COROS「DURA」ファーストインプレッション

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スマートウォッチや腕型心拍計で有名なメーカー「COROS(カロス)」による初のGPSサイクルコンピューター、「DURA」を購入しました。ソーラー充電機能を備え、最大120時間の長時間稼働を売りとしています。

本記事は2024年11月24日時点での最新ファームウェアv3.0708.0で動作を確認しています。今後のアップデートで内容が変更される可能性があります。

目次

購入まで

購入までの経緯を書いていきます。

DURA、発表

2024年6月18日、これといった前触れなくCOROSはサイクルコンピューター「DURA」を発表しました。

国内自転車メディアには一切このニュースは流れていません。COROSはまだまだ自転車村の外側の存在ということでしょう。

私はCOROSの存在は知っていましたが、「スマートウォッチや心拍計を作っているブランド」というイメージを持っていました。

フォロワーのたたみすさんがこんな記事を書いていて、COROSはちょっと気になるブランドでした。

「スマートウォッチ」「心拍計」という製品構成から見ると、確かにGarminやiGPSPORTSと被るところはあります。しかし、まさか自転車方面に参入してくるとは予想せず。中華ブランドを除けば、GPSサイクルコンピューターに既存メーカーが参入するのは久しぶりのことかもしれません。

ただ、GPSサイクルコンピューターのメーカー初物は、得てして酷い出来であるものです。ノウハウが無いので。

DURAの発表と同時に、プロトタイプを長期間試用していた海外の有名ガジェットレビュアー「DC Rainmaker」氏がレビュー記事を公開。そこにはこんな記載がありました。

ただし、すべての修正が施されたとしても、競合製品との差はまだかなり大きいことに注意してください。逆に、競合製品にはない魅力的な機能もいくつかあります。

予想通り、この時点での製品の出来は正直イマイチだったようです。特にデータの記録や操作性と言った部分が競合他社に追いついていないと書かれています。

ただ一点、「最長120時間稼働」という点は、私のようなロングライダーにとってはかなり魅力的に映りました。しかもソーラー充電機能を備えて、さらに稼働時間を伸ばせるとか。「1200kmブルベ(制限90時間)をノー充電で完走」が現実味を帯びてきます。

発表と同時に予約が開始されましたが、すぐに予定数をオーバー。その後はなかなか予約の再受付もなく、時が流れていきました。

発売延期

2024年7月、DURAの発売延期が発表されました。

延期理由は、「本体のマウント(プラグ)の強度不足」。

DURAもGarminマウントを採用しているようですが、こちらの記事に書いた通りGariminマウントは中々に脆弱です。サイコンの重量であっても、プラグの爪の材料が弱ければこういった破損も起こり得るでしょう。

当初、「7-8月発売」とされていましたが、「10月中の発売」に延期されました。

正式発売

2024年10月6日、延期されていたDURAがついに発売となりました。

こちらも国内自転車メディアへのリリースは見当たらず。COROSさん、そちらへの営業をかけても良い気がしますが……。

ブルベ界隈でも新しもの好きの人たち数人が実際に購入し、Twitterでレポートを上げていました。その中でもウシヤさんはかなり熱心に製品レポートを上げてくれていたのでありがたかったです。

購入の決め手となったのはこちらのツイート。「マルチGNSSモードで実測76.9時間使えた」とのことでした。公称ランタイムはマルチGNSSで70時間とされていますが、そこに嘘は無さそう。ここが駄目なら買わないつもりでしたが、どうやらしっかり長持ちしそうです。

ソフトの出来はイマイチそうだが……

稼働時間というものはバッテリー・画面・バックライトなどで決まるもの。つまり、ハードウェアに左右されるものです。一度発売されたら、後から稼働時間を伸ばすのは難しいでしょう。発売時に15時間だったランタイムが、後から30時間に伸びる可能性はほぼありません。

しかし、データの記録や操作性と言ったソフトウェア的な要素は、ファームウェアのアップデートによって発売後に改善される可能性があります。現段階ではソフト的なバグは多そうですが、そこは将来的に解消されるかもしれない、ということです。

