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Canyon「Endurace CF」「Endurace CF SLX」比較試乗記
キャニオンジャパンよりご依頼を頂きまして、同社のエンデュランスロード「Endurace CF」「Endurace CF SLX」を比較試乗してきました。両モデルは同じ「Endurace」シリーズに属してはいるものの、フレーム形状や備えている装備も異なります。単純にカーボンのグレードを変えただけのモデルではありません。
今回の試乗では、走行性能だけではなく、「荷物の積載性」「悪路走破性」「装備の拡張性」といった実用面の性能も評価していきます。
はじめに
まずはこの試乗の経緯と目的について書いていきます。
キャニオンジャパンからの試乗依頼
少し前にこんな記事を書きました。

ニッチすぎる内容になってしまったので「あまり読まれないだろうな」と思っていたのですが、意外にもかなりの反響を頂きました。
そして、この記事を公開した翌日に1通のメールが届いたのです。
「Canyon Endurace CF SLX 試乗・レビューのお願い」
差出人は、キャニオンジャパンの代表・石山幸風さん。椅子から転げ落ちそうになりました。
キャニオンジャパンは、いわゆる「代理店」ではありません。ドイツ・Canyonの日本法人という扱いです。つまり、メーカー側から直接「うちのエンデュランスロードの試乗評価をしてみませんか」という依頼を頂いたことになります。
Enduraceは今年モデルチェンジされたばかりの、最新エンデュランスロード。「私的エンデュランスロード評価メソッド」を実際に試すテストケースとして、これ以上ない機会です。「是非やらせてください」と返信を送りました。
Enduraceについて
ここで、今回試乗する「Endurace」というシリーズについて簡単に紹介しておきます。
Canyonには、オールラウンドロードの「Ultimate」と、エアロロードの「Aeroad」が存在していました。そこに、3本目の柱として2014年に新たに加わったのが、エンデュランスロードである「Endurace」です。

長らくモデルチェンジされないままラインナップされていましたが、2023年には上位モデルの「Endurace CFR」と「Endurace CF SLX」がモデルチェンジ。他社がダウンチューブ内にストレージを設ける中、トップチューブに穴を開けた収納機構「LOADトップチューブストレージ」を備えるなど、当時としては新しい機能も盛り込まれました。
そして2026年。Enduraceシリーズは再び大きなモデルチェンジを遂げます。

まず4月に、プロのクラシックレースでの使用を強く意識した、新型「Endurace CFR」が登場。

続いて5月には、「CF SLX」と「CF」も新型に切り替わりました。
これによって、現在のEndurace(カーボンモデル)は以下の3グレードで構成されていることになります。
| グレード | 主な特徴 |
|---|---|
| Endurace CFR | プロの石畳レースを想定した、競技志向の最上位グレード |
| Endurace CF SLX | 空力性能とオールロード性能の両立を図った上位グレード |
| Endurace CF | 走行性能と汎用性を重視したスタンダードグレード |
ここで注目したいのは、3つのグレードがそれぞれ異なるフレーム形状をしているということです。すなわち、金型が異なります。
ロードバイクでは、同じ形状のフレームに異なるグレードのカーボン素材を使用して価格帯を分けることが一般的です。しかし、今回のEnduraceはそういった手法を取っていません。コストを掛けて、別の金型を採用しています。
異なるのはフレーム形状だけではなく、ジオメトリや装備(ダボ穴やストレージ等)にも違いが見られます。これだけ作り分けているからには、単純な性能の上下関係だけでは説明できない理由がありそうです。
試乗対象は「CF」と「CF SLX」
当初、キャニオンジャパン側から依頼されたのは「CF SLX」の試乗レビューでした。
ただ、せっかく金型を分けている以上、他のグレードとの違いも試してみたい。単純な乗り味だけではなく、そもそもターゲットユーザーが異なる可能性があるからです。製品ページのイメージ動画(CF / CF SLX)を見ても、想定しているユーザー像は異なるように思われました。
個人的に気になっていたのは、スタンダードグレードとされる「CF」。製品名だけ見ると「CF SLXの下位グレード」。しかし、上位グレードにはない多数のダボ穴を備え、シートポストやハンドルも一般的なものを使える仕様となっています。ブルベ用にするとしたら、こういうモデルがありがたい。
そこで、「CF SLX」だけではなく、「CF」の試乗も申し出ました。幸いにもご快諾頂き、今回は2台の兄弟モデルの比較試乗を行うことになりました。
試乗について

