私的エンデュランスロード評価メソッド―選ぶ前に立ち止まるための4ステップ

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ここ最近、色々試してまとまった「エンデュランスロードを評価する際の手順」がまとまったので、記事として公開します。インプレやレビューをする機会がない方でも、エンデュランスロードの購入を検討する時の考え方として応用可能な内容となっています。

目次

はじめに

ここ最近、私は「エンデュランスロード」というものについて考える機会が増えました。

この半年ほどで、新型のSynapse、Infinito、Domaneに試乗。更に、各社の歴代モデルの用途変遷を調べ、様々なインプレ・レビューを読み返しているうちに、自分の中で少しずつ「エンデュランスロードをどう評価すればいいのか」が固まってきた気がします。

用途のミスマッチ

私はこれまでに4台のエンデュランスロードを購入しています。しかし、そのうち1台を除いて「自分が欲しかったもの」と「その自転車が目指していたもの」が食い違っていました。

ロングライドをしたくて買った最初のロード「Roubaix」。しかし、その本質は「石畳レーサー」だったことに当時の私は気づかなかった。

私が欲しかったのは、「荷物を積載して、舗装路を長時間、それなりのペースで走れる自転車」でした。ところが、私が所有してきたエンデュランスロードの多くは「荷物を持たず、石畳のレースを40km/h超のスピードで走って勝利するための自転車」だったのです。

もちろん、それらの自転車が悪かったわけではありません。運動性能は高かったし、快適だった。しかし、私のメイン用途である、ブルベとは少しズレていた。

詰まるところ、自分の用途とのFit&Gap(*)を上手く行えていなかったのだと思います。

* ITシステム用語。パッケージシステムなどを導入する際に、自社の業務要件とシステム標準機能の適合度について評価する手法のこと。

4ステップの評価方法を提案

同じ「エンデュランスロード」と呼ばれるカテゴリの自転車であっても、想定される用途や得意な分野はかなり違う。それならば、カテゴリ名ではなく「その自転車が何をするために作られたのか」までさかのぼって考えたほうが良いのではないか。

約50台の試乗を繰り返して乗り味に納得して購入したInfinito CV。しかし、またしても「石畳レーサー」。各種バッグが取り付けにくいフレーム形状で、荷物の積載に苦労した。

振り返ってみると、これまでの試乗では私も「とりあえず乗ってみる」という姿勢でした。乗ってみて、「軽い」「安定している」「加速が鋭い」「乗り心地が良い」と言った印象を得る。そこから後付けで、その自転車の性格を考えていました。

しかし、本来は順番が逆だったのかもしれません。「エンデュランスロード」というカテゴリーには、異なる想定用途や目標を持つ自転車が同居しています。エンデュランスロードだからといってロングライドが得意とは限らないのです。それならば、まずは「何を目指して作られた自転車なのか」を考え、その想定用途と目標によって何を試すべきかを決める必要があるはず。

たとえば、荒れた路面での走破性を重視したモデルなのに舗装路での軽快さしか見なかったり、積載時の安定性を重視したモデルなのに空荷のみで試しても、その自転車の本質は見えてこないでしょう。想定用途と目標に応じた試験をしてこそ、そのモデルをより正確に理解できるし、評価した内容を記事にするうえでも意味のあるものになります。

そこで、私が今後エンデュランスロードを選び、試乗し、ブログで評価する時の考え方を4ステップに分けて整理してみました。以下に、その4段階を示します。

エンデュランスロード評価の4ステップ
  1. その自転車の「想定用途」と「目標」を推定する。
  2. 目標を達成するための設計方針は妥当なのかを考える。
  3. 設計方針が、実際の設計に適切に落とし込まれているかを見る。
  4. 想定用途に近い条件で実際に走ってみて確かめる。

これは評論のための手順であると同時に、実際にエンデュランスロードを購入する際に一旦立ち止まるための思考法でもあります。自身の目的とズレたものを買うと幸せになれませんので。

