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Guee「Aerolite TPUチューブ」ファーストインプレッション
アクセサリーブランド「Guee」から新発売となったTPUチューブ「Aerolite」のファーストインプレッション記事です。
まえがき
まずはこのチューブをレビューすることになった経緯から。
山本カズさんから依頼が届く
11月のある日、元MTB・シクロクロス日本代表の山本和弘さんからメッセージを頂きました。

なんでそんな有名な方と知り合いなのかと言えば、2022年にバイシクルクラブの企画で接点があったからです。
この号で「東京大阪キャノンボール」の特集をやるということで、私はアドバイザーとしてお声がけ頂きました。特集の中では、山口編集長と山本カズさんが「二人で実際に大阪→東京を走ってみる」という企画も盛り込まれていました。
お二人を横浜から東京まで追走してきました。キャノボ的には走者の前を引けないので後ろから。
— ばる (@barubaru24) March 3, 2022
最後までお気をつけて!@bicycleclubfunq @CannondaleJapan pic.twitter.com/CYRpXNHt6U
川崎を通過するタイミングを見計らって応援のために出向き、そこで知り合ったというわけです。
このキャノンボール特集の時点では山本カズさんはキャノンデール・ジャパンの社員でしたが、2024年夏をもってキャノンデール・ジャパンは解散。キャノンデールブランドの代理店を引き継ぐことになったのは、WahooやBlackburnなどの代理店を務める「インターテック」でした。山本カズさんはインターテックに転職し、引き続きキャノンデールブランドの担当を継続することになったとのこと。
そして山本カズさんから届いたメッセージの内容は、「GueeのTPUチューブをテストしてみて欲しい」とのご依頼でした。
Gueeというブランド
Guee(グイー)は2010年にスタートした新しいブランドです。本拠地は台湾。国内代理店はインターテックが務めています。

私が始めて使用した同ブランドの製品は、「i-see」という、バーエンドに取り付け可能なバックミラーです(2016年購入)。ニッチな所に目をつけた面白い製品でした。
近年はバーテープをショップではよく見かける印象です。質感としてはスパカズに近かった記憶。ただ、行きつけの店の店長曰く「スパカズより長持ちする」らしいです。
そんなGueeが次に目をつけたのがTPUチューブ。既に競合の多いジャンルではありますが、「金属バルブの採用」「透明なチューブに印字で取付方向を明示」という新たなアプローチを提示してきました。
個人的にも気になっていたTPUチューブの一つであり、「是非テストさせてください」と回答しました。
Gueeのチューブが届く
11月末日、インターテックよりGueeのTPUチューブが届きました。
期せずして2つのTPUチューブをテストすることになりました。
— ばる (@barubaru24) November 30, 2024
1つはGUEE「AEROLITE」、もう1つはCYDYの新バージョン。
とはいえ、今はPanaracerのテスト中なので、これらは年明けくらいから使ってみることになりそうです。 pic.twitter.com/FRP3zGrVNd
しばらく他のレビューが立て込んでいて触れていなかったのですが、2月頭になってようやく余裕ができたのでGueeのTPUチューブのテストを開始しました。
Guee「Aerolite TPUチューブ」

Guee「Aerolite TPUチューブ」のファーストインプレッションです。
ラインナップ
Guee「Aerolite」のラインナップは以下の通り。
モデル | タイヤサイズ | バルブ長 | 重量 | 定価 |
---|---|---|---|---|
Aerolite ROAD | 700×20-32C | 60mm | 36g | 3530円 |
75mm | 36g | 3530円 | ||
Aerolite GRAVEL | 700×35-45C | 60mm | 46g | 3850円 |
Aerolite MTB | 29×1.9-2.35 | 40mm | 90g | 3850円 |
27.5×1.9-2.35 | 40mm | 95g | 3850円 |
ロード用・グラベル用・MTB用とありますが、今回レビューするのは、ロード用の60mmバルブモデルです。
パッケージ


コーポレートカラーらしいオレンジを基調としたカラーのパッケージ。バルブにこだわりがあるようで、詳しい図解が描かれています。実際、バルブはTPUチューブにおいて差が出やすい部分なので期待が高まります。
パッケージ内はチューブのみで、昨今の中華TPUチューブにありがちな「修理パッチ」や「バルブを押さえるためのシール」は付属していません。

20-32Cと、広い範囲のタイヤ幅に対応しています。ただし、ディスクブレーキ専用で、リムブレーキには使えません。

国内で販売されている2000円以下の安価なTPUチューブ(Magene/TNI/ARISUN)は上限が28Cまでになっていることが多く、昨今増えている「ロード用30Cタイヤ」には非対応です。32Cまで対応しているAeroliteは30-32Cのタイヤを使っているロードバイクユーザーの選択肢に入ってくることになるでしょう。
各部詳細
チューブの各部分を見ていきます。
バルブ