この手の製品の場合、発売から半年~1年程度は熱心にファームウェアがアップデートされるものです。GarminもiGPSPORTも、新製品発売からある程度の期間はアップデートが続きますが、それを過ぎると数ヶ月に1回のアップデートになったりします。

逆に言えば、熱心にアップデートされる期間中に不良指摘や機能改善要望を出せば、反映される確率は高いということでもあります。

自費で製品を買って不完全な製品のβテストに参加するようなもので少々癪ではあるのですが、「最終的にロングライドに適した特性を持つGPSサイコンが出来上がる可能性があるなら、そこに協力するもの良いんじゃないか?」と思えてきました。

長いことブルベ用に愛用してきたeTrexシリーズ、その最新作である「eTrex Solar」が実にイマイチなスペックだったこともあり、乗り換え先候補を探しておきたいという理由もあります。

そんなわけで、COROS「DURA」を注文したのでした。

ファーストインプレッション

COROS DURAのファーストインプレッションです。

ランタイムの長さから将来的にはブルベに投入したいと考えての購入ですが、一応ブルベ的にはオフシーズン(やってる団体もありますが)ということで、まだ普段の夜練と週末ライドでしか使用していません。使用期間は2週間ほどで、ライド時間は23時間程度です。

比較対象は、私がブルベで使用しているGarminのトレッキング用GPS「eTrex 32x」と、サイクルコンピューター「Edge840 Solar」です。

競合製品とのスペック比較

COROS DURAのスペックを示しつつ、競合製品と比較していきます。

DURAEDGE840 SolareTrex 32x
価格39600円85800円65780円
重量102g89g148g
(単3電池2本含む)
本体サイズ99.5 x 60.8 x 15.7mm85.1 x 57.8 x 19.6mm103 x 54 x 33mm
画面サイズ2.7インチ カラー2.6インチ カラー2.2インチ カラー
解像度400 x 240px322 x 246px320 x 240px
防水等級IPX7IPX7IPX7
充電端子Type-CType-CminiUSB
稼働時間(公称)70時間(マルチGNSS)
120時間(GNSS)
26時間
+6時間(太陽電池)
25時間
(アルカリ電池)
稼働時間(実測)(未測定)48時間45時間
(リチウム乾電池)
内蔵ストレージ32GB32GB8GB
タッチパネル×
物理ボタンボタン: 1個
ダイヤル: 1個
ボタン: 7個ボタン: 4個
スティック: 1個
ソーラー充電×
対応衛星GPS
GLONASS
Galileo
Beidou
みちびき
GPS
GLONASS
Galileo
Beidou
みちびき
GPS
GLONASS
みちびき
GPSモードGNSS
マルチGNSS
GPS
GNSS
マルチGNSS
GPS
GNSS
マップ表示
文字表示なし

文字表示あり

文字表示あり
心拍センサー接続
パワーメーター接続×
リアビューレーダー接続×
価格39600円85800円65780円

やはりDURAのスペックで目を引くのは稼働時間

70時間というのは従来のGPSサイコンでは聞いたことのない値です。マップを備えないサイコンであればiGS320は公称72時間でしたが、マップを備えるサイコンでは公称30時間あればかなり長い方。70時間は異次元の数字と言って良いでしょう。

しかもこれは「ソーラー充電を使わない場合」の値。ソーラー充電を使えば更に稼働時間は伸びるというのです。本当なら凄い。

その他、スペック表の機能面では業界の覇者であるGarmin「Edge840 Solar」に負けていないようにも見えます。ただ、サイクルコンピューターはスペック表だけ見ても本当の姿は分かりません。操作性など「実際の使い勝手」はスペック表には現れないものなので。

