オーダーフレーム注文の流れと、気を付けるべきこと

ばる

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ロードバイク Advent Calendar 10日目

お世話になったpayanecoさんが面白そうな企画をやっているので、初めて参加させて頂きます。

今回の記事のお題は「オーダーフレーム」。ここでは、フレームビルダーと呼ばれる職人さんに作ってもらう自分専用のハンドメイドフレームを指します。

私は、自転車歴8年目に初めてオーダーフレームを作って貰いました。それより前から興味はあったものの、「何か敷居が高そう」「ビルダーさん怖そう」「ものすごくお金が掛かりそう」等々の理由で注文するまでには至りませんでした。とある切っ掛けで注文をすることになりましたが、フレームが完成するまでには色々と勉強になったことも多く、「作って良かった」と感じています。

この記事では、かつての私のように「オーダーフレームに興味はあるけど、良く分からないことが多い」と思っている方を対象に、オーダーフレームを手にするまでの流れと、その中で注意すべきポイントを説明致します。

なお、私の経験を元にした記事であるため、一般的ではない記述が含まれる可能性があります。あしからず、ご了承下さい。

フレームビルダーを探す


オーダーフレームは、フレームビルダーと呼ばれる職人さんが製作します。会社組織としてやっている所もあれば、個人でやっている所もあります。

フレームビルダーを名乗るのに特別な資格は必要とされません(溶接の国家資格を持っていることは多いようです)。フレームを作成する技術を持つ人が名乗れば、その時点でフレームビルダーです。このため、網羅的なリストを作ることはできませんが、代表的なフレームビルダーを探す方法をご紹介します。

(1) ハンドメイドバイシクル展の出店社

国内のフレームビルダーを網羅したリストはありませんが、それに近いリストは存在します。それは、ハンドメイドバイシクル展の出店社一覧です。

ハンドメイドバイシクル展は、年に一度開催される国内外のフレームビルダーによる展示会です。日本を代表する職人と作品が集まる場で、2019年には52社が参加しました。開催地が東京なので関東のビルダーが多いのですが、国内に存在するフレームビルダーの大半が一同に会すると言って良いと思います。

(2) 競輪登録自転車一覧

他の網羅的なフレームビルダーのリストとしては、競輪登録自転車一覧表があります。競輪で使われる自転車は、NJS規格に適合する必要があります。なかなか厳しい規格なのですが、この一覧に掲載されているフレームビルダーはその規格を満たしたビルダーという事になります。

(3) 書籍から探す

オーダフレームの工房を紹介する書籍もいくつか刊行されています。特にエイ出版社(バイシクルクラブの会社)は数年ごとにムック本を販売しています。豊富な作例が掲載されており、フレームビルダー探しの一助となるでしょう。



(4) その他

上記のリストや雑誌に掲載されていないフレームビルダーも存在します。「オーダーフレーム 自転車」等のキーワードで検索すれば色々見つける事ができると思います。

また、ここまでは国内のフレームビルダーに限定して話をしてきましたが、もちろん国外にもフレームビルダーは存在します。「Handmade bicycle」等のキーワードで検索すれば世界中のフレームビルダーの作品を見ることができます。

フレームビルダーを選ぶ


国内のフレームビルダーの数は100社前後。その中から、どこのビルダーに製作を依頼するべきなのでしょうか?

(1) 私の場合

私はこれまで2本のオーダーフレームを作成しました。2本とも、神奈川県相模原市の細山製作所に依頼しています。

きっかけは、同じく自転車趣味の妻が探していた古いバーテープを細山製作所が在庫していたことでした。フレームビルダーの細山さんとはそれまで面識がありませんでしたが、私と細山さんには一つの共通点がありました。それは「東京~糸魚川ファストラン」です。

東京~糸魚川ファストランは、東京から新潟県糸魚川市までを「なるべく早く走る」イベントです。私は10年ほど前から毎年参加。私が参加し始めるのと入れ替わりで参加しなくなった細山さんですが、それまでは10年以上連続で出場し、一番最初に帰ってきたこともあるお方です。

RAVANELLOブランドの「タカムラ製作所」や、MAKINOブランドの「エム、マキノサイクルファクトリー」とも迷いましたが、最終的には自分と一番ライドスタイルの近い細山さんにお願いすることにしました。

(2) 選び方のポイント

私見ではありますが、やはり「自分の用途に適した自転車が得意」なフレームビルダーさんを選ぶのが良いと思います。

レース向けフレームが得意なビルダーさんもいれば、ツーリング向けフレームが得意なビルダーさんもいます。MTBが得意な方もいます。もちろん、どんな自転車も「楽に遠くへ行ける」ことを目指していると思うのですが、その中でも分野が違えば求められる細かい部分の性能は変わってくるものです。そして、フレームビルダーの方は、得意分野においては驚くほどの知見を持っておられます。そのフレームビルダーの過去の作例を調べ、「どんな分野が得意か」「自分の用途に合ったものを作ってくれそうか」を知って選ぶと良いでしょう。

