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クリンチャーユーザー目線の新世代バルブ比較評価
クリンチャータイヤにも使用可能な「新世代バルブ」を5種類購入し、クリンチャーユーザー目線で比較評価してみました。比較対象としては、既存の仏式バルブコアもテストしています。
まえがき
ここ最近、やたらと「新しいバルブ」を目にすることが増えました。
急増した「新世代バルブ」
スポーツ自転車、とりわけロードバイクユーザーが普段もっとも触るのは「仏式バルブ」だと思います。仏式バルブが生まれたのは約130年前。それから現在に至るまで、ロードバイクにおいては未だに仏式バルブがスタンダードの地位を保ち続けています。
しかし、ここ数年、その一強状態に異変が生じ始めています。

私がそのことに気づいたのはクリックバルブの登場あたりからです。最初に見かけたのは2025年3月の台北ショー。その後、知人がやたら勧めてくるので使ってみたら便利で、私もすっかり愛用者になってしまいました。
2020年以降の流れ
2020年以降、こうした「仏式ではない」バルブは多数登場しています。海外では「Alt-Valve」と呼ばれているようですが、本記事では「新世代バルブ」と呼称します。
以下は、私が調べた新世代バルブのリストです。
| 発表時期 | ブランド名 | 製品名 | 方式 |
|---|---|---|---|
| 2021年 | 76 Projects | Hi Flow ‘No Clog’ | 全体交換 |
| 2021年 | Reserve | Fillmore | 全体交換 |
| 2022年 | CONTEC | FastAir | 全体交換 |
| 2022年 | E-thirteen | Quick Fill Plasma | 全体交換 |
| 2023年 | Funn | FastAir | 全体交換 |
| 2023年 | Newmen | Streem Aero | 全体交換 |
| 2024年 | Bontrager | High Flow Adapter | コア交換 |
| 2024年 | Schwalbe / Clik | Clik Valve | コア交換 |
| 2024年 | Muc-Off | Big Bore | コア交換 |
| 2024年 | AIGO-TEC | Capless Speed-Valve | コア交換 |
| 2025年 | Tru-Tension | FILLFAST | コア交換 |
| 2025年 | TOPEAK | Turboflow | コア交換 |
| 2025年 | Stan’s NoTubes | Exo-Core | コア交換 |
| 2025年 | Formosa | OMEGA FLOW | 全体交換 |
| 2026年 | BBB | CoreCap | コア交換 |
| 2026年 | Silca | Ultimate Tubeless Valve | 全体交換 |
なんと16種類もあります。既に終売となっているものもあったりと、中々の栄枯盛衰の激しさ。
2015年: 知られざる「祖先」
私が調べた限りでは、この手のバルブで一番古いものは、Milkitというブランドのバルブです。

2015年頃から販売されていたチューブレスバルブで、シーラントの補充をしやすくすることを目指した製品です。バルブの根本にゴム弁を備え、バルブコアを抜いてもシーラントの逆流を防げるというものでした。
日本でもトライスポーツが輸入して売っていたようですが、あまり話題にはならなかった様子。私も今回の記事を書く際に調べて初めて知りました。
2021年: ハイフローバルブの勃興
Milkitの登場から6年後の2021年、あるバルブが話題を呼びます。

この記事のサンタクルズブースの項目で紹介されている、Reserve「Fillmoreバルブ」がそれです。
バルブコアを排すことでシーラントの詰まりを解消しつつ、空気の流量をアップ。ビードを上げやすくすることが謳われています。
「シーラントが詰まりにくい」「流量が多い」というセールスポイントは、現在出ている新世代バルブのほとんどが標榜するものです。現在に至るまでの「新世代バルブ」の系譜において、最初の流行アイテムとなったのは恐らくFillmoreバルブだと思われます。

実は、登場時期だけで見れば76 Projectsというブランドのチューブレスバルブの方が数カ月Fillmoreよりも先に出ていたのですが、あまり話題にならなかったようです。CYCPLUS「AS2」よりも数ヶ月早く100g切りの電動ポンプを出していたのに全く話題にならなかったnanoFumpaに似た悲哀を感じます。
2024年: クリックバルブの登場
Fillmoreの後も各社がポツポツと新しいチューブレスバルブを発表していましたが、大きな話題になることはありませんでした。
2024年6月、この新世代バルブの中でも最も話題を呼んだ製品が発表されます。

そう、クリックバルブです。当初はSCHWALBEが開発した製品だと思われていましたが、開発元はClik社。
それまでに発表された新世代バルブたちはいずれも各社が独自に開発していたものでしたが、クリックバルブは「複数社での陣営」を結成していた点が特殊でした。開発元のClik社、広報役となったSCHWALBE、そしてSKS・LEZYNE・Wolftoothが陣営への参加を発表。計5社で陣営を結成し、普及を進めています。
また、クリックバルブは若干それまでの新世代バルブたちとは立ち位置が異なっていました。それまでの新世代バルブは基本的に「チューブレスタイヤの運用を楽にすること」が主目的でしたが、クリックバルブは「クリンチャータイヤを含め、タイヤに空気を入れるプロセスを最適化する」ことを目的としています。本記事では便宜上「新世代バルブ」の一角に数えますが、実は異質な存在です。

クリックバルブと同じく、2024年のユーロバイクでお披露目となったのがmuc-off「Big Bore」です。バルブコアを持たず、ボールバルブを採用するというユニークさで話題を呼びました。
2024-26年: 大量発生
クリックバルブの登場以降、堰を切ったように各社が独自の新世代バルブを発表し始めます。その数、なんと7本。
それまでは割と新興メーカーや中小ブランドが多かったのですが、ついに大手ブランドも参入し始めます。
ポンプ界では世界でも最大手の一角であるTOPEAKは「Turbo Flow」を発表。流量最大300%を謳っています。
もう一つの大手、BBBも「CoreCap」を発表。多くの新世代バルブは「仏式互換」を謳っていますが、CoreCapは珍しい「米式互換」です。
せっかくなので試してみよう
クリックバルブは実際に試してみて「良いもの」だと思いました。では、他の新世代バルブはどうなのか?
私は基本的にクリンチャータイヤユーザーです。ホイールのレビューのためにチューブレスタイヤをテストすることもありますが、ほとんど使用していません。
そして、クリックバルブ以外の新世代バルブは、基本的にチューブレスタイヤ向けに作られています(BBB「CoreCap」はクリンチャーも対象にしている様子)。クリンチャータイヤユーザーにはあまり旨味がない可能性が高い。
それでも、こういう過渡期に出てくる製品は面白いものです。単価も高くないので、クリンチャータイヤに使えるものに限っていくつか購入して試してみることにしました。
比較評価対象バルブ

