GROWTACのトークイベントに参加

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川崎市「MAGNET」で、3/15-30まで開催されている「GROWTACポップアップストア」。その一環として3/20に行われたトークイベントに参加してきました。

GROWTACは言わずとしれた国内ブランドで、「EQUALコンセプト」に基づいたブレーキ・ペダル・コントロールレバーなどを開発・販売しています。

目次

イベント概要

川崎市・平間のMAGNETで開催されている「GROWTACポップアップストア」に行ってきました。

イベントについて

EQUALブレーキやEQUALレバーなど、乗り手側の選択肢を広げるパーツを多数手掛ける「GROWTAC」。その製品を、ウェアショップである「MAGNET」で展示するイベントです。

展示だけではなく購入も可能で、普段よりも割引価格で販売されています。

3/20(祝)には、社長である木村さんを招いてのトークイベントが開催されました。

  • 開催場所: MAGNET
  • 開催期間: 2025/3/15 – 3/30

なお、GROWTACの社屋は東京・大森にありますが、登記上の本店所在地は川崎市です。

GROWTACというブランド

公式サイトはこちら

元々は社長の木村さんがサイドビジネス的に作っていたパーツ(シマニョーロを実現する「EQUALプーリー」や、クリート用スペーサーなど)を販売するブランドでしたが、後に法人化。

最初にヒットした商品は独自の構造を持つローラー台だったと思います。こちらのローラー台は現在に至るまで販売を継続。

転機となったのは、2021年に発売となった「EQUAL 機械式ディスクブレーキキャリパー(以降、EQUALブレーキ)」。当時拡大を始めていたディスクロードをターゲットとしたメカニカルディスクブレーキキャリパーです。

EQUALブレーキの箱には「Build your own bicycle.(自分らしい自転車を作ろう)」というキャッチコピーが刻まれています。近年、高性能化に反比例してユーザー側の選択肢が減っているスポーツ自転車。そこに新たな選択肢を持てるようにしよう……というのが「EQUALコンセプト」です。

その後、EQUALコンセプトに基づいたパーツを次々に発売。

「EQUALペダル」は、ペダルに関するあらゆるパラメータを調整可能としたペダル。クリートはSHIMANOのSPD-SL互換。

「EQUALレバー」は、あらゆるディレイラー等のパーツを制御可能にするフリクション式のコントロールレバー。

手組ホイール用の「EQUALディスクハブ」も販売しており、「EQUALリム」と共に組み上げることで安価かつ堅牢なホイールを組み上げることも可能です。

私とGROWTAC

私もEQUALブランドの製品はいくつか使用しています。

EQUALブレーキ

まずEQUALブレーキ。

ディスクロードを購入するも、あまりにも重い油圧レバーに嫌気が差した私はこちらのブレーキを導入。リムブレーキ用の機械式レバーが使用可能になり、ハンドル周りが200g以上軽量化に成功。自転車が思うように操れるようになり、かなりディスクロードの出動機会が増えました。

ブレーキとしての性能も素晴らしく、使用開始以来4年間愛用しています。先日、初めてフィーリング調整ボルトを触り、その作り込み具合には唸らされました。

EQUALハブ

もう一つは、EQUALハブ。

フリーボディのガタがどうしても取れないSHIMANO製ハブに嫌気が差し、組み換えを決意。最近は防水性がイマイチなハブが増える中、そのあたりもしっかりしていて耐久性も高そうなEQUALハブに魅力を感じて導入しました。

こちらも非常に良いハブで、重宝しています。

イベント参加の動機

今回のトークイベントには社長が来られるということで、イマイチ理解できていなかった「フィーリング調整ボルト」の仕組みについて聞きたいと思っていました。

なお、社長の木村さんとは面識があり、ポッドキャストの収録で対談させて頂いたことがあります。残念ながら録音機材のトラブルで撮れていなかったらしくお蔵入りになってしまったのですが、私としてはGROWTACの社内見学ができただけで十分な収穫でした。

トークイベント レポート

3/20のトークイベントに参加した時のレポートです。

イベントの流れ

13時から約1時間半、木村社長と、進行役のMAGNET・柴山さんでトークが繰り広げられました。

この日のトークテーマはEQUALブランドの製品のうち、「ブレーキ」「ペダル」「レバー」に限定。「ホイール」はまた次回ということでした。

店内には、一通りのGROWTAC製品が展示されています。

第一部: EQUALブレーキ

最初はEQUALブレーキの話から。

GROWTACの名前を一挙に広めた出世作ということで、これについての話が一番豊富だった気がします。

開発期間はかなり短く、開発スタートから発売までたった7ヶ月だったとのこと。木村社長いわく、「何か降りてきた」。ちょうどこの製品を開発する前に自社用のマシニングセンタを導入したことで、試作品を作るスピードもアップ。トントン拍子に話が進んで発売に至ったそうです。敏腕メカニックとして知られる柴山さんも、「部品点数が少ないのでメンテナンスがしやすいのに凄くよく効く」と絶賛。分かります。

話は、未発売の「カシマコート」版のEQUALブレーキの話へ。カシマコートは、「塗装であるけれど潤滑もする」という特殊なコーティング。MTBの高級サスペンションにも施されているそうです。