以降は、この4ステップの意味と、その実施方法について解説していきます。

エンデュランスロード評価の4ステップ

エンデュランスロードを評価する際の4つのステップについて説明していきます。

Step1~3までは試乗する前に確認しておき、Step4は実際に試乗する際に確認する想定となっています。

Step1: その自転車の「想定用途」と「目標」を推定する

まず確かめておきたいのは、そのモデルが「どんな使い方を想定しているのか」「その中で何を実現しようとしているのか」です。実走評価に入る前に、「想定用途」と「目標」を先にハッキリさせておくということですね。

想定用途と目標が混在するエンデュランスロード

前述の通り、「エンデュランスロード」というカテゴリには様々な想定用途の自転車が混在しています。例えば以下のような用途です。

  • 石畳のクラシックレースを走る
  • 荒れた舗装を安定して走る
  • 舗装路を長時間走る
  • 荷物を積んで走る
  • 軽いグラベルまで行動範囲を広げる
  • 幅広い用途を1台でこなす

さらに、各モデルが重視する目標も異なります。プロ選手が競技で勝つことを重視するものもありますし、一般サイクリストが長時間走っても疲労しにくいことを重視するものもあり、荷物を乗せた時に走りが破綻しないことを目指したものもあります。速度と快適性の両立を目標にするモデルもあれば、汎用性そのものを目標としたものもあります。

このように、「エンデュランス」という一つの言葉で括られていても、想定用途や目標は同じではないのです。

レーシングロード「Oltre XR4」。このカテゴリーのバイクは、基本的に「ロードレースで勝つ」ことが想定用途であり、目標となる。

TarmacやMadoneと言った「レーシングロード」カテゴリならば、この「想定用途」や「目標」は明快です。大雑把に言えば「舗装路のロードレース」が想定用途であり、「そこで速く走り、勝つこと」が目標です。登りを重視するのか、空力を重視するのか、荒れた路面への対応も考慮するのかという違いはあっても、最終的には「レースで速く走る」という一点に収束します。そうなると、テストすべき項目についても大体固定化されるということですね。

レーシングロードでは自明である「想定用途」と「目標」。エンデュランスロードにおいては、まずそれを確かめる所から始めなければならないのです。

想定用途と目標をどうやって知るか

エンデュランスロードの評価においては、「想定用途」と「目標」が最初に必要であることは分かりました。では、どうやってそれらを知れば良いのか?

理想は、メーカー側の設計者やプロダクトマネージャーに直接聞くことです。「誰が使うことを想定しているのか」「その用途の中で何を重視したのか」「前世代から何を変え、何を残したのか」「何を優先し、何を諦めたのか」。そこまで聞けたら理想です。

しかし、現実には毎回そんなに詳しく取材できるわけではありません。個人で自転車を選ぶ場合ならば尚更です。

GE-110の製品ページ。想定用途は「ブルベ」、目標は「荷物を積んでも速く快適に走れるバイク」であることが分かる。

そこで、手がかりとなるのが、製品ページ・プレスリリース・開発者インタビューなどの広報資料です。もちろん、広報資料をそのまま設計意図と受け取るのは危険です。発売時に分かりやすく整理された情報なので、強調される要素もあれば省かれる要素もあります。そのため、ジオメトリ・タイヤクリアランス・フェンダーマウントや積載用アイレットの有無・完成車のパーツ構成・前世代からの変更点なども合わせて見ます。最後が案外重要で、エンデュランスロードの場合は世代が変わると「想定用途」「目標」が大きく変わるケースがあるからです。

それらの資料を参照した上で、

「このモデルは、こういう使い方を想定し、その中でこの性能を重視しているのだろう」

という仮説を立てます。設計者に直接確認していない以上、それはあくまで推定です。「メーカーはこう考えている」と断定するよりも、「資料と設計からはこう見える」程度に考えておいたほうが良いでしょう。