今回、比較評価対象としたバルブは以下の5個+仏式バルブです。
- Clik「クリックバルブ」
- muc-off「Big Bore Lite」
- Tru-Tension「FILLFAST」
- TOPEAK「Turbo Flow」
- BBB「CoreCap」
それぞれについて軽く紹介します。
Clik「クリックバルブ」

2024年発表、新世代バルブが急増するキッカケとなったClik「クリックバルブ」。仏式バルブステムの内側ネジに取り付けるタイプ。
新世代バルブで唯一、専用口金も同時に開発されています。専用口金にすることで使い勝手が大幅に向上しますが、ネジ込み式を除く既存の仏式ポンプヘッドとも互換性があります。
流量は、仏式バルブコア比で150%と新世代バルブの中では控えめな値です。チューブレスタイヤに使ってもビード上げでメリットがあるとされていますが、クリンチャータイヤやチューブラータイヤでも運用上のメリットが得られます。
muc-off「Big Bore Lite」

2024年発表、クリックバルブと同じくユーロバイクで発表されたmuc-off「Big Bore」バルブ。その中でも、仏式バルブステムに取付可能なのが「Big Bore Lite」です。仏式バルブステムの外側ネジに取り付けるタイプ。

ボールバルブを採用しているのが特徴で、バルブコアが存在しません。コックを捻ることでボールが回転し、閉鎖/開放を切り替えます。
仏式ポンプヘッド互換とされています。後述しますが、かなりポンプヘッドを選びます。
流量は、仏式バルブコア比で230%とされています。もう少し多そうな気もしますが。ボールバルブを採用することで、シーラントを詰まらせない&空気の流量を増やしてビードを上げやすくすることを重視して作られた「チューブレス特化」バルブです。
Tru-Tension「FILLFAST」

2025年発表、「タイヤモンキー」で知られるTru-Tensionの新世代バルブが「FILLFAST」です。仏式バルブステムの外側ネジに取り付けるタイプ。
仏式ポンプヘッド互換とされています。こちらもBig Boreほどではないですがポンプを選びます。
流量は、仏式バルブ比で375%とされています。仏式バルブコアを抜いた状態でもせいぜい300%だと言われていますが、75%をどこから持ってきたのか不思議です。こちらもシーラント詰まりを防止し、空気の流量を増やしてビード上げを楽にする「チューブレス」特化仕様です。
TOPEAK「Turbo Flow」

2025年発表、自転車パーツメーカーとしては大手の一角であるTOPEAKが作った新世代バルブが「Turbo Flow」です。仏式バルブステムの外側ネジに取り付けるタイプ。
仏式ポンプヘッド互換とされていますが、こちらもそれなりにポンプヘッドを選びます。仏式ポンプヘッドをマイナーチェンジしたような専用ポンプヘッド「RapidHead」を使うことで流量300%を実現できるとされています。ただ、それ以外のポンプヘッドを使った場合に流量がどの程度になるかは公開されていません。
こちらもシーラント詰まりを防止し、空気の流量を増やしてビード上げを楽にする「チューブレス」特化仕様です。
BBB「CoreCap」

2026年発表、現在この手のバルブでもっとも新しいものがBBB「CoreCap」です。仏式バルブステムの外側ネジに取り付けるタイプ。
仏式バルブステムに取り付けますが、米式ポンプヘッド互換とされています。構造も、空気圧調整のボタンが付いていることを除いて米式と同じ。米式バルブステムは仏式バルブステムよりも太いわけですが、CoreCapは「仏式バルブステムに後付け出来る米式バルブ亜種」という位置付けになるでしょうか。
専用ポンプヘッドはなく、既存の米式ポンプヘッドを使います。ただ、これもやっぱりポンプヘッドを選びます。公称流量は、仏式バルブ比で300%。
基本的には流量を増やしてシーラントの詰まりを防ぐチューブレス用として作られているようですが、「全てを支配する1つのバルブ」を名乗りクリンチャーユーザーの取り込みも狙っているようです。
仏式バルブコア

