タンカラーのタイヤは乗り心地が良いのか?

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AGXEROのブラックカラーとタンカラー(正確にはアンバー)を両方買って乗り比べを行いました。

目次

実験の動機

まずはこの実験を行おうと思った動機から。

基本は黒一筋

私は昔から、タイヤは「黒一筋」。

赤が好きだが、カラータイヤはまず使わない

メーカーとしてもそのカラーを基準に作っているはずですし、昔のカラータイヤ(特に接地面に色が付いたもの)は滑るものが多く、それを避けようと思うとブラックを選ぶのが一番無難だったのです。

また、以前に妻が購入したブラウンカラーのグラベルキングが物凄く固く、タイヤを嵌めることを諦めたことも、基本はブラックを選ぶようになった理由です。

初めて(まともに)使った黒以外のタイヤ

基本的にはブラックカラーのタイヤしか使ったことがない私でしたが、2018年に初めてブラック以外のタイヤを使う機会が訪れました。それが、Panaracer「RACE C EVO3」でした。

このタイヤのケーシングはタンカラー(正確にはスキンサイド)のみ。定番のブラックカラーの展開はありませんでした。

タンカラーは自転車の見た目のイメージが大きく変わってしまうので最初は取り付けに抵抗があったのですが……乗ってみると、これが大変良かったのです。乗り心地がすごく良い。それまで私がメインで使っていたのは26CのGRAVELKINGだったのですが、あまりの落差に驚きました。「同じ会社の製品で似たような構造のタイヤなのにここまで違うのか」と。

GRAVELKINGは耐パンクベルトがサイドまで含めて入っていましたが、RACE Cはトレッド下のみ。サイドに耐パンクベルトを設けない分だけ乗り心地が良くなるのは必然ではあるのですが、それだけでここまでの差が生まれるとも思えず。当時の私は「ケーシングがタンカラーであることが理由なのでは」と考えました。

RACE Cを買ったのは2018年6月の下旬。発売直後に試して気に入ってしまった私は、2018年8月に北海道で開催された1200kmブルベにRACE Cを投入しました。北海道内陸部の荒れた路面では、このタイヤの乗り心地が重要になるに違いないと考えたからです。

内陸部の低温ひび割れによる衝撃は想像以上でしたが、このタイヤのおかげもあって無事に1200kmを完走。うち800kmが雨だったのですが、パンクにも遭遇せず。気に入って、その後もしばらくはメインタイヤとして使い続けました。

しかし、2020年頃にRACE Cを店頭で見かけなくなり、2022年のAGILESTの登場と共に全く見なくなってしまいました。

Goodyear「F1R」の落差

RACE Cから5年ほど経過した2023年の9月、Goodyearの代理店であるフカヤから「F1R」というタイヤのレビュー依頼を頂きました。

ブラックカラーを希望していたのですが、届いたのはタンカラー(正確にはTransparent)のモデル。RACE Cが廃版になって以降はスキンサイドのモデルは使っていなかったのでずいぶん久しぶりに使うことになります。

これがまた乗ってみると、良かったのです。非常にしなやかで乗り心地が良い。漕ぎ出しの軽さも良好で、パンクもなくタイヤの寿命まで使い切りました。5000kmは使ったと思います。

そして今年の初め。行きつけのショップでF1Rのブラックカラーがセールになっていました。以前使った感触が良かったので買ってみたのですが……

取り付けて乗ってみると、好印象だったスキンサイドとはまるで別物に感じられたのでした。乗り心地が硬い。転がる感じも希薄。全く良い印象がなく、すぐにAGILEST FASTに戻してしまいました。

タンカラーは乗り心地が良いのでは?

