Canyon「Endurace CF」「Endurace CF SLX」比較試乗記

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目次

まずは、「Endurace CF」から。「私的エンデュランスロード評価メソッド」の手順に沿って評価していきます。

Canyon「Endurace CF 8 Di2」

「CF」は、スタンダードグレードに位置付けられるモデルですが、上位のCF SLXとはフレームの金型から異なります。まずは、この「CF」の用途と目標を推定していきます。

Step1: 用途と目標の推定

公式サイトやプレスリリースなどを確認し、「何のために作られた自転車なのか」を推定していきます。

Canyonの日本公式サイトにおけるCFのキャッチフレーズは、「純粋な性能と汎用性の融合」。ロードバイクとしての走行性能を確保しながら、幅広い用途への対応を重視したモデルと考えられます。

私が推定した、Endurace CFの「想定用途」と「目標」は以下のとおりです。

想定用途日常のサイクリングから日を跨ぐロングライドまで、幅広いロードサイクリング。
軽いグラベルに遭遇しても問題なく抜けられる走破性も併せ持つ。
目標十分な走行性能と快適性を備え、さまざまな用途に1台で対応する。

「特定の競技や走り方に特化するのではなく、幅広い条件で不足を感じさせないこと自体を目標としたモデル」と推定しました。

Step2: 設計方針の妥当性検討

設計方針が、製品の目標達成に対して妥当なのかを見ていきます。

公式サイトを見ると、CFでは快適性確保のための施策として「太いタイヤ(完成車32C/最大38mm)」と「VCLS 2.0シートポスト」の採用が挙げられています。太いタイヤに対応するために、ホイールベースは従来型より大きく取られるようになりました。

その一方で、ジオメトリは「従来型より長いフレームリーチ」を持つ方向へと変更されています。つまりハンドルが遠い。驚くべきことに、同サイズのAeroadとリーチの値が同じです。「ハンドルを近く高く」しがちなエンデュランスロードにおいては、異色の設計方針変更と言えるでしょう。

一体型ではないハンドルとステムを採用。ただし、コラムの太さは1-1/4。

また、ハンドルとステムは、一体型ではない独立した構造が採用されています。

以上から、次のような設計方針が読み取れます。

設計方針妥当性の検討
タイヤとシートポストで快適性を確保極端にアップライトな姿勢に頼らず、長時間の負担を減らす方法として合理的
ホイールベースを延長して安定性を確保荒れた路面や長距離走行には有利と考えられるが、軽快さとの両立が課題
汎用性の高いコックピットを採用用途や体格に合わせたポジション調整、装備の追加がしやすい
タイヤ幅・バッグ・フェンダーへの対応路面や天候、走行距離に応じて使い方を広げられる

全体として、Step1で推定した目標に対して大きな矛盾はなさそうです。

フレームリーチの延長は気になるところ。前傾が強まり、快適性を損なう可能性もあります。ただ、サドルに掛かる荷重をハンドル側に分散可能になるので、長時間のライドではお尻側の負担が減る可能性もあります。

Step3: 設計の整合性確認

次に、「設計方針が、製品設計に適切に落とし込まれているか」を見ていきます。

ジオメトリ

新型CFで特に注目したいのが、旧型から大きく変更されたジオメトリです。

ジオメトリ項目
(Mサイズ)
旧型CF新型CF変化
スタック590mm584mm-6mm
リーチ378mm392mm+14mm
チェーンステー長415mm420mm+5mm
ホイールベース990mm1014mm+24mm

リーチは14mmも長くなり、スタックは6mmも低くなりました。Sサイズはリーチが390mmとなり、現行AeroadのSサイズと同じ数値です(スタックは24mm高い)。一般的にイメージされるエンデュランスロードに多い「短いリーチ&高いスタック」という設計からは、明確に方向転換しています。

