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ロングライドにおける首の痛み予防法
ロングライドにおいて起こる「首の痛み」。それを起こさないために私がやっている方法をまとめてみました。
はじめに
まずはこの記事を書こうと思った理由と、この記事の内容説明から。
首の痛みで悩む人は案外多い
ブルベなどで長時間の前傾姿勢を続けていると、首に痛みが出てくることがあります。
首に痛みが出ると頭がしっかり上げられなくなり、視線が下を向きがちに。本来、気づけるはずの障害物に気づくのが遅れ、危険な事態になることも考えられます。そうなったらリタイヤするのも手ではありますが、どうしても落とせない場合もあるでしょう。
ロングライドを嗜むサイクリストの人達に聞きたい。 長距離だと首と肩が痛くなる現象があるのですが、みんなどんな対策をしてますか?意識してること、普段からできそうなことなど、なんでも教えて… なお、痛くなったことねぇ!な化け物は好きな補給食を教えてください。
— さかもと (@skmt_fact) October 1, 2026
先日、Twitterで話題になっていたこちらのツイート。それに対する反応で、首の痛みに関する悩みを持つ方が割と多くいることが分かったので、私が気をつけていることを纏めてみることにしました。
なぜ首の痛みが起こるのか
予防法について語る前に、「なぜロングライドで首が痛くなるのか」について考えてみます。
大人の人間の頭部は、おおむね4~6kgほどの重量があると言われています。だいたい、ボウリングの球と同じくらいの重量です。結構重いですよね。

直立している時は、重い頭は胴体の上に乗った状態になっています。しかし、スポーツ自転車においては、上半身を前傾させた状態で前方を見なければなりません。そのため、首を起こして頭を支える必要があります。
自転車を漕いでいる際には、脚は絶えず動いています。一方、首は前方を見るために、ほぼ同じ位置で重い頭を保持し続けます。動かしてはいないものの、頭を支えるために首の筋肉には常に負荷がかかり続けているわけです。数十分や数時間では問題にならなくても、ブルベなどではこの状態が10時間、20時間、時にはさらに長い時間続きます。首への負荷がそれほど大きく無かったとしても、それが長時間続くと徐々に疲労が蓄積していきます。
それらの負荷が溜まって、ある境界を超えた時に痛みが出る――実際にはもう少しグラデーションがありますが、この境界を超えないようにすることが大事なのではないか、と私は考えています。
首の痛みを予防するには?
では、どうすればその「境界」を越えないようにすることが出来るのか。痛みが出る前から先手を打つ必要があります。
私が意識しているのは2点。「首への負荷を増やさない」ことと、「首への負荷を溜めない」ことです。前者はポジションや装備の工夫、後者は走行中や休憩中に首を動かすことや睡眠で回復することを指します。
以降は、この2つの予防法について詳しく書いていきます。
予防法① 首への負荷を増やさない
予防法の前半は「首への負荷を増やさない」。
走行中、前傾姿勢でありつつ目線を上げなければならない状況で、首の負荷を減らすように対策を取ります。
無理のないポジションにする
前傾がキツければキツいほど、首への負荷は大きくなります。ロングライド用自転車のポジションは、レースのときほど前傾を深くせず、自然に前を見られる程度の落差になるようにした方が良いと思います。

かといって、ママチャリのように上体が起きすぎていると、今度はサドル側に荷重が掛かりすぎてお尻の痛みを誘発します。各々の体の柔軟性と筋力に合った「適度な前傾」が取れるポイントを探してください。
軽いヘルメットを選ぶ
スポーツ自転車に乗るのであれば、ヘルメットは不可欠です。特にブルベではヘルメットの着用が義務とされています。
市販のスポーツ用ヘルメットの場合、一番軽いもので190g前後。重いものだと370g前後でしょうか。サイズによっても違いがありますが、大体この範囲に収まると思います。