今回の試乗では、舗装路における走行性能だけではなく、「エンデュランスロードとしての実用性能」も確認しました。評価方法と試乗条件を紹介します。
評価方法
今回の評価では、冒頭で紹介した「私的エンデュランスロード評価メソッド」を使用します。
レーシングロードの唯一最大の目標は「レースで勝つ」ことです。これに対し、エンデュランスロードは各社のモデルごとに目標が異なります。
- ロングライドを快適に走る
- 路面を気にせずサイクリングする
- ブルベに特化
- 石畳レースで勝つ
等々。試乗に入る前に、「このモデルの目標や想定ユーザ像はどんなものなのか」を考える点が、今回の評価メソッドの肝です。
| ステップ | 評価内容 |
|---|---|
| Step1 用途と目標の推定 | その自転車の「想定用途」と「目標」を推定する。 メーカーサイトなどを見て、「何のために作られた一台なのか」を考える。 |
| Step2 設計方針の妥当性検討 | 「前段の目標をどう実現しようとしているか」を見る。 設計方針が、目標に対して妥当なのかを検討する。 |
| Step3 設計の整合性確認 | 「設計方針が、製品設計に適切に落とし込まれているか」を見る。 ジオメトリ・積載設計・泥除けの有無などを確認する。 |
| Step4 実地評価 | 想定用途に近い条件で実際に走ってみる。 目標を達成するための性能が実現できているかを確かめる。 |
Step3までは試乗より前の段階で実施し、試乗当日はStep4のみを行います。
この評価メソッドは、「走行性能の良し悪し」だけではなく、「そもそも何を目標として作られた自転車なのか」を推定し、「その目標に対して実物の自転車を評価する」という手法になっています。
なお、今回は試乗終了後に、キャニオンジャパンの石山さんへのインタビューを実施。そこで分からなかった設計上の質問に関しては、ドイツのCanyon本社に問い合わせを行って頂き、後日回答を得ています。
試乗条件

試乗場所は、東京都八王子市の「キャニオン東京テストセンター」。試乗したのは、以下の2台です。
| Endurace CF 8 Di2 | Endurace CF SLX 8 Di2 | |
|---|---|---|
| サイズ | M | M |
| コンポーネント | アルテDi2 | アルテDi2 |
| サドル高 | 705mm | 705mm |
| タイヤ幅 | 32C | 32C |
| 空気圧(前/後) | 4.5/5.0bar | 4.5/5.0bar |
| チューブ | ブチル | TPU |
| その他の装備 | 完成車 標準仕様 | 完成車 標準仕様 |
私の身長は176cmなので、本来は「Sサイズ」が適正です。ただ、東京テストセンターにはCFのSサイズが無かったため、CF / CF SLX共にサイズのある「Mサイズ」での試乗を行うことにしました。
空気圧は、2台とも「前4.5/後5.0気圧」に統一。試乗車のセットアップは、YoutuberでもありキャニオンジャパンのスタッフでもあるKEIMASAさんが行ってくれました。

試乗では、舗装路での加速・巡航・登坂といった走行性能の確認のほか、石畳・軽いグラベルでの走行性能も確認。

さらに、総重量1kgの大型サドルバッグを装着し、「積載によって走行感がどう変わるか」も比較しました。走行距離は、1台あたり約8kmです。
当日の天候
今回の試乗日程が確定したのは、約1週間前。小雨程度なら試乗を決行するつもりでしたが、当日は快晴の自転車日和でした。

今世代のEndurace CF/CF SLXには、新たにフェンダーマウントが標準装備されるようになりました。これはつまり、雨天時の走行も想定しているということ。残念ながら純正フェンダーはまだ日本での取扱がないのでこの日も試せませんでしたが、雨天時の走行性能についても可能ならば試したいと考えていました。残念ながら、快晴なのでそれは叶わず。
ただ、どうしても確認したいことが1つだけありました。ダウンチューブストレージの排水性能です。

雨天走行でストレージ内部に水が入り込んだ場合、その水が長く残ってしまうとカビや悪臭の発生原因となります。この部分は、出来る限り排水性能が高いことが求められるわけです。雨が降っていればそこの確認ができるところですが、晴天では実施できません。
そこで、キャニオンジャパンに許可を頂き、ストレージ内の収納バッグを取り出した状態でボトルの水をダウンチューブストレージ内に注いでみるテストを行いました。当サイトでは恒例の「水攻め」です。

すると、BB下に設けられた水抜き穴から、かなりの勢いで水が流れ出てきました。高い排水性能がありそうです。

さらに、専用の収納バッグ(LOADツールパック スモール)は、なんと防水仕様になっていました。これならばストレージ内の侵入した水が染み込むこともないので、ストレージ内で腐敗が進む可能性は下がるはず。「水を染み込ませない」仕組みと、「水を排出する」仕組みの両方を備えることで、ダウンチューブストレージ内をドライに保つことが徹底されていました。
長期間使用した場合にニオイが出るかどうかまではわかりません。しかし、雨天も含めて使い続ける自転車としては非常に合理的な設計だと感じました。
このように、今回は「舗装路で乗って感触を確かめる」だけでは終わらず、「想定される用途を考えると、どんなテストをするべきか?」を考えて様々なテストを行うことを意識しました。
それでは、次ページからは各モデルの評価です。まずは、「CF」から。