一方、ホイールベースは旧型よりも24mm延長。これはタイヤクリアランスの確保と、安定性の向上を意識した変更と考えられます。

これらを総合すると、「乗り手のポジションはそれなりにレーシー、それでいてホイールベースを長くすることで安定感を出す」設計になっているように見えます。

フレームと装備

次に、フレームと装備について見ていきます。

項目内容
タイヤ標準32mm
最大38mm(フェンダー取付時35mm)
ホイールED42 CF
(42mmハイト/内幅25mm)
シートポストVCLS 2.0
(27.2mm/丸型シートポスト)
コックピット独立型ハンドル+ステム
クランクMサイズ165mm
ダボ穴
(トップチューブ上)
あり
ダボ穴
(フレームバッグ用)
あり
(専用フレームバッグを販売)
ダボ穴
(ダウンチューブ下)
なし
フレーム内ストレージなし
フェンダーDEFEND Fast対応
フレーム各部にマウント用のネジ穴あり

内幅25mmのカーボンホイールに32mmのタイヤを組み合わせており、タイヤのエアボリュームを確保しやすい(≒乗り心地が良い)構成となっています。何気にインナーニップルなのが興味深い。

VCLS 2.0シートポストは、最大20mmの変形量を公称。2枚のカーボンリーフスプリングによって、サドルの角度変化を抑えながら衝撃を吸収する構造となっています。27.2mmの汎用的な規格なので、お気に入りのシートポストに差し替えることも可能です。

フレーム形状は、あまり空力を意識していない素直な形状。シートステーも細身で、少し前のCervelo Rシリーズのよう。

装備面では、積載用にトップチューブのダボ穴・専用フレームバッグ用のダボ穴が設けられています。残念ながらダウンチューブ下にはダボ穴はありません。個人的にはここにあると重量物を自転車の一番下に置けてありがたいのですが。

また、フェンダー取り付け用のダボ穴も設けられています。


以上の仕様を見る限り、走行性能はしっかりと確保しながら、実用性にも配慮した設計であることが分かります。

Step4: 実地評価

ここからは、実際に試乗した印象を書いていきます。

ポジション

今回試乗したのはMサイズ。ペダルレスで実測8.1kgだった。

今回試乗したMサイズは、私の身長(176cm)の推奨サイズより1つ大きいものです。普段のサドル高である705mmにはギリギリ調整できましたが、コラムスペーサーが25mmほど入っていたのでハンドル側は高めに感じられました。スペーサーを抜けば丁度良い高さに調整できそう。リーチに関しては、普段乗っているGE-110と同じくらいの場所にハンドルがあって違和感がありませんでした。

各メーカー、レーシングロードに比べてエンデュランスロードを「リーチを短く、スタックを高く(=ハンドルを近く、高く)」作ってきます。数時間のライドであれば上体が起きて呼吸も楽で、腰への負担も少ないでしょう。しかし、そのポジションは「サドルにどっかり座る」ものになりがちで、ライド時間が伸びるほどにお尻の痛みに悩まされる可能性が高くなります。お尻の痛みが出てしまうとペダリングが辛くなり、時にはリタイヤの原因にもなります。長時間のライドを考慮するならば、アップライトなポジションはむしろ害になるケースもあるわけです。

そして、リーチはステムで調整が効きますが、スタックについてはスペーサーを全部抜いたところまでしか下げられません。私の場合、多くのエンデュランスロードは欲しい低さまでハンドルが下がらないのです。

その点、Enduraceは上位グレードも含めて、リーチはレーシングロード並。スタックの増え方も同社のレーシングロード比で小さめ。ある程度の前傾は要求されますが、サドルとハンドル側の前後荷重の分散によって、お尻側への負担が減るはず。「長時間」をサドル上で過ごすことを考えると、こちらの方が適正なジオメトリだと私は考えます。

なお、これは「ハンドルに体重を掛けてもたれかかる」という意味ではありません。ある程度、距離を乗っていくとハンドルに大きく荷重せずとも体幹の筋肉で上体を支えられるようになります。それでも前傾はしているので、サドルに掛かる荷重は減り、その分だけペダルに荷重が掛けられるようになります。

サドルにどっかり座ることを強いられる「アップライトすぎる」姿勢では、こうした荷重の分散をやろうとしても難しいわけですね。

舗装路での走行性能

加速は素直で、踏み込んだ分だけ自然に速度が乗ります。鋭い反応ではありませんが、鈍重さも感じません。407gのタイヤにブチルチューブが入っているはずなのに、ちょっと驚き。