パッケージ

昨今、ミニマムになりつつあるデジタルガジェットの箱ですが、DURAの箱は高級感のある仕様で大きめ。そして妙に重いです。中身というより箱自体が重い。

開封。画面保護シートには製品コンセプトと思われるメッセージが。

パッケージ内容は以下の通り。

  • 本体
  • アウトフロントマウント
  • 説明書
  • 六角レンチ
  • ストラップ
  • Type-Cケーブル
  • ステッカー

一般的なGPSサイコンのパッケージ内容といった所でしょうか。画面保護フィルムなどは同梱されていません。

一応サードパーティーからは画面保護フィルムも出ているようですが、ソーラー充電の効率が落ちそうなので購入しませんでした。

アウトフロントマウントはかなりガッシリしたものが付属します。DURA本体を取り付けた時にエアロな形状になるように考えられているようですが、私は別のマウントを使用するので箱に戻しました。

重量

本体重量は実測102g。公称通りです。このくらいの重量であれば、Garmin方式のマウントでも破損リスクは高くないでしょう。

マウントは54g。公称は53gなので、こちらも公称通りと言って良いでしょう。

最近はサイコン下部にライトを吊るせるマウントも増えていますが、このマウントにはそういった仕掛けはありません。ライトを付けたければサードパーティーのマウントを使う必要があります。

なお、海外サイトには「マウントが34gだった」という記事もありますが、写真を見るとマウントの形状が私の手元のものとは異なっています。

リンク先の記事のマウントにはないリブが追加されていました。これでかなり重量化していますが、その分だけ丈夫になっているはず。

製品発売が遅れたのは「本体側の爪の強度不足」ということでしたが、恐らくマウント側にも強度不足があったのではないかと推測します。

本体仕様

本体の仕様を見ていきます。

大きさ

Edge840、eTrex32xとの大きさ比較。特別DURAが大きいという感じはありませんが、ソーラーパネルの分だけ縦長ではありますね。

画面

ごく普通の液晶という印象。各項目の文字は大きめで、直射日光下でも読み取りやすいと感じました。

ソーラーパネル

液晶上部の空間にはソーラーパネルが仕込まれています。Edge840 Solarは画面全体がソーラーパネルでしたが、DURAは画面とソーラーパネルを分けているようです。

実験してみましたが、ソーラー充電はスリープ状態でも動作します。このあたりはGarminのソーラー充電機種とも共通ですね。ただ、電源を完全にオフにするとソーラー充電は働かないようです。

ボタン配置

物理ボタンは2つ。普通の押しボタン(電源ボタン)と、ダイヤルです。ダイヤルは押すことも可能で、ボタンとしても機能。

ほとんどの操作では、ダイヤルを押すと「選択」、電源ボタンを押すと「戻る/キャンセル」となります。

ダイヤルを回すと画面をスクロール可能。タッチパネルを上下にスワイプしても同様の動作をしますが、冬場のグローブでタッチパネルの操作が難しい場合にダイヤルが活躍しそうです。

なお、このダイヤルはCOROSのメイン商品であるスマートウォッチにも搭載されており、ブランドアイコンでもあるようですね。

充電端子

本体下部のパッキンを開けるとType-C端子があります。走行しながらの充電は端子を振動で痛める可能性があるので私はなるべくやりませんが、一応「充電しながら動作」も可能でした。

裏面

Garminマウントのプラグ部は交換可能になっています。

環境光センサー?

DURAには環境光センサーが積まれているという記載はありませんが、液晶画面の隅にそれっぽいものがあります。将来的に周辺の明るさでバックライトの明るさを調整できるようになったりするんでしょうか? 個人的には明るさは自分で決めたいので、実装されても使わない機能ですが。

セットアップ

セットアップの模様についても。基本的にはスマホアプリから設定を行いますが、本体からしか行えない設定もあります。

言語設定

起動後に言語選択。日本語を選択します。少々日本語が怪しいので、英語でも良いかもしれない。

スマホとペアリング

画面に表示されるQRコードを読み込み、COROSのスマホアプリをダウンロード。その後、ペアリングを行います。

ファームウェア更新

ファームウェアのアップデートがあるということで、アップデート実施。最新バージョンになりました。

初期設定

各種設定を行います。ここで紹介する設定はアプリには項目がなく、本体からのみ設定が可能でした。

なぜかデフォルトがヤードポンド法の単位表示なので、メートル法に変更。バッテリー節約のために、GPSモードは「全システム」に変更(デフォルトは「自動」)。地図の方向はノースアップ。タッチスクリーンは常時ON。