これを施すことで、ブレーキの性能もより上がるというお話でした。潤滑効果のあるモリブデンが表面に埋め込まれた格好になるんだとか。この独特の色はモリブデンの色らしいです。

発売日はまだ未定だそうですが、一般発売予定とのこと。価格は通常版より+1万数千円になるだろう、ということでした。発売されたら使ってみたいですが、外観の色が赤のバージョンが是非とも欲しいですね……。

第二部: EQUALペダル

次の話題はEQUALペダル。

元々この製品は、自転車産業振興協会が募集している助成制度「新商品・新技術研究開発」の一つに応募、採用されて開発が始まったそうです(参考: 2021年度 新商品・新技術研究開発)。

木村社長のお話の中で印象的だったのは、踏み面の話。「多くのペダルメーカーは踏み面の面積をアピールするけれど、意味を持つのはクリートとの接触面積。触れていない部分の面積がいくら広くても意味がない」という話を聞いて、なるほどと感じました。SPDペダルの場合にはアウトソール部分がペダルと触れるケースもありますが、SPD-SL等のレース用シューズであればクリートしか触れないはず。

「ペダルの剛性感のために大事なのは、踏み面の面積よりも軸の剛性」ということで、そこにはかなりこだわったそうです。JIS試験も通したそうですが、この試験を通すには「硬いだけではダメで、ある程度のしなやかさも必要」とのこと。日本刀のように「内部は柔らかく、表面は硬く」しなければならないそうです。今回、「浸炭処理」というワードを初めて聞きました。

ペダル開発にはかなり苦労されたそうで、「ブレーキを1とすれば、ペダルは10」掛かったとのこと。その割に売上は伸びなくて悩んでいるそうでした。

ただ、このペダルを作ったことで樹脂(プラスチック)の配合や製法についての知見がかなり溜まり、レバーの開発に繋がったということです。

調整機構を除いたペダルとしての性能を評価する声もあることから、「調整機構なし版を作っても良いかもしれない」とも木村社長は言っていました。

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第三部: EQUALレバー

そしてEQUALレバーの話へ。

このレバーの企画自体はローラー台を作っていた頃から始まっていたそうですが、ペダルでのプラスチックへの知見の高まりで一気に開発が前に進んだそうです。

レバーの話題で面白かったのは特許の話。「Campagnoloはレバーの曲がり方の形状で特許を取っている」という話が面白かったです。

こちらは色付きのレバー。プラスチックへの造詣が深まったことで、こんな色付きのものも作れるようになったとのことでした。

第四部: 今後のEQUAL製品

最後に、今後のEQUAL製品の展望の話がありました。

ブレーキ・ペダル・レバーと来たので、そろそろ……とは思っていましたが、「リヤディレイラーを作ります」という宣言が一番の衝撃でしょうか。これが完成すれば、一通りのコンポーネントがEQUALブランドだけで揃うことになります(クランクはMageneを使う想定)。今後は機械式のディレイラーも減っていきそうですし、大いに期待が高まります。

最後のオチとして紹介されていたのが「負荷ハブ」。大リーグ養成ギプスのように、前輪のハブに負荷を掛けることでトレーニング効果を上げるという謎の装置。未だ発売されていませんが、開発中だそうです。

イベント後の社長への質問

さて、トークイベント終了後もしばらく社長は店内に残るということだったので、気になってた話をいくつか聞いてみました。

まずは、EQUALブレーキ「フィーリング調整ボルト」の機序について。自作の図を印刷して持っていきましたが、そこに木村社長がボールペンで書き込んで「何故調整ボルトを引き出すと効き始めの力が強くなるのか」を説明してくださいました。

調整ボルトを引き出すと、「テコの原理」で言う力点から作用点までの距離が小さくなるため、パッドを押す力が大きくなるとのことでした。やはりこういう話は設計者に聞くのが一番でしたね。

もう一つお話したのが「ハブダイナモ」について。近年、明らかに停滞しているハブダイナモも、GROWTACが手掛ければ面白いものが出来るのではないかと思ったのですが……「バッテリーライトの進歩のほうが著しいので」ということで製品化は厳しそうなお話でした。

ただ、話してみると「スルーアクスルならば軸の中が空くので、ハブの端子を省けるのではないか」などのアイデアを話してくれました。やっぱりこの方のお話は面白い。

試乗

トークイベント後は、GROWTACの試乗車(VAASTのマグネシウムフレーム)にも乗らせて頂きました。

「EQUALブレーキ×EQUALレバー×ケーブル外回し」は恐ろしくブレーキが効きますね。このブレーキ性能を体感するとEQUALレバーも導入したくなりますが、インデックスプレートが出るまではもう少し様子を見たいと思います。

まとめ

GROWTAC社長によるトークイベントのレポートでした。

1時間半ほどでしたが、非常に有意義な時間でした。聴講者は10人ほどでしたが、皆さん熱心に聞かれていたと思います。

EQUALブランドの製品はどれも技術者の想いが伝わる製品ですが、直接作った人の話を聞くと更にその解像度が高まりますね。今後の展開にも期待したいと思います。

著者情報

年齢: 40歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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