昨今は「MIPS」や「WaveCel」と言った、転倒時の衝撃を軽減する仕組みを内蔵したヘルメットが出てきています。これらは確かに安全性を高めてくれるのですが、いかんせん重い。私みたいに頭が大きい人間だとLサイズを選ぶことになるわけですが、余裕で300gを超えてきます。これが10時間以上も首に乗り続けるのは辛い。
個人的には、許容できるのは実測で260gまで。それ以上の重量のヘルメットも持っていますが、ブルベやロングライドには投入しません。ロングライドに投入するのであれば、安全性が確保されている中で軽量なものを選んだほうが首への負担は減るはずです。

私が現在使っているのは、KABUTOのFLEX-AIR。前作のFLAIRは安全マージンを削っている印象が強かったですが、こちらはそういったこともなく。今のところ、頭の形が合えばロングライドにはベストな選択肢ではないかと思っています。
首より上に余計なものを付けない
ヘルメットは必須ですが、それ以外のものはなるべく付けないほうが首への負荷は減ります。せっかく200gの軽量ヘルメットを選んでも、頭頂部に200gのライトを付けていては軽量化の意味が薄れます。さらに高い位置に重量物が付くため、頭を動かした際に「持っていかれる」感覚も強くなるでしょう。
ポイントは、「なるべく付けない」「付ける場合は、影響の小さい場所に付けるか、付ける時間を短くする」ことです。
付ける可能性のあるもの
ヘルメットを除いて、首より上に付ける可能性があるのは、例えば以下のようなものです。
- ヘッドランプ
ヘルメットにバンドで巻くタイプのライト。 - フロントライト
ヘルメットにマウントを後付けし、自転車用のライトやタクティカルライトなどを取り付けるケース。 - テールライト
ヘルメットの後頭部に、自転車用のテールライトなどを取り付けるケース - アクションカメラ
フロントライトと同様に、ヘルメット頭頂部にカメラを取り付けるケース。 - 首掛けのケース・サコッシュ
中身がある程度の重さになる首掛けケースやサコッシュも首に負担が掛かります。
この中で割と見逃しがちであるのが、最後の「首掛けのケース・サコッシュ」です。

ピンポイントな話になりますが、4年に1度開催されるブルベの最高峰「PBP」では大きめのブルベカードケースが配られます。PBPのブルベカードは冊子になっており、普通のブルベカードよりも大きいので専用のケースが必要なわけです。付属するストラップも長く、首掛けで使用することが想定されています。
私はこの中にパスポートや現金(ユーロ)も入れて持ち歩いていましたが、そうするとこのケースだけで重量が200g前後まで重くなります。これをそのまま胸側に下げて走っていると、それはそれで結構な負荷となります。とはいえ、ブルベカードやパスポートは常時携帯する必要があるので、これは持ち歩かなければならない。
そうなった時に思いついたのが、「たすき掛けにして、ケース部分を背中側に持っていってバックポケットに入れる」ことです。これで首への負担はほぼゼロになりました。
付ける場合は必要な時だけ付ける
そうはいっても、首より上にモノを付けたい時はあります。

例えばヘッドランプ。夜の峠道を下る際、ハンドルに付けたライトはハンドルが向いた方向しか照らしてくれません。コーナーの出口方向を照らしたいと思っても照らせない。そういう時、ヘルメットにヘッドランプが付いていれば、顔を向けた方向を照らすことが出来ます。
私も夜の峠道を走る時はヘッドランプを使いますが、昼間はサドルバッグに入れたまま。夜になって、該当の峠道の前になったらサドルバッグからヘッドランプを取り出して取り付けます。そして、峠道が終わったら外す。
このように、「首から上に付ける重量物は、必要なときだけ付ける」ことが大事です。使わない時に付けておいても、ただ首の負荷を増すだけですからね。
付けるアイテムの前後バランスを考える
ヘルメットにモノを取り付ける場合、「必要な時だけ付ける」ことも大事ですが、「どこに付けるか」も大事です。
例えば、ヘルメットに同じ100gの重量物を付けるにしても、前頭部に付ければ視線が下がる方向に力が掛かりますが、後頭部に付けたら視線が上がる方向に力が掛かります。後者の場合、首より上についている重量は増えますが、視線を上げる際に必要な力は付ける前と同等か、もしくは少し減るかもしれません。