「汎用性を目標としたモデル」という例外

エンデュランスロードにも、得意な領域と苦手な領域があります。それが「想定用途」や「目標」によって決定づけられるわけなのですが。

その一方で、エンデュランスロードの中には「汎用性を高める」ことそのものを目標としたモデルもあります。つまり、特定の用途へ特化させるのではなく、守備範囲の広さをウリにするモデルということです。

Domane Gen5。スペックからも、試乗からも、特定の用途への特化は感じられない。メーカーの資料からも、そういった情報は読み取れなかった。

先日、試乗記事を書いたDomane Gen5はそういう方向性のモデルに感じられました。舗装路を速く走れる。軽い未舗装路にも入れる。太いタイヤにも対応する。バッグも付けられる。フェンダーも付けられる。

最初は「何がしたいのか良く分からない」と思いました。しかし、逆であるのかもしれません。「あえて一つの用途に特化せず、幅広い条件で破綻しないこと」自体を目標としているのではないか。受験に例えるなら、特定科目だけ95点を取るのではなく、全科目で70点以上を取れる自転車ということです。

Domane Gen2。この頃は「石畳レーサー」としての性格を強く持っており、実際にパリ~ルーベにも投入されていた。

かつてDomaneは、ファビアン・カンチェラーラがパリ~ルーベを制するために生まれ、「石畳を含むレースを高速で走る」という、分かりやすい「想定用途」と「目標」がありました。しかし、Gen5まで世代を重ねた今は、汎用化に舵を切ったように思われます。

Step2: 目標を達成するための設計方針は妥当なのか

想定用途と目標が見えてきたら、次は「その目標をどう実現しようとしているのか」を見ます。

設計方針が妥当でない場合もある

2026年発売の新型Infinito。石畳レース向けだった前世代のInfinito CVよりも10mm以上スタックは高くなっている。

例えば、「長時間のサイクリング」を想定用途とし、「長時間走っても疲労しにくいこと」を目標にしたモデルがあるとします。そこでメーカー側が「上体を起こしやすくするために、ハンドル位置を高くする」という設計方針を採用したとしましょう。

このとき考えたいのは、その方針が本当に目標の達成につながるのかということです。

ハンドル位置を高くすれば、前傾姿勢が浅くなり短時間では楽に感じるでしょう。一方で、前傾が浅くなるとサドルへの荷重は増えます。結果として、お尻の痛みが出るかもしれない。ある程度の前傾があるほうが、サドル・ペダル・ハンドルに荷重を分散しやすく、長時間においては結果的に「楽」であるケースもあるのです。

つまり、「短時間で楽な姿勢」と「長時間続けやすい姿勢」は、必ずしも同じではありません。

「エンデュランスだからStackを高くする」「Reachを短くする」「太いタイヤを履かせる」。それぞれに理由はあるでしょう。しかし、その方針が想定用途と目標に対して妥当であるかは、別に考える必要があります。

目標と設計方針に矛盾がなければ次のStepへ

先程の例とは反対に、想定用途と目標に対して設計方針が素直に繋がっているのであれば、次のStep3へと進めます。

近年のエンデュランスロードでは、UCIシクロクロス競技の上限である33mmを超える、35C前後のタイヤを前提とした設計も珍しくない。

例えば、「舗装路だけではなく軽いグラベルも走る」ことを想定し、「未舗装路でもバランスを崩さずに安定して走る」ことが目標である場合、「太いタイヤを採用する」というアプローチを取っているのであれば、少なくとも考え方として大きな矛盾はありません。

次は、「その設計方針が実際のジオメトリやフレーム構造、タイヤクリアランスなどに適切に落とし込まれているか」を見ればよいわけです。

目標を取り違えている可能性もある

ここで、設計方針と目標がうまく繋がらないと感じた場合、Step1で立てた仮説が間違っている可能性もあります。

広報資料から読み取った目標が間違っているのかもしれないですし、メーカーが1つではなく複数の目標を同時に追っている可能性もあります。

ただ、「目標に対して設計方針がおかしい」とすぐに結論づけるのではなく、まずは「自分自身が想定用途や目標を正しく捉えられているか」を確認する。その上で、なお整合しないのであれば、そこで初めて設計方針の妥当性を疑うべきだと思います。

