iGPSPORT「BiNavi Ultra」ファーストインプレッション

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10/26にiGPSPORTから発売となったGPSサイクルコンピューター「BiNavi Ultra」のファーストインプレッションです。

これまでは「BiNavi」「BiNavi Air」が同ブランドの最上位グレードとされていましたが、今回はさらに上のグレードが発売されたことになります。

・本記事でレビューする製品は、iGPSPORTからレビュー用に提供頂いたものです。
・本記事は、BiNavi UltraのファームウェアV1.02.011段階での内容となります。

目次

まえがき

まずはレビュー依頼を頂いた経緯について書きます。

発売前のテスト依頼

8月某日。iGPSPORTの担当者からこんなメールが届きました。

【未発表新製品】BiNaviシリーズ最上位モデル「BG04」レビューのお願い

製品コードはBG04。仮称「BiNavi Ultra」のレビュー依頼でした(結局仮称がそのまま正式名称になった)。これまでのBiNavi・BiNavi Airよりさらに上のグレードの製品になるとのこと。

これまで、iGPSPORTからのレビュー依頼は全て「発売後」でした。「発売前」に依頼を頂いたのは今回が初めてです。それはつまり、まだ発売可能な品質に達していない製品をテストするということです。

ソフト品質は心配だが……

サイクルコンピューターというものは非常に複雑な製品です。それもあって、どこの会社のサイコンも発売直後のソフト品質は正直酷い。半年くらいすると安定してきますが、それまでの期間は自腹を切ってテスターになるようなものだと思っています。

恐らく発売前はもっとソフト品質が低いはず。そうなると、「レビュー」というよりは「デバッガー」をやることになりそうです。これまでも発売後に色々とフィードバックをiGP宛に送っていましたが、今回はその数倍の量のフィードバックを送ることになるはず。

とはいえ、依頼と一緒に送られてきた製品資料の内容は中々魅力的でした。これまでよりも液晶が大きくなり解像度を高めた画面、それでいて他社のように全透過ディスプレイにはせず半透過ディスプレイを継続(ランタイムの観点で超大事)、ダイヤル形式の新しい操作ボタン。新機軸が多く見られ、iGPSPORT側の意欲が伝わってきました。

新機能は色々とあったのですが、その中でも一番気になったのは「ローカル音楽再生機能」。BiNavi UltraにMP3/WAVファイルを転送することで、本体のスピーカーから音楽を流せる機能を備えているというのです。同社のBSC500のレビューには「音楽を本体スピーカーから流したい」という要望を書いたのですが、それが早くも実現されたことになります。

フィードバック量が膨大になるであろうことは気にかかりましたが、それよりも「使ってみたい」気持ちが勝ったので、依頼をお受けすることにしました。

技適の問題

ただ、ここで気になったのが「技適」です。発売前なら、まだ取得できていない可能性があるはず。

聞いてみると、やはり「まだ取得できていない」とのお返事。危ない危ない……聞いておいて良かった。「では取得できたら送ってください」とお返事しました。

9/7に技適が取得されたため、製品を受領。そこからテストを開始しました。

案の定、テスト開始直後はかなりの指摘件数を送ることになりましたが、発売前に大半を「対応完了」にしてきたのは流石の速度ではありました。

当サイトでは単なる宣伝依頼はお受けしていません。ユーザー目線の本音の情報を書きたいと思っているからです。このため、短所も含めて正直なレビューを書いて良いことを承諾頂けない場合は、レビュー依頼はお断りすることにしています。

今回も、いつも通り長所・短所どちらも合わせて書いていきます。

iGPSPORT「BiNavi Ultra」

9月中旬のテスト開始後、約1ヶ月半で600kmブルベを含む約1200kmの実走を行った段階でのファーストインプレッションを書いていきます。

比較対象は、Garmin「Edge1050」・Wahoo「Elemnt Ace」と言った大画面のフラグシップ機。加えて、私が実機を持っているiGPSPORT「BiNavi」「BiNavi Air」とも比較を行っていきます。

製品の位置づけ

直前に書いた通り、BiNavi Ultraの競合となるのは「Edge1050」「Elemnt Ace」と言った大画面のフラグシップ機です。

これまでiGPSPORTは、Garminで言う800番台クラスをトップグレードに置いていましたが、今回新しく1000番台に対応するグレードを追加したことになります。イメージとしては以下の表のような感じでしょうか。

iGPSPORTGarminWahoo
フラグシップBiNavi UltraEdge1050Elemnt Ace
ハイエンドBiNaviEdge850Elemnt Roam 3
小型ハイエンドBiNavi Air(該当なし)Elemnt Bolt 3
ミドルレンジBSC500Edge550(該当なし)

以前のフラグシップであった「iGS800」はバッテリーこそ大きかったものの、画面サイズと解像度から見ると「BiNavi」と同グレードの製品に分類されると思われます。

競合製品とのスペック比較

BiNavi Ultraのスペックを示しつつ、競合製品と比較していきます。

BiNavi Ultra発売とほぼ同時にGarminの最新フラグシップ機「Edge 1060」も発表されたので、そちらも表に加えました。

スクロールできます
iGPSPORT
BiNavi Ultra
iGPSPORT
BiNavi
Garmin
Edge1050
Garmin
Edge1060
Wahoo
Elemnt Ace
税込価格
(発売時)
79200円39930円126800円
(109800円)
128000円79200円
(108900円)
重量122g103g161g142g208g
本体サイズ縦:108.2
横:60.9
厚:14.3
縦:101.0
横:60.0
厚:14.5
縦:118.5
横:60.2
厚:16.3
縦:107.0
横:58.5
厚:16.3
縦:125.0
横:71.0
厚:20.0
画面サイズ3.7インチ3.5インチ3.5インチ3.5インチ3.8インチ
解像度480 x 854px320 x 480px480 x 800px478 x 800px480 x 720px
画面方式半透過反射半透過反射全透過全透過半透過反射
防水等級IPX7IPX7IPX7IPX7IPX7
バッテリー2420mAh1250mAh3000mAh不明4350mAh
ランタイム30時間35時間20時間20時間30時間
ランタイム
(節約モード)
50時間不明60時間60時間不明
ストレージ64GB32GB64GB64GB64GB
物理ボタンボタン: 3個
ダイヤル: 1個
(ボタン兼用)
ボタン: 6個ボタン: 3個ボタン: 7個ボタン: 6個
対応衛星GPS
GLONASS
Galileo
Beidou
みちびき
GPS
GLONASS
Galileo
Beidou
みちびき
GPS
GLONASS
Galileo
Beidou
みちびき
NaviC
GPS
GLONASS
Galileo
Beidou
みちびき
NaviC
GPS
GLONASS
Galileo
Beidou
みちびき
NaviC
GPSモードGPS
マルチGNSS
2周波マルチGNSS
GPS
マルチGNSS
2周波マルチGNSS
GPS
マルチGNSS
2周波マルチGNSS
GPS
マルチGNSS
2周波マルチGNSS
2周波マルチGNSS
マップ表示○
文字表示あり
○
文字表示あり
○
文字表示あり
◯
文字表示あり
◯
文字表示あり
内蔵マップマップルOSMマップルマップルOSM
慣性航法○××××
スピーカー○×○○○
 音声案内○×○○○
 電子ベル○×○○○
 音楽再生○××××
マイク○××○×
 音声操作△
(発売時未実装)
××○×
風速センサー
(内蔵)
××××○
非接触決済××○○×
通信Bluetooth
ANT+
Wi-Fi
Bluetooth
ANT+
Bluetooth
ANT+
Wi-Fi
Bluetooth
ANT+
Wi-Fi
Bluetooth
ANT+
Wi-Fi

