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PBP2023: 本編⑮ PC12:Mortagne-au-Perche~PC13:Dreux(1174km)

いよいよ最後から2つ目のPCです。
この区間は、前回の悔いを上書きしていく区間でした。
PC12:Mortagne-au-Perche~PC13:Dreux(1174km)
日付変わって8/24 1:52、PC12:Mortagne-au-Perche(1101km地点)に到着。クローズは2:34なので、42分の貯金を持って到着できました。
PC11を出発した時点では1時間の借金でしたが、その後の足取りは快調。借金を返済して逆に貯金を作ることが出来ました。
PC12、到着
前回は、体も機材も満身創痍の状態でたどり着いたモルターニュ。
今回は、体も機材も至って順調です。足裏は少し痛いですが、残り120km程度であれば問題ありません。

4年の間に数十本のフロントライトを購入し、果ては自転車ライトの同人誌まで作ってしまいましたが、その活動もこれで報われた気がしました。
往路には無かったコントロールに行き、ブルべカードにスタンプを受領。これで残りスタンプはあと1つです。
知人の盗難被害発生
スタンプをもらってトイレに行こうとすると、15さんの姿が。
「はまいぬ(※人名)見ませんでした?
なんかここのシャワーで荷物を盗まれたらしく。探してるんですけど連絡が付かなくて。」
その話を聞いてTwitterを開いてみると、こんな報告が上がっていました。
あかん、シャワー浴びている間にPBPリュック盗まれた、、、
幸い、パスポート、コントロールカード、お金、スマホは別の棚に置いていたから助かったけど…
・Garmin edge840
・etrex30
・バッテリー
・PBPジャージ
・ボトル2本
・etapのバッテリーチャージャー
・USBケーブル類 等
を一瞬で失った…— はまいぬ (@hamainu0) August 23, 2023
どうやらモルターニュのPCでシャワーを浴びている最中に、脱衣所に置いていた大会公式ナップサックを持って行かれてしまったとのこと。中身は重要アイテムがたくさん。
シャワーの脱衣所、しかも深夜の時間帯となると、そこに入ってくるのは参加者のはず。この終盤に来て他の参加者の足を引っ張る参加者が残念ながら存在していたということになります。
15さんは引き続きはまいぬさんを探すとのことで、私はトイレへ。
トイレから出ると、今度は青い顔をしたはまいぬさんと遭遇。ここに来て盗難トラブルは精神的にもキツい。
「サイコンも盗まれたって書いてあったけど、Edge840を貸そうか?
自分はメインのeTrexがあればあと120kmは走れるし。」
「いや、大丈夫です! 念のため持ってきていたEdge530があるので。
買ったばかりのEdge840が持って行かれたのは痛いですが……」
聞けば、電池切れやトラブルに備えてサドルバッグにEdge530を忍ばせていたそうです。転ばぬ先の杖。
他に足りないものが無いか聞いてみましたが、なんとか行けそうとのことでした。何だかんだトラブルには強い男なので、最後まで走り切ってくれるでしょう。
再びの仮眠
さて、現在時刻は2:00。次のPCまでの距離は77kmで、クローズ時刻は9:20。
この後は斜度が緩むこともあり、1時間に15kmは進めるはず。となると、必要な時間は5時間ちょっと。マージンを1時間見ても、3:20くらいまではモルターニュに滞在しても問題が無いことになります。
今回の基本方針は、「余裕が出来たら寝る」でした。
その方針に則り、モルターニュの仮眠所で寝ていくことに。過去2回のPBPでモルターニュの仮眠所を使ったことが無かったので、どういう場所か見ておきたいという理由もありました。
モルターニュのPCは「Carré du Perche」という施設で、普段は地域のコミュニティセンターとして使われている場所。そこに併設された体育館が仮眠所のようです。
受付でお支払い。3ユーロと、仮眠所の相場よりずいぶんお安い。こちらも起床時間は毎時30分区切りの指定だったので、3:00に起こしてもらうように指定しました。
仮眠所内は真っ暗。暖房が効いていますが、地面は板張りではなくコンクリートな質感。そこに、厚さ1cmほどしかないウレタンマットが30cm間隔くらいで敷かれています。これ、腕を広げたら隣の人とぶつかりそう。安さの理由はこれかぁ……。
係の人に指定されたのは、妻と隣同士のマットでした。薄いウレタンマットなので地面の硬さを感じましたが、まぁ寝られなくはない。3:00に振動アラームをセットして就寝しました。
起床&リスタート
3:00にスマートウォッチが震えて起床。1時間弱は寝られました。これで残り120kmは快調に走れるはず。
妻を起こすと、ちょうど係の人が起こしにやってきました。ここの仮眠所のモーニングコール時刻は正確のようです。
時刻的にさすがに外は寒いかと思ったのですが、一言で言えば「生ぬるい」空気。気温は体感で20℃を超えている。フランスの深夜の気温としてはあり得ない温かさでした。
さすがにそろそろ降り出すだろうと思われた雨も降っておらず、何とか最後まで雨雲から逃げられそうな気配が出てきました。モルターニュの直前、北の空に雷みたいなのが見えていたんですけどね。
再びトイレに行き、外の給水所で水を汲んで3:20にリスタートしました。
熱帯夜の空気
モルターニュのPCを出て走り出したわけですが、とにかく湿度が高い。
スタートしてから昨夜までの3回の夜は気温こそ15℃くらいはあるものの、湿度は低くて割と快適な夜間走行でした。
しかし、今夜は高湿度で高気温。仮眠している間に日本に戻されたかと思うほどでした。フランス北部でこんな熱帯夜になることがあるのか……。
Longny les Villagesという町の大きなラウンドアバウトで進む方向が分からずに2周ほどしてしまう小さなトラブルはあったものの、割と順調に進行。