Step3: 設計方針が、実際の設計に適切に落とし込まれているか

Step2で設計方針に大きな矛盾がないと判断できたら、次は「その設計方針が実際の自転車にきちんと落とし込まれているか」を見ます。

Step3で確認するのは、ジオメトリ・フレーム構造(メカニカルな振動吸収機構など)・タイヤクリアランス・マウント類・完成車のパーツ構成などです。

例1: 軽いグラベルを安定して走る

Step2では、「軽いグラベルも走る」ことを想定用途とし、「未舗装路でも安定して走る」ことを目標にしたモデルに対して、「太いタイヤを採用する」という設計方針には大きな矛盾がない、としました。Step3では、その方針が具体的な設計に反映されているかを見ます。

  • 十分なタイヤクリアランス(取付可能なタイヤ幅上限)があるか?
  • 完成車に付いているタイヤ幅やリム内幅・外幅は適切か?
  • 太いタイヤを履いた時にハンドリングが重くなりすぎないよう、ジオメトリが考えられているか?

仮に、「太いタイヤを採用する」という方針だったはずなのに、「タイヤクリアランスが34C」「完成車に付いてくるタイヤが30C」だと、2026年現在では少し違和感があります。34Cでも未舗装路には入れますが、「軽いグラベルへの対応」をウリにするには少し細い。現在では、40C前後のクリアランスを持ち、35C程度のタイヤを標準装備する設計も珍しくありません。

ジオメトリ表では、トレイル値が掲載されていれば確認しておきたいところです。正確には設計前提となるタイヤ幅も考慮する必要がありますが、仮に55mm以下なら、私は少し「おや」と思います。レーシングロードなら不思議ではありませんが、エンデュランスロードでは50mm台後半から60mm台前半の設定も多いからです。

2026年版Infinitoの53サイズは、公式ジオメトリと35Cタイヤを前提に計算するとトレイルは約75mm。数値だけ見るとハンドリングが重そうだが、実際に乗ってみるとそうでもなかった。数値だけでは分からないこともある。

ただし、数値だけで「設計がおかしい」と結論づけるべきではありません。 実際に乗れば問題がないこともありますし、別の意図があってその数値を採用している可能性もあります。こういった場合は、「Step4で未舗装路を走る際に、ハンドリングを重点的に確認する」と覚えておけばよいでしょう。

例2: 長時間走行での直進安定性

「舗装路を長時間走る」ことを想定し、「疲労を抑える」ことを目標としたモデルが、「細かな修正舵を減らすために直進安定性を高める」という設計方針を採用したとしましょう。

この場合は、ヘッド角・トレイル・フロントセンター・ホイールベースなどを見ます。一つの数値だけで判断するのではなく、全体として進行方向を保ちやすく頻繁な修正を必要としないジオメトリになっているかを確認するわけです。長時間走行では、疲労して集中力が落ちることも考えられます。一瞬ぼーっとしてしまったとしてもフラフラしにくい特性を持たせることには安全上の意味もあります。

例えば、トレイルが極端に小さくないか、ホイールベースが短すぎないか。このあたりは、直進安定性を見るうえで分かりやすい手掛かりです。もちろん一つの数値だけで決まるわけではありませんが、全体として頻繁な修正舵を要求しない方向にまとまっているかを見ます。

こちらの場合も数字だけで判断するのではなく、Step4での実走行で確認すべき観点として覚えておくことにしましょう。

Step4: 想定用途に近い条件で実際に走って試す

Step3までで、想定用途・目標・設計方針・それを実現するための具体的な設計を見てきました。最後は、それらが「実際の使用環境でも狙い通りに機能するのか」を見ます。

