Canyon「Endurace CF」「Endurace CF SLX」比較試乗記

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目次

ここまで、Canyonのエンデュランスロード「Endurace CF」と「Endurace CF SLX」について、設計の分析~実試乗レビューまでを行ってきました。

本記事には、「2台の比較試乗レビュー」という目的に加え、私が考案した「私的エンデュランスロード評価メソッド」の実践例を示すという目的もあります。最後に2台の評価をまとめ、今回使用した方法論について振り返ります。

Endurace CF / CF SLX 総括

前半では、本記事で試乗した「CF」「CF SLX」についてまとめます。

CFとCF SLXの違い

今回の試乗を通して分かったのは、CFとCF SLXは単なる「下位」「上位」の関係ではないということです。両者はどちらもエンデュランスロードですが、ターゲットとするユーザー像が異なります。

CFは、十分な走行性能と高い快適性、そして汎用性を併せ持つモデルでした。石畳のような荒れた路面でも振動の収まりが早く、大型サドルバッグを取り付けても挙動への影響は小さい。一般的なハンドルやステムを使用可能で、バッグ用のダボ穴や泥除けへの対応など、追加装備の自由度が高いことも特徴です。

CF SLXは、レーシングロードを思わせる鋭い反応と軽快さが印象的なモデルでした。空力性能を意識したフレーム形状・一体型ハンドル・ダウンチューブストレージなど、軽装で速く遠くまで走ることを重視した設計が特徴です。ただし、石畳ではCFほどの衝撃吸収性はなく、大型サドルバッグを取り付けると加速やダンシングの軽快さが明らかに低下しました。

こうした結果を踏まえると、CFは「快適性と汎用性を重視するモデル」、CF SLXは「軽装での高速走行を重視するモデル」と考えられます。どちらが優れているかではなく、「何を優先して設計されたのか」が異なっているわけです。そして両者とも、その目標に適した性能を有していると感じました。

便宜上、CFR→CF SLX→CFというグレードがありますが、Enduraceは全てのグレードで得意分野が異なります。選ぶ際には自分の楽しみ方に近いモデルはどれなのかを意識することをオススメします。

Enduraceの「Race」は何を指すか

「Endurace」は、恐らくEnduranceとRaceを組み合わせた造語です。では、この「Race」部分は何を意味しているのか。

今回乗ったCF SLXは、レーシングロードに近い走行感を持っています。しかし、ハンドル位置やホイールベース、BB剛性などを見ると、「レース用ロードバイクを快適にしました」という設計にはなっていません。レーシングロードの技術を用いてはいるものの、目指している用途は異なるのだと思います。

ここで重要なのは、“レーシングロードに近いほど優れている”わけではないことです。レーシングロード由来の性能は、あくまで目的を達成するための手段。目的によっては、レーシングロードとしての性能を抑えたほうが、エンデュランスロードとしては正解となることもあるでしょう。

レーシングロード由来の性能を、レースで勝つためではなく、長距離を速く快適に走るために活用する。Enduraceの「Race」にはそんな意味が込められている気がします。

どんな用途に向く?

私の場合、ブルベなら「CF」を選びます。東京大阪キャノンボールや、東京糸魚川ファストランであれば「CF SLX」を選ぶでしょう。どちらも長距離を制限時間内に走る点では共通していますが、求められる平均速度と携行する荷物の量が異なります。だからこそ、同じエンデュランスロードでも適したモデルが変わってくるのです。

ブルベにおいては、長時間走り続けるための快適性や、天候・補給に対応する装備の自由度の高さが重要になります。積載状態でも走行感が変わりにくいCFは、セルフサポートで長時間行動をし続ける用途に適しています。

一方、なるべく軽装で長距離を速く走るキャノンボールや、糸魚川ファストランでは、CF SLXの軽快な走行性能や空力性能を意識した設計が魅力的に映ります。キャノンボールでも、ルートによっては荒れた路面の場所もあるわけですが(加太の採石場あたり)、CF SLXであればそこも乗車のまま突破できるでしょう。

今回、「石畳を走る」「1kgのサドルバッグを付ける」試験によって、両者のキャラクターの違いが明確になりました。ただ、CF SLXが積載によって軽快さを失うからと言って、その設計が悪いわけではありません。「そういう用途は優先度が低い」という可能性があるからです。

「ある条件で性能が劣る」ことがすなわち、設計に問題があるということにはなりません。その製品の目的に照らして一体どうなのかを判断することを今回の試乗レビューでは心がけました。