価格の安さが大きな魅力だったiGPSPORTですが、今回は79200円とかなり価格が上がりました。価格面の話は後で詳しく触れます。なお、発売時は108900円だったElemnt Aceですが、ここ数ヶ月の間に値下げが行われたようでUltraと同じ79200円になっています。同じくらいの値段で発売した1050はむしろ値上げをしているんですが。

ハード面の大きな変更点の1つ目が「画面解像度の向上」。同じ画面サイズのBiNaviが「320 x 480px」だったのに対し、Ultraは「480 x 854px」。画素数で比較すると2.7倍になって、より精細になっています。Edge1050やElemnt Aceよりも画素数は上で、現状のサイコンでは恐らく一番多いはず。

画素数が上がるとランタイムは大幅に下がるのが普通ですが、バッテリーをBiNavi(1250mAh)に比べて倍増することで30時間ラインをキープ。個人的に「よくぞ変えないでいてくれた」と思ったのが、画面方式です。半透過反射方式を継続してくれました。これについても後で詳しく述べます。

ハード面の大きな変更点の2つ目が「ダイヤルボタンの採用」です。公式にはコントロールノブと呼ばれていますが、要は「押すことも出来るダイヤル」。従来のBiNaviやiGS800ではこの位置に決定ボタンがあり、その隣には上下ボタンがありました。それら3ボタンが1つのダイヤルボタンに統合された形です。

従来機種にはなかった「ローカル音楽再生機能」も目玉の一つ。スピーカー搭載のサイコンは、iGPとしてはBSC500に次ぐ2機種目ですが、内蔵スピーカーからストレージ内のMP3/WAVファイルを再生可能となっています。

ソフト面では「マップル地図の採用」が大きな変化と言えるでしょう。これまではOSMベースの地図でしたが、より日本の道路やランドマーク情報が詰まった有料地図を採用しました。なお、Garminも日本版の地図はマップルです。

珍しい機能としては「慣性航法」が挙げられます。これは、トンネルの中やビル群の中でGPS電波が拾えなくなったときに、内蔵センサーで進行方向を推測する機能です。調べた限りでは、これまでに採用したサイコンは無さそうでした。

新機能

BiNavi Ultraの新機能は以下の通り。基本的に、「BiNaviに比べて進化した部分」だけ書いています。

スクロールできます
分野新機能・強化点内容
ハード高解像度ディスプレイ3.7インチ、480×854ピクセル。BOE共同開発
ハードコントロールノブ回転・押下操作が可能な金属製ダイヤルを追加
地図昭文社マップル地図日本詳細道路地図を搭載
地図オフラインマップ4.0地図・経路探索・オフコース時の再探索を強化
ナビ慣性航法IMUセンサーとDRアルゴリズムでGNSS信号喪失時も位置を推定
ナビルートコレクションナビ複数ルートをまとめて管理し、走行状況に応じて自動切替
ナビターンバイターン案内の強化走行状況に応じて案内内容を調整
登坂iClimb 4.0ナビゲーションを使用していなくても登坂を自動検出
音声音声ナビゲーション右左折、登坂、リマインダーなどを音声で通知
音声電子ベル画面ダブルタップやDi2操作でベル音を鳴らす
音楽本体内蔵音楽再生MP3/WAVファイルを保存して本体から再生
表示コントロールの画面項目化各種操作機能を画面上に配置
表示大文字表示スタイルデータ項目の数値を拡大表示し、走行中の視認性を高める
トレーニングライブセグメント2.0Stravaライブセグメントの情報を地図上に重ねて表示

全ての新機能に触れることはしませんが、背景がオレンジ色になっている機能については本文内で触れています。

パッケージ

iGS800やBiNaviと同様、重量のある紙箱に入っています。BSCシリーズはもう少し簡易な箱なので、やはりメーカー的には「格上の製品である」ことを強調している気がします。

パッケージ裏面はセールスポイント一覧。側面には技適マークも確認。

開封。今回もパズルのように付属品がギッチリ詰まっています。

パッケージ内容は以下の通り。

パッケージ内容
  • BiNavi Ultra 本体
  • M80 アウトフロントマウント
  • シリコンケース
  • USB充電・データ通信ケーブル(Type-A to Type-C)
  • 脱落防止ストラップ
  • マウントベース(標準マウント)
  • クイックスタートガイド
  • FDJステッカー

フラグシップ機だけあって、一通り必要なものが入っています。BiNaviには標準マウントは付いていましたが、アウトフロントマウントは付いていなかったですから、それが付くようになったのは嬉しいポイントです。後から買い足さなくて良いので。

私の手元に来たパッケージには、保護フィルムは入っておらず、「保護フィルムを貼る前に画面を拭くウェットティッシュ」だけが付属していました。「先行レビュー品だからなのかな」と思ったのですが、Amazonのレビューを見ると製品版にも付属していないようです(10/30現在)。
この手の製品が出ると、発売からすぐにミヤビックス等のサードパーティから対応するフィルムが販売されるものですが、現時点では観測できません。何か技術的に難しい点がある可能性はあります。

クイックスタートガイドは、あくまで導入のための簡単な内容しか書かれていません。「詳しくはマニュアルをダウンロードしてね」ということのようですが、当然ながら発売日までマニュアルは公開されておらず、私は手探りで色々設定を行いました。ほとんどの内容は従来のiGPのサイコンと同じなので何とかなりましたが、新機能も増えているので「これ何?」という設定も色々とありました。