以上の2つの出来事から私がおぼろげに思っていたのは、「同じタイヤでもタンカラーはブラックカラーよりしなやかで乗り心地が良いのではないか?」ということです。

そこで、Panaracer「AGXERO」のブラックカラーとタンカラー(正確にはアンバー)を比べてみて何らかの違いはあるのかを確かめてみることにしました。

実験

それでは実験をしていきます。とはいえ、そんな大層なものではなく「見比べる」「触り比べる」「乗り比べる」という比較だけです。

用意したのはこちらの2セットのタイヤ。同じPanaracer「AGXERO」クリンチャー28Cのカラー違いです。

ブラックは既に1000kmくらい使用済みの段階で、アンバーを追加で購入しました。

重量の比較

AGXERO クリンチャー28Cの公称重量は、ブラックもアンバーも同じ230gです。

まずはブラックの重量を計測。

225gと230g。平均227.5g。

次にアンバーの重量を計測。

222gと226g。平均224.0g。

たまたま軽い個体を引いた可能性もありますが、アンバーの方が平均では3.5g軽いという結果でした。

見た目・手触りの比較

見た目と手触りの差を見ていきます。

ブラックカラーの裏面。黒く、ゴムで覆われています。

続いてアンバーカラーの裏面。サイドだけアンバーカラーかと思いきや、ケーシング全体がアンバーカラーです。手触りとしてはブラックよりしなやかに感じますが、見た目の印象でそう感じているだけかもしれません。

光にかざして裏から見るとこんな感じ。サイドは透けています。

参考までに、Goodyear「F1R」のTransparentを裏から見るとこんな感じ。こちらの方が若干透け感が強いようには感じます。Transparentですからね。

取り付けた後の見た目はこんな感じ。

サイド肉厚の比較

サイド部分の肉厚も計測してみました。サイドの3箇所を測定し、その平均値を出しました。

……しかし、データを書いたExcelが保存されていなかったので数字が飛んでしまいました。ただ、結論としては「厚みに有意な差は無かった」ことは覚えています。有効数字の上1桁目は同じで、2桁目もほぼ同じくらいの値でした。アンバーのほうが薄いだろうと見ていただけに、意外な結果です。

乗り味の比較

さて、肝心の乗り味の比較です。チューブは同じものを使用し、空気圧も前5.5bar/後6.0barで揃えています。ブラック→アンバーに取り替えて、200kmほど走ってみました。

うーむ……微妙にアンバーカラーの方が乗り心地が良いような。僅かに振動が引くのも早いし、大きな段差に突っ込んだ時の衝撃もややソフトな気がします。しかし、ブラインドテストで当てろと言われたら難しいでしょう。

また、踏力を掛けた時の沈み込みが、若干アンバーの方が大きい気はしました。体感では加速が少しアンバーの方が遅い印象。

乗り味には微妙な差はある気がします。しかし、F1Rの時ほどの露骨な差は感じられませんでした。

考察

今回の実験についての考察です。

トランスペアレント vs アンバー

ロードタイヤ界隈では、「サイドがベージュ色っぽいタイヤ」を指す呼称が色々あります。例えば以下です。

「サイドがベージュ色っぽいタイヤ」を指す呼称
  • タン
  • アンバー
  • トランスペアレント(透明)
  • スキンサイド

「タン」というのは、「なめし革」に由来するワードで、黄褐色を表します。「アンバー」は琥珀色を表します。この2つは「色」を表しています。

「トランスペアレント」はその名の通り「透明」であり、ケーシングが透ける仕上げを強調する名称と言えます。「スキンサイド」は厚いサイドゴムで覆わず、ケーシングの地肌を生かした構造を指す名称です。この2つは「構造」を表していると言えるでしょう。

どの呼称も厳密な定義があるわけではなく、メーカーとしてもそれほど確信を持って使い分けていないようには見えます。ただ、「トランスペアレント」「スキンサイド」という構造に由来する名前を用いる場合、「サイドのゴムが少量であり、しなやかである」という含意がありそうな気がします。

例えばGP5000にはTransparentというカラーがありますが、こちらはブラックと比べて「明らかにしなやか」という声が聞かれます。私は使ったことがないので伝聞でしか無いのですが、これは構造的にも違いがあるということなのでしょう。のむラボの記事でもそういった話が書かれています。

さて、私が乗り味に大きな差を感じたGoodyear「F1R」のカラー呼称は「Transparent」でした。恐らくですが、ブラックよりも明らかにサイドを覆うゴムの量が少ないのでしょう。このため、乗り味にも大きな差が出た。

これに対し、Panaracer「AGXERO」のカラー呼称は「アンバー」でした。推測でしかありませんが、「サイドを覆うゴムの量は同じで、その色や成分が異なる」のではないでしょうか。「トランスペアレント」「スキンサイド」と異なり、ブラックとアンバーで構造的な違いは無い。