評価メソッドを実践して分かったこと

続いて、今回の「私的エンデュランスロード評価メソッド」を実践してみて分かったことを振り返ります。

毎回、4Stepを全て書く必要はない

本記事では、私が考えた評価メソッドに沿って以下の4ステップを実践しました。

  1. 用途と目標の推定
  2. 設計方針の妥当性検討
  3. 設計の整合性確認
  4. 実地評価

今回は方法論そのものを示すことも目的だったため、Step1~3にも多くの文字数を割きました。結果として、肝心の試乗に入るまでが非常に長くなってしまったと思います。

恐らく、今後の記事ではここまで詳しくStep1~3部分を書くことはありません。本来、そこは記事を書く側が実際に試乗する前に整理しておくべき内容だからです。記事として表に出すのは、「何のために作られた製品なのか」「その目的がどのように設計へと反映されているのか」ということを簡潔に説明すれば十分でしょう。そのうえで、Step4の実地評価に多くの文字数を使うほうが、読みやすく実用的な記事になると思います。

ただし、省略してよいのは「Step1~3に関する説明」であって、「Step1~3の検討」そのものではありません。製品の目的を把握してこそ、何を試すべきかが明確になるからです。特に、目的が製品によって異なるエンデュランスロードでは、ここを外すと的はずれなテストになってしまいます。

更に言うと、試乗におけるテスト内容を全ての製品で共通化する必要もないはずです。製品の目的が変われば、行うべきテスト内容も変わってくるからです。今回で言えば、CF SLXにおけるダウンチューブストレージのテストが良い例でしょう。

エンデュランスロードに限らない評価法

今回の「私的エンデュランスロード評価メソッド」はエンデュランスロードを対象にした方法論ですが、サイクルコンピューターやライト、ウェアなど、他の製品にも応用できると思っています。

私はこれまで多くのサイコンをレビューしてきました。ナビゲーションを重視する機種もあれば、トレーニングを重視する機種もある。画面の綺麗さを重視する機種もあれば、ランタイムのためにすべてを犠牲にしている機種もある。エンデュランスロードと同様、「製品ごとに目的が若干異なっている」ジャンルなのです。

例えば、Edge840には、走行中の残り体力を推定する「リアルタイムスタミナ」という機能があります。私自身は特に必要とはしていませんでしたが、あくまで製品評価のためにしばらく使っていました。その結果、少なくともブルベのような長時間走行においては推定値と実際の残り体力(主観)が大きく食い違っていることが分かりました。

自分に必要のない機能であっても、その機能を必要とするユーザーが読み手の中にいるかもしれません。だからこそ、まずは「何を実現するための機能なのか」を理解し、その目的を果たせているかを評価する必要があると考えています。ただ、目的が果たせていなければ評価を下げます。設計意図を理解することと、その設計を肯定することは別の話であるということですね。

Enduraceに話を戻すと、私自身は38mmのタイヤクリアランスは必要としていませんし、一体型ハンドルも必要としていません。しかし、それらがどんなユーザーを想定した装備で、どのような価値を提供するのかは評価すべきであろうと考えます。「自分には必要ない」という理由だけで切り捨ててしまうと、製品が本来持っている価値を見落とすことになるからです。

「何のために作られた製品なのか」
「その目的はどのような設計に反映されているのか」
「実際に、その目的を達成できているのか」

今回の評価メソッドは、この3つの問いを順番に考えるためのものです。全ての製品に同じ評価基準を当てはめるのではなく、それぞれの目的に相応しい基準で評価する。今後のレビュー記事においても、この姿勢を大切にしていきたいと思っています。


同じ製品シリーズなのに、グレードごとに目的が異なる。まさに今回私が提唱した評価メソッドにマッチした題材で試乗のチャンスを頂けたことは僥倖というほかありません。

キャニオンジャパンの皆様、どうもありがとうございました。

追加取材:Canyon本社からの回答

試乗後に残った疑問について、Canyon本社に問い合わせを行いました。以下は、シニアプロダクトマネージャーのSven Reuter氏からいただいた回答です。

こちらの回答は、ここまでの本文を書き終えた後にいただいたものです。回答を受け取ってからも、それまでの分析や評価には手を加えていません。私の分析が合っていたのか、「答え合わせ」としてお読みください。

Q1. Endurace CFのフレームリーチについて

baru:Endurace CFのフレームリーチについて新型Endurace CFでは、旧型と比べてフレームリーチが大幅に長くなっています。特にSサイズのリーチは390mmで、同サイズのAeroadと同じ数値です。また、Endurace CF SLX(Sサイズ:386mm)よりも長く設定されています。