比較用として、一般的な仏式バルブコアも評価します。
基本的には仏式用ポンプヘッドなら何でも使えるはずですが、バルブコアにも個体差があり、ポンプヘッドにも少々の設計の違いがあるので、相性は100%とは言えません。
仏式バルブは流量が少なく、ビード上げに苦労することも割とあります。また、コアもシーラント等で固着しがちです。だからこそ、チューブレス用に色々な新世代バルブが開発されてきたわけですが。
比較① 物理データ
まずは、各バルブを実測した物理データから比較していきます。流量値については実測するすべがないので、公称値での比較となります。
素材と重量
| バルブ | 取付 | 実測重量 | 素材(推定) |
|---|---|---|---|
| 仏式バルブコア | 内側ネジ | 1.3g | 真鍮+メッキ |
| クリックバルブ | 内側ネジ | 2.3g | 真鍮+メッキ |
| Big Bore Lite | 外側ネジ | 5.2g | アルミ |
| FILLFAST | 外側ネジ | 2.7g | アルミ |
| Turbo Flow | 外側ネジ | 1.4g | アルミ |
| Core Cap | 外側ネジ | 2.0g | アルミ |
まずは素材と重量から。上記の表は、各バルブコアの取付方式・実測重量・推定される素材を書いたものです。
旧来の仏式バルブコアは、真鍮(しんちゅう)で作られています。アルミで作らないのは、恐らくネジ山を舐めないようにする&耐食性が理由と思われます。
仏式バルブコアと同様の素材構成なのが、クリックバルブ。堅牢性を意識しての選択と思われますが、仏式バルブコアよりも大きく太いので重量は少し嵩んでいます。
クリックバルブ以外の新世代バルブは、基本的にボディはアルミ製のものが主流です。FILLFASTとTurbo flowの押しピンはアルミではなく真鍮かもしれません(詳しい記載が見つからない)。
アルミにすることで重量は軽くなるはずですが、外側ネジに付ける=ボディサイズが大きいため、仏式バルブコアより軽いものはありません。中でも、Big Boreはかなりボディサイズが大きいということもあって重量が嵩みます。これだけ重いと、ホイールバランスにも多少の影響は出そうですね。
突き出し長・直径
| バルブ | 突出長 (仏式比) | 先端径 | 最大径 |
|---|---|---|---|
| 仏式バルブコア | 0.0mm | 5.13±0.09mm (JIS規格) | 5.9mm |
| クリックバルブ | +8.7mm | 5.41mm | 5.9mm |
| Big Bore Lite | +26.1mm | 4.89mm | 15.0mm |
| FILLFAST | +9.6mm | 5.22mm | 10.0mm |
| Turbo Flow | +9.7mm | 5.15mm | 7.7mm |
| Core Cap | +9.2mm | * 7.58mm | 7.6mm |
重量の次はサイズを計測していきます。「仏式バルブコアに比べて、どれだけ突き出しが大きいのか」「先端の直径は何mmなのか」「一番太い部分の径は何mmなのか」を計測しました。
突き出し長
まずは突き出し長から。ここが大きいと、ポンプヘッド着脱の際にスポークやローターに手をぶつける可能性が高くなります。一方で、突き出し長が大きいと、短いバルブステムでも運用が可能になるメリットもあります。
目を引くのはBig Bore。圧倒的な突き出し長の大きさ。存在感も凄いです。これだけ長いと、ポンプヘッドの着脱時に結構気を使います。
その他の新世代バルブたちは、いずれも約9mm前後の増加に留まっています。この程度であれば、ポンプヘッドの着脱時にも大きな影響はないでしょう。
先端径

先端径とは、上の写真で白線で囲った部分の直径です。仏式用ポンプヘッドで使われているパッキンは、この部分を掴んで気密するため、ここの太さはポンプヘッドとの相性に直結します。太ければ着脱に力が必要ですし、細すぎれば気密が出来なかったり、ロックができなくなります。
JIS規格(JIS D9422)においては、仏式バルブの先端径は「5.13±0.09mm」と定められています。この値は世界的な規格であるISOとも共通であり、各社のポンプヘッドの仏式口金は、この値を基準に作られています。
FILLFASTやTurbo flowは、仏式の規格公差内に収まっています。
規格上限よりも「0.19mm太い」のがクリックバルブ。気密という点では問題ありませんが、仏式ポンプヘッドに差し込む際には結構キツさを感じます。仏式ポンプヘッドで空気を入れることは出来ますが、着脱には少し力が要るのはこのためです。
規格下限よりも「0.15mm細い」のがBig Bore。4.89mmしかありません。目視でわかるくらい、仏式バルブコアよりも先端が細いです。そして、太いよりも厄介なのが「細い」ことだったりします。パッキンが十分に密着せず、ポンピング中に空気漏れを起こす可能性があるからです。また、ポンプヘッドのロックも仏式バルブの先端径を基準にしているので、上手くロックできないこともありました。muc-offの設計者は、仏式互換と言いながら、仏式規格をちゃんと調べなかったんでしょうか?

一方、仏式ではなく米式バルブとの互換を謳っているのがBBB「Core Cap」です。
米式バルブの寸法は自転車用ではなく自動車用バルブの規格(JIS D4207)内にあります。そこで規定されている米式バルブ先端の径は「7.65±0.10mm」です。Core Capの径は7.58mmだったので、下限近くでありますが規格内に収まっています。太さという意味では、米式ポンプヘッドとの相性は悪くなさそうです。
最大径

バルブステム部分を含めた最大径の太さも計測しました。文字通り、一番太い部分の直径です。ここが太いことによる影響は「存在感があるか」くらいしかないとは思いますが、一応計測。
仏式バルブコアとクリックバルブはいずれもバルブステムより若干細いため、最大径はバルブステム部分となります。約5.9mm。
一番太いのは、コック部分を持つBig Boreでした。縦にも横にもダントツで大きいBig Bore。名前の通りですね。
弁開閉方式+流量
| バルブ | 弁開閉方式 | 公称流量 (仏式比) |
|---|---|---|
| 仏式バルブコア | 内圧+先端ネジ | 100% |
| クリックバルブ | 内圧+バネ | 150% |
| Big Bore Lite | ボールバルブ | 230% |
| FILLFAST | 内圧+先端ネジ | 375% |
| Turbo Flow | 内圧+先端ネジ | * 300% |
| Core Cap | 内圧+バネ | 300% |
次に、弁の開閉方式と公称流量について見ていきます。
弁開閉方式
バルブは、「空気の出入り口を開閉する門」です。この弁部分の方式について見ていきます。
仏式バルブコアの弁は、チューブの内圧によって閉じられ、ピンを押すことで弁が開きます。弁が開かないように固定するために先端にはネジが付属。FILLFAST、Turbo Flowは仏式と同様の仕組みを採用しています。
一方、弁をバネで動かして自動的に閉まるようにしているのが、クリックバルブとCoreCapです。弁を開くためには、このバネを押し下げる必要があります。クリックバルブ専用口金であれば弁を押し下げるための棒が付いていますし、米式口金にも同様の棒が付いています。弁を押し下げる必要はありますが、内圧がなくてもバネの力で弁が閉まるので気密性は高そうです。
特徴的なのは、Big Bore。前述のボールバルブという方式を採用しており、コックを捻ることで開閉を切り替えます。逆に言えば、コックを閉じなければ、勝手に弁が閉じることはありません。つまり、空気を入れている最中になんらかの理由でポンプヘッドが外れてしまうと、チューブの中の空気はすべて抜けます。
公称流量
こちらは測定する手段がないので、公称値での議論となります。

