PIRELLI「SmarTUBE RS」ファーストインプレッション

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PIRELLIの最新TPUチューブ、「SmarTUBE RS」を購入しました。

目次

購入まで

まずは購入までの流れを書いていきます。

7月に存在を知る

私がこのチューブの存在を知ったのは今年の7月のこと。

この時の感想は「ああ、ようやく二代目が出たのか」くらい。

初代Smartubeは実物を見たことがありましたが、「なんか硬そう」「どこがSmartなのか分からない」という感想。実は初代SmarTUBEとSmarTUBE RSの間には二代目「SmarTUBE EVO」があるのですが、全く話題にならず、私も存在に気づいていませんでした。SmarTUBE RSはPIRELLIのTPUチューブとしては「三代目」であることになります。

記事に写っているチューブの質感はツヤツヤで硬そうに見えました。既にGueeのTPUチューブ「Aerolite」の乗り味に大満足していた私としては「まぁ試さなくてもよいだろう」と、そのまま流しました。

どうやら質感が違うらしい?

それから約1ヶ月後。マニアックな新パーツの入荷情報をよくアップしてくれている、ワイズロード アサゾー店のブログに以下の記事がアップされました。

そこに掲載された写真と文章を見ると、「これはどうやら、従来のTPUとはだいぶ質感が違いそうだぞ」ということが分かりました。サラサラでマットな質感。そして、よく伸びるとのこと。

Smartube RSのプレスリリース写真

こちら写真はSmarTUBE RSのプレスリリースの写真です。こちらのツルツル感と実物の質感はだいぶ違いますね。後から仕様が変わったんでしょうか? そういえば初代SmarTUBEも最初は透明でしたし、PIRELLIは割とマイナーチェンジを繰り返す体質なのかもしれません。

そうなると、俄然気になってきました。GueeのAeroliteは2024年夏に発売となった製品ですが、それより後発のSmarTUBE RSは更なる工夫がなされている可能性があります。まず見た目の質感から変えてきた所が興味深い。

購入するも……

そんなこんなで8月末に2本セットを購入。「さて、取り付けるか~」と思い箱を開けた所で固まりました。

…樹脂バルブだったんだ、これ…

しかも、バルブコアが外せない、接着剤が流し込んであるタイプの原始的な樹脂バルブ。チューブ本体にあれだけこだわったのに、バルブがこれだとは予想していませんでした。

これまでの私のTPUチューブレビューを見てもらえると分かりますが、樹脂バルブにはかなり悩まされてきました。太すぎてポンプに入らない、リムを通らない。熱で変形する。バルブコアが潰されるので空気の通りが悪くてポンピングが重い。

いくら乗り心地が良くても、またバルブで色々悩むのは嫌だったので、そっと箱に戻しました。

しかし、輪郭での評価を見て使うことに

11月に入り、私が購読している月額制自転車メディア「輪郭」でTPUチューブの比較試乗が行われました。

この比較試乗では「Smartube RS」の他に「Guee Aerolite」「Panaracer PurpleLite」「Ridenow 36g」に試乗。その中でライターであるお二人(安井さん・吉本さん)が「Smartube RSが別格」という見解で一致。

正直言って樹脂バルブへの心理的抵抗はかなり大きかったのですが、お二人がそこまで言うなら仕方ない。一度は箱に戻したSmartube RSを使ってみることを決めました。

PIRELLI「Smartube RS」

PIRELLI「SmarTUBE RS」のファーストインプレッションです。

ラインナップ

PIRELLI「SmarTUBE RS」のラインナップは以下の通り。

モデルタイヤサイズバルブ長重量定価
SmarTUBE RS700×26-35C42mm32g5400円
60mm33g5400円
80mm34g5400円

バルブ長の違いのみで3種類。これだけです。本国サイトを見ても他のバリエーションはありません。

SmarTUBE RSは基本的にロードバイク用で、太さは1種類のみ。ディスクブレーキ専用です。リムブレーキユーザーへの牽制なのか、「25C」をターゲットから外していることが興味深いですね。このチューブの柔軟性と幅・肉厚から考えれば25Cでも十分に使えると思われますが、「リムブレーキで使うなよ」という意思が「26-35C」という対応タイヤ幅に現れている気がします。

肉厚の薄い軽量タイプもラインナップには無く、通常タイプのみとなっています。

パッケージ

いつものPIRELLIといった感じのパッケージ。真ん中に穴が空いているのもいつものことですが、TPUチューブだと劣化が怖い。狙いとしては、「独特の質感をそのまま見て欲しい・触って欲しい」からこうしてるんだと思いますが。

パッケージ内は、チューブと説明書を兼ねた台紙のみ。バルブを押さえるシールなどは入っていません。

各部詳細

チューブの各部分を見ていきます。

バルブ

前述の通り、樹脂バルブです。バルブコアは外せないタイプ。

バルブステムにバルブコアを圧入して、接着剤で隙間を埋めています。後述しますが、このタイプの樹脂バルブは運用の上でのデメリットが多く、良い印象がありません。チューブ本体に注ぐ情熱の10%でもこちらに分けてほしいですね。