現在は日本語のマニュアルも公開されており、そちらを見てセットアップが可能になっています。BiNaviは発売から2ヶ月経っても日本語マニュアルが公開されていなかったので、そこは大きな進歩。

今年からiGPがスポンサードしているワールドチーム「グルパマFDJ」とのコラボステッカーも同梱されていました。

重量

実測重量は、本体のみで122g(公称通り)。付属のシリコンケースは10gです。

バッテリー容量はBiNavi比較で倍増していますが、+19gの増量で済んでいます。Edge1050(161g)やElemnt Ace(208g)と比べるとかなり軽量で、マウントにも優しいはず。

本体仕様

本体の仕様を見ていきます。

大きさ

左: BiNavi, 右: BiNavi Ultra

BiNaviとの大きさ比較。BiNavi Ultraのほうが本体の幅が細く見えますが、これは外周部が面取りされて丸くなっているのでそう見えるだけ。実際にはUltraの方が1mmほど横幅は大きいです。液晶部分のサイズは、BiNaviより横が3mm小さく、縦が8mm大きくなっています。

Edge1050やElemnt Aceと同等グレードとなると「本体が大きすぎてマウントに付かない(ハンドル等に干渉する)」問題が気になるところですが、これらよりも10~15mmほど縦が小さいので、大抵のマウントでは干渉しないはず。

Edge1050 / Elemnt Ace/ BiNavi Ultraのサイズ模式図。ChatGPT作なので間違いはあるかも。

各社フラグシップ機の筐体と画面サイズを比較してみた図です。筐体の縦サイズは一番BiNavi Ultraが小さいですが、解像度は一番高い。後発の利を活かしています。ただ、Edge1060は画面サイズそのままで1050よりも縦サイズを11mm縮めてきて、BiNavi Ultraよりも1mm小さくなりました。

画面

左: BiNavi, 右: BiNavi Ultra

前述の通り、解像度がBiNavi比較で2.7倍になりました。画面サイズ自体はそれほど大きくなっていないので、「特に見やすくなることはないのでは」と事前には予想していましたが……実際に使ってみると、以前より画面が見やすくて驚きました。線が綺麗。画面サイズがそれほど変わらない状態で解像度が上がると、単位面積あたりのドットの密度が上がるわけで、より線を滑らかに表現できるわけですね。特に地図画面ではその差が大きいですが、文字系の画面でも文字が読みやすくなっています。

また、半透過反射ディスプレイを継続してくれたのも嬉しい点。BSC500が全透過ディスプレイだったので、「iGPもそちらに全振りするのでは」と不安でしたが、杞憂でした。

「半透過反射」方式は、「バックライトによる光の透過」と「外部の光の反射」の両方を組み合わせて画面を表示する方式です。外部の光を反射するシートが挟まっていて、外部の光をバックライト代わりに利用できるわけですね。この方式の場合、昼間は太陽光が利用できるので、バックライトの明るさを抑えることが出来ます。つまり、昼間のバッテリー消費量が少ない。BiNaviやiGS800など、従来のiGPのサイコンの多くはこちらの方式を採用しています。

iGPSPORT「BSC500」。全透過ディスプレイを採用しているため色味は綺麗だが、昼間でもバックライトをかなり明るくする必要があり、バッテリー消費量が多い。

これに対し、Edge1050やBSC500などで採用されているのが「全透過」方式です。反射層が無いので画面の色味はクッキリしますが、外部の光の反射を利用できないので、常にバックライトが必要です。しかも、外部の光よりも明るくないと画面が見えないので、昼間ほどバッテリーを消費します。Edgeのx50世代がバッテリー容量の割にランタイムが少ないのは、「全透過方式への切り替え」と「解像度の向上」を同時にやってしまったから。

BiNavi Ultraは「解像度の向上」を行って画面を精細にはしたものの、「全透過方式への切り替え」は行いませんでした。解像度の向上で増加したバッテリー消費量は、「バッテリー容量の倍増」という方法で相殺。30時間超のランタイムを維持しています。ロングライダー的には「画面の綺麗さよりもランタイムの長さを」と思ってしまいますが、ほとんどの人にとっては30時間あれば十分なのでしょう。

ボタン配置

BiNavi Ultraはタッチパネルですが、物理ボタン3個+ダイヤルボタン1個も付いています。

前述の通り、筐体の右側にあった「決定」ボタンと「上ボタン」「下ボタン」の3ボタンが、ダイヤルボタン1個に集約されています。

個人的にはダイヤルボタンは右上よりも右下に付けてくれたほうが操作しやすかった気がしますが、それだとあまりにもCOROS感が出てしまうので避けたのでしょうか。

ダイヤルボタンを別角度から見るとこんな感じ。回しやすいです。通常時は画面スクロールに使いますが、設定画面では選択肢の上下移動にも使用可能。押すと「決定」の意味になります。

その他の3ボタン。これまでのiGPのサイコンよりも高級感のある仕上げになっています。

スピーカー/マイク

BiNavi Ultraはスピーカーとマイクの両方を搭載しています。

スピーカーの音の出口は裏面の左下、川の字の穴です。後述しますが、この位置だと音が地面側に逃げてしまうのは残念な所。

マイクは本体の左サイド下側にあります。写真右手の大きな2つの穴はストラップ用で、その左にある小さな穴がマイク。本稿執筆時点ではマイクを使う機能はまだ公開されていませんが、将来的には音声操作が出来るようになることを見据えての搭載とのこと。

充電端子

BiNaviと同じく、充電端子は本体底部の2ボタンの間にあります。(今となっては特別なことではありませんが)端子はType-Cです。ちょっと、端子のフタは頼りない感じがあります。

Edge1060は、この位置にマイクとスピーカーを移動させました。充電端子は本体裏面へ。「なんでわざわざ充電しにくい位置に端子を戻したのか?」と思いましたが、風の巻き込み等を考えると、マイクとスピーカーは手前側(本体底部)に置くのがベストということなのでしょう。

裏面

裏面の全体像はこんな感じ。オレンジのリングが付いていますが、製品版もこうなっているのかは不明。マウントのプラグ部は交換可能になっています。

筐体

画面周辺はメタリックになっていて、スマートフォンっぽい雰囲気になっています。ただ、使用時はシリコンケースを付けてしまうので、メタリック部は見えないんですが。

セットアップ

初期セットアップ・設定変更の内容は、基本的にBiNaviと同じなので上の記事の「セットアップ」の章をご覧ください。

唯一違うのが、「パスワードによる保護をするか?」と聞かれる点。これは一応、BiNavi Ultraの新機能です。ただ、中身を見るより先に盗まれると思うので、パスワードを掛ける意味が良くわかりません。走行データを見られてもあまり困らないですし。