サイドの厚みはブラックとアンバーで差はありませんでしたが、重量は少しアンバーのほうが軽いですし、乗り心地も少し良い気がする。タイヤのみの状態で触ったときも若干アンバーのほうがしなやかに感じるので、物性も異なるのかもしれません。「しなやかさ」を数値化する計測器が私の手元にはないので、あくまでも手触りのみの感想ですが。

ケーシングに染み込ませているゴムについて、色だけではなく性質の差もあるのではないかと推測しますが……詳しい方がいたらこっそり教えて欲しいです。

また、かつてのRace Cのカラー名称は「スキンサイド」だったので、実際に構造の違いがあったのかもしれません。もっとも、あのタイヤには他のカラーは存在しなかったので比較のしようもないのですが。

Panaracerにおける「アンバー」の扱い

Panaracerには「Pasela」というアーバンタイヤがあります。

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このタイヤ、アンバーとそれ以外のカラーで恐ろしく重量が異なるのです。

右から2列目の色はサイドのカラー、一番右の列は重量です。サイドがアンバーは320g、サイドがアメ・アイボリーは470g。なんと150gも異なります。

Amazon製品ページより引用

Amazonの製品ページを見ると、「アンバーカラーはサイド部がケーシング剥き出し」との記載があります。これに対し、アメ・アイボリーはサイドに厚いゴムの層があるから150gもの差が出る……ということのようですね。

また、PanaracerのFAQページには以下の記載があります。

「オープンサイド」と「ガムサイド」とは何がどうちがうのですか?

タイヤの接地部分にはゴムがありますが、自転車タイヤの場合、タイヤの側面にはゴムがあるものとないものがあります。
「オープンサイド」は側面にゴムの被覆層がほとんどなくケーシング(スダレ)層が露出する状態になっています。
「ガムサイド」は側面をゴムの被覆層がありケーシングは見えません。ケーシングの材質としてはナイロンが主流ですが、ポリエステル、またはアラミド繊維やカーボン繊維を混ぜたものもあります。
それぞれの特徴としては、「オープンサイド」はゴム被覆層が少ない分、軽量になり軽い走行感を必要とする場合には最適で、レーシングタイヤやアーバン系に多く採用されます。

Paselaにおいては、アンバーが「オープンサイド」、それ以外の色が「ガムサイド」という分類になっているのでしょう。カラーで構造の差があり、だから150gもの差が出る。

一方、レーシングタイヤであるAGXEROは、アンバーもブラックも「オープンサイド」に分類されそうです。実測こそ少しアンバーのほうが軽いものの、公称の重量は同じですからね。カラーで構造の差はないということです。

ただ、Paselaで「アンバー」に「軽量でしなやか」というキャラを付与している以上、Panaracerの内部ではアンバーに対してそういうキャラ付けをする意図があるのではないか……というのは少々妄想が捗りすぎでしょうか?

ご参考

一応、「カラーと性能」というテーマでは、以下の記事を2022年に書きました。

今回の記事の前段にあたるような内容になっているので、よろしければお読みください。

この記事では「私自身はブラックカラーのタイヤのみしか使いません」と書いていますが、これはそれ以前に使って好感触だったRACE Cが廃版となっていたからです。この記事を書いた後(2023年)にF1RのTranparentカラーで少し考えを変え、AGXEROのアンバーカラーに興味を持った……という流れになります。

まとめ

「タンカラーのタイヤは乗り心地が良いのか?」の実験レポートでした。

今回のAGXEROの場合は、「差はあるように感じられるものの、微差である」という結論になりました。恐らく、AGXEROの場合はカラーが違っても構造の差が無いからなのでしょう。でも、色の差がある以上は多少の性質の差は出ているのではないか……と私は感じました。

一方で、F1RやGP5000の「Transparent」のように構造に差があると思われる場合には、乗り味の差は大きく出てくることになりそうです。


まとめると、「タンカラーだからと言っても、必ずしも分かる程度に乗り心地の差があるわけではない」ということ。構造に差がある(サイドのゴムが少ない)場合は、分かる程度の差が出るということになりそうです。

今後、「Transparent」や「スキンサイド」と書いてあるタイヤが発売されたら、また同様の実験を行いたいと思っています。

著者情報

年齢: 41歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。
# これまでに著者が乗ってきたスポーツ自転車の履歴はこちらの記事にまとめています。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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