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【レビュー】Guee「Aerolite TPUチューブ(ROAD/60mmバルブ)」
評価:5
台湾ブランド、GueeのTPUチューブ。TPUチューブでは珍しい金属バルブを採用しています。
購入動機
本品は購入したものではなく、レビュー用に提供されたものです。

詳しい経緯は上の記事に書いています。かいつまんで書くと、山本カズさんからのご依頼でした。
GueeのTPUチューブは金属チューブを採用していることは知っており、以前から気になっていました。せっかくなので、ご依頼をお受けすることにしました。
製品概要
実測重量は、34.5g/34.6g(2本とも60mmバルブモデル)。
チューブ本体はTPU(熱可塑性ポリウレタン)、バルブはアルミ製(ネジ切りあり)。バルブコアは外れます。
製品ラインナップは以下の通り。
モデル | タイヤサイズ | バルブ長 | 重量 | 定価 |
---|---|---|---|---|
Aerolite ROAD | 700×20-32C | 60mm | 36g | 3520円 |
75mm | 36g | 3520円 | ||
Aerolite GRAVEL | 700×35-45C | 40mm | 45g | 日本未発売 |
60mm | 46g | 3850円 | ||
Aerolite MTB | 29×1.9-2.35 | 40mm | 90g | 3850円 |
27.5×1.9-2.35 | 40mm | 95g | 3850円 |
ディスクブレーキのみでの使用が許可されており、リムブレーキでは使えません。
使用感

ディスクロードに取り付けて、約4ヶ月で1200kmほど使用しました。合わせたタイヤは、Panaracer「AGILEST FAST 28C」です。
用途は夜練・ブルベ。あと、豪雪地帯で荒れた道を走る「川越~直江津ロングファストラン」でも使用しました。パンクは未だにありません。
各部詳細
チューブの各部分を見ていきます。バルブについては、後段で詳しく触れるのでここでは割愛します。
表面

チューブ自体は透明。透明なTPUチューブは結構珍しく、TPUチューブ界では老舗の「Eclipse」くらいでしょうか。その透明なチューブに、Gueeのコーポレートカラーであるオレンジ色のラインが印刷されています。

このラインは「インストールガイドライン」。チューブの取付ミスを防ぐためのもので、特許を取得済みとのこと。正しく取り付けられていると、オレンジのラインがタイヤの外周部に来ます。リムとタイヤの間を覗いた時にこのオレンジラインが見えていたら、取り付けに失敗しているということになります。
継ぎ目

TPUチューブは製造の都合上、必ず「継ぎ目」が存在します。Aeroliteの継ぎ目はバルブのすぐ近くで、継ぎ目の幅は2cmほど。

なお、こちらの記事によれば「継ぎ目が不均一に膨らむことを防ぐ」工夫がされているようです。Panaracer「Purple lite」も、膨らませた時に継ぎ目での段差が生じにくくなっていましたが、似たような工夫でしょうか?
対応タイヤサイズ

Aeroliteは最大32Cまでのタイヤに対応しています。

国内で販売されている2000円以下の安価なTPUチューブ(Magene/TNI/ARISUN)は上限が28Cまでになっていることが多く、昨今増えている「ロード用30C/32Cタイヤ」には非対応です。
32Cまで対応しているAeroliteは、こうした少し太めなロードタイヤを使っているユーザーの選択肢に入ることになります。
重量


公称36gのところ、実測値は34.5g/34.6gとやや下振れ。
ロード用TPUチューブ(通常厚)の相場は約40g。重くなりがちな金属バルブにもかかわらず、実測35gは軽い部類です。
付属品

昨今の中華TPUチューブには過剰なまでの付属品(修理パッチ/バルブ固定用シール/タイヤレバーなど)があることが多いですが、Aeroliteには特に付属品はありません。バルブキャップくらいでしょうか。
大きさ

R’Airと比較してこのサイズ。TPUチューブとしては標準的なサイズと言えると思います。
バルブ
Aeroliteでもっともユニークなのがバルブ部分です。現在、市場に存在するTPUチューブの中で、もっとも良く考えられたバルブといっても過言ではありません。