設定変更

設定変更についても、BiNaviの記事に書いた内容とほぼ同じ。基本的な内容は省いて、BiNavi Ultra特有のケースを書いていきます。

画面表示と明るさ

GPSサイコンのバッテリーの持ちをもっとも左右するのが「バックライトの明るさ」です。

iGPSPORTのサイコンの特徴として、「昼と夜でバックライトの明るさを別々に設定できる」という点があります。日の出・日の入りの時刻(正確にはその30分前)でバックライトの明るさが切り替わるわけですね。これはGarminや大手各社のサイコンには存在しない機能です。

現在の私の設定はこちら。これで昼も夜も十分に画面を視認できます。

左: BiNavi Ultra(夜間10%)、右: BiNavi(夜間10%)

これは、BiNaviと夜間のバックライト10%同士で比べてみたものです。明るさは体感であまり変わらず。私は老眼はまだ始まっていませんが、夜間でも十分に文字が読める明るさになっています。


左: BiNavi Ultra(夜間0%)、右: BiNavi(夜間10%)

こちらの画像は、BiNavi Ultraのみバックライトを0%にした図です。0%にしても完全には消灯せず、「10%の時より少し暗い」状態になります。BiNaviは、0%にすると完全に消灯します。

これについてメーカー側に問合せた所、「バックライト0%設定でトンネル等に入った場合でも画面を視認できるようにするため」とのことでした。バッテリーへの影響は無いとのことでしたが、多少は影響はある気はします。

画面項目

1ページに表示可能な項目の最大数は12個です。BiNaviと同じ。

9項目を表示した例がこちら。BiNaviと同様、画面上部(ステータスバー)に「電波状況」「現在時刻」「電池残量」を表示しておけるので、各ページに設定する画面項目が少なくて済むのがありがたい。

また、BiNavi Ultraから、「音楽再生」や「アクションカメラ録画」と言ったコントロール機能を画面項目として配置可能になりました。上記の画面では、「音楽」と書いてある領域がそれです。

ちなみにその左側にある領域は、ナビゲーションのパーツ。次に曲がるまでの距離と、曲がる方向が表示されます。

大文字表示スタイル

iGPSPORTのサイコンでは「ライドモード」という単位で設定を管理します(Garminで言う「ライドプロファイル」に相当)。「ロードライド用」「グラベルライド用」「室内トレーニング用」のように、それぞれのライドシーンで設定を別々に持てます。

iGS800やBiNaviの頃から、このライドモードの中に「大文字」というモードが用意されていました。文字がとにかく大きくなるモードです。

BiNavi Ultraでは、それとは別に「大きい文字表示スタイル」という設定が加わりました。これは、各ライドモードでデータ項目の単位部分を非表示とし、その分だけ文字を大きくするというもの。

設定は、各ライドモードの中にあります。「大きい文字表示スタイル」をONにすると、発動します。

左が通常表示、右が大文字表示スタイルの場合です。単位が省略され、文字が大きくなっています。フォントも変わっていますね。単位は消えてしまいますが、そこを推測で補える&文字をとにかく大きくしたい(老眼で見づらい)という方に役立つ設定です。

基本操作

基本操作についても、BiNaviの記事に書いた内容と同じです。

ルートデータの転送

ルートデータの転送方法は、BiNaviの記事に書いた内容と同じです。

なお、今年の9月から、Ride with GPSとiGPSPORTが連携し、ルートデータの直接取り込みに対応しました。

ナビゲーション、特に画面表示に関する内容については、BiNavi Airの記事に詳しく書いています。

実走

実際にBiNavi Ultraを使用して走行してみた感想を書いていきます。

大きさ・重さ

前述の通り、大型ディスプレイ搭載機としては本体サイズ(特に縦)が小さく、ハンドルに取り付けた際にも周囲と干渉しにくいと感じました。

重量についても、2420mAhと大きなバッテリーを積んでいるにも関わらず実測122gに収まっています。大型ディスプレイ搭載機は重量が重くなりがちですが、そうなるとマウント側に負荷が掛かり、爪が折れるなどのトラブルが起きる可能性があります。150gを超えるとその辺りが不安になりますが、この重量ならばマウントにも優しいはずです。

画面の見やすさ

昼間の野外での画面は非常に見やすいです。上の画像はバックライト0%ですが、外部の光を反射してバックライト代わりにする「半透過反射」方式のディスプレイを採用した効果が出ています。

夜間の表示も、解像度が高いこともあって見やすいのですが……1点だけ非常に大きな問題があります。

表示されている時刻を見るとお分かりになると思うのですが、これは夜10時の画面です。しかし、地図の背景が白いまま。問題とは、「夜になっても地図画面だけライトモード(白背景)のままになる」ことです。ダークモード(黒背景)にならない。下のデータ項目は黒背景になっているのに。

夜間は、基本的に暗い空間を見ながら走ります。前方をライトで照らしてはいますが、昼間と比べたら圧倒的に暗い。その状態で、ライトモードの地図を見てしまうと非常に眩しく感じます。そして、そのライトモードの地図を見た状態で前方を見ると、今度は明→暗のギャップで良く見えなくなる。これは危険です。

バグかと思ってiGP側に問合せましたが、「こちらは意図した仕様です。地図をダークモードにすると、地図上の情報の視認性が低下するためです」との回答をもらいました。意味が分かりません。今回から採用したマップルの地図をダークモードにすると文字の可読性が下がるのかもしれませんが、そんなことよりも夜中にライトモードの画面を見せられる方が私はイヤです。夜間走行が多いブルベ勢にとっては文字通りの死活問題。

この点については「発売までにダークモードを選択可能にして欲しい」と強く要望しましたが、結局ライトモードだけのままで発売されてしまいました。「喜多方600」の夜間走行でもライトモードの地図画面を表示しながら真っ暗な道を走りましたが、明暗のギャップに苦しみました。早急に改善してほしいです。

なお、この問題はGarmin Edge840の発売直後にもありました。問合せた所、「視認性を高めるため」という今回と同じような回答が返ってきましたが、1年後にはダークモードが実装されました。今回のBiNavi Ultraはもっと早く対応してほしいですね。