仏式バルブコアの場合、白丸で囲った部分がかなり狭く、一気に空気を送り込むとこの部分で「詰まり」が生じます。これがポンピングの時の抵抗となるわけです。新世代バルブはこの隙間部分を従来よりも太くすることで、つまり画商悪くなっています。「道幅を広げた」と例えると分かりやすいかもしれません。
新世代バルブはどれも、「仏式バルブを100%とした時に、どのくらいの流量があるか」をスペックシートに掲載しています。流量が一番影響するのは、「チューブレスタイヤのビード上げ」なので、流量の数値が大きいほど「ビードが上げやすくなるよ」と言っていることになります。
一番景気の良い数値を掲載しているのがFILLFAST。なんと仏式比375%。そんなに増えるとは思えないのですが……。次いで大きいのが、Turbo FlowとCore Capで、仏式比300%を標榜。ただし、Turbo Flowは「専用のRapidHeadを使った時に300%」という書き方をしており、一般的な仏式ポンプヘッドを使った場合の流量は公開されていません。
次に多いのが、Big Bore。仏式比230%。これはちょっと控えめに書いているように見えますね。ボールバルブが開いている状態では、パイプ内を遮るものは何もありません。理論的には他のどのバルブよりも流量は大きくなりそうですが、muc-offは230%であると主張しています。
一番控えめなのはクリックバルブ。仏式比150%。他の新世代バルブはチューブレスタイヤでの運用を重視しているので、「ビードを上げやすい」ことを表す流量は重要ですが、クリックバルブはチューブレスタイヤ専用ではありません。流量アップは「おまけ」程度にしか考えていないように思えます。
比較② 口金との相性
前章で測定した物理データを踏まえて、次は各種口金との相性を見ていきます。
以下の表は、私が家にあった各種口金と、各バルブコアの相性を表形式でまとめたものです。
| バルブ | 仏式口金 互換性 | 米式口金 互換性 | 専用口金 互換性 |
|---|---|---|---|
| 仏式バルブコア | A | – | A |
| クリックバルブ | B | – | A (Clik口金) |
| Big Bore Lite | C | – | – |
| FILLFAST | B | – | – |
| Turbo Flow | B | – | A (ラピッドヘッド) |
| Core Cap | – | C | – |
各凡例の意味は以下の通りです。
- A: ほぼ全ての口金で正常に使用可能
- B: 半分程度の口金で正常に使用可能
- C: 1/3程度の口金で正常に使用可能
- -: 互換が謳われていない組み合わせ
本章では各バルブごとに、口金との相性を見ていきます。
クリックバルブ
クリックバルブは専用の口金を用意していますが、仏式口金との互換も謳っています。
専用口金との相性

クリックバルブには専用に開発された口金が存在します。専用口金なのでもちろん相性は最高で、空気漏れやロックミスなどはまず起こりません。便宜上「A」としていますが、「S」と表しても良いくらいです。クリックバルブのコアは1社だけで製造しているので、複数の会社が生産している仏式バルブそのものよりも形状差が少なく、相性問題が出にくいのが大きいと思っています。
仏式口金との相性
クリックバルブは仏式との互換を謳っており、大半の仏式口金で空気を入れることが可能です。しかし、使えない口金もあります。このため、相性評価は「B」としました。
クリックバルブは、バルブコアの外側にネジ切りがありません。故に、ネジ込み式の口金は使用できません。携帯ポンプの多くに採用されているのがネジ込み式口金なので、その点は注意が必要です。
ネジ込み式の口金でなければ大体は使用可能ですが、先端が太いので抜き差しに力が必要です。スポークやローターに手をぶつけてしまうリスクもあります。
クリックバルブを使う場合、仏式口金はあくまでも「保険」であって、基本は専用口金で運用すべきだと思います。
Big Bore Lite
Big Bore Liteには専用口金はなく、仏式口金との互換性が謳われています。
仏式口金との相性
押し込み式ポンプヘッドでも、ネジ込み式ポンプヘッドでも、空気が入ることは入ります。ただ、ロックが緩かったり、空気が漏れたりと、何らかの不具合のある組み合わせがほとんど。ちゃんと空気が入るのは、「物凄くキツめに設定したHIRAME」くらいです。このため、相性評価は「C」としました。

その理由は、前述の「先端径の細さ」が理由です。先が細すぎて、パッキンが上手く気密出来ません。なんとか空気が入っても先端のパッキンの抑えが緩いので、チューブの内圧が高まるとポンプヘッドが外れてしまったり、空気漏れが発生します。そして、このバルブの弁は自動では締まらないので、ポンプヘッドが外れるとそのままチューブ内の空気はすべて抜けます。
先端径を仏式の規格に合わせた形に作り直したほうが良いと思うんですが、金型の変更が発生するので難しいですかね。
FILLFAST
FILLFASTには専用口金はなく、仏式口金との互換性が謳われています。
仏式口金との相性
押し込み式ポンプヘッドでも、ネジ込み式ポンプヘッドでも、だいたい問題なくロックできますし、空気も入ります。よって、相性評価は「B」としました。
Panaracerのワンタッチヘッドや、R250のポンプヘッドのような特殊なロック形式のものはロックが不可能でした。これらのヘッドは割と深くまで咥え込み、バルブステムまで含めてロックする方式です。FILLFASTは「外側のネジに付ける」方式であり、バルブステムよりも太い部分が存在します。このため、上手くロックできないケースが生じます。
先端径は仏式バルブの規格内に収まっているので、この部分だけでロックするポンプヘッドなら問題はおこならないでしょう。
ただ、我が家にあったどの空気圧計も、このバルブの空気圧を上手く計測することが出来ませんでした。
Turbo Flow
Turbo Flowには専用の「RapidHead」口金があり、仏式口金との互換性が謳われています。
専用口金との相性