私がヘルメットに取り付けるヘッドランプは、後頭部に電池ボックスがあるものを選ぶようにしています。このヘッドランプ全体の重量は174gですが、前頭部のライト部分が約40g、ストラップ部分が約30g、電池ボックス部分が約100gという重量分布になっています。後頭部が重いので視線が上がる方向に力が働き、首への負荷を強くしないようになっています。
逆に、全体重量が100gであっても、前頭部だけに重量が集中するヘッドランプは視線が下がる方向に力が働くので、首への負担は大きくなるはずです。自転車ロングライドには向きません。


ライトメーカーによっては、ヘルメットに取り付け可能なマウントを出している場合があります。こうしたマウントを使うと、頭頂部にライトを取り付け可能です。ここに付けると前頭部よりは目線を下げる力は働かないのですが、かなり高い位置に重量物が付くため、「持っていかれる」感覚が出てきます。
私が使うなら、軽いマウントだけヘルメットに付けておいて、必要な場面だけライトをマウントに取り付ける。必要なくなったら外す……という運用にすると思います。
前方視界を邪魔しない
首への負荷という意味では、前方視界を遮らないようにすることも重要です。
スポーツ自転車では上体が前傾しているため、前方を見る時は「やや上目遣い」になります。この時に視界を遮らないように気をつける必要があります。
以下に、視界を遮る2つの代表例を書いていきます。
サイクルキャップのツバ

ヘルメットの下に被るサイクルキャップ。頭の汗を吸って垂れてくるのを防いでくれる優れもの。雨が降った時はツバがレンズに雨粒が付着するのを防いでくれますし、日差しが眩しい時にはツバの部分が日除けになります。
ただ、このツバ部分が長すぎると、視界を遮ります。その分だけ首を余計に反らして頭を持ち上げる必要が出てくるのです。私も雨が降ってきたときのためにサドルバッグにサイクルキャップを入れていますが、常用はしていません。

私は普段、この手のヘルメットライナーというアイテムを使っています。平たく言えば、「ツバのないサイクルキャップ」です。汗はしっかり吸ってくれるし、視界を妨げません。
こういったバンダナタイプの製品もあります。
メガネ
目の悪い方は、メガネにも気をつける必要があります。
メガネというのは、直立で前を見るように作られており、前傾姿勢で前を見るようには作られていません。私もメガネユーザーだから分かるのですが、メガネでロードバイクに乗ると目の正面にメガネのフレームが来ます。視界の上半分はレンズがありません。そういう場合に視界を確保するにはどうするかというと……首を更に反らす必要があるわけですね。当然、首に負担が掛かります。

私は、スポーツ用アイウェア専門店で作ってもらった度付きアイウェアを愛用しています。専門店ではしっかりと「アイウェアのフィッティング」をしてくれるので、「前傾姿勢になった時に目の前にレンズがある」状態に調整してくれます。これによって、自然な前傾姿勢のまま前方が見られるわけです。
また、「コンタクトレンズ+度無しアイウェア」というのも一つの手です。目は乾きますが、度付きアイウェアよりも安く出来るはずです。
予防法② 首への負荷を溜めない
予防法の後半は「首への負荷を溜めない」です。
ライド中はどうしても姿勢が固まりがちになり、首に疲労が溜まっていきます。同じ部位に負荷が掛かり続けないよう、意識的に緊張を解いていく必要があります。
こまめに首を動かす
首への疲労を溜めないために、私は意識的に首周りを動かすようにしています。
前述の通り、スポーツ自転車では前方を見るために、首の筋肉がほぼ同じ姿勢で緊張し続けます。そこで、信号待ちや休憩のタイミングで首を回したり、肩の上げ下げをして、姿勢をあえて崩して首周りの筋肉の緊張をほぐすわけです。