付属するクランクは165mm。推奨身長が178-185cmなのに、かなり短い。

巡航や登坂もスムーズで、各所でのダンシングもしやすい。ただ、これは標準装備である165mmのショートクランクも影響していた可能性があります。太ももの上がる量が減り、「マイペースで登る」場合に素直に回せる印象が強かったです。ブルベでは追い込むように登るシーンは少なく、淡々と登るシーンがほとんど。そういう場合にありがたい特性です。

一体型ではない、エルゴノミック形状のハンドルが付属。

ハンドリングも自然でした。ホイールベースは長く、付いているタイヤは32Cと太めですが、コーナーの曲がりにくさやハンドリングのモッサリ感は感じられず。ジオメトリ表にトレール値の記載がないので分かりませんが、恐らく32Cで最適なハンドリングが得られるように設計されていると推測します。28Cタイヤを付けたらかなりクイックになりそう。

全体として、基本的な走行性能に不満を覚える点はありませんでした。

石畳での快適性

CFで最も印象に残ったのは、高い快適性です。

試乗コースに組み込んだ石畳。50mほどだが、ちゃんとした石畳だった。

昨今のエンデュランスロードは舗装路に限らず、ある程度の悪路でもこなせることをウリにしているケースが多くなっています。「それならば試乗でもある程度の悪路は試すべきだろう」と考えました。そこで石山さんに「近くにグラベルや石畳はないですか?」とお聞きしたところ、「グラベルと石畳がありますよ。短いけど。」と紹介いただいたのが写真の場所。50m程度ですが、不揃いの石が並んだ本格的な石畳の道です。

通常のロードバイクなら腰を浮かせて衝撃を逃がしたくなる路面ですが、CFではサドルに座ったまま走れてしまいました。路面からの衝撃が消えるほどではないのですが、サドルに伝わる衝撃が穏やかなのです。

なお、試乗終了後に愛車のGE-110(28Cタイヤ、前5.5/後6.0気圧)でもこの石畳を走ってみましたが、サドルから腰を浮かせないと私には走ることが出来ませんでした。

VCLS 2.0シートポスト。製造はErgon。ちなみに、ErgonとCanyonの創業者は兄弟同士。

この快適性に寄与していると考えられるのが、VCLS 2.0シートポスト。通常の舗装路でのペダリング時には特に動いている感触はなく、恐らく大きな衝撃で動くような設計となっているのでしょう。この手の衝撃吸収機構を持ったシートポストは「動きすぎる」ことでロスを感じたりすることが多いのですが、VCLS 2.0シートポストは「必要な時だけ動いて、そうでない時はほとんど動かない」という絶妙なバランスに設定されているようです。

ただし、VCLS 2.0シートポストは2枚の板を差し込む形状であるため、シートポストの突き出し量が大きいほど動きやすくなる可能性はあります。今回は推奨より大きいサイズのフレームに乗ったため、シートポストの推奨下限ギリギリまで低くしており、動きにくい状態ではあったはずです。

このシートポストは単体販売されているErgonのシートポストとは微妙に形状が違います。Canyonの方が隙間が小さいので、しなりが少ないのかもしれません。ロードバイクで使うなら、その方が合っていると思いました。

Selle Royal「SRX」。ベースが手で動くほどに柔らかい。

また、細いシートステーや太めのタイヤ、柔らかめのサドルも快適性に寄与している可能性はあります。とりわけ、完成車付属のSelle Royal「SRX」サドルのベースは手で動くほど柔らかく、さすがにちょっと動きすぎて気持ち悪かったですね。私がこの完成車を買ったら、真っ先にサドルは変えると思います。

しかし、シートポスト以外は特段ギミックらしいギミックもないのに、これだけ突き上げをいなせるのは驚きましたね。

グラベルでの走行性能

石畳の隣にあった軽いグラベル。

軽めのグラベルも走ってみました。

断っておくと、私は普段は自分からグラベルに入ることはありません。ブルベのコースに組み込まれていたら走る程度で、オフロード経験もほぼありません。
「普段は舗装路しか走らない人が、仕方なくグラベルに入った」シチュエーションと思ってお読みください。