画面の明るさは「デフォルト」と「最大」の2種類しか選べません。動作音もON/OFFのみで音量は選択不可。

設定項目がシンプルと言えばその通りなんですが、あまりにも設定幅が狭い気はしました。

ついでにシステム画面を確認しましたが、ちゃんと技適認証のマークも入っています。これがないと日本での仕様は違法になってしまいますからね。大事。

画面データ項目の設定

各画面のデータ項目の設定もアプリから実施。本体からの設定は行えないようでした。

基本操作

データを記録する際の操作方法は、大体他のGPSサイコンと一緒です。

記録開始

まずはメインメニューからアクティビティを選択。Garminでは「アクティビティプロフィール」とか「ライドプロフィール」と呼ばれているものです。

開始を押すと記録スタート。走行情報やマップを表示するモードに移行します。

このモードでダイヤルを回すか、画面を上下方向にスワイプするとデータ表示画面が切り替わります。ここで表示するデータ項目はアプリからカスタマイズ可能です。

記録終了

ダイヤルを押して「終了」を選択。ダイヤルを3秒間長押しで保存完了となりますが、長押しは珍しいですね。誤操作で保存してしまい、ログが切れてしまうことを防止する狙いでしょうか? 保存が完了するとライドのサマリ画面が出ます。同時に、裏ではデータがアプリ経由でアップロードされます。

サマリ画面でダイヤルを回すと、色々なデータが表示されます。珍しいのは「バッテリー容量」の画面で、ソーラーパネルによってどれだけ発電されたかを確認することが出来ます。

ルートデータの転送

本製品にはナビゲーション機能があります。あらかじめ作成しておいたルートデータを転送することで、ターンバイターン(交差点で画面上に曲がるべき道の矢印が表示される)によるナビゲーションを行うことが出来ます。

GarminであればPCとマスストレージモードで接続し、指定フォルダにgpxファイルを配置することでルートデータの転送が可能です(アプリによる転送も可能)。COROSの場合はアプリの転送にのみ対応しているようです。

以下の手順で、Ride with GPSで作成したルートデータをDURAに転送してみました。

Ride with GPSとのサービス連携

まずはRide with GPSのサービスとの連携設定を行います。

手順はRide with GPSのサイト内にあります。他のサービスはCOROSアプリ側から連携設定が出来るんですが、なぜかRide with GPSはサービス側から操作を行う必要があります。

ルートデータにPinを立てる

Ride with GPSのルートデータを開き、画面左上の「Pin」ボタンを押します。「Pinned」に変更されればOK。

これでCOROSのスマホアプリ上からルートデータを確認可能になります。

ルートの転送

ルートデータを選択し、「デバイスに同期」を行うとルートデータがDURAに転送されます。

本体からルートデータを表示させてみた図。ルート上にウェイポイントが配置されている場合は、チェックポイントであると認識され、区間が分割されるようです。

ナビゲーションを開始した図。画面の下にはチェックポイントまでの残距離が表示されます。交差点に差し掛かると、200mくらい手前から曲がる方向の指示が画面上に出ます。

実走

実際にCOROS DURAを使用して走行してみました。

「比較対象があったほうが気づきが多いだろう」と思い、Garmin「Edge840 Solar」とデュアルレコードを行っています。

画面の見やすさ

先述の通り、文字が大きくて各項目が読み取りやすかったです。データ項目の数値が左寄せなのは違和感が強かったですが。

昼間は直射日光下でも見やすいのですが、夜間は画面の明るさ「デフォルト」だと少々暗いです。かといって「最大」にすると電池の持ちが悪くなるし。悩ましいです。

ナビゲーション

ナビゲーションのルート軌跡も割と見やすいです。交差点でも200mほど手前から画面上に矢印が表示されて通知されます。

ただ、他社ではマップ上に表示される道路名や施設名などの情報が表示されないので「今どこにいるんだっけ」という状態になりますね。本当に道路形状だけしか表示されない簡素な地図です。

iGPSPORT「iGS630」のマップ画面

価格帯的にライバルとなるiGS630もこれくらいの情報は表示されるので、DURAも頑張ってほしいものです。

データ値の妥当性

気温・斜度と言ったセンサーによるリアルタイムのデータ値は機種によって感覚とはかけ離れた値を出してくることがありますが、今のところDURAの情報はそこまでおかしな値は出ていません。

