【レビュー】Panaracer「AGILEST FAST CL」

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評価:4.5

Panaracerのロードタイヤ。「ROAD、最速解」というキャッチフレーズで、転がり抵抗が少ないことを売りにしたタイヤです。

今回レビューするのは、クリンチャー版の25C&28Cです。

目次

購入動機

2023年10月に25Cサイズを初購入しました。

その時の購入理由はこちらの記事に詳しく書きました。

Panaracerブースの説明

端的に書くと、「某社外機関による測定では、転がり抵抗が他社有名タイヤよりも良い値が出ていた」という話を宇都宮ジャパンカップのパナレーサーブースで聞いたからです。そのタイヤは様々なブランドがベンチマークとしているタイヤでもあり、私も使ったことがあるタイヤでした。

Cyclowiredの記事にも以下の記載があります。

海外にある外部検査機関に依頼をして客観的な性能評価も実施した。
その結果は、転がり感の高さで人気の高い某海外ブランドを凌駕する数値を記録しており、AGILEST FASTの性能は、まさに世界に誇れるレベルであると言えよう。

そして、12月のブルベに投入。実際に使ってみて具合が良かったので、年明けには28Cサイズも注文しました。

製品概要

実測重量は、25Cが226/227g、28Cが245g/255gです。

AGILESTシリーズには従来3タイプがありましたが、「FAST」は4タイプ目になります。分類について以下に示します。

タイプ名特徴
AGILESTオールラウンドタイプ。
AGILEST LIGHT軽量タイプ。
AGILEST DURO耐久性重視タイプ。
AGILEST FAST転がり抵抗の低いフラグシップモデル。

FASTは、Panaracer公式で「AGILESTを超えたAGILEST」と説明されています。用途としては無印AGILESTと同じながら、よりレーシング性能を高めたモデルと言えます。

「購入動機」の章に書いた話に関連しますが、「クリンチャータイヤとして世界一の低抵抗」を目指して開発されたそうです。

最大の特徴はケーシングで、「電子線照射によりケーシング表面を平滑化することにより転がり抵抗を下げる」というアプローチが取られた「AGILE-F Casing」を採用しています。

接地面のコンパウンドは、「ZSG AGILE-F Compound」。耐パンクベルトは「AGILE-F Belt」と、いずれも「FAST」用に新開発された素材を採用しています。

現在の「FAST」のラインナップは以下の通り。発売当初はクリンチャーのみでしたが、あとからTLRが追加されました。

タイプモデル名サイズ・重量カラー
クリンチャーAGILEST FAST700 x 25C (230g)
700 x 28C (250g)
チューブレスレディAGILEST FAST TLR700 x 25C (255g)
700 x 28C (275g)
700 x 30C (295g)

使用感

クリンチャーの25Cをファストランで使用、クリンチャーの28Cをブルベで使用しました。使用距離や、組み合わせたホイールについては以下の通り。

25C28C
使用距離2000km1000km
組合せたホイールTOKEN「KONAX PRO」
内幅: 20mm
SHIMANO「WH-R8170」
内幅21mm
チューブPanaracer「R’Air」Revoloop「RACE」
空気圧前6.5気圧/後7.0気圧前6.0気圧/後6.5気圧

パッケージ

昨今、自転車パーツのパッケージも簡素化が進んでいますが、FASTの箱は気合が入った豪華仕様です。タイヤに入ったロゴと同様、パッケージのロゴも見る角度で色が変わるホログラム付き。

タイヤの適合表には、リム内幅23mm/25mmの場合の記載があります。ノーマルAGILESTは内幅21mmまででしたが、昨今レース用のカーボンリムは内幅が拡大の一方なので、こうした表になったのでしょう。

重量

無印AGILESTに比べると、AGILEST FASTは全体的に重めの仕上がりになっています。

公称重量と実測重量について以下に示します。

タイヤ公称重量実測重量
AGILEST CL 25C200g
(190gだったが、後に変更)
190g/196g
AGILEST CL 28C210g205g/210g
AGILEST FAST CL 25C230g226g/227g
AGILEST FAST CL 28C250g245g/255g
AGILESTとAGILEST FASTの重量差

同じサイズでも、FASTの方が3-40g重いことになります。

ケーシング幅は無印AGILESTと特に変わっていないので、単純に盛られたゴムが厚いということになるはず。

無印AGILESTがオールラウンドタイヤとしては軽すぎるということでもあるんですが、FASTは競合他社の同サイズと比べても+10gくらいの重量です。

最新のタイヤの中だと、Hutchinson「BLACKBIRD」クリンチャー28Cも240g前後は合ったので、最近はまたタイヤの重量が増えつつあるのかもしれません。

トレッドパターン

無印AGILEST同様のトレッドです。若干、模様めいたものがありますが、スリックタイヤに分類されるはず。

ちなみに裏面はこんな感じ。こちらも無印AGILESTとほぼ見た目は変わらず、電子線照射の形跡は見た目では分かりません。

取付

リムへの取り付けについては特に固さの面では苦労することはありませんでした。

ただ、取付時にものすごくカスが出ました。Panaracerのタイヤはだいたいこう同じですが、表面の離型剤がこすれるとこうなります。それにしてもFASTの離型剤の量は多かったような。取付時には、足元にビニールシートを敷いたほうが後で掃除が楽になると思います。

無印AGILESTの離型剤はネバネバしていた感じがあって異物を拾いやすかったのですが、FASTはサラっとした感じ。ただ、残しておく意味もないので走り出す前にぬるま湯を付けたウエスで拭き取ります。