Turbo Flowのために、TOPEAKが開発したのが「RapidHead」です。見た目は普通の仏式口金と同じですが、「押しピンを押すための棒がない」点が異なります。
大抵のフロアポンプのヘッドは、「米式・仏式兼用」です。そうなると、米式バルブに使う場合に必要な「押しピンを押すための棒」が存在することになります。

よく携帯ポンプなどで「裏返すと米式対応になります」と書いてある口金内部のパーツ。あの尖った部分が「押しピンを押すための棒」です。

これは、Turbo Flowバルブを上から見た図です。押しピンが太く、内部が中空になっていて、空気はここを通り抜けます。さて、このバルブに「押しピンを押すための棒」がある口金を使ったら……穴を完全に塞がないにしても、そこがボトルネックになる可能性があります。つまり、既存の仏式口金で「押しピンを押すための棒」があるものについては、流量はかなり減る可能性があるということです。

RapidHeadを分解すると、「押しピンを押す棒」は存在せず、直通しています。

RapidHeadにはロック機構がありませんが、パッキンの径をやや小さめにすることで保持力を高めています。高圧まで入れても外れることもなく、取り外しは適度な力で行えます。専用というだけあって、相性は「A」でした。
仏式口金との相性
ほぼ、FILLFASTの場合と同様でした。よって、相性評価は「B」です。
FILLFASTと異なるのは、押しピンが中空であるため、「押しピンを押すための棒」の有無で流量が変化することです。ここにも相性問題が存在することになります。このバルブを運用するなら、基本的にRapidHeadを使うべきでしょう。
Panaracerの空気圧計で空気圧を計測することは出来ました。
CoreCap
Core Capには専用口金はなく、米式口金との互換性が謳われています。
米式口金との相性
米式の口金にも「押し込む」タイプと、バルブ先端のネジ切り部にねじ込む「ネジ込み式」が存在します。一応、どちらでもロック自体は可能でしたが、「口金を取り付ける時&外す時に空気漏れが起こる」という致命的な弱点がありました。よって相性評価は「C」としています。とても「互換」とは呼べないと思います。