一般的なエンデュランスロードでは、レーシングロードよりもリーチを短く設定する例が多い中で、なぜ新型CFではレーシングロードに近いリーチを採用したのでしょうか。ライディングポジション、前後の重量配分、ハンドリング特性など、特に重視した設計上の狙いがあれば教えてください。

Sven:これは、より安全な走行特性を実現するための意図的な設計です。

フレームリーチを長くする一方で、短いステムと、リーチの短いドロップハンドルを組み合わせています。つまり、ライダーが実際に手を置く位置までの距離(Effective Reach)は、レーシングバイクよりも短くなっています。

この設計によって、特に下り坂でのコントロール性が向上し、ライダーにより高い安全性を提供します。

Q2. 3種類のフレームを個別開発した理由について

baru:新型Enduraceでは、CF・CF SLX・CFRの3モデルに、それぞれ異なるフレーム設計が採用されています。

フレームを共通化せず、個別の金型を用意することには相応の開発コストがかかると思います。あえてこのような開発方針を採用した理由を教えてください。欧米におけるEndurace市場の大きさや、ユーザーの用途・要求性能の多様性が、この判断に影響しているのでしょうか。

Sven:この判断は、Canyonのバイク開発における基本的な考え方、「ライダーが本当に必要としているバイクを提供する!」という思想から導かれたものです。

Endurace CFRは、プロアスリートのために設計されています。プロ向けのジオメトリーを採用し、非常に高い剛性とスピード性能を備えています。

Endurace CF SLXは、機能が充実したプラットフォームです。CFRと空力性能を共有しながら(誰もが速く走りたいものです!)、内蔵ストレージ、フェンダーマウント、快適性を高めるシートポストといった日常的なライディングに役立つ機能を組み合わせています。日々走り込むライダーのためのバイクです。

Endurace CFは、よりシンプルな設計としています。このアプローチによって、顧客に可能な限り優れた価格対価値を提供することができます。

Q3. CFとCF SLXの設計思想の違いについて

baru:キャニオンジャパンへの取材では、新型Endurace CF SLXはAeroad寄り、CFはUltimate寄りのデザインを採用していると伺いました。

実際に両モデルを試乗したところ、CF SLXは加速時の反応が鋭く、高い速度域を好む印象でした。一方、CFは穏やかな乗り味で、荒れた路面や荷物を積載した状態でも安定していました。

これらの走行特性の違いは、開発時に意図したものなのでしょうか。また、それぞれのモデルでは、具体的にどのようなユーザー像やライドスタイルを想定しているのでしょうか。

Sven:はい。前述の説明のとおりです。CFのライダーに対しては、より高い信頼性と安全性を重視しています。想定するライダー像をまとめると、次のようになります。

Endurace CFは、最大限のコンプライアンス(路面からの衝撃や振動をいなす性能)、信頼できるエルゴノミクス、手間のかからない信頼性を求め、長時間のライドを無理なく楽しみたいライダー。「純粋な安心感。どんな道でも途切れないスムーズな走り。」

Endurace CF SLXは、エリートレベルのコンポーネントとレース由来のエンジニアリングを求めながらも、純粋なエアロレーシングバイクのような厳しいライディングポジションは望まないライダー。高い効率性と、一日中走り続けられるエンデュランス性能を両立したいライダーです。

Q4. 専用フェンダー(DEFEND Fast)の採用理由について

baru:新型Endurace CFとCF SLXでは、最大38mmのタイヤクリアランスを確保するとともに、最大35mm幅のタイヤに対応する専用フェンダー「DEFEND Fast」を装着できるようになりました。

特にCF SLXは空力性能や高速走行を重視したモデルですが、今回、CFだけでなくCF SLXにも専用フェンダーへの対応を盛り込んだ理由を教えてください。欧州市場における雨天走行や、季節を問わず自転車に乗るユーザーの需要を意識した変更なのでしょうか。

Sven:Enduraceファミリーでは、すべてのライダーが年間を通じて、それぞれの日常のライド環境で走れるようにしたいと考えています。Canyonにとって重要な市場の一部では、冬の雨天ライドもその中に含まれます。そのような環境では、フェンダーマウントは欠かせない(must have)装備です。

著者情報

年齢: 42歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。
# これまでに著者が乗ってきたスポーツ自転車の履歴はこちらの記事にまとめています。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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