Aeroliteは一般的なブチルチューブと同じ太さのアルミ製金属バルブを採用。TPUと金属は接着が難しいようで、金属バルブを採用しているTPUチューブはほとんどありません。Gueeはその技術的課題を解決して金属バルブの採用に至ったようです。
金属バルブの利点
TPUチューブでよく採用される樹脂バルブは金属バルブよりやや太いことが多く、ポンプの口金によっては入らないこともあります。私はHIRAMEのポンプヘッドを使用していますが、樹脂バルブは太さギリギリで(入らない個体もあった)、差し込む際にパッキンを削ってしまう問題がありました。本来数年持つパッキンが1ヶ月くらいでボロボロになってしまい、それが原因で利用をやめたTPUチューブもあります。
樹脂バルブは基本的にバルブコアが接着されていますが(樹脂にネジを切ることが難しいため)、Aeroliteはバルブコアを外すことが出来ます。バルブコアを破損してしまったり、調子が悪い時に互換品のバルブコアに交換できるのは大きな利点です。
また、最近流行りの電動ポンプは樹脂バルブへの使用を禁止している場合が多いです(樹脂バルブが熱で溶けるため)。金属バルブであれば、そのリスクも低くなります。
熱がチューブ本体に届いてしまうと結局ダメなので、「リスクが低くなる」という書き方をしています。
弱点の根元を強化
「金属バルブを採用」というだけで珍しいのですが、さらに何重にも工夫が施されています。


根元にはゴツいガスケット。バルブ根元部分がバルブホールのフチと接触することによって起こるパンクを、このガスケットが防止してくれるわけですね。バルブとチューブの接着もしっかり行われているようで、安心感があります。

ちなみに、中華ブランドで金属バルブを採用している「CYCLAMI」のTPUチューブのバルブ根元はこんな感じです。ちょっと頼りない。接着も甘いのか、空気抜けの速度がブチルチューブの倍くらい早かったです(1週間で約2気圧低下)。
スレッドの切られたバルブステム
Aeroliteのバルブステム(棒の部分)にはスレッド(ネジ山)が切られています。これで何が嬉しいかと言うと、走行中にバルブがカタカタ音を立てなくなることです。

樹脂バルブを採用したTPUチューブは、上の写真のような取り付け状態になります。走行時の振動で、バルブホールにバルブが当たってカタカタ鳴るわけですね。こういう小さなストレスは消したいものです。


Aeroliteはスレッドの切られた金属バルブなので、バルブナットでリムにしっかりと固定可能です。音鳴りも皆無。
バルブナットが振動で浮いてこないように、途中にOリングを挟む工夫。PanaracerのPurple liteも同様の工夫をしていましたが、こういう小さなストレスを消すために頑張るブランドは良いブランドです。
また、バルブナットでバルブを固定すると、空気を入れる時に生じるパンクを防止する効果があります。
ポンプヘッドの中には、バルブを押し込むような動作で取り付ける製品もありますが、押し込むことでバルブの根元の接着部分が剥がれてしまうことも(↑の記事にその事例が詳しく書かれています)。バルブナットでバルブが固定できていれば、押し込むような動作をしても根元が破損することはありません。
Aeroliteと同じく金属バルブを採用しているEclipseのバルブは、最初は「スレッドなし」でしたが、つい最近「スレッドあり」に変更になりました。やはり、バルブナットが使えたほうが良いという判断なのでしょう。
チューブレスバルブとして再利用可能
Aeroliteは、このバルブ部分だけをチューブレスバルブとして再利用可能です。
通常のチューブはパンクしたら捨ててしまうだけですが、Aeroliteは環境への配慮として再利用を可能にしたようです。前述のゴツいガスケットや、バルブナットが使えるようになっているのも、チューブレスバルブとしての使用を見越しての設計。それがTPUチューブとしての弱点も消すことになっているあたり、設計が非常に巧みですね。
チューブレスバルブも普通に購入したら1本1000円ほど。3500円のチューブというと「高い」と感じる方も多いと思いますが、1000円のチューブレスバルブが付いてくると考えると割高感も少しは薄まるのではないでしょうか。
取付
他のTPUチューブと同様、0.5気圧以下で少し膨らませた状態で取り付けます。

前述の通り、音鳴りと空気入れ時の根元の破損を防ぐために、バルブナットを装着してから空気を入れます。当初は前5.8気圧、後6.2気圧。現在は、前5.5気圧、後6.0気圧で運用中。
バルブの太さは実測5.92mmと、一般的な金属バルブと同様の太さでした。
走行性能
TPUチューブは一般的に「乗り味が硬い」「路面のギャップで跳ねやすい」という特徴があります。そのため、ブチルチューブよりも空気圧を少し落として使うのが定跡とされます。しかし、TPUチューブはリム打ちパンクもしやすい特徴があるため、空気圧を落としすぎるのもまたリスキー。