また、取り付けてから気づきましたが、セットで購入した2本の樹脂バルブの仕様が異なっていました。ツルツルのものと、マットのもの。マットのほうには縦の筋が入っています。

これについて国内代理店のカワシマサイクルサプライに問い合わせた所、以下の回答でした。

・マット仕上げとポリッシュ仕上げの違いについては製品向上のためのマイナーチェンジ
 (マットのほうが改良後)
・ポンプのグリップ性能向上のためにマット仕上げに変更

「ポンプのグリップ?」と思いましたが、たまに空気を入れている最中にポンプヘッドが空気圧に耐えきれずにスッポ抜けることがあります。これを防ぎたかったということでしょう。

恐らく、マット仕様に入っている縦筋も、ポンプヘッドの抜けを防ぐ目的がありそうです。

表面

本製品最大の特徴は、このチューブ本体の表面の質感でしょう。TPUチューブの表面は大抵「ツルツル」です。RevoloopやContiTPUあたりは例外的に表面がマットでサラサラですが、SmarTUBE RSは「マットで柔らかそう」な質感をしています。皆さんが「ラテックスチューブのような質感」というのも分かります。粉(タルク)はついてませんが。

表面には大きく「リムブレーキで使うなよ!」の注意書き。これは自己責任とかではなく、「本当に危険だから使うな」と言っているのだと思います(理由は後述)。

また、「MADE IN HUNGARY」という文字も印字されていました。ハンガリー産のTPUチューブって他に聞いたことがないですね。前作のEVOまではオーストリア生産だったはずなので、工場を変えたのかもしれません。

継ぎ目

TPUチューブでは避けられない「継ぎ目」。SmarTUBE RSの継ぎ目は約7mmほど。最近は20mm程度にしてくるブランドが多いのですが、「柔軟性があるから問題ない」という判断でしょうか?

重量

2個体購入し、両方とも37g。公称は33gのはずですが、4g重い。ホイールで4gは誤差ですが、TPUチューブで4gの差は案外大きいです。製造での公差が大きいんでしょうか?

絶対的な重量で言えば、ロード用TPUチューブとしては標準的です。

幅・肉厚

幅と肉厚がTPUチューブの乗り心地に関わりそうなことが分かったので、今回は計測を実施しています。

使用前の幅は28.6mm、肉厚は0.218mm(マイクロメーターによる3点計測の平均値)でした。幅も肉厚も、ロード用TPUチューブとしては標準的です。対応タイヤ幅(26-35C)からすると幅が少々細い印象ですが、これは「リムブレーキで使わせない」ための戦略からだと思っています。

取り付け

まずはそのまま膨らませてみました。やはり質感はマットですね。ここで困ったのは、「低圧状態だと、バルブからプスーと空気が抜ける音がする」ということです。2本のうち1本がその状態。恐らく、樹脂バルブにしたことでバルブコアが圧迫され、動きが渋くなっているために起こると思われます。

こちらはSmarTUBE RSのバルブですが、線で囲んだ部分が「ボコッ」と膨らんでいるのがお分かりでしょうか。この手のバルブは、「樹脂製のバルブステムにバルブコアを圧入する」という方法で作られているはずです。樹脂にネジ切りをした上での気密が難しいので「押し込んで接着剤で隙間を塞ぐ」という荒っぽい方法を取っていると思われます。

これの何が問題かと言うと、上記の写真のようにバルブステムの一部が膨れてしまいます。すると、ポンプヘッドの口金に入らなかったり、リムのバルブホールを通らない事態が起こります。また、押し込まれたバルブコアは外から押しつぶされる格好になり、動きが渋くなります。仏式バルブは、内部のピンがチューブ内の空気圧で押されてフタをしますが、動きの渋くなったピンは低圧ではスムーズに動かない。結果、「低圧で空気が漏れる」という事態が起こるわけです。高圧だとピンもしっかり押し付けられるので漏れはしないんですが。

幸い、SmarTUBE RSのバルブは膨らんだ状態でもポンプ・リムともに通過してくれましたが、バルブコアの動きは渋いです。空気を入れる時にも抵抗が大きく、パナレーサーのエアゲージも作動しません。

また、樹脂バルブはバルブナットも使えません。とりあえず音鳴り対策のために、MageneのTPUチューブに付いていたバルブ固定シールを貼っています。

実走

250kmほど実走しました。最初は前輪5.5気圧/後輪6.0気圧で使っていましたが「1日経って空気が少し抜けたくらいが一番好み」と気づきました。空気圧計が動かないので正確な気圧は分からないのですが、前輪5.3気圧/後輪5.8気圧くらいに調整して乗っています。

前評判通り、乗り心地の良さは素晴らしいです。一般的なTPUチューブとは全く違い、「硬さ」を感じません。ただそれは「一般的なTPUチューブ(Tubolito・Revoloop等)」と比べての話で、私がこれまでのTPUチューブで一番気に入っているGuee「Aerolite」と比較すると、正直あまり差を感じませんでした。

単純な乗り心地以外の動作、例えばコーナーリングやダンシングでの挙動で言えば微妙にSmarTUBE RSの方が「自然」な感じはするのですが、突き上げや振動、段差での挙動といった乗り心地に関する要素はGueeとほぼ同じという感想。ブラインドテストだったら判別が付きません。