前述のハンドメイドバイシクル展に気になるフレームビルダーが出展しているのであれば、是非行ってみるべきです。ブースには実際に作っている職人さんがいるので、直接話をしてフィーリングが合うか確かめることもできます。次回は、2020年1月25日・26日に、科学技術館にて開催されます。

もう一つ大事になってくるのは、「工房までの物理的距離」です。メールだけで完結するオーダーフレームというものも無くはありませんが、ほとんどの場合は実際に工房に足を運び、直接顔を合わせて仕様を決めるという流れがほとんどです。仕様を決める際には、それまで乗っていたロードバイクを見せて欲しいと言われることも多いので、工房までの距離は近いほうが良いと思います。参考までに、私の家から細山製作所までの距離は、約25km。電車で1時間程度の距離でした。フレームの仕様決めから完成までには、3回工房まで足を運んでいます。

また、フレームビルダーによっては代理店制度を取っていることもあります。これは、工房に直接足を運ばなくても、提携している自転車屋(=代理店)で採寸や仕様決めを行うことができる制度です。私の知っている範囲では、関西の工房の代理店を神奈川県のとあるショップがやっている例もありました。工房が遠隔地であっても、代理店が近くにあれば容易にオーダーが出来るというわけです。

一番有名なのは、PanasonicのPOSでしょう。全国100店舗以上が代理店になっており、近所のショップから注文が可能です。

(3) 海外ブランドの場合

海外ブランドの場合は、基本的に全てインターネットを通じてのコミュニケーションとなります。直接ビルダーとコンタクトを取ることも可能ですが、日本のショップが代理店となっているブランドもいくつかあります。例えば以下のブランドがそうです。

 ・Independent Fabrication(アメリカ)
  → 代理店: 盆栽自転車店
 ・DUELL(フランス)
  → 代理店: C SPEED
 ・CHESINI(イタリア)
  → 代理店: C SPEED
 ・BIXXIS(イタリア)
  → 代理店: BIXXIS JAPAN
 ・FESTKA(チェコ)
  → 代理店: SPRINT



代理店があるということは、それなりの品質が担保されているということでもあります。前述のように、フレームビルダーを名乗るのに資格は要りません。WEBサイトがどんなに格好良くても、腕前は…というケースもあります。

フレームではありませんが、私がサドルバッグを海外のハンドメイドブランドに直接注文した際は、とても使い物にならない酷いものが届いた経験があります。代理店が付いていれば、そのあたりの心配はないでしょう。

NAHBS等の海外のオーダーフレームの展示会での受賞歴のあるブランドを調べてみるのも良いと思います。客観的評価がなされていることが重要です。

もちろん、博打を承知で無名ブランドに突撃するのもまた一つの楽しみ方でもあります。

フレーム作成の流れ


どこで作るかを決めたら、次は作成フェーズに入ります。ワクワクする時間の始まりです。ここでは、国内のフレームビルダーの工房に行き、対面で仕様を決めるケースを紹介します。

(1) 来店予約をする

工房に足を運ぶ際には、電話やメールで予約してから訪問するようにしましょう。アポ無しで訪問しても、作業中で対応できないということも有り得ます。

(2) 工房へ行く

私が工房に行った際には、以下のものを持参しました。

 ① 普段乗っているロードバイク
 ② ロードバイクに乗れる服装・シューズ
 ③ 要件を書いた紙
 ④ 内金

④以外は必須ではありませんが、③は合ったほうが、ビルダーさんとの意思疎通がスムーズになると思います。内金の相場は後述します。

(3) 仕様を決める

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担当者(ビルダー御本人であることが多い)と話しながら仕様を決めていきます。

一般的には、以下の項目を決めることになると思います。

 ・フレーム寸法(ジオメトリ)
 ・フレーム材料(パイプ)
 ・カラーリング
 ・特殊工作



① フレーム寸法
その気になれば1mm単位で寸法を指定出来るのがオーダーフレームですが、依頼者側が細かい数字まで指定するのは避けたほうが良いと思います。ビルダーさんは長年の経験から自分なりの定石を導き出しているものです。細かく数字を指定してしまうと、その定石から外れたものを作ることになる可能性があります。

伝えるべきは数字ではなく「こんな用途で使いたい」「こんな乗り心地にして欲しい」という要件です。ビルダーさんは、経験を元に用途に適した設計を行ってくれるでしょう。結果的に、その方が良いものが出来上がるはずです。

② フレーム材料
これについても、材料や厚みを依頼者側が指定するよりも、用途からビルダーさんに提案してもらうのが良いと思います。軽さ重視なのか、丈夫さ重視なのか。反応重視なのか、乗り心地重視なのか。その辺りを伝えることで、最適な材料を提案してもらえるはずです。