「想定用途」と「目標」に応じてテスト内容を変える

ここで重要なのは、「全てのエンデュランスロードに同じ内容のテストをしない」ということです。

軽いグラベルへの対応を重視しているモデルなら、実際に未舗装路へ入ってみる。長時間での疲労軽減を重視しているモデルなら、できるだけ長い時間乗ってみる。積載時の安定性を重視しているなら、実際にバッグへ荷物を入れた状態で走り、ハンドリングやダンシング時の挙動を確認してみる。

つまり、そのモデルの「想定用途」と「目標」に応じて、テストする内容を変えるわけです。ここがレーシングロードの試乗とは大きく異なる部分です。

ブルベにおいては様々な箇所への荷物の積載をした上で、乗り味や安定性に影響を及ぼさない設計が求められる。

別ジャンルの話ではありますが、クルマのメディアでGTカーを評価する記事を見ても、サーキットでの速さだけを見ているわけではありません。一般道の長距離を高速で走った時の疲れにくさ、ゴルフバッグなどの荷物を積んだ時の使い勝手、高速巡航時の安定性など、そのクルマが想定している使われ方に沿って評価されています。

エンデュランスロードも同じで、短時間の試乗で「軽い」「よく進む」だけを確認しても十分ではありません。そのモデルが長距離走行や積載、未舗装路まで想定しているなら、できる範囲でそれに近い条件を作って試す必要があります。

Step3までで気になった違和感を実走で検証する

Step3で「この数値は少し気になる」と感じた部分があれば、それもStep4で重点的に確認します。例えば、未舗装路を想定用途としているのに付いているタイヤが細めなら、未舗装路でちゃんと安定して走れるかを実際に試してみる。トレイルが小さめでハンドリングがクイックそうに見えたなら、荒れた路面や低速域でハンドリングが神経質にならないかを確認してみる。

ジオメトリ表だけを見て結論を出すのではなく、ジオメトリ表から「何を試すべきか」を考えて、試乗ではそれを確認する。想定通りの挙動をすることもあれば、そうではない挙動をすることもあります。Step4では、Step3までで立てた仮説を実走で検証するわけです。

短時間の試乗でも確認できることはある

もちろん、必ずしも理想的なテストが行えるとは限りません。

私が先日Domaneに試乗した時も、与えられた時間は1人1台あたり30分でした。次の人が試乗を待っていますからね。しかし、30分では、「300kmや400kmを走って疲労した時」の感覚までテストすることは出来ません。そこは素直に「分からない」と結論づけるしかないでしょう。

Domane Gen5。試乗時には、家から持参した合計重量1kgのサドルバッグを取り付けた状態で走らせてもらった。

ただ、そんな短時間の試乗でも確認できることはあります。先日のDomaneの試乗では、私は多摩川まで時間内に往復して河原の未舗装区間を走り、安定性を確認しました。また、家から持参した大型サドルバッグ(合計重量1kg)を許可を得て試乗車に取り付け、その際の走行感と挙動を確認。もう少し腰高になってフラフラするかと思っていましたが、Domaneはこれだけの荷物を付けても走行感にほとんど影響がなくて驚きました。これは数値だけ見ても分からないことです。そして、(少なくとも私にとっては)実用上で重要なことです。

いずれも十分なテストとは言えません。ただ、空荷で舗装路を一周するだけよりも、そのモデルの実際の性格を見るための材料は増えます。試乗時間が限られているのなら、Step1~3で重要だと考えた項目を優先して試すほうが有効ではないかと私は思います。

仮に、1週間くらいの長期間を借りられる場合、私なら実際にブルベに出る装備(バッグたくさん、フェンダーも付ける)で走ってみたり、一度に出来るだけ長い時間乗ってみると思います。

乗った感想を「想定用途」と「目標」に戻って考える

実際に乗ってみると、「軽快だ」「安定している」「ペダリングフィールが良好だ」「乗り心地が良い」「少しモッサリしている」といった感想が出てきます。

こうした官能方向の感想も大切です。所有するとすれば乗り続ける間は付き合う特性ですからね。「想定用途と目標はバッチリ合っていて、設計も妥当。しかし、乗ってみたら何だか違和感がある」というケースも当然あり得ます。