操作性・レスポンス

BiNaviと比べると、非常にサクサク動きます。特に地図画面の拡大・縮小やピンチ操作はかなり実用的になりました。

地図画面の操作を撮影してみました。Edgeのx50番台も操作はサクサクですが、互角のレベルにはあると思います。

タッチパネルについては、導電布が指先についた冬用グローブで操作しましたが、快適に操作可能でした。ただ、せっかくダイヤルボタンが付いたので、ページ送りはそちらのほうが操作しやすいです。

地図・ナビゲーション

何と言っても、地図の面では昭文社製のマップル地図の採用が大きいでしょう。道の描写や路線図の描写が非常に精密になりました。なお、マップルの地図はGarminも採用しています。

POI(Point of Interest)の表示もマップルのデータを使っているようですが、出てくるPOIの種類が執筆時点ではイマイチです。一番の問題は、コンビニが表示されない。日本のサイクリストにとってのコンビニの重要性というのは当事者以外には分かりにくいのかもしれません。メーカー側には既に要望しています。

なお、地図の縮尺の種類は以下の通り。

BiNavi Ultra20m/50m/100m/200m/500m/1km/2km/5km/10km
BiNavi50m/100m/200m/500m/1km/2km/5km/10km
BiNavi Air20m/50m/100m/200m/500m/1km/2km

縮尺の種類は、「一番細かいところはBiNavi Air並、一番広いところはBiNavi並」と、最上位機種の威厳を示しました。

ナビゲーションのルート読み込み速度についても検証しました。「PBPクラスのルートでも快適に読み込める」としていますが、実測18秒でロードが完了していました。やはりかなり良いCPUを積んでそうに見えます。

なお、iGS630時代から何度要望しても採用されなかった「海を青く表示して欲しい」という要望は、BiNavi Ultraでついに搭載されました。これもマップル地図導入の効果かもしれません。

データ値の妥当性

BiNaviのレビューでは「斜度についてはイマイチ追従性が悪い」と書きました。ただ、それは発売当時の話で、その後のファームウェアのアップデートでかなり解消されています。

iGPは今年から、FDJとのパートナーシップを結び、プロ選手からのフィードバックを得ています。サイスポでのiGPへの取材で聞いたことですが、プロ選手は特に登りの斜度変化の速さを重要視するそうです。斜度ごとに出すパワーを決めているので、それがズレてはレースの結果に影響するわけですね。それもあって、斜度変化への追従具合はiGPの全機種で改善されています。BiNavi Ultraは手元に来た時からその辺は問題がありませんでした。

獲得標高や距離といった数字も違和感がありません。この辺りを間違えるとプロ選手からあっという間にクレームが来るでしょうから、しっかりするようになりましたね。

データの保存

メニューから保存を選ぶと、300km程度の長いデータであってもすぐに保存が完了します。砂時計がぐるぐる回って「このまま保存されないのでは」と不安になることはありません。

システムの安定性

手元に来た当初は少々怪しい動作もありましたが、10月に入ってからはフリーズなどは起きていません。走行中に急に電源が落ちるようなケースもありませんでした。

バッテリーの持ち具合

以下の設定で600kmブルベの1日目(320km)を走ってみました。

設定内容
  • GPSモード
    節約
  • バックライト
    昼: 0%, 夜: 10%
  • 接続センサー
    パワーメーター

最初の9時間を「音楽再生なし」の状態で走行した所、9時間で100→73%へと減りました。1時間あたり3%の減少です。このペースで行くと、33時間は持ちます。公称30時間なのでウソはなさそうです。

ただし、そこからの7時間を「音楽再生あり(音量50%)」で走った所、73→40%と33%の減少。1時間あたり4.7%です。結構増えますね。

音声案内であれば交差点だけ音を鳴らせば済みますが、音楽再生の場合は常に音を出し続けなければなりません。スピーカーでの消費電力もそれなりに掛かるということでしょう。暇つぶしや動物避けには嬉しい音楽再生ですが、必要な時だけ使ったほうが良さそうです。

音声案内・電子ベル

ナビゲーションを起動すると、曲がり角のたびに音声が流れます。画面を見なくても、曲がる方向が分かるのは便利。ただ、かなり音量設定を大きくしないと、クルマが走っている幹線道路では案内を聞き取ることが出来ません。体感では80%程度まで上げる必要があります。あまり音量を上げるとバッテリー消費が上がりそうで、悩ましい所。

BSC500の記事では「全ての曲がり(交差点だけでなく大きめのカーブも含む)で音声案内が流れて鬱陶しい」という内容を書きました。これを受けてなのか、BiNavi Ultraには「ターン案内モード」という新しい設定が設けられています。選べる値は「詳細」「簡易」で、詳細を選ぶと「全ての曲がりで通知」になり、簡易を選ぶと「主だった交差点のみ通知」となるようです。

電子ベルについてはBSC500と音の種類は同じ。音量が固定(システム音量に関係なく一定)であることも同じです。ベルとして機能する程度の音量はあると思いますが、法律上の警音器としてカウントされるかは微妙です。ブルベの車検では通らないと思います(サイコンの電源が切れたら鳴らないから)。

ローカル音楽再生

今回搭載の機能で一番気に入っているのが、このローカル音楽再生機能です。MP3/WAVファイルを指定のフォルダに置くことで、内蔵のスピーカーから音楽再生が出来るというもの。恐らく、これまでのサイコンには搭載されたことがなかった機能です。

「喜多方600」では、クマや鹿が出ると言われる地域で、この機能を使って大音量でヘヴィーメタルを流しました。効果があったのかは分かりませんが、とりあえずクマや鹿に出会うことはありませんでした。去年の同じコースでは大きな鹿に遭遇したんですけども。

難点は、スピーカーの音の出口が本体裏面にあり、そのまま使うと音が地面側に逃げてしまうこと。そこで私はスピーカーの位置に音を反射する板を置き、顔に向けて反射させることで「音量を小さくしても音が聞こえる」ようにしています。スピーカーの位置は変えられないと思うので、「スピーカーの音を効率良く反射する専用マウント」を出してほしいです。

残念ながら認識されるのはMusicsフォルダ直下のファイルのみで、アーティストごとのフォルダを切ると認識されません。なので、ファイル名を工夫して入れないと再生順がメチャクチャになります。

慣性航法

慣性航法とは、トンネルやビル群の中でGPSの電波を見失っても、内蔵のセンサーで記録を継続できる機能です。せっかくなので試してみました。

ナビ設定の中の「DR推測航法」の設定をONにすると、キャリブレーションが開始されます。この状態でしばらく走行すると内蔵センサーが「こういう動きをしたら、こちらに進んでいる」という情報を把握するようです。