重要なのは、「痛くなってからやる」のではなく、「何ともないうちからやる」ことです。
ロングライドでは、違和感や痛みが出た時点で疲労がかなり蓄積している可能性があります。そこから対策を取り始めても遅いので、何ともないうちからこまめに負荷を抜いておく。その積み重ねが、ライド中の破綻を避けるためには重要なのです。首の痛みだけに限った話ではないですけどね。
休憩時はヘルメットを脱ぐ
コンビニなどでの休憩時にヘルメットを付けたままの人もいると思いますが、首の負荷の観点から言うと脱いだほうが良いでしょう。
店舗施設では防犯上の理由からヘルメットを脱ぐように書かれていることも多いので、脱ぐことは習慣化したほうが良いと思います。
ちゃんとした場所で睡眠を取る
ブルベでは、制限時間内に睡眠を取ることがあります。睡眠中は当然ながら自転車に乗っていないので、走行中にずっと緊張していた首周りの筋肉も休ませることが出来ます。
ただし、どこでどう寝ても効果が同じというわけではありません。
机に突っ伏して寝てみたり、公園のベンチなどで寝てしまうと、起きた時に首を寝違えていた――なんてことも有り得ます。せっかく走行中の負荷から解放されたのに、睡眠姿勢で新たな負荷を加えてしまっては本末転倒です。

時間や状況が許すのであれば、横になって首を自然な位置に保てる場所で睡眠を取りましょう。ホテルが取れれば最高です。
時間や状況が許さない場合、「首に無理な姿勢で寝ない」ことは心がけておいたほうが良いと思います。
シャーマーズネックについて
1000kmを超えるような超長距離ライドでは、通常の首の痛みとは少し違う「シャーマーズネック(Shermer’s Neck)」と呼ばれる症状が出ることが知られています。
シャーマーズネックの由来
名称の由来は、アメリカのウルトラサイクリスト・Michael Shermer(マイケル・シャーマー)。

1983年のRAAM(アメリカ大陸横断レース: 約5000km)で、レース中に自力で頭を支えられなくなった症状から、その名を取って「Shermer’s Neck(シャーマーの首)」と呼ばれるようになりました。たまに「シャーマンズネック」と書かれているのを見かけますが、誤字です。
シャーマーズネックの症状
多くの人が語るシャーマーズネックの症状は、「自力で頭を持ち上げて前方を向くことが難しくなる」というものです。スウェーデンの医学文献では「800km前後を超えるノンストップの自転車競技で発症することが多い」とされています。実際、私の周りでもPBP(1200km)で発症している例をいくつも知っています。
症状の出方にはかなり個人差があるようです。

強い首の痛みを伴う例もあれば、ほとんど痛みがないまま首を支えられなくなる例もあります。また、突然発症する例もあれば、徐々に首が上がらなくなっていく例も報告されています。
原因や詳しい発生機序は、現在も明らかになっていません。エアロバーを長時間握り続けたり、ヘルメットに付けたライトやカメラ、首の過去の怪我などがリスク因子として挙げられますが、同じような距離を走っても発症する人としない人がいます。
予防策は?
私自身はシャーマーズネックになった経験はありません。
周囲では、600km以下のブルベではほとんどそういった話は聞かないのに対し、1000kmブルベからはシャーマーズネックの話題を聞くことが増えます。経験的にも800kmあたりに分水嶺がありそうです。ブルベだと、大体3日目の中盤あたりですね。
ここまで紹介してきた予防策が、シャーマーズネックを防止できるかは分かりません。ただ、「首への負荷をなるべく増やさない」「疲労を溜めない」という考え方は、通常の首の痛みだけではなく、こうした極端な首のトラブルを避ける上でも完全に無駄にはならないはずです。
まとめ
ロングライドでの首の痛みを予防するために私がやっている方法の紹介でした。
復習の意味でもう一度書いておくと、「首への負荷を増やさない」ことと「首への負荷を溜めない」こと。この2つを意識することで、首のトラブルの発生はかなり先送り出来るはずです。
これまで私は首の痛みに関して深刻なトラブルに遭遇したことはありません。たまたま私の首が強いだけの可能性もありますが、今回の記事で挙げたような対策も無駄にはなっていないと思っています。
首の痛みに悩む方の参考になれば幸いです。
著者情報
年齢: 42歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。
# これまでに著者が乗ってきたスポーツ自転車の履歴はこちらの記事にまとめています。