Core Capは、空気圧調整のためのボタンが付いています。これが空気漏れの犯人です。


通常、米式バルブの押しピン先端は、バルブステムの縁よりも下に引っ込んでいます。横から見ても飛び出してはいません。米式バルブのJIS規格を確認してみましたが、この押しピンはバルブステムの先端を0mmとして「-0.90mm ~ +0.25mm」までの位置に収まる必要があるとされています。0.25mmは縁よりも上に出ていても良いということです。
しかし、Core Capのボタンは、縁よりも0.73mm上に出ています。規格の上限を0.48mmも超えているということです。
一般に、米式口金と米式バルブの接続は以下の手順で行われます。
- 物理的接続
ネジのかみ合わせなどで、口金とバルブが触れ合う。 - シール確立
口金内のパッキンが、バルブの縁部分を覆って気密を確保する。 - 弁開放
「押しピンを押す棒」が、バルブの押しピンを押して弁が開放される。
米式バルブは、バネが入っています。このバネを何らかの手段で物理的に押さないと弁が開きません。そのための装置が「押しピンを押す棒」です。
さて、一般的な米式口金は、当然ISOやJISに沿って「押しピンを押す棒」の長さを決めています。では、その規格よりも長い押しピンを持つ米式バルブが出てきたらどうなるか? 「2. シール確立」よりも前に「3. 弁開放」が行われることになります。
つまり、米式バルブの規格よりも0.5mm近くも長い押しピン(=ボタン)を持つCore Capは、シールを確立する前に必ず弁が開いてしまい、空気が漏れる瞬間があるということです。
「接続→ロック」「ロック解除→離脱」が瞬時に行われる口金(パナレーサーのワンタッチ口金等)であれば問題は起きませんが、ネジ込み式の口金であれば着脱のどちらでも100%空気漏れが起こります。例えば電動ポンプにおける米式口金は普通ネジ込み式です。せっかく6気圧に設定して空気を入れても、口金を外そうとした時に0.2-0.3気圧程度は抜けてしまうはずです。
「米式のピンって奥に引っ込んでて押しにくいからボタン付けようぜ」ってノリでボタンを付けたのだと思いますが、このボタンのためにバルブとしての根本的な機能に障害を抱えることになってしまいました。
Core Capの少し飛び出たボタン用に調整された米式口金であれば問題は起きないことになりますが、それは事実上の「専用口金」です。個人的には、専用口金を作ったほうが良いと思います。今のままではあまりにも「普通に使える口金」が少ないので。
もしくは、ボタンの高さを縁とツライチ(同じ高さ)まで下げるか。ボタンは押しにくくなるでしょうが、口金との相性問題の大半は解決されるはずです。
比較③ 操作性
次に、「空気を入れる」という日々の作業における手間について評価します。
空気入れの手数
案外、空気入れという儀式には手数が多いものです。以下に、仏式バルブに空気を入れる際の詳細手順を記載します。
- 押しピンの小ねじを回して緩める。
- 押しピンの頭を一瞬押す。
- ポンプヘッドをバルブに接続する。
- ポンプヘッドのロック機構を有効にする。
- 指定空気圧までポンピングを行う。
- ポンプヘッドのロック機構を無効にする。
- ポンプヘッドをバルブから外す。
- 押しピンの小ねじを回して締める。
こうして手順化すると、割と面倒なことをやっています。
新世代バルブの中で、「仏式口金×FILLFAST」「仏式口金×Turbo Flow」のケースは、仏式バルブの場合と手順の数に変化はありません。「RapidHead口金×Turbo Flow」のケースはロック作業が不要なので少し手間が減るくらいでしょうか。
「仏式口金×クリックバルブ」と「米式口金×Core Cap」のケースは、「押しピンを緩める/締める」のと「押しピンの頭を押す」手数が減ることになります。
「クリック口金×クリックバルブ」のケースは、上記手順のうち「3, 5, 7」だけ行えばOKになります。クリックバルブ口金は押し込むと同時にロックが完了し、引き抜くとロックが解除されます。手数が一番減るのはこの組み合わせです。
残る「仏式口金×Big Bore Lite」は、これまでとは全く違う手順となります。
- ポンプヘッドをバルブに接続する。
- ポンプヘッドのロック機構を有効にする。
- コックを開く。
- 指定空気圧までポンピングを行う。
- コックを閉める。
- ポンプヘッドのロック機構を無効にする。
- ポンプヘッドをバルブから外す。
難しいのは、「ポンプヘッドのロックを確立してからコックを開く」「ポンプヘッドのロックを解除する前にコックを閉める」という慣れない手順です。これの手順前後が起こると、チューブに入れた空気は全て抜けます。「空気を入れ終わったからポンプヘッドのロックを解除しよう」といつものクセで作業してしまうと……これまでの作業が水の泡です。
また、前述の通り先端径が細く、パッキンがバルブの気密を保持できないケースが多いため、空気を入れている最中にポンプヘッドが抜けてしまうケースもあります。この場合もチューブに入れた空気はすべて抜けます。他のバルブであれば内圧で勝手に弁が閉じますが、Big Boreは勝手に弁が閉じることはありません。
Big Bore Liteを使う場合、手順を必ず守るように意識する必要があるということです。
接続の確実性
「空気を入れる」という作業において、手数の他に重要なのが「口金とバルブが確実に接続され続ける」ことです。ちょっとズレただけでも、チューブ内の空気が漏れてしまうことは日常起こりますが、これは結構なストレス。そういったストレスなく、空気を入れられることが理想です。
「仏式口金×仏式バルブ」「仏式口金×FILLFAST」「仏式口金×Turbo Flow」のケースでは、大抵の組み合わせでは一度ロックが確立してしまえば問題は起きることは少ないはずです。ただし、口金のパッキンとバルブ形状の組み合わせによっては上手く気密が出来なかったり、少しのズレで気密が崩れてしまうケースが起こります。
「RapidHead口金×Turbo Flow」のケースでは、専用設計なので基本的に問題は起こりません。ただ、押し込みが浅いと抜けてしまうこともあるかもしれません。ロック機構は付いていないので。
「仏式口金×クリックバルブ」のケースでは、ロック機構が外れて空気漏れが起こると、バネによって瞬時に弁が塞がるはずです。よって、大きな空気漏れは起こりません。
「クリック口金×クリックバルブ」のケースでは、ロックの確立と弁の開閉が完全に同期するように設計されています。よって、少しでもロックが外れるとバネによって瞬時に弁が閉まりますし、そもそもバルブが深くまで口金の中に入るのでズレることも起きにくい。専用設計だけあって盤石の確実性を誇ります。
「米式口金×Core Cap」のケースでは、ロック機構が外れることは起きにくいはずです。しかし、前述の通り、ポンプヘッドの着脱時に確実な空気漏れが起こります。差し込みと同時にロック確立、引き抜くと同時にロック解除が出来るタイプのポンプヘッドでないと、この問題は解消されません。
「仏式口金×Big Bore Lite」のケースでは、先端径の細さからロックが意図せず外れてしまう確率はかなり高めです。非常に不安定と言えるでしょう。そして、ロックが外れれば瞬時に全ての空気が抜けます。
ポンピングの軽さ
新世代バルブの多くは、「流量の増加」が売りの一つです。
流量増加による効果
たまに「新世代バルブに変えるとポンピング回数が減る!」と書いている人がいますが、それはウソです。1回のポンピングで入る空気の量はポンプのシリンダー容積量以上にはなりませんから、バルブが太くなった所で回数は変わりません。
バルブはいわば「細い道」であり、そこに大量の車が入ろうとして渋滞している状態が「フロアポンプで空気を入れる時」に起きていることです。「流量を増やす」というのは、その細い道の幅を広げてやるということです。
新世代バルブが道幅を広げる最大の理由は、「チューブレスタイヤのビードを上げやすくする」ためです。しかし、「ポンピング時の抵抗が減る」という副次的なメリットも生まれました。つまり、ポンピングが少し軽くなるということです。
主観での比較
各バルブで、5気圧まで空気を入れてみて、その際の感触を比較しました。
まずは仏式バルブ(基準: 100%)で5気圧まで入れてみます。低圧からそれなりに抵抗はあり、それがリニアに増えていく感じ。
クリックバルブ(公称流量: 150%)に変更すると、低圧(0-2気圧)程度までは少しポンピングが軽くなった感触があります。ただ、5気圧付近では仏式バルブと大差ありません。
Big Bore(公称流量: 230%)、FILLFAST(公称流量: 375%)、Turbo Flow(公称流量: 300%)、Core Cap(公称流量)の感触は似通っていて、低圧(0-2気圧)程度までは結構ポンピングが軽く感じます。しかし、やはり5気圧付近では仏式バルブと大差ありません。なお、低圧で一番軽く感じたのは、数値的には一番低いはずのBig Boreでした。
感触の理由
ポンピング時の抵抗は以下のように表せると考えます。

恐らく、低圧ではバルブを通り抜ける空気の勢いが強く、チューブの中から押し返してくる気圧(Ptire)も小さいので、バルブ(ΔPvalve)がボトルネックになりやすいのでしょう。そのため、高流量な新世代バルブは抵抗が減ったように感じられるのだと思われます。
一方、高圧ではポンピング時の抵抗の大半はタイヤの内圧Ptireが締めることになるはずで、十分小さいΔPvalveによる差異を感じにくいのではないかと推測しています。
空気圧調整のしやすさ
空気を入れすぎてしまった場合、調整のためにあえて空気圧を落とすことがあります。
仏式バルブの場合、押しピンを押せば空気が抜けます。非常に簡単。FILLFASTも全く同じ操作で空気圧調整ができます。


