュラグレードであるWH-R9270-C50には「ホイールバッグ付属」と明言されています。

Fulcrum

フルクラムは近年、ホイールバッグについて路線変更があったように見えます

リムブレーキ時代

リムブレーキ時代は、「Racing1には付属する」「Racing3には付属しない」という感じで、セカンドグレードとサードグレードの間に境界線がありました。

一方、カーボンリムのモデル(Racing Speedなど)に関しては、基本全てにホイールバッグが付属していたはず。

ディスクブレーキ時代

ディスクブレーキ時代になると、Racing1は消滅。アルミリムの最上位はRacing Zeroとなりました。頂いたコメントを見ると「Racing Zero DBには付属」「Racing 3 DBには付属しない」ようです。

ただし、Racing Zero DBにセラミックベアリングを入れたアップグレードモデルであるはずのCMPTZ DBにはフレームバッグが付属しないという証言もありました。

年式によって異なる可能性

フルクラムの本国サイトには、付属品に関する記載があります。カーボンリムの最上位である「SPEEDシリーズ」のページを見ると「Bags included」という記述がありますが、「Racing ZERO DB」のページにはその記述はありません。リムブレーキ用の「Racing ZERO」もまだ現役ですが、やはりバッグ付属の記述なし。

同じRacing ZEROでも、ある年式からホイールバッグの付属が廃止された可能性はあります。

なお、カーボンリムのエントリーグレードである「WINDシリーズ」もホイールバッグ付属の記載はありません。

Campagnolo

フルクラムと兄弟ブランドと言われるカンパも、ホイールバッグに関しては似た傾向があります。

リムブレーキ時代

リムブレーキ時代は、「EURUSには付属する」「ZONDAには付属しない」という感じで、Fulcrumと同様の場所(セカンドグレードとサードグレードの間)に境界がありました。

私はEURUSを2セット、SHAMALを1セット買いましたが、どちらにもこのグレーのホイールバッグが付属しました。

カーボンリムには、やはり基本的に全てホイールバッグが付属していた記憶があります。

ディスクブレーキ時代

ディスクブレーキにおいても、アルミリムではセカンドグレードだったEURUSが消滅。SHAMALの次はかつてのサードグレードであるZONDAとなりました。

しかし、その後SHAMALもカタログ落ちとなり、現在はZONDA DBを残すのみです。ZONDA DBにはホイールバッグは付属しません。

カーボンリムのディスクブレーキモデルに関しては、ホイールバッグが付属したという証言を頂きました。

こちらも年式で異なる可能性

フルクラム同様、カンパの本国公式サイトにも付属品の記載があります。

カーボンリムの最上位モデルである「BORA ULTRA WTO」や「HYPERON ULTRA」には「Campagnolo wheel bags」の記載がありますが、セカンドグレードである「BORA WTO」「SHAMAL CARBON DB」にはその記載がありません。

かつてはBORA WTOにもホイールバッグが付属していたという証言はあるものの、こちらも現在は付属しなくなった可能性があります。

MAVIC

MAVICは割と昔からフラグシップの「ULTIMATE」のみホイールバッグが付属し、セカンドグレード以降には付属しないようです。

私も何度かキシリウムを買っていますが、ホイールバッグは付いてきたことがありません。というかMAVICのホイールバッグを見たことがないような……。

結構な高級モデルであるはずのCOSMIC SLRに付属しないというのはちょっと意外でした。

Roval

SPECIALIZED傘下のブランドであるRovalも、近年ホイールバッグに関してポリシーが変わったようです。

ROVALではトップグレードである「CLX」ですが、現在はバッグが付属しないとのこと。公式サイトを見ても確かにそうのようです。

ZIPP

高級ホイールの代名詞的な存在であるZIPPですが、ホイールバッグは現在付属しないようです。

セカンドグレードであるFIRECREST、トップグレードのNSWにも付属なしとのこと。

FFWD

FFWDと言えば、かつてはやたら豪華なホイールバッグが付いてきました。

私がかつて購入したF6Rは高級なホイールではありませんでしたが、2本入るパッド入りの豪華なホイールバッグが付いてきました。ホイール自体は既に手元にないのですが、バッグは手放せず手元に残しています。

10年以上経過した今でも、FFWDはホイールバッグを重視しているようです。FFWD Japanの公式アカウントから、以下の回答を頂きました。

カーボンリムであれば、エントリーグレード以外は現在でもホイールバッグが付属するとのことでした。

その他のブランド

他にもいろいろなブランドとモデルについて情報をいただきましたのでダイジェストで紹介します。

モデルホイールバッグ
SPINERGY「FCC 3.2」付属しない
Smith「Cera Light」付属しない
ONEAER「(モデル名不明)」付属する
WINSPACE「LUN hyper r45」付属しない
(フロントバッグは付属した)
Vision「METRON 40 SL」付属する
Black Inc「FORTY FIVE」付属しない
CADEX「50 ultra」付属する
Princeton「Wake 6560」付属する
DT-Swiss「ARC 1100 DICUT DISC」付属する
DT-Swiss「PR 1400 Dicut」付属しない
ELVES「OROME」付属しない
ENVE「(モデル名不明)」付属しない
ELITEWHEELS「EDGE」付属しない
Light Bicycle「(モデル名不明)」付属しない
SCOPE「(モデル名不明)」付属しない
EDCO「(モデル名不明)」付属する
ICAN「(モデル名不明)」付属しない

やはり付属しないブランドが増えているようです。特に中国系のブランドは付かないのが基本のようですね。一方、台湾系(ONEAER・CADEX)は付いてくる確率が高い?

まとめ

昨今の完組ホイールのホイールバッグ付属状況の調査結果を紹介しました。

かつてはミドルグレードより上にホイールバッグを付けていたブランドも、現在はトップグレードのみ……というケースが増えているようでした。ただでさえホイール価格は上がっていますし、少しでも価格を抑えるために削られているのかもしれません。

それと、昨今はディスクブレーキになったことで「決戦用ホイール」という概念が消えてきたのも関係している可能性があります。リムブレーキと違ってブレーキ面が消耗しないので、普段から決戦用ホイールで走る人が増えました。そうなると、予備ホイールをたくさん保管する必要もないわけで。


こういう背景があると考えると、「300円のホイールバッグ代用品」がバズるのも納得できる気がします。

必要であれば2000円くらいでちゃんとしたホイールバッグは買えますし、今後はホイールバッグが付属しないブランドはより一層増えそうな気がします。

著者情報

年齢: 39歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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