メカニカルな快適機構も廃され、アイレットも多く、フェンダーマウントも備えるDomane Gen5。自分の用途に合っているかも……と思ったが、乗ってみると高すぎる安定感と低重心性に違和感を持った。これも乗ってみないと分からない。

ただし、私はそういった感想だけで終わらせるのは勿体ないと感じます。実際に乗ったのであれば、その感覚が想定用途と目標に対してどんな意味を持つのかまで考えたい。

例えば、「モッサリしている」と感じたとしても、それが単なる欠点とは限りません。直進安定性や、荒れた路面での安定性と引き換えに得られた性格かもしれない。逆に、「軽快で気持ちがいい」と感じても、それだけでは高く評価できません。そのモデルの想定用途が「舗装路を長時間走ること」なのだとしたら、重要なのは軽快さそのものではなく、「その軽快さが長時間走行での負担軽減に繋がっているのか」です。

つまり、「官能的に好ましいかどうか」と、「そのモデルが目標とした性能を実現できているか」は別の話です。だからこそ、実走で得た感想も、最後はもう一度「想定用途」と「目標」に立ち返って評価する必要があるでしょう。

まとめ

ここまで、私がエンデュランスロードを評価する際の考え方を4つのステップに整理してきました。改めてその4ステップを再掲します。

  1. その自転車の「想定用途」と「目標」を推定する。
  2. 目標を達成するための設計方針は妥当なのかを考える。
  3. 設計方針が、実際の設計に適切に落とし込まれているかを見る。
  4. 想定用途に近い条件で実際に走ってみて確かめる。

この4つのステップは一方通行ではありません。途中で違和感があれば前のステップに戻り、仮説を修正する。実走で違う結果が出たなら、そこからもう一度考え直す。仮説と検証を繰り返しながら、そのモデルを理解していくという流れです。


エンデュランスロードの評価が難しいのは、一つのカテゴリの中に様々な想定用途のモデルが同居していることです。石畳レース由来のものもあれば、長時間走行のためのもの、軽いグラベルまで行動範囲を広げるためのものや、幅広い用途にまんべんなく対応を重視したモデルもあります。

個人的には、エンデュランスロードは妥協の末に選ぶものではなく、「舗装路のレースで勝つ」以外の目標を持つ人たちが、自分なりの挑戦のために選ぶものだと思っています。そして、その挑戦の分野は一つではありません。

だからこそ、「エンデュランスロードだから自分に合うだろう」で済ませず、そのモデルの想定用途と目標が、自分のやりたいことと本当に合っているかまでを購入前に確認したい。私自身、その確認が足りず「荷物を積載して、舗装路を長時間、それなりのペースで走れる自転車」という自分の用途からは若干違うモデルを選んでしまった経験があります。それも2回も。

現在の愛車・GE-110の注文直前には、試乗会に自分のサドルバッグとフロントバッグを持ち込んで挙動の確認をしている。問題ないと判断して、この後すぐに注文した。

スペックも、乗った時の感覚も大切です。ただ、その前に「想定用途」と「目標」があることを忘れてはいけません。そのモデルが何を目指して作られ、その狙いをきちんと実現できているのか。そして、それが自分の用途に合っているのか。

先日のDomane Gen5の試乗会では、今回考えた4ステップを試す場でもありました。想定用途を考慮して「未舗装路で乗る」というテストを追加し、仮に自分で所有したら何を気にするかを考えて「1kgのサドルバッグを付けて走る」というテストを追加しました。「自分の用途&好みとは合わなそうだ」という結果になりましたが、意味のある試乗になったと思っています。

この「エンデュランスロードを評価する際の4ステップ」が、皆さんのエンデュランスロード選びの参考になれば幸いです。

著者情報

年齢: 42歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。
# これまでに著者が乗ってきたスポーツ自転車の履歴はこちらの記事にまとめています。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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