ただ後述する「標準パワー(NP)」だけは明確に値がおかしいです。

動作音

記録開始と終了時には「ピー!」「ピロリッ!」という動作音がしますが、この音が異様に大きいです。周囲の人が振り向くレベルなので、もう少し小さく出来る選択肢が欲しいです(ON/OFFしかない)。

レーダーとの接続

DURAはリアビューレーダーとの接続にも対応しています。

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我が家にある唯一のレーダー機器、Magene「L508」と接続してみました。

レーダーと接続すると、画面の右端にレーダー用の表示領域が出現します。データ表示領域の上に被らないので、データ値の一部が表示されない……と言ったことが起こらないのは良いですね。

レーダーによる表示は他社サイコンよりは簡素な印象。他社だとスピードの速い車は赤い色で表示されたりしますが、DURAでは全ての車が同じ白アイコン。ただし、スピードの速い車が来た場合には派手な音がします。音で区別できるようにしているようですね。

データの保存

100km程度のログであれば、一瞬で保存&アプリ経由でのデータアップロードが終了します。

Garminのx40世代は保存時に異様に時間がかかるようになってしまったので、ここはGarminに勝ってますね。

データ内容の比較

DURAとEdge840 SolarでデュアルレコードしたGPSログのデータ内容を比較してみました。データを分析したサービスはRide with GPSです。

なお、DURAは「全システム(5衛星)」、Edge840は「GPS(1衛星のみ)」です。両機器で「一番バッテリー消費が少ない」設定を選んでいます。どちらの機器もオートポーズ機能は停止しています。

データ内容には大きな違いはないですが、距離が300mほどEdge840の方が多くなっています。あとは、Stopped Timeが1時間差があるのが気になります。両機器ともオートポーズしないようにしているはずなんですが。

ルート軌跡の比較。青がDura、赤がEdge840です。Duraの方が道を綺麗にトレースしているように見えます。Edgeは森の中に入ってしまってますね。Edgeは一番衛星数が少ない「GPS」なので精度的に低いのは仕方ないのかもしれません。DURAは5衛星と通信しているので位置情報が正確なんだと思います。

こちらは駐輪して食事を取った時のログ。赤のEdge840は迷子になってしまったような軌跡になっています。衛星数が少ないと補正が難しいのでこのようになってしまうのかな、と推測。Edgeの距離が多めに出たのも恐らくこれが理由でしょう。Edgeも5衛星と通信するGNSSモードにすれば迷子にはならないはずです。

個人的にはEdgeくらいの精度でも良いので、捕捉する衛星の数を減らしてバッテリー寿命を伸ばしたいところですが。捕捉する衛星の数はバッテリー寿命に如実に影響しますので。

システムの安定性

今のところ、フリーズしたり強制終了したり……といったことは起こっていません。

ただ、全体的な操作感はモッサリしています。特に地図の操作はかなりモッサリ。Edgeシリーズの最新機器ほどサクサクとは動きません。

バッテリーの持ち具合

現在、以下の設定で23時間ほど使用しました。

  • 衛星システム
    全システム (非二周波)
  • バックライト
    デフォルト
  • 接続センサー
    パワーメーター(1時間ほどリアビューレーダーと接続)

かなりの省電力設定にしたつもりですが……

現在まで23.1時間使用し、バッテリー残量は71.3%。残りの使用時間を推定すると、あと57.3時間は使えそう。合計の使用時間は推定で23.1+57.3=80.4時間となります。