クリックバルブの場合、押しピンはバルブの縁とほぼ同じ高さになっています。爪の先で押し込むことで空気圧調整は可能ですが、正直言って押しにくい。別売りの専用バルブキャップには空気圧調整のための機能が付いていますが、4個で1980円します。便利なクリックバルブですが、ここだけは使いにくいですね。

Turbo Flowも押しピンはありますが、中空です。押しピンの頭を押して空気圧を調整しようとすると、指で空気の通り道を塞ぐことになります。このため、「押しピンの頭のサイドを持って押し下げる」という微妙に面倒くさい手順が必要になっています。

Core Capは、ボタンを押せば空気圧調整が可能です。ポンプヘッドとの相性を捨ててまで手に入れた機能ですが、それで得られたのが「空気圧を調整しやすいだけ」というのは少々残念。

Big Boreは、コックを90°捻ると全開放になりますが、数10°だけ捻ることで「少しずつ空気を抜く」ということは可能です。加減が難しいですが。
比較④ 運用性
「空気を入れる」以外の運用についても見ていきます。
出先での入れやすさ
出先でパンクしたときのことを考えてみます。携帯ポンプで完全に復帰できれば良いですが、入れたい空気圧まで手持ちのポンプでは入らないケースということも起こり得ます。
そうなると、自転車店や駐輪場に備え付けられたフロアポンプを借りることになると思います。
スポーツ自転車店であれば、大抵は仏式・米式に対応したフロアポンプを備えています。本記事で取り上げた新世代バルブは、仏式か米式のどちらかと互換性があることになっています。フロアポンプを貸してもらえるかは店の裁量次第ですが、貸してもらえれば必要な空気圧まで空気を入れることは出来るでしょう。
ただし、「比較② 口金との相性」で述べた通り、フロアポンプの口金と各バルブには相性問題が存在します。通常の仏式バルブであればまず空気は確実に入りますが、新世代バルブでは相性問題が起こる可能性を考えておく必要があるでしょう。
新世代バルブの中で、Core Capだけは米式互換を謳っています。米式互換ということは、ガソリンスタンドにある車用のコンプレッサーが使えるということです。ただ、貸してもらえるかは店の裁量ですし、口金を外す時に空気漏れは確実に起こります。
そして、こうした米仏アダプタを持ち歩いていれば、通常の仏式バルブでもガソリンスタンドのコンプレッサーは使用可能です。
また、クリックバルブ用のアダプタも米式→クリックバルブへの切り替えなので、同様の事ができます。
防水性・防塵性
バルブコア内に水や砂が入ってしまうと、動作に支障をきたす場合があります。

仏式バルブの場合、押しピンのネジを締めてしまえば、水や砂等はある程度防ぐことが出来ます。しかし、この隙間から水や砂が入る可能性は残ります。これを防ぐため、基本的に私はバルブキャップを付けたまま運用しています。
仏式バルブコアに近い構造を持つ、FILLFASTやTurbo Flowも同様です。基本的に押しピンを締めていればある程度の防御は可能ですが、隙間はあります。付属するバルブキャップを使ったほうが良いでしょう。
Big Boreは、コックさえ閉まっていればチューブ内に水や砂が入ることはありません。しかし、ボールバルブに砂などが付いてしまうとシールが上手く行かなくなる可能性もあります。こちらも専用バルブキャップを付けたほうが良いでしょう。

クリックバルブは上部が開放されています。水や砂は入り放題。事実上、「バルブキャップは必須」だと思います。

Core Capは、製品名の通り「バルブキャップを兼ねる」ことが売りです。砂など粒子が大きいものはバルブ内に入ることはなさそうですが、水は微細な隙間から侵入しそうにも見えます。先端にネジ切りはあるので、心配な人は米式用のバルブキャップを付けたほうが良いでしょう。
携帯ポンプとの相性
フロアポンプの場合、押し込んでロックするタイプの口金が普通で、ネジ込み式の口金は少ないと思います。仏式ではLEZYNEくらいでしょうか。
一方、携帯ポンプの場合はだいたい半分くらいがネジ込み式を採用している印象があります。恐らくはピストンとバルブが近いので、ネジ込み式でないとポンピング中にロックが外れる可能性が高いからだと思われますが。また、最近定着しつつある携帯電動ポンプも、延長ホースはねじ込み式であることが大半です。
今回テストしたバルブのうち、クリックバルブ以外はネジ込み式の口金に対応しています。ネジ込み式口金の場合、気をつけなければならないのは「口金を外す際にバルブコアごと共回りして外れてしまう」事故です。私も出先でのパンク修理で何度かバルブコア外れをやらかし、せっかく苦労して入れた空気がすべて抜けてしまったことがあります。クリックバルブ以外のバルブに対してネジ込み式口金の携帯ポンプで空気を入れる可能性がある方は、定期的にコアの増し締めを忘れないようにしましょう。

Core Capだけは、ネジ込み式口金を外す際に高確率で空気が漏れます。写真の口金内部の中央にある「押しピンを押す棒」がボタンを長く押し続けてしまうからです。Core Capを使うなら、携帯ポンプの口金はネジ込み式以外のものを選ぶべきでしょう。