それがキッカケとなってこちらの実験を行うことになりました。

乗り心地マップ。右上ほど乗り心地が良い

その結果、数値評価の上ではSmarTUBE RSとGueeは同等の位置にいることが判明。どちらも同じくらい快適ということです。そして、他のTPUとは明らかに違う位置にいることも分かりました。まさに「新世代TPUチューブ」と呼べるでしょう。

私の感覚では新世代TPUチューブよりもラテックスチューブの方が乗り心地で言えばやや上と見ますが、軽量ブチルチューブと比べると既に超えつつあると思います。

「乗り心地の良さ」はすなわち、「変形時に発生するロスが少ない」「跳ねにくい」ということでもあります。それはつまり、「転がり抵抗が低い」ということ。柔軟なチューブは、快適なだけではなく効率も良いわけです。

SmarTUBE RSの製品ページより引用

こちらは、PIRELLIが公開しているデータです。TLRタイヤにシーラントを入れた場合とSmarTUBE RSを入れた場合では、わずか0.2Wの差しか生じないと主張しています。ほぼ誤差。

さすがにクリンチャータイヤ+SmarTUBE RSでは、TLRタイヤに比べて1.7Wの開きがありますが、タイヤとチューブの改善によっては、クリンチャー+TPUがチューブレスを喰う未来もあるかもしれません。少なくとも運用の楽さで言えば圧倒的にクリンチャーですからね。

現在、プロロードレースの現場ではチューブレスタイヤが9割以上を占めると言われています。数年前まではチューブラータイヤが主流でしたが、ディスク化の流れとともに一気にチューブレスに書き換わった印象があります。仮に、クリンチャー+TPUチューブがチューブレスを上回る転がり抵抗を出せるとするならば、次は「クリンチャーがメインになる」時代が来ないとも限りません。

チューブレスタイヤも手掛けるPIRELLIがわざわざチューブレスとTPUチューブの転がり抵抗数値をプレスリリースに出してきたのは少々不思議でしたが、「将来的にプロトンの主流を獲りに行くぞ」という狼煙なのかもしれませんね。

空気圧低下

パナレーサーのエアゲージが反応しないので、空気圧低下は正確に計測できていません。

24時間経って次に空気を入れる際のフロアポンプの空気圧計を見る限りだと、多分0.2気圧くらいの低下にとどまっています。一般的なTPUチューブと同等と見て良いでしょう。

価格

価格は税込5400円。TPUチューブの中では高価格帯に入ります。テストで試すには正直痛い出費でした。

ただ、前作「SmarTUBE EVO」が税込6000円だったので、若干の値下げ。戦略的なものでしょうか。

耐熱性

さて、一点だけ心配なのが「耐熱性」です。

先述の「TPUチューブの乗り心地を数値化する実験」の結果、「TPUチューブの乗り心地を良くするには、ヤング率の低いTPU素材を使えば良い」ということが分かりました。

そして、そこから導き出されたのは「乗り心地の良いSmarTUBE RSやGuee Aeroliteは、耐熱性を下げてヤング率を下げたのではないか?」という推測です。あくまで推測であって断言はできないのですが、可能性は高いと思っています。パッケージにも、チューブ本体にもしつこく「リムブレーキで使うな」と書いてあるのは、ブレーキ熱を避けたい本音が出ているのではないでしょうか。

SmarTUBE RSは真夏が終わってから発売され、まだ日本の夏は未経験。日本の夏のアスファルトの温度は60~70℃まで上昇すると言われており、果たしてそれに柔軟なTPUが耐えられるのかは何とも言えません。リムブレーキのブレーキ熱は200-300℃と言われているのでそれよりは圧倒的に低いですが、接着剤が溶ける可能性もあり。特に、真夏の直射日光下に放置すると結構ヤバいと思います。

来年の夏、SmarTUBE RSユーザーの声には注目しようと思っています。

まとめ

PIRELLI「SmarTUBE RS」のファーストインプレッションでした。

噂通り、乗り心地は従来のTPUチューブ(Gueeを除く)とは別次元にあります。ホビーレースの世界でもSmarTUBE RSは既に広まりつつあるようで、今後の定番になる可能性もあるでしょう。

それだけに樹脂バルブだけは是非とも何とかして欲しいところ。乗り心地だけで言えばブルベでも使いたいのですが、バルブだけが引っかかっています。

先述の「バルブコアが潰れて空気が通りにくい」問題もありますが、電動ポンプの熱によるバルブ破損も考えられます。こんな高価なチューブをそのような形でお釈迦にしたら立ち直れません。そこで、PIRELLIの本国宛に「SmarTUBE RSの金属バルブ版」のリクエストを送ってみました。採用されるかは分かりませんが。


TPUチューブの歴史において、一つの転換点となる製品であるのは間違いありません。樹脂バルブは気に入らないのですが、もう少し使ってみようと思っています。

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著者情報

年齢: 41歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。
# これまでに著者が乗ってきたスポーツ自転車の履歴はこちらの記事にまとめています。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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