「全システム設定では120時間使える」とされているので、それには及んでいませんが、80時間持つというのは驚異的ですね。

改善を要望したい点

普通に使う分には致命的な不具合は今のところありませんが、色々と使いにくい点・不満に感じる点がありました。

改善要望として書いていきます。全体的に「もう少しユーザー側に設定の選択肢を!」という内容が多いです。

バックライトの明るさを詳細に設定したい

前述の通り、画面の明るさは「デフォルト」「最大」の2つしかありません。正直、昼間は「OFF」という選択肢があっても良いと思うのですが。

他社は、10%刻みで明るさを調整出来ることが多いので、もう少し選択肢を増やしてほしいです。

こちらは「DURA: デフォルト」「Edge840: 20%」の写真です。Edge840の20%よりも、DURAのデフォルトは暗いです。Edge840の10%よりはDURAのデフォルトが明るいので、「DURA: デフォルト」=「Edge840: 15%」くらいの明るさです。正直言ってちょっと暗いですね。

フォントが大きいので夜間でも何とか読めますが……とはいえ、バックライトの明るさもバッテリー寿命に如実に影響するので、無闇に明るくすると稼働時間が減ってしまうので悩ましい。

iGS630のバックライト設定

iGS630のように、「昼間と夜間でバックライトの明るさを自動切り替え」機能が実装されたら最高なんですが。この機能、便利なのに他社のサイコンでは見たことがありません。

操作音のボリュームを設定したい

こちらも既に書いた通り、DURAの通知音はやたら大きいです。キーを操作するたびに出る「キー音」は煩わしいのでOFFにしていますが、記録開始・終了の「運動アラート音」はONにしています。

音量の設定を「大・中・小」程度でも良いので選べると有り難いです。

衛星システムの選択肢を増やして欲しい

DURAの衛星システムモードは「自動」「全システム」「全システム二周波」の3つのみ。「自動」は、「全システム」か「全システム二周波」かを自動で切り替えるモードなので、実質的には2つのみということになります。

「全システム」は5つの衛星と通信するモードで、位置精度は高くなりますが、バッテリーの消費はそれなりに激しいはず。私は「ログの正確性はあまり重視しない」「その分だけ稼働時間を伸ばして欲しい」人なので、もっと少ない個数の衛星を指定できるモードが欲しいです。Garminで言う「GPS(アメリカの衛星)のみ」モードですね。

「捕捉する衛星の個数を減らし、その分のバッテリーを画面の明るさを上げる方向に使いたい」と私は思っていますが、現状のDURAでは設定の選択肢が少なくて不可能です。

マップに地名などを出して欲しい

DURAのマップは、道路名や施設名といった文字情報が一切表示されません。もう少しランドマーク的なものや道路名が表示されると分かりやすくなると思うのですが。

ちなみにGarminの場合には、「どの程度の情報量を表示するか」という設定項目があります。

ルート外に設定したPOIが1個しか表示されない

Ride with GPSで設定したPOIが、COROSアプリ上で欠落する不具合を見つけました。

こちらはRide with GPSで作成したルートデータです。

「i」アイコンがルート上に置かれたPOI、「A」「🚻」アイコンがルート外に置かれたPOIです。このルートデータをCOROSアプリに転送すると……

ルート上にある「CP」は全て正常に転送されていますが、ルート外に置いたPOIは左上の1つ(大妻女子大の横)だけしか転送されていません。残りの2つのPOIが欠落しています。

私はルート外にPOIを設定することが割と多いです。ルート周辺の「寄れたら寄る」ポイントを入力しておくのですが……DURAではそれが現状出来ません。早急に改善を願いたいです。

CPの表示名称が設定した名前にならない

DURAでは、ルート上に設定したPOIはCPとして認識されます。そして、実際にCPの場所に到達したときには、「○○に到着しました」という画面表示が出るのですが……その○○の部分が8桁の謎の数字なのです。恐らく、内部での管理IDがそのまま出ちゃってるんだと思います。