③ カラーリング
これについては、依頼者側が好きに指定して良い部分だと思います。唯一無二の一台を作りましょう。

ただ、凝れば凝るほどお金は掛かります。単色塗装の場合は基本料金に含まれる事が多いですが、色数を増やしたり、メッキで装飾をする、塗り分けをする等々はアップチャージが掛かるものと考えたほうが良いです。あまり凝りすぎると、フレーム自体の値段よりも塗装の方が高い……なんてことになることも。

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ちなみに、こちらのフレームは塗装だけで5万円ほどアップチャージが掛かっています。2色の塗り分け、かつ特別な色を指定したため、結構なアップチャージが掛かりましたが、仕上がりには満足しています。

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打ち合わせ時に使った資料はこんな感じです。パワポで作りましたが、ここまで細かくなくても良いと思います。

④ 特殊工作
オーダーフレームの醍醐味の一つは、既製品のフレームには無い特殊工作が出来ることです。もちろん塗装と同様、凝るとアップチャージが掛かることはお忘れなく。

代表的なものは「ダボ穴」です。ネジ穴を追加したり、フレームにネジ穴を空けたりします。こうすることで、キャリアや泥除けなどを特殊なマウントを使わずにフレームに取付可能になるわけです。

他の代表的な工作としては、ケーブルの内装工作があります。昨今のカーボンフレームはケーブルをフレームの中に通すものも増えましたが、以前はケーブル外装が普通でした。オーダーフレームでも、こうした工作を依頼することは可能です。

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私は、ダウンチューブにボトルケージ用のダボ穴を2箇所空けてもらっています。それまではこういったパーツでボトルケージを増設していましたが、この工作を行ったことでフレームに直接ボトルケージを取り付けられるようになりました。


(4) 契約

仕様が決定したら契約を行います。

大抵は塗装の料金が塗装屋さん次第になるので、この段階では総額は確定しないことが多いです。このため、内金として数万円を収めるのが一般的だと思います。相場としては、5万円前後が多いようですね。


(5) 待機

契約したら、あとはひたすら完成を待ちます。

納期の相場は工房次第。短いと3ヶ月程度、長いと数年待つこともあります。あまり催促はしないのが基本ですが、催促しないと後回しにされる場合もあったりするのが難しいところです……。契約時に納期の目安を聞いておき、その時期になったら連絡をしてみるのが良いと思います。マメなビルダーさんだと、進捗をメールしてくれることもあるようです。

納期には、フレーム作成の時間だけではなく、塗装の時間も含まれます。自転車フレームの塗装を行える塗装屋は今や少なく、順番待ちになることもしばしば。気長に待ちましょう。

(6) 完成!

完成の連絡を受けたら、内金を除いた残りの料金を支払い、フレームを受け取ります。

パーツの組付けまでフレームビルダーさんに依頼するかは、ケースバイケースです。私はフレームだけを受取り、組付けは馴染みの店にお願いしました。


予算はどのくらい?


オーダーフレーム作成の相場について述べます。

(1) フレーム単体の相場

スチールフレームの場合、15~50万円程度に落ち着くことが多いと思います。チタンフレームやステンレスフレームだと、100万円を超えることもあるでしょう。

とは言え、塗装や特殊工作で金額は如何様にも変わります。

(2) 私の場合

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2本目に作ったこちらのフレームの料金は192000円でした。細かい内訳は聞いていませんが、話を聞く限りでは以下のようになるでしょうか。

 ・フレーム基本料金: 120000円
 ・パイプ: +20000円
 ・塗装: +50000円
 ・特殊工作: +2000円



細山製作所はフレーム基本料金がかなり安価なのでこの価格に収まっていますが、他の工房に依頼すると20万円は超えてくるはずです。


まとめ


オーダーフレーム注文の流れと注意点について簡単に書かせていただきました。

オーダーフレームは出来上がるフレームも素晴らしいのですが、出来上がるまでのプロセス、特にビルダーさんとの対話から得られる知識は大きな価値があると私は考えています。それまで意識しなかったジオメトリの数字一つ一つに意味があり、そのブランドの哲学が少しずつ見えるようになりました。

また、使い古された言葉ですが、「自分だけの一台」が手に入るのはやっぱり良いものです。カラーリングも、設計も自分に合った一台は、自転車生活の良き相棒となってくれるでしょう。

ただ、オーダーフレームは沼です。基本的には満足度の高いものが出来るのですが、それゆえに微妙な「もう少しここをこうすれば良かったな」という点が気になってくるのです。そして気付けば2本目のオーダーへ……と言うのは良くある流れ。私も2本目を作ることになりましたが、その2本目で満足の行くものが出来ました。

深きオーダーフレームの世界。まずは一本作ってみてはいかがでしょうか。

記事の著者情報


名前: ばる (@barubaru24

主な自転車の用途はブルベとロングファストラン。
自転車歴は10年。
オーダーフレームの作成数はこれまで2本。
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