取り付け完了の図。完全には拭き取れていませんが、走っているうちに剥がれます。

タイヤ幅

25Cに6気圧入れた状態で、26.5mmでした。内幅19mmのリムに付けた時に25mm幅になるはずなので、内幅20mmのリムに付けたら少し広くなるはず。とはいえ、25.5mmくらいが妥当なラインなので、ちょっと太めということになります。

28Cの方は未計測です。

巡航

川越直江津ロングファストランで使用

平地巡航はこのタイヤが本領を発揮するシーンです。走った体感としては速さを感じませんが、タイムを見ると速い。

いつも走っているド平坦の練習コースがあるんですが、その区間でその年のベストタイムを記録(同区間をその年で93回走行)。体力が今よりあった頃のベストタイムにはかないませんが、ここ数年出なかったタイムが出て驚きました。

ICANのサイトにこんな記事があります(オリジナルはCyclingnews.comと思われるが、計測結果へのリンクが削除されている)。24種類のタイヤの転がり抵抗をローラー上でテストしたもの。

その中にAGILEST FAST(クリンチャー/28C)もラインナップされていますが、クリンチャータイヤではトップの成績を出しています。残念ながら皆が良く知る「GP5000 クリンチャー」はリストの中にありませんが、BRR(有名な転がり抵抗測定サイト)でGP5000と同程度の転がり抵抗であるクリンチャータイヤ、SPECIALIZED「Turbo Cotton」よりもFASTの方が低抵抗という結果になっています。

更に驚くべきことは、BRRでもトップクラスの低抵抗を誇る「GP5000S TR」とほぼ同程度の転がり抵抗を記録していることです。転がり抵抗ではクリンチャーよりもチューブレスが優位とされる中で、チューブレスの最高峰のGP5000S TRと互角のAGILEST FAST。この結果が本当ならかなりの高性能ということになります。

漕ぎ出し・加速

重量があるので漕ぎ出しは重いのではと想像していましたが、そこまででもなく。しっかりと地面を捉える感じ。

箱根200ブルベで使用

ただ、登りでは少し重さを感じました。箱根の小田原側をこのタイヤで登りましたが、平地ほどの軽快さは感じません。

乗り心地

300kmブルベで28Cを使用

「凄く良い」とまでは言いませんが、クリンチャータイヤ全体の中では平均より上の乗り心地のはず。無印AGILESTよりも乗り心地は良いと思います。

トレッドの肉厚があること、コンパウンドがAGILEST比で柔らかめであることから、乗り味も優しくなっていると思われます。

なお、新品状態のトレッドの肉厚を計測した所、無印AGILESTは2.1mm、AGILEST FASTは2.8mmでした。

コーナーリング

非常に安定感と安心感があります。コンパウンドの効果なのか、しっかりと路面を掴む感じがあります。

ウェット特性

幸か不幸か、このタイヤで雨天に遭遇したことがまだ一度もないため未知数です。

耐パンク性

AGILEST FASTでのパンクは、300kmブルベ走行中の一度のみです。この時は釘のような金属片が刺さってのパンクだったので、他のタイヤでも耐えきれないと思われるので私の中ではノーカウント。

耐パンクベルトもしっかり入っていますし、トレッドの肉厚もあるので耐パンク性能は低くないと思われます。

パンクはしなかったものの、気になるのがトレッド表面の小キズです。無印AGILESTに比べても明らかにこうした傷が付きやすいです。コンパウンドが柔らかいせいでしょうか? 同様の指摘がサイスポの記事や、バイシクルクラブの記事でもされていたので個体差というわけでもなさそう。

実害はないものの、あまり気持ちの良いものではないのでバージョンアップ時には対策してほしい点ではあります。

耐久性(寿命)

まだ25Cも28Cも使い切っていませんが、だいたい3000kmくらいで寿命を迎えそうに思います。最近のタイヤにしてはちょっと早い気もしますが、レース機材としては標準的な寿命でしょう。

見た目

無印AGILESTやAGILEST DUROに比べるとロゴが主張しない色なので、どんな色のフレームにも合わせやすいと思います。

価格

定価は9900円(税込)ですが、通販の実勢価格は7000-7500円程度です。性能面で考えると安いと思いますが、使える距離で考えると少し高いかもしれません。

まとめ

バランスが取れた高性能クリンチャータイヤ。

スペック重量が重いいので使うまでの心理的障壁は大きいですが、実際使ってみると良いタイヤです。この記事を書く中で、FASTの転がり抵抗を測定した記事を見つけて少し驚きましたが、元々それくらいの高性能を目指して作ったタイヤということで後から納得しました。実際、体感よりもタイムが良いですし。

Panaracerの性能チャートでは「ヒルクライム:10、レース:10、ツーリング:6」とされていますが、乗り心地も悪くない&挙動もピーキーではなく、ロングライドにもマッチするタイヤだと思います。ただ、タイヤの擦り減りが早そうなので、その意味で「ツーリング: 6」にしたのかもしれません。

唯一気になる点はトレッド表面の小キズ。このトレッドに使われたコンパウンドが転がり抵抗の低さの秘密なのかもしれませんが、もし可能なら改善を願いたい所です。

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評価

対象モデル:  Panaracer「AGILEST FAST CL」
年式: 2023年
定価: 9900円
購入価格: 7480円
公称重量: 230g(25C)/250g(28C)
実測重量: 226g(25C)/245g(28C)

価格への満足度

7/10

性能を考えると安いが、長持ちはしないので。

総合評価

9/10

バランスの取れた高性能クリンチャータイヤ。

著者情報

年齢: 40歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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