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スペシャライズド稲城 オープン記念試乗会に参加
矢野口にニューオープンした「スペシャライズド稲城」のオープン記念試乗会に参加してきました。
参加のきっかけ
7/26(金)、近年ロードバイク関連施設が次々オープンしている稲城市の矢野口に「スペシャライズド稲城」がオープンしました。
おや、見たことのある人が…
サイスポにもオープン記念の記事が上がっていました。

……おや、スタッフの写真に見覚えのある方が。
名前を見て確認。間違いない、昨年のPBPの際に知り合った増田さんです。なんと若くしてスペシャライズド稲城の店長に抜擢されたとのこと。
昨年のPBPを時間内完走をされている、「走れる店長」さんです。
試乗車のラインナップがなかなかすごい
サイスポの記事を見ると、オープン記念試乗会の試乗車ラインナップがなかなか魅力的でした。
試乗車としてスペシャライズドを代表するロードバイクのハイエンドモデル、「Sワークス ターマック」「Sワークス ルーベ」「Sワークス エートス」3モデルを豊富なサイズでそろえた。
スペシャのロードバイクの最高グレードがすべて揃っていて、サイズも豊富。更に、屋内ではなく公道試乗可能。これはなかなか無い機会です。
スペシャの試乗はこれまでにも何度かしていますが、最後は2018年。現在のロードバイク最高峰ブランドの1つに数えられるスペシャの最新機を試してみたくなりました。
増田さんへのご挨拶がてら、日曜日(試乗会最終日)に伺うことにしました。
スペシャライズド稲城について

※2024/7/28現在の情報です。
アクセス
矢野口駅から徒歩1分ほど。隣はクロスコーヒー、向かいは矢野口ローソンです。
営業時間
平日: 11~19時
休日: 7~18時
なんと休日は朝7時からの早朝営業です(お隣のクロスコーヒーも休日は7時オープン)。
定休日
木曜日
店内の様子

入口正面には、スペシャライズド50周年記念バイクが飾られていました。


その隣には、増田店長の私物のS-WORKS Roubaix SL7が。使用感のあるVOLT800 NEOが付いていました。昨年のPBPで使用した個体だそうです。
スペシャのフィッティングサービスであるRETULのための専用スペースも完備されていました。
詳しくはこちらの動画を見るのが分かりやすいと思います。
試乗の感想
今回は4台の試乗を行いました。
一回あたり20分までとのことだったので、矢野口からも近い「よみうりV通り(通称: V坂)」を登って降りてくる4kmのコースで試乗しています。
S-WORKS ROUBAIX SL8

1台目の試乗は、ルーベから。ロングライダーとしてはやはりこれを乗らないと。ターマックに比べると待たなそうだからってのもありますが。
過去に2度試乗しているFutureShock搭載ルーベ
ルーベのアイコンになっているフューチャーショック(ヘッド一体型の衝撃吸収システム)は2016年から導入されました。それから8年間で2回ほど試乗しています。
新型ルーベ、試乗。タイヤは28C、気圧は前後6.5気圧くらい。やはりスルーアクスルゆえか、硬い。わざと段差に突っ込む際にはハンドル下の機構の効果を感じるものの、加重しなければそこまで意味なし? pic.twitter.com/h53TeRFSkd
— ばる (@barubaru24) October 16, 2016
1度目の試乗は2016年。フューチャーショック搭載の初代機の登場直後でした。
正直「なんだこれ?」という感じだったことを覚えています。フレームはガチガチに硬いけど、進みが悪い。それなのに、フューチャーショックは立ちこぎでも動いてしまって気持ち悪い。
当時の設計者は「快適性はフューチャーショックに任せて、フレームは剛性重視に仕上げた」とコメントしていたはずですが、「いくらなんでも割り切り過ぎだろう」という走りでした。当時はまだディスクロードの設計ノウハウも揃っていなかった頃なので走行バランスが悪いのは仕方なかったのかもしれません。
スペシャライズド厚木にてS-WORKSの試乗会!さすがにS-WORKSは素晴らしい。COMPはまたどこかで乗ろう… pic.twitter.com/l7ytPu8CpK
— ばる (@barubaru24) September 29, 2018
2度目は2018年。モデルチェンジはされていないはずですが(2016年と同じくSL5世代)、2年も経過するとマイナーチェンジが行われたのか、なかなかバランスが整っていて感心したことを覚えています。
そして、2024年は3度目の試乗ということになります。
SL8の快適性
昨年リリースされたRoubaix SL8ではFutureShockもバージョン3にモデルチェンジ。S-WORKSグレードとPROグレードには、ダイヤルでサスペンションの効き具合を調整可能になっています。