TPUチューブには珍しい金属バルブを採用しています。
中華TPUチューブにはいくつか金属バルブを採用したブランドも出てきていますが、メジャーブランドでは「Eclipse」のみ。金属+樹脂バルブのPanaracerもありますが、とにかく金属バルブ採用のTPUチューブは稀です。金属とTPUをしっかり接着するのが難しいためと言われていますが、Gueeは何らかの方法でそれを解決したのかもしれません。
樹脂バルブだと最近流行りの電動ポンプでは熱による破損の心配がありますが、金属バルブであればそのリスクが低くなります。
バルブにはネジが切られており、バルブナットとOリングが付属しています。バルブナットを使うことで、バルブがリムに当たることで発生する異音は防げるようになりますが、走行中にバルブナットが緩んでしまうことがあります。Oリングはそれを抑制するために付属しているものと思われます。
また、チューブがパンクして使用不能になっても、このバルブだけをハサミなどで切り離すことでチューブレスバルブとして再利用出来るように設計されているそうです。
TPUチューブを使う人がチューブレスバルブを必要とするかは少々謎ではありますが、チューブレスバルブも単体で買うと結構高いので嬉しい仕組みです。私はたまにチューブレスバルブを使うので、このチューブを処分する時が来たらバルブを切り離して再利用しようと思っています。


バルブの根本付近の写真。チューブレスバルブらしくガスケットが根本についていますが、これがチューブとリムの接触を防ぎ、パンクを予防する効果もあるようですね。
なお、バルブコアは外れる構造になっていますが、手元に届いた時点でかなり緩んでいました。使用前にバルブコアツールで増し締めをしておいたほうが良いでしょう。
継ぎ目
TPUチューブは製造工程の都合上、必ず継ぎ目が存在します。

Aeroliteの継ぎ目はバルブのすぐ近くにありました。継ぎ目の幅は約2cmです。
表面

チューブ自体は透明ですが、オレンジ色でラインが印刷されています。これは「インストールガイドライン」と呼ばれるもので、取付時にねじれたまま空気を入れてしまうことを防ぐためのもの。こちらの仕組みは特許を取得しているとのことでした。
重量


2個体を計測し、どちらも実測34.5gでした。公称36gなので、少し軽いことになります。
金属バルブのTPUチューブは重くなりがちですが、40gを切っているので比較的軽量な部類に入ります。
大きさ

R’Airと比較してこのサイズ。TPUチューブとしては標準的なサイズと言えると思います。
取り付け

シャマルカーボン+AGILEST FAST 28Cに、Aeroliteを入れて組み付けました。
これまでチューブをねじれて付けてしまった経験はないのですが、インストールガイドラインがあったのでより確実に作業を行うことが出来ました。
実走
前輪5.8気圧、後輪6.2気圧を入れて、普段の夜練コースへ。
漕ぎ出しはTPUチューブらしく軽快。しかし、TPUチューブではありがちな「振動を拾う」「段差で跳ねやすい」といった感触はありません。まだ長距離を乗っていないので断言はできませんが、乗り心地の面ではこれまで使ったTPUチューブの中でも上位に入りそうです。

シャマルカーボンにはPanaracer「Purple Lite」を付けても乗っていますが、その時はTPUチューブらしい硬質さを感じました。それが今回はないので、AeroliteはPurple Liteよりしなやかなのかもしれません。チューブ本体を触った感じも、少し柔らかい印象があります。
空気圧低下
24時間経過時点で空気圧を計測。低下の具合は以下の通りでした。
■前輪
5.80→5.66気圧 (-0.14気圧)
■後輪
6.20→6.02気圧 (-0.18気圧)
24時間で-0.2気圧未満ということで、TPUチューブとしては優秀な値です。ブチルチューブ同等。
金属バルブのTPUチューブは空気の抜けが早い傾向があったので心配していましたが、杞憂だったようです。
価格
Aeroliteの国内定価は3520円(税込)です。

現在のTPUチューブの値段帯は、だいたい3種類に分けられると思っています。
低価格帯 | ~2000円 |
---|---|
中価格帯 | 2000~4000円 |
高価格帯 | 4000円~ |
Aeroliteはこの分類だと中価格帯に入ります。
これまで10種類くらいのTPUチューブを使ってきましたが、低価格帯は当たり外れが激しい印象。高価格帯は品質の高いものが多いものの、ちょっと消耗品としては高すぎる(パンクしたときのダメージが大きい)。
その点、中価格帯のもの(Revoloop/Eclipse/Guee)は割と品質はしっかり担保された上で、ギリギリ消耗品として許容できる価格に収まっているものが多いと思います。
まとめ
Guee「Aerolite」のファーストインプレッションでした。
まだ60km程度しか乗っていませんが、現時点での印象はかなり良いです。ブランドとしては初物であるにも関わらず、「バルブの不具合なし」「乗り心地の不自然さなし」「空気圧低下も微量」と、TPUチューブで出やすいイマイチな点をしっかり回避しています。
パンクのしやすさや耐久性などはこれから見ていきますが、総合的な品質は高そうに思えます。これからじっくり使って、数カ月後に本格的なレビュー記事を書く予定です。
私はこれまで十種類以上のTPUチューブを使ってきましたが、最近はどこのチューブを見ても「あそこのブランドのチューブと似てるな」「恐らくOEMだろう」というものがほとんどです。最近発売になったContinentalのTPUチューブは明らかにRevoloopと同じところで作られていますし(バルブの形状が全く一緒)。
しかし、このGueeのチューブに関しては他社のどれにも似ていません。バルブの構造やバルブ形状も独特で、かなり独自性が高く見えます。断言はできませんが、自社でしっかり設計しているのかもしれませんね。
著者情報
年齢: 40歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。