標準の32Cタイヤでも走行時に不安はなく、安定して走行できました。舗装路→グラベルに入ってもハンドリングが大きく変化することもなし。最大で38mm幅のタイヤまで対応しているため、さらに安定感を求める場合の選択の余地もあります。

荷物積載時の走行性能

今回の試乗には、総重量1kgの大型サドルバッグを持参しました。

2023年PBPの際の愛車。大型サドルバッグ、フロントバッグ、泥除けを装備。サドルバッグの総重量は1.5kg程度。

ブルベでは、天候や気温の変化に備えて様々な装備を持つ必要があります。体積が大きくかさばるものは大型サドルバッグに入れて運ぶわけですが、これが結構な重量になります。今回は総重量1kgですが、PBPのような超ロングライドでは2kgを超えることも。

空荷で快適に走れたとしても、荷物を積んだ際に走行特性が大きく変わってしまっては困ります。そして、この点は案外モデルごとの差が大きい――というのがこれまでの私の経験則です。重心やカーボン積層の問題だとは思うのですが、荷物を積載すると魅力が一気に陰るモデルもあります。逆に、ある程度の荷物の積載を見込んで設計されたモデルは、走行特性の変化が小さいことが多いです。

こういった特性変化を確かめるため、長時間走行を想定している(と思われる)エンデュランスロードでは荷物積載時の挙動を見ておくことにしています。

ウェア類を詰め込んで、総重量1kgにした大型サドルバッグ。バッグだけで400g、中身は600g程度。

空荷での試乗後、こちらの大型サドルバッグを取り付けて再度1kmほど走行。ダンシングで車体を左右に振ったときに挙動が乱れないか等を確認しました。

結果として、CFではサドルバッグの有無による走行感の変化をほとんど感じませんでした。加速やハンドリングにも多少はモッサリとするものの、許容範囲。荷物の重量がVCLS 2.0シートポストに影響を与えてしなりすぎることを警戒していたのですが、そういったこともなし。

もっと荷物が重くなった場合の影響の有無までは分かりませんが、少なくともこの条件では積載による走行感の大きな悪化は感じませんでした。

フェンダー・フレームバッグ

CF・CF SLXには専用のフェンダーが用意されています。ただ、日本にはまだ入ってきていないそうです。発売日も未定。一応、インストール動画は公開されていますので、どんな風に付くかは下記の動画をご覧ください。

また、CFには専用のフレームバッグも用意されていますが、こちらはそろそろ日本に入ってくるとのこと。ただ、試乗当日にはまだ入ってきていませんでした。こちらも取り付け動画が用意されています。

長時間のライドに資する装備として両方とも試してみたいところでしたが、日本に入ってきていないのではどうしようもありません。今後、入ってきて試せる機会があれば、別の記事でレポートしたいと思っています。

完成車重量

最後に、車重を実測させてもらいました。条件は以下です。

  • ペダルなし
  • ライトなし
  • バーエンドベル付き
  • ボトルケージ付き

この状態で、実測8.1kgでした。公称は8.22kgとなっていますが、それより少し軽め。アルテDi2の完成車と見ると重めですが、「32Cのチューブレスタイヤにブチルチューブを入れている」「サドルやホイールは軽くないものが付いている」ことを考えると、軽量化の余地は大きそうです。

総評

予想以上に好印象でした。

サドルやタイヤは重いものが付いているのに、加速や巡航と言った基本的な走行性能は十分。そして石畳では非常に高い衝撃吸収性能を発揮し、重いサドルバッグを付けても走行感の悪化は最小限でした。荷物を積載するための装備は豊富、コックピットやシートポストも汎用的な規格を採用しており、カスタマイズが効く点や装備(ライトやベル)の取り付けやすさも個人的には評価したいポイントです。

Step1では、CFを「十分な走行性能と快適性を備え、さまざまな用途に1台で対応する」ことを目標としたモデルだと推定しました。今回、事前に確認した設計や、実走での挙動や感触は、その目標と整合しているように思います。

もちろん、今回の試乗はたった1時間。これだけで数百kmの走行後の疲労具合や、雨天での挙動まで確認できたわけではありません。ただ、ブルベのような長時間・全天候型のサイクリングにも対応できる素地は十分に感じられました。


続いて、次ページでは「CF SLX」の試乗レビューをお送りします。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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