反時計回りで動きを大きく、時計回りで動きを小さくする方向になります。一番最後まで時計回りに回すと一切動かなくなりました。
一切動かない状態だとスプリント的な動きでもダイレクト感が高い。反面、路面の段差は普通に拾います。
一番動きが大きい状態にすると段差の衝撃はかなり緩和されます。スプリント的な動きでは「動いたかな?」程度の反応はありますが、初代FutureShockとは比べ物にならない自然な動きでした。


シートポスト側は、クランプ点をあえて下げて、シートポストがしなりやすくする構造になっています。「これ動きすぎないかな?」と思ったのですが、乗ってみると自然な動きです。TERRAシートポストほど動くわけではありません。

なお、ルーベは最新型でもケーブルが露出しています。FutureShockがあるので、内装できないわけですね。ただ、ポジション調整などを考えるとこちらのほうが有り難いとは思うのですが。
走行感
かなり太いタイヤが付いているんですが、平地・登りともに走行感に重ったるさはありませんでした。

32Cのチューブレスレディタイヤにチューブを入れたクリンチャー仕様でコレなので、チューブレス運用したらもっと感触は良いはず。
FutureShockを完全ロックした状態でV坂を登りましたが、今回乗った4台の中では3番目に速かったです。
増えたアイレット
ルーベはSL7→SL8で、アイレット(ダボ穴)がかなり増えました。


トップチューブにはボルトオン式のトップチューブバッグが付けられるアイレット。そしてダウンチューブ下側にも、ツール缶などを付けられるアイレットを装備。これらはSL7には無かったものです。


そして、泥除け取付用のアイレットも完備。これは羨ましい。私が乗っているGE-110にはトップチューブとダウンチューブ下のアイレットはあるんですが、泥除け用のアイレットはないのです。

かつてルーベはクラシックレース用に設計されていました。エンデュランスロードの中でもレーシングな方向性だったわけですが、それなら泥除け用の穴は必要ないわけです。
SL8からは、ターゲットをプロレーサーから一般のロングライダー向けに方向性を変えてきた印象がありますね。実際、ここ2年の「パリルーベ」ではルーベではなくターマックが使われています。
S-WORKS AETHOS

2台目の試乗は、スペシャライズドのロードにおける軽量担当「エートス」です。エートスは一度も試乗したことがありません。
とにかく軽い
まず持ち上げてみましたが、笑っちゃうほど軽いです。公称フレーム重量585gは伊達ではないようで。


デカール類はすべてステッカー。塗装してクリア層を作る重量すら削っているようです。

ハンドル周りもシンプル軽量。ケーブルは外装です。
軽やかに登る
このフレームが最大に輝くのは登り。V坂を登ってみましたが、想像以上に軽やかに登ります。速度を見ても、今回4台の中で2番目でした。
スローピングを強くしたことで、恐らく重心位置も下がっているのでしょう。立ちこぎでの左右の振りも異様に軽い。クライミングマシンとして欲しいと思う人は多そうです。
下りで「あれっ?」
そんな感じでV坂を好印象で登ったのですが、下りで「あれっ?」となりました。
私は下りのコーナーで、膝でトップチューブを抑えて走るクセがあります。そのほうが挙動が安定する気がするので。
しかし、スローピングの強いエートスはトップチューブの位置が低く、膝が空振りしてしまったのでした。何度も下ってるはずのV坂の下りが急に怖く感じられました。
エートスのスローピングが強いことは分かっていましたが、こういう感触的な部分は実際に乗らないと分かりません。今回乗れて良かったです(not for meであることが分かった格好ですが……)。
TARMAC EXPERT SL8