いつもGPS電波をロストするトンネルで、慣性航法をテストしてみました。

電波をロストすると慣性航法モードに切り替わり、現在地アイコンが青から赤に変わります。スピードセンサーは付けていませんが、ちゃんとスピードは表示され、距離も増加しました。

トンネルを抜けて電波をキャッチすると、通常走行モードにシームレスに戻ります。

トンネル内でカーブするようなケースでも追従してくれるのかは分かりませんが、日本でそういうトンネルは乗鞍くらいなので(私が知らないだけで他にもあるかも)、実用上は問題ないと思います。

iClimb 4.0

iClimbは、「ルートナビゲーション中、ルートに含まれる坂を検出する」機能でした。

坂を検出すると、その坂の標高プロファイルと残り距離が表示されます。これがiClimb機能です。

BiNavi UltraではiClimbのバージョンが上がり、「ルートナビゲーションをしていない時でも、進む方向に坂があれば検出してiClimbが起動する」という機能が追加されています。

このモードをONにすると、地図上に④や③などの数字と、ヒルクライム区間が線で表示されるようになります。で、この坂に入るとiClimbが起動するはずなんですが……。

残念ながら、本稿執筆時点のバージョンでは起動しませんでした。坂の検出は出来ているけれど、坂に入ってもiClimbが起動しない。もしかしたら「3級山岳以上じゃないと起動しない」みたいな縛りがあるのかもしれませんが、細かく検証はできていません。

その他の機能

その他、あまり使いこなせていない新機能についても触れておきます。

Strava ライブセグメント

これまでもiGPのサイコンには「セグメント」機能はありましたが、あくまでもiGPのシステム内におけるもの。多くの人が望む「Stravaライブセグメント」には対応していませんでした。

BiNavi UltraではついにStravaライブセグメントに対応。……ただ、この機能を使えるのはStrava有料ユーザーだけ。私は有料ユーザーではないので、この機能は試せておりません。

ルートコレクション ナビゲーション

BiNavi Ultraの新機能の一つが、複数のルートを1つのコレクションとしてまとめて扱える「ルートコレクション ナビゲーション」です。

例えば、ブルベであれば「PCごとにルートを区切って作成し、PCに到着したら次の区間のルートに切り替える」というのは割とよくある運用です。「ルートコレクション ナビゲーション」は、この切り替えを自動化します……とは書かれているのですが、現時点では自動で切り替わりません。ルート候補から自分で選択する操作が必要です。

まずはアプリでコレクションを作成し、その中に複数のルートデータを登録します。

コレクションごとサイコン本体に転送すると、上記の画面からグループを呼び出すことが出来ます。この状態で、2枚目画像の右上の▶️ボタンを押すと、機能が有効になります。

そして、現在地が登録されたルートのいずれかに近づくと、「このルートのナビを開始するか?」という確認ダイアログが出ます。ただ、2つのルートの境界付近ではAとBの両方ともが候補に表示されてしまいます。出来ればコレクション内でのルート順番を考慮してもらい、「Aのルートが終わったらBしか出さない」的な処理があれば良いと思いました。

あと、ルートの切替は「面倒だけど、ルーティーンとして有効」だと思っているので、私は手動でやりたい派だったりします。「これからこの区間を走るぞ」と自分に自覚させる儀式と言いますか。これは自動化しなくてもよいのではないかと思いました。

価格について

BiNavi Ultraの定価は、税込79200円です。

喜多方600のブルベの道中でiGPの方のメールを見て定価を知りましたが、正直「高いな」とは思いました。「機能やスペックから見て高い」というわけではなく「iGPの過去の値段の付け方から見て高い」という意味です。

BiNavi Ultraの中国での定価は2499元。実は、2024年発売の当時のフラグシップ機「iGS800」も当初の定価は2499元でした。そして、iGS800の発売時の国内定価は、税込53900円。79200円とはかなりの開きがあります。

ただ、2024年と現在では為替が異なります。元に対しても円安が進んでおり、同じ2499元でも日本円にすると53900円より高くなります。比較のために、表を作ってみました。

項目iGS800BiNavi Ultra
発売時期2024年3~4月2026年10月
中国定価2,499元2,499元
当時の為替レート20.77円/元23.61円/元
中国定価の円換算51,915円59,008円
日本定価53,900円79,200円
円換算との差額+1,985円+20,192円
円換算に対する上乗せ率+3.8%+34.2%

iGS800は、中国の定価に比べて2000円程度しか上乗せされていませんでした。これに対し、BiNavi Ultraは20000円も上乗せされています。18000円も上乗せが増えているわけです。

仮に、これまでと同じ2000円の増分程度で「定価61600円」だったら、「まぁそれくらいはするよね」と体感的には納得していたと思います。しかし、現実には79200円で発売となりました。

iGPの定価の付け方が変わったのか?と思いましたが、BiNavi Ultraと同時に発売された心拍計「HR80」の中国定価は9447円(日本円換算)で、日本国内定価は10890円。差額は1400円で、大きな差がありません。

となると、BiNavi Ultraの上乗せ増分はどこから生じているのか。確認を取ったわけではありませんが、恐らくは「マップル地図の使用料」分ではないかと私は考えています。マップル地図は日本独自仕様であり、他国ではOSMベースの地図が使われています。他国との差があるとすればそこだけなのです。

Garmin Edgeにインストールされている、マップルの「City Navigator Plus」という地図は、単体で買うとダウンロード版で15400円です。マップルの価格体系や契約内容がどうなっているかは私には分からないですが、価格帯としては妥当な推論だと考えています。

そうなると、この79200円という価格に説得力を持たせるためには、「マップル地図を採用したことで、OSM時代よりどれだけ便利になるのか」に懸かっているのではないでしょうか。

マップル地図には、多種多様なPOI(店や信号などのランドマークを地図上に表示する仕組み)が含まれています。ただ、同じマップル地図を採用しているGarminと比べると、BiNavi Ultraに表示されるPOIの種類と表示方法がイマイチというか。同じマップルの地図を採用しているGarminでは、もっと多くの種類のPOIが表示されています。iGPSPORT側でも表示できる情報があるのではないかと思い、追加を要望しました。

まず種類についてですが、「コンビニがPOIとして出ない」のはダメです。個人商店とか薬局よりも、まずはコンビニです。

Edge840の地図画面

Garminの場合、コンビニは表示されますし、さらにチェーンごとのアイコンで表示されます。そのコンビニがセブンイレブンなのか、ローソンなのか、ファミマなのか、ひと目でわかるわけですね。あと「南武沿線道路」の文字で隠れてしまってますが、自転車店も専用アイコンで表示されます。残念ながら、BiNavi Ultraでは自転車店も今は表示対象になっていません。