クリックバルブはネジ込み式口金には非対応なので、バルブコアの共回りは起きません。ただ、必ず口金取付の際に押し込むことになるので、バルブナットは付けたほうが良いです(バルブ根本へのダメージを考慮)。写真の例ではネジ切りがないタイプのバルブステムのチューブだったため、バルブナットを付けられていません。口金を接続する際にはバルブステムが奥に引っ込まないように指で固定するという一手間が加わっています。
自然な空気圧低下
自転車のチューブは、時間が経つと自然に空気が抜けます。これはチューブの表面を空気が透過することがメインで起こると考えられていましたが、実はバルブからも空気は微妙に漏れています。
今回のバルブを使い、TPUチューブに6気圧入れた状態で24時間放置した時の空気圧低下の具合を以下に示します。
| バルブ | 空気圧低下 (24時間あたり) |
|---|---|
| 仏式バルブコア | 0.21bar |
| クリックバルブ | 0.09bar |
| Big Bore Lite | 計測不能 |
| FILLFAST | 計測不能 |
| Turbo Flow | 0.22bar |
| Core Cap | 計測不能 |
Big Bore Lite、FILLFAST、CoreCapの3製品は空気圧計で計測しようとすると空気が漏れてしまって計測不能でした。
基準となる仏式バルブは0.21bar、同じくらいだったのがTurbo Flowで0.22bar。

空気圧低下が一番少なかったのがクリックバルブで0.09barでした。その詳細は上記記事にまとめています。恐らくは、バネでシールが強制的に閉鎖されること&シール形状がテーパーであることが空気圧低下を少なくしているのだと思われます。
寿命
各バルブをクリンチャー運用で使った場合の「寿命」を考えてみます。
仏式バルブの場合、パッキンの弾力性が失われた時に寿命を迎えます。しかし、それよりも多いのが「押しピンを曲げてしまう」ケースです。これは割と空気を入れる時によく起こります。使用期間に関わらずに起こるので厄介です。
同様のことが起こりそうなのが、FILLFAST。これも仏式と構造は一緒であるため、押しピンを曲げるリスクは残ります。
仏式バルブに近い構造ながら、押しピンが中空で太いTurbo Flowは、なかなか頑張っても押しピンを曲げることは難しそうです。こちらはパッキンの寿命まで使うことは出来そう。
クリックバルブとCoreCapは押しピンを曲げることはまず起きない構造になっていますが、この2つはバネを内蔵しています。バネの寿命がどれくらいなのかが気になりますね。
Big Boreは押しピンもパッキンもありませんが、ボールバルブの寿命がどれくらいなのかが分かりません。コックの稼働機構もそこまで強そうには思えませんし、案外寿命は短いかもしれません。
コスト
1台分の導入コストを比較してみます。
| バルブ | バルブコア価格 (1台分2個あたり) | 専用口金価格 |
|---|---|---|
| 仏式バルブコア | 約350円 (パナレーサーの例) | 2-3000円 |
| クリックバルブ | 1496円 | 1980円 |
| Big Bore Lite | 8910円 (バルブステム込) | – |
| FILLFAST | 3960円 | – |
| Turbo Flow | 3300円 | 1650円 |
| Core Cap | 3630円 | – |
やはりデファクトスタンダードたる仏式バルブコアの安さが抜きん出ています。
クリックバルブも頑張っていますが、まだまだ高価です。大量に売れれば値下がりする可能性はありますが、今のところそういった様子は見えません。
3000円台が、FILLFAST、TurboFlow、CoreCap。このくらいがバルブコアに出せる上限じゃないかと思います。
驚異の8000円台、Big Bore。とはいえ、これはチューブレスバルブ全体の価格ではあるのですが……それにしてもだいぶ高価です。
総合評価
クリンチャーユーザーが使うケースを考えると、新世代バルブの中で実用に足るのはクリックバルブのみではないかと思います。次点は、これまで通りの仏式バルブです。
Big Boreは、先端径を仏式の規格通りにすれば実用度は上がりますが、空気を入れる手順が変わるのが厳しいです。チューブレスユーザーならば流量の旨味はありますが、クリンチャーユーザーが使う意味は全くありません。
FILLFASTやTurbo Flowは現状でもそれなりの実用性はありますが、仏式バルブに比べてこれといった旨味がありません。流量が増えるので、ポンピングが少し軽くなるメリットはあるかもしれませんが……あえて選ぶ理由がない。
Core Capはクリンチャーユーザーも相手にすることを表明した割に、「高確率で空気漏れを起こす」というバグを抱えています。ボタンの出っ張りを米式バルブの規格通りに低くするか、専用口金を作れば実用に足る可能性は出てきます。現状ではあえて選ぶ理由はありません。

これだけの大言壮語を吐くのであれば、それ相応の設計をしてほしいものです。
まとめ
非常に長くなりましたが、「クリンチャーユーザー目線の新世代バルブ比較評価」でした。
実のところ、「クリンチャーユーザー目線」とした時点で、ほぼ答えは見えていました。最初に述べたように、新世代バルブの大半は「チューブレスユーザーのビード上げを楽にし、シーラント詰まりを無くす」ことを目的に作られています。ビード上げもしなければ、シーラントも使わないクリンチャーユーザーにとっては、ポンプと相性の悪い可能性が高いだけのバルブでしかないからです。
新世代バルブの中で、クリンチャーユーザーの方をしっかり見ていたのは、唯一クリックバルブだけだったと思います。初期導入コストこそ掛かりますが、空気入れの手数は減って、確実性は上がります。日々のストレスが少し減るという点で導入してよかったと思っています。
今後も私はクリックバルブの運用を続けることに決めました。
これだけ色々な新世代バルブを試して痛感したのは、「互換という言葉は疑ってかからないといけない」ということでした。既存の口金と新世代バルブたちの相性は、良くて「B互換」、場合によっては「C互換」。「A互換」は一つもありませんでした。たまたま家にあるポンプの口金と相性が良ければ儲けものですが、その確率はかなり低いと言わざるを得ません。
本気でシェアを獲りに行くならば、A互換となる専用口金も開発し、安価で販売するべきではないかと思います。出先で相性の悪い口金を繋いでしまったら、「空気が抜ける」「空気が入らない」という状態が起こり得ます。そんな製品が「互換」を謳うことは許容したくないですね。
「互換」を謳うのであれば、もう少しバルブ規格をしっかり研究し、世の口金の大半で使えるように設計を煮詰めてほしいです。
著者情報
年齢: 41歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。
# これまでに著者が乗ってきたスポーツ自転車の履歴はこちらの記事にまとめています。