3番目に試乗したのは、ターマック SL8 EXPERT。ターマックのセカンドグレードです。
トップグレードのS-WORKSは大人気でなかなか返ってこなかったので、待っている間にセカンドグレードに乗ることにしました。
本日始めてのケーブル内装フレーム


ターマックはレーシング機材ということで、ケーブル類はすべて内装。セカンドグレードであるEXPERTは一体型ハンドルではなく、エアロハンドル+ステムという構成です。これがコブダイと評されたヘッドチューブ……。
普通に良く走るが……
さて実走。普通に良く走るし、快適性も悪くない。登りはちょっとキレがない。今回4台乗って、登りは一番遅かったです。
ここまでに乗ったのが「エンデュランスロードのトップ」「軽量バイクのトップ」だったこともあり、ちょっと可哀想な順番だったかもしれません。最初にこれに乗ったらまた印象も違ったのかもしれませんが。
S-WORKS TARMAC SL8

4台目はS-WORKS ターマック SL8。スペシャの最上級レーシングモデル。
40分ほど待ってようやく乗れました。それだけ注目度の高い機種ということです。
ハンドル周り


さすがS-WORKS、塗装も綺麗です。ケーブルは完全内装でステム一体型ハンドル。

一体型ハンドルの上ハンドル部分は滑り止め加工がされていて、バーテープを巻かなくても滑りにくくなっているようです。腕を乗せて疑似エアロポジションを取る選手向けでしょうか?

フレームの感想ではありませんが、この試乗車に付いていた新型REDのブレーキは異様に引きが軽かったです。油圧といえど、ここまで軽いものは記憶になく、シマノを軽く凌駕しています。それでいて、V坂からの下りでもちゃんと効く制動力の強さもありながらコントローラブル。
ブレーキキャリパーの肉抜きは見た目に怖いですが、このブレーキは凄いなと思いました。ただ、ちょっとハンドルからレバーまでの距離は長めなのは気になりましたが。
現在の最高峰を体感
コンタドールとシュレク兄弟が覇権を争っていた2010年前後から、スペシャのS-WORKSターマックはレーシングロードバイクのベンチマークと捉えられてきました。現在でもその評価は変わっていないはず。
ここ最近私はエンデュランスモデルばかり試乗していて、レーシングモデルの最高峰に試乗するのは久しぶりです。
乗ってみると、加速もスムーズで巡航もしやすい。スプリントの掛かりも良く、登りも今回の4台では一番速度が出ました。たった4kmの試乗だったので空力の良さを感じる場面はありませんでしたが、S-WORKSターマックのオールラウンドさは体感できました。これが現在の最高峰なんですね。
付いているパーツの違いもあるのだと思いますが、EXPERTとS-WORKSでは相当の差がつけられているように感じました。まぁ値段も倍違うのですが……(S-WORKS: 179万円、EXPERT: 82万円)。
まとめ
炎天下の中でしたが、試乗会に出向いて良かったです。
増田さんにもご挨拶できましたし(試乗車の調整もしっかりやってくれました)、スペシャのトップグレード3種類を試すことも出来ました。
走行性能的に最高だったのはやはりS-WORKSターマックでしたが、気に入ったのはS-WORKSルーベでした。2016年には「なんだこれ?」だったFutureShockを、8年でよくぞここまでバランスを整えてきたなと。すぐに方向性を転換することが多いスペシャが8年も継続しているシステムというのは珍しいですが、それだけこの機構に愛着があるのでしょう。しっかり磨き上げられています。
あと2018年の試乗時にも感じたことですが、スペシャの試乗車は整備状態が良いですね。
こういった試乗会で乗る試乗車は、フレームの性能を見る以前にブレーキや変速の具合がイマイチであることが良くあります。手荒く扱われることもあるので状態を維持するのも難しいのだと思いますが、試乗は購入に繋がることも多いはず。試乗車の整備状態が良いと、フレームの印象も良くなるはず。今回はフレームとパーツ性能に集中することが出来ました。
矢野口周辺はかなり盛り上がってきましたね。今後の展開が楽しみです。
著者情報
年齢: 39歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。