AeroliteはTPUチューブの中ではかなり乗り心地が良い部類に入ります。

Aeroliteの前は同じホイール・タイヤでPurple liteを入れていましたが、Purple liteは一言で言えば「TPUチューブらしい」硬さがありました。やたら硬すぎたRidenowやMagene EXARほどではありませんが、ブチルチューブとはっきり区別できる明確な差を感じました。
一方、Aeroliteはブチルチューブと区別がつかないほどのしなやかさがあります。ラテックスチューブほどの柔らかさではないですが、TPUチューブ特有の硬さを全く感じません。先日参加した「川越~直江津ロングファストラン」では冬の豪雪で路面が荒れている妙高高原からのダウンヒルを通るのですが、そこでも振動をかなり軽減してくれた感触がありました。
もちろん、重量は35gと非常に軽いので、漕ぎ出しも軽快。「軽さの代償に乗り心地を我慢する」のが従来のTPUチューブでしたが、本製品は特に代償を捧げることがなく、軽さのメリットを享受できます。
空気圧低下
一部のTPUチューブには「空気の抜けが早い」という弱点があります。
Aeroliteも24時間経過時点で空気圧を計測。低下の具合は以下の通りでした。
■前輪
5.80→5.66気圧 (-0.14気圧)
■後輪
6.20→6.02気圧 (-0.18気圧)
24時間で-0.2気圧未満ということで、TPUチューブとしては優秀な値。ブチルチューブと同程度なので、空気圧低下を特別気にする必要は無さそうです。
耐パンク性・耐久性
まだパンクをしていないので、耐パンク性・耐久性(寿命)ともに不明です。
ただ、パンクを防ぐ工夫が多く施されているので、少なくとも取付時のパンクについてのリスクは軽減されているはずです。また、かなり荒れた道を走ってもパンクすることもなかったため、耐パンク性は高そうに思えます。

再度の紹介となるこちらの記事によると、耐用年数は3年だそうです。だいたいチューブは1年で自然劣化するイメージなので、突き刺し等のパンクがなければ長く使えるという点は良いですね。
価格
Aeroliteの国内定価は3520円(税込)です。

現在、TPUチューブの値段帯は3種類に分けられると私は考えています。
低価格帯 | ~2000円 |
---|---|
中価格帯 | 2000~4000円 |
高価格帯 | 4000円~ |
Aeroliteは中価格帯に入る製品です。
もっとも安いTPUチューブならば2-3本買えてしまう価格ではあるのですが、ここまで述べてきた工夫・品質・性能を考えると、見合った価格設定に感じます。安いTPUチューブを買って出先でトラブルに遭うことを考えたら、これくらいは出そうと思えます。
その他
TPUチューブはだいたい「コレはアレと同じ工場だな」と分かるくらい似通っているものが多いんですが、Aeroliteに関しては他のどのTPUチューブとも似ていません。マイナーな工場を使っているのか、自社で特注しているのかは不明ですが、独自性と品質を両立しているのは素晴らしいですね。
まとめ
従来のTPUチューブで弱点とされていた部分をことごとく解消したTPUチューブ。
取付時のパンクを防止する工夫や、バルブに対する工夫。乗り心地も良く、空気抜けも早くはない。運用面・性能面ともに優れています。
提供品を絶賛してしまうと「怪しい」印象が出てしまうので嫌なんですが、今回は本当にダメな所が一切ありませんでした。
私はこれまで11種類のTPUチューブを試しましたが、ベスト製品の座はGuee「Aerolite」に入れ替わりました。これまでのベストであったRevoloopもかなり良いチューブです。しかし、Aeroliteは基本的な品質を確保した上で、バルブの工夫と乗り心地の向上を果たし、TPUチューブを一歩前進させた印象があります。
今回は提供品でしたが、次回からは自費で指名買い予定です。価格は普及帯のTPUチューブ(2000円前後)の1.5~2倍ですが、それだけの価値はあると感じました。
TPUチューブを使っていて、「軽いんだけど乗り心地が硬い」「樹脂バルブに不満がある」といった方にはAeroliteをオススメします。
評価
対象モデル: Guee「Aerolite TPUチューブ(ROAD/60mmバルブ)」
年式: 2024年
定価: 3520円/本
購入価格: (レビュー用提供品)
公称重量: 36g
実測重量: 34.5g
価格への満足度
(提供品のため対象外)
総合評価
現状で最高のTPUチューブ。様々な工夫で従来のTPUチューブの弱点を克服している。
著者情報
年齢: 40歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。
コメント
コメント一覧 (1件)
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