Edge530の地図画面

そして、POIの表示方法。Garminは、スタジアムや城など、明らかに目立つランドマークを専用アイコンで大きく表示しています。この画面だと右下のスタジアムがそうですね。「大きな建物と鉄道路線で自分の位置を把握する」という、日本の自転車乗りの心理をよく分かっています。

要望一覧で後述しますが、Garminに比べると同じ地図ソースを使っているのに、取り出している情報の出し方と見せ方がイマイチです。逆に、ここが修正されれば、価格にも一定の説得力がでてくると思います。

改善を要望したい点

BiNavi Ultraについて、個人的に感じた「改善して欲しい」点を挙げていきます。

地図のダークモードを実装して欲しい

本文中でも触れましたが、BiNavi Ultraは夜になってもライトモード(白背景)のままです。これは意図的な仕様であるとのことですが、街灯のない暗い場所での夜間走行時に危険だと思っています。

人間の目は、明るい場所から暗い場所に移ると、徐々に弱い光でも感じ取れるようになります。これが「暗順応」です。夜間走行中に白背景の明るい画面を見たとしましょう。そうすると、その後に周囲の暗い場所を見た時に、一時的に暗い場所が見えにくくなる可能性があります。これが黒背景であれば、画面全体の発光量が抑えられるので、周囲の暗さに順応した視覚への影響を軽減できます。

恐らく、こういった理由から各社のサイコンは「夜になると黒背景に白文字(ダークモード)に切り替わる」という仕様に昔からなっているはず。実際、iGPSPORTの過去のサイコン(iGS630以降のマップ搭載のモデル)は、全て夜間は地図もダークモードになっていました。なぜBiNavi Ultraになって突然、ダークモードを削除してしまったのか不思議です。

安全に関わる話なので、最優先でダークモードを追加してほしいです。

地図縮尺の不具合修正

本稿執筆時点では、BiNavi Ultraの地図の縮尺(画面右下に表示される距離の例)がおかしいです。

左: BiNavi Ultra、右: BiNavi

これは、皇居のあたりの地図を同じくらいの縮尺で表示したものです。BiNaviには「1km」というバーが画面右下に表示されているのに対し、BiNavi Ultraには、BiNaviのバーの半分くらいの大きさで「2km」というバーが表示されています。

皇居の横幅は1.3kmほど。しかし、現在のBiNavi Ultraの地図を信じると、横幅が約4kmあるように見えてしまいます。これは明らかにおかしい。BiNavi Ultraのマップにおけるバーの上に表示されている距離は、実際の距離の3-4倍です。地図を見て「次の曲がり角まであと200mくらいはあるな」と思っていたら、実際は800m先だった……ということが起こってしまうわけですね。

さすがにこれは明確にバグだと思うので、早く直してほしいです。

ナビの音声とビープ音を選択制にしてほしい

交差点の手前で、「まもなく左折します」といったような人の声での案内が流れるのが、スピーカー搭載機種であるBiNavi Ultraの特徴です。従来のサイコンは、スピーカーを持たず決められた機械の音(ビープ音)が鳴るだけでした。それに比べると、音により多くの情報を乗せることが出来るようになっています。

山の中では十分に音声が聞き取れるが……

これが静かな山の中だったら良いのですが、交通量の多い道だと「人の声」という情報はかなり聞き取りにくくなります。あと何mで曲がるのか、右に曲がるのか左に曲がるのか。その単語が周囲の音にかき消されて聞き取れない。クルマのカーナビの場合、基本的には周囲を壁で囲まれた状態で使用します。だから人間の声でも聞き取れますが、そういった壁のない自転車では中々音声案内は聞こえにくい。

先日の「喜多方600」ではBiNaviを付けた知人としばらく一緒に走りました。曲がり角に差し掛かると私のBiNavi Ultraからは「まもなく左折します」という音声が流れますが、知人のBiNaviからは「ピピッ!」というビープ音が流れます。正直、この時に「ビープ音のほうが分かりやすいな」と私は感じました。ビープ音だと画面を見ないと曲がる方向は分かりませんが、聞き取りやすい短い音で「曲がるぞ!」と素早く知覚できる。慣れもあるのでしょうが、「音声を聞いて内容をしっかり聞き取る」よりも、「ビープ音を聞いて画面から曲がる方向を読み取る」方が認知負荷が低い気はしています。

ただ、静かな場所では音声案内も聞き取ることは出来る。で、あれば「音声とビープ音、どちらを使うか設定で選べればよいのでは」と私は思いました。スピーカーでもビープ音と同じ音は出せるはず。ビープ音の方が分かりやすいと思う人はそれを使えば良い。

さらに進めて、「音声のみ」「ビープ音のみ」「ビープ音+音声」の3パターンから選択できるようにするというのが一番良さそうな気がしています。最後の併用パターンは、ビープ音で注意を引きつけた後に、内容を音声で伝える。交通量の多い道ではビープ音しか聞こえないかもしれませんが、その時は画面を見ればOK。

是非、案内時の音声・ビープ音の選択制を導入してほしいです。

ダイヤルボタンの方向設定が欲しい

BiNavi Ultraの最大の特徴はこのダイヤルボタンでしょう。ただ、このボタンを触っていて「おや」と違和感を持ったシーンがありました。

例えば、これは画面の明るさを設定するメニューなのですが、ここでダイヤルボタンを時計回りに回した時、「20%」と「0%」のどちらが選択状態になると思いますか?

現在のBiNavi Ultraの仕様では、「20%」が選択されます。私はてっきり「0%」が選択されると思っていたので、違和感を持ったのでした。

では、私はなぜ「0%」が選択されると思ったのか。それは、この選択メニューの見た目が「リール(パチンコのスロットの回る部分)っぽいな」と思ったことが理由です。私の頭の中では筒状のリールを手で回しているイメージだったので、「時計回りに回すと0%が選択されるはずだ」と思ったのでした。

一方、この選択メニューを「普通のリスト」だと捉えた場合、時計回りにダイヤルを動かすとカーソルが上に動いて20%が選択されるのは自然に思えます。

このように、ダイヤル式のボタンは「その人がどう捉えるか」によって、回す方向とカーソルが移動する方向が一致するケースと一致しないケースが生じます。

同じくダイヤルを採用していた「COROS DURA」では、「Dial Orientation」という設定があります。「Clockwise Down(時計回りで下に移動)」と「Clockwise Up(時計回りで上に移動)」です。ダイヤルボタンにこだわりを持つCOROSは、この「ダイヤル回転方向とカーソル移動方向は、人によってしっくりくる向きが違う」現象を把握していて、設定を設けていたわけですね。もっとも、COROSはDURA2でダイヤルボタンを廃止してしまいましたが。