どうせなら、設定したポイント名(画像では「CP1」)を出してほしいですね。

マップスケールの種類を増やして欲しい

DURAはマップスケールの選択肢が6種類しかありません。明らかに少ないので増やしてほしいです。

我が家にあるマップ付きサイコンのスケール選択肢数を以下に示します。

機種選択肢個数マップスケール
COROS「DURA」650m/100m/200m/500m/1km/2km
Garmin「Edge840 Solar」275m/8m/12m/20m/30m/50m/80m/120m/200m/300m/500m/800m/1.2km/2km/3km/5km/8km/12km/20km/30km/50km/80km/120km/200km/300km/500km/800km
Garmin「eTrex32x」2512m/20m/30m/50m/80m/120m/200m/300m/500m/800m/1.2km/2km/3km/5km/8km/12km/20km/30km/50km/80km/120km/200km/300km/500km/800km
iGPSPORT「iGS630」550m/200m/400m/800m/ルート全体表示

Garminほど増やせとは言いませんが、ルート全体を見たい時には2kmでは細かすぎます。もう少し大きいスケールを増やしてほしいです。

コースアウト時のリルートをOFFにしたい

ナビゲーション時、ルートから外れると自動的に元のルートに復帰するための代替ルートが計算されます。テストでは妥当な代替ルートが表示されましたが、正直トンチンカンな代替ルートを提案されることも多い&リルートによるフリーズが発生する可能性を考えると、リルートはOFFにしたいのが正直な所。

例によって、DURAには「オートリルートをOFFにする」という選択肢がありません。選択肢を増やしてほしいです。

後から知りましたが、このリルートは裏でスマホアプリと通信し、スマホ側でリルートの計算は行われているようです。スマホアプリと接続できない、スマホがネットワークに接続していないケースではリルートは行われないようでした。

背景色の変更時間を日没/日の出時刻に合わせてほしい

DURAは、昼間は白背景+黒文字、夜は黒背景+白文字といったように、時間帯で背景色が切り替わります。

普通、この手の切替のタイミングは現在地の「日没」「日の出」の時刻なのですが、DURAはこの時刻から30分ほど遅れて切り替わります

「日没までの時間」を表示するデータ項目があったので表示させてみましたが、これが0分になっても背景は黒くなりませんでした。

結局、黒背景に切り替わったのは17:03。この日の東京の日没時刻は16:35だったので、28分遅れての切り替えです。

この日、17:03が日没の場所はどこか?と調べてみたら、しまなみ海道がヒット。まさかここを基準に……? いやいや、ただのバグだと思います。修正を希望します。

追加のデータ項目が欲しい

画面に表示可能なデータ項目はそれなりに充実していますが、下記の項目が欲しいです。

項目名概要
オフコース距離ルートナビゲーション時、コースアウトした場合に正規コースまでの距離を表示する項目が欲しい。
グロス平均速度停止時(速度0km/h)を含めた平均速度。オートポーズを有効にしている場合には停止時間を除いた平均時速のみしか出せないので、停止時間を含めた平均時速を出したい。
ソーラー充電ソーラー充電されたパーセンテージ。「バッテリー容量」画面からは表示可能だが、データ項目としては表示できない。

データ項目が左寄せなのは不自然

DURAのデータ項目は、何故か値が全て「左寄せ」になっています。普通、数値は「右寄せ」にするのがセオリーであるはず(桁数を揃えるため)。

しかし、表示項目には数値だけではなく文字も含まれるため、他社は間を取って「中央寄せ」にしていることが多いです。左寄せにしているメーカーは恐らくCOROSのみなので、中央寄せに変更できる設定があると良いですね。Wahooは「左寄せ」「右寄せ」「中央寄せ」からユーザーが選択できるようです。

一部のデータ項目の数値を小数点以下まで出して欲しい

「桁数を揃えたい」と言った直後にアレなのですが、一部のデータ項目は小数点以下第一位まで表示したいです。DURAの数値項目は全て整数なので。スピードだけは小数点以下第一位まで出てるんですが。