前回は確かこの辺りで時間内完走を諦めました。アキレス腱が限界を迎えたので、妻には先に行ってもらったわけですが、今回は違います。また一つ前回のトラウマを払拭できた気がしました。
Sanonches(スノンシュ)という町の大規模私設エイドに立ち寄り。ここは毎回、町を挙げて私設エイドを出してくれる場所でもあります。
前回はここに用意された椅子で30分くらい仮眠をしました。タイムアウトを受け入れたら、驚くほどスヤスヤと眠れたことを覚えています。
しかし、今回は眠気はありません。時間も十分に余裕があります。
前回は諦めの気持ちで飲んだ、この私設エイドのコーヒー。今回は次の区間に立ち向かうためのコーヒーです。
妻とはぐれる
スノンシュから先は、中盤以降あまり見られなかった大集団が見られるようになります。せっかくなので、後ろに付かせてもらうことに。
集団に参加している人のフレームナンバーを見ると、私たちよりも1時間前後早くスタートしたG~Iグループが中心。
恐らくですが、ギリギリ隊によるグルペットが結成されているということなのでしょう。
この時点で我々は残り80kmを7時間。しかし、仮に1時間早いスタートの人たちだと、残り6時間で80kmを走る必要があります。途中にPCが一つ挟まることを考えると結構ギリギリ。そんな事情から終盤はグルペットが自然発生的に結成されるものと思われます。
スノンシュから5kmほど進んだとある町で、バックミラーに映る妻の姿が消えていることに気づきました。ハンドサインを出して離脱し、しばし妻を待つことに。この辺りはPBPコースの中で唯一スマホが圏外になっており、妻との連絡も不可能。困りました。
路肩に止まっていると後ろから集団がコンスタントにやってきますが、恐らくこの中に妻はいないはず。普段から妻は「集団走行が苦手」と言っていたので、この中にはいないと判断。単独で来る参加者だけを見ていました。
しかし、10分経っても妻は来ませんでした。さすがに見逃したかな?と思い、再出発。
しばらく集団を追い越しながら走っていた所、前に見える集団の中に妻の姿を発見。しっかり集団走行していました。「集団走行できたんかーい」と心の中でツッコミ。どうやら戦いの中で成長していたようです。
開けた風景の中を、登りくる朝日に向かって走る。そりゃこれだけ開けた場所ならスマホも圏外になりますよね。
夜明けを迎え、ライトを消灯。最後の夜が終わり、ライトの出番が終わりました。
2019年のライト全滅のトラウマから「また壊れやしないか」と不安な気持ちがずっとあったのですが、もうライトの状態を気にする必要はありません。また一つ完走が近づいた気がしました。