BiNavi Ultraにも、このダイヤル回転時のカーソル移動方向をユーザー側で設定出来るようにしてほしいです。

POIカテゴリの追加要望

本文中でも書きましたが、表示されるPOIの種類が少ないです。せっかく色々なカテゴリのPOI情報を内蔵したマップル地図を使っているのだから、表示させないと勿体ない。

そんなわけで、iGP側には「追加してほしいPOI種別」のリストを提出済みです。その中でも、最重要なAランクとしては以下のカテゴリを追加要望しました。

POIカテゴリー追加を希望する理由
コンビニエンスストア飲食物の補給や休憩に利用でき、サイクリストにとって重要な拠点となるため。
公衆トイレ長距離走行中のトイレ探しに役立ち、店舗が少ない地域でも利用できるため。
道の駅トイレ・飲食・休憩などに利用でき、サイクリングの立ち寄り地点として有用なため。
鉄道駅重要なランドマークであり、輪行やトラブル・悪天候による途中離脱にも役立つため。

これらがサイコン上で確認できれば、役に立つと思うのですが。是非、実装をお願いしたいところです。

POI表示の改善要望

POIの種類だけでなく、表示方法にも改善してほしい点があります。こちらもiGP側には以下の要望を提出済みです。

  • 表示開始縮尺の設定
    POIを表示し始める地図の縮尺を変更できるようにしてほしい。重要なPOIだけ広域から表示できるとなお良い。
  • カテゴリー別の表示ON/OFF
    POIカテゴリごとに、地図上の表示のON/OFFをユーザーが選べるようにしてほしい。
  • 施設名の表示
    地図上のPOIアイコンをタップすると、施設名を確認できるようにしてほしい。ついでに、そこを目的地としてのナビゲーションがしたい。
  • アイコンの拡大
    現状のアイコンは少し小さいので、1.5倍程度に拡大してほしい。
  • コンビニのチェーン別表示
    セブンイレブンやローソンなどをアイコンで区別できるようにしてほしい。

ちなみに、Garmin Edge 840ではPOIの表示開始縮尺を変更でき、アイコンを選択すると施設名も確認できます。コンビニもチェーン別のアイコンで表示されます。

POIの種類が増えると地図が煩雑になる可能性もあるので、表示する情報をユーザー側で調整できるようになると嬉しいですね。

データ項目を追加してほしい

BiNavi Ultraは多くのデータ項目を表示できますが、個人的によく使う項目がいくつか見当たりません。こちらもiGP側には追加を要望しています。

  • 総平均速度(グロス平均速度)
    停止時間を含めた平均速度。ブルベなど、制限時間のある長距離走行では特に重要。
  • バッテリー残量(%)
    現在のバッテリー残量を、データページ内の任意の位置に表示したい。
  • 次のウェイポイント名
    ルート上に設定した次のウェイポイントの名称を、データ項目として表示したい。

どれも新しい計測機能が必要なわけではなく、本体が既に持っている情報をデータ項目として表示するものです。

特に総平均速度は、ブルベではかなり頻繁に確認する数値なので、ぜひ追加してほしいところです。

純正の画面保護フィルムを発売してほしい

本文中に書きましたが、現時点で純正の保護フィルムが出ていないのは良くないと思います。

私は画面の視認性の方が大事なので保護フィルムを貼りませんが(反射具合が変わるので)、画面が傷つくのがイヤな人も多いでしょう。保護フィルムを必要な人が選べるようにする必要はあります。

筐体形状が曲面になったことで硬質なガラスフィルムが難しいという問題があるのかもしれませんが、それならば曲面に追従するTPUフィルムという手もあるはずです。ガラスフィルムよりも保護力は落ちますが、無いよりはマシなはず。

是非、純正の保護フィルムを早めに発売してほしいです。

まとめ

BiNavi Ultraのファーストインプレッションでした。

今回、BiNavi Ultraを使ってみて感じたのは、Garminが選ばなかった方向の進化を、iGPSPORTが選んだのではないかということです。

GarminがEdge 1050以降で全透過型液晶に移行し、iGPSPORTもBSC500で全透過型液晶を採用した時は「iGPよ、お前もか!」と思っていました。BiNaviの上位モデルが出ると聞いた時は「これはきっと全透過型だろうな」と思っていたのですが……実際には、半透過反射型を維持しつつ高解像度化を実現しました。Garminの判断を他山の石としたのかは分かりませんが、上位モデルで安易に全透過型へ移行しなかったのは安心しました。サイスポの取材時も「Garminの代用品」からの脱却を目指している様子がうかがえましたが、こうした独自の判断は大いに評価したいところです。

個人的な話をすると、解像度よりもランタイムを優先してほしかったです。仮に解像度がBiNaviのままでバッテリー容量が倍になれば、60時間は動作したはず。ただ、公称30時間というランタイムはブルベユーザーでなければ十分な長さでしょう。ブルベユーザーだけを見て製品を作るわけにもいきませんし、幅広いユーザーに向けた仕様としては妥当だと思います。

製品としての完成度も悪くありません。操作は軽快で、慣性航法などの新機能も実用的。特に本体スピーカーによるローカル音楽再生には、サイクルコンピューターの新しい可能性を感じました。一方、iClimb 4.0の動作には問題が残っています。今後予定されている音声操作についても、マイクの位置を考えると走行中にどこまで実用になるかは未知数です。

最大の課題は、やはり79200円という価格への納得感でしょう。その鍵を握るのが、日本向けに搭載された昭文社のマップル地図だと思います。地図そのものは精細で読みやすいものの、POIの充実など、まだ改善できる部分は多くあります。この地図の価値をどこまで引き出せるかが、今後の評価を左右しそうです。

そして最後に(何度も書いていますが)、夜間用のダークモード地図がないことだけは、どうしても許容できません。 夜間走行の安全性に関わる機能であり、従来のBiNaviには存在していたものです。これはぜひ早急に復活させてほしいところ。

課題は残るものの、発売時点の完成度は比較的高く、今後の改善にも期待できる製品です。Garminの後追いではない、iGPSPORT独自の進化を今後も続けてほしいと思います。

著者情報

年齢: 42歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。
# これまでに著者が乗ってきたスポーツ自転車の履歴はこちらの記事にまとめています。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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