小数点以下第一位まで見たいデータ項目
  • 気温
  • 斜度

NP(標準パワー)の計算がおかしい

色々な項目をDURAの画面に表示してみましたが、リアルタイムのデータ項目で「標準パワー(NP)」は明らかに数字が異常でした。

画像内の指で示した値は本来同じくらいの値を示さないとおかしいのですが、DURAの方がEdge840に比べて27Wも低い値が出ています。この比較をした時は両機種とも「オートポーズ: OFF」でした。

DURAの「オートポーズ: ON」にすると、今度はDURAの方がEdge840に比べて30Wほど高い値を出しました。オートポーズのON/OFFはNPの計算には影響するはずですが、いくらなんでも50Wも上下するのはおかしい。恐らく計算式が間違っているんじゃないかと思います。

DURAとEdge840のログをRide with GPSに入れてみると、標準パワーは同じ値になりました。この手のサービスではログに記録されたNPではなく、パワーデータを再度解析して計算しているはずなので、データはおかしくないということなのでしょう。しかし、この結果を見るとDURAの画面に表示される数値だけが明らかに変です。

私はNPをペース管理に使うことがあるので、ここも早急に修正してほしいです。

マルチスクリーンモードが微妙

DURAは走行時の画面ループを2種類から選択可能です。

アクティビティ開始時に、「フルスクリーンモード」「マルチスクリーンモード」のどちらかを選択します。何も指定しないと、フルスクリーンモードになるはず。

両者の違いは以下の通りです。

フルスクリーンモード・画面全体がデータ表示になるモード。
・画面切り替えを行うと、画面全体が再描画される。
・データ表示の項目数は、1画面につき2-9個までカスタム可能。
・マップ表示の場合、データ表示項目数は1個で固定。
マルチスクリーンモード・画面の上部3/2がマップ表示、下部1/3がデータ表示になるモード。
・画面切り替えを行ってもマップはそのままで、データ表示部のみが再描画される。
・データ表示部の項目数は3個で固定。

私がEdgeやeTrexで設定している画面のページ構成は大体以下の通り。

1. データ表示ページ項目数を上限まで使って、スピードや距離などの必要なデータを表示する。
2. マップ表示ページ上部にマップ、下部に「スピード」「距離」「オフコース距離」「現在時刻」などを表示
3. 標高図表示ページ上部に標高図、下部に「獲得標高」「現在高度」などを表示

しかし、このページ構成はDURAでは実現できませんでした

問題はマップ表示ページ。DURAでは「フルスクリーンモードではデータ項目が1個しか表示できない」という縛りがあります。かといってマルチスクリーンモードにすると、今度は標高図表示ページが追加できません。

個人的には「フルスクリーンモード」に統一してもらって、マップ下部の項目数を最大4個くらいまで増やして頂けると嬉しいです。

画面のスクリーンショット撮影機能がほしい

Garminには、指定ボタンを押すことでスクリーンショット画像を保存する機能があります。これはレビューを書く人間としては非常に有り難いです。

サイコンの実機画面を撮影すると、光の具合によっては見えにくかったり、反射してしまったりして、撮影が割と大変で。

スクリーンショット機能があれば光の具合は関係なくなります。また、バグ報告などを挙げる際にもスクリーンショット機能は非常に役立ちます。Garminのユーザーフォーラムにはよくスクリーンショット付きでバグ内容が報告されています。

是非COROSにもスクリーンショット機能の実装を要望したいです。

まとめ

COROS「DURA」のファーストインプレッションでした。

ファーストインプレッションと言いながら、出来る限り機能を紹介しようと思ったらかなり長くなってしまいました。10000文字を余裕で超えています。

現状のDURAは「全然使えない」という事はないけれど、「普通に使える」レベルにはまだ達していない印象です。Garminも発売直後の製品クオリティはイマイチなことが多いですが、DURAは更に輪をかけてバグが目立ちます。新規参入業界だから仕方ないかもしれませんが。

ただ、本文で述べたように「圧倒的な稼働時間の長さ」は他社が真似できていない長所です。これを守りながらファームウェアのアップデートでバグや操作性が改良されれば、「かなり使える」レベルに達するポテンシャルは秘めています。

これからのCOROS DURAの進化に期待しています。

著者情報

年齢: 40歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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