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Campagnolo「Shamal Carbon」購入
カンパニョーロのディスクブレーキ用ホイール「シャマルカーボン」を購入しました。同社唯一の「エンデュランスホイール」というカテゴリに位置づけられたホイールです。
購入まで
まずは購入までの経緯を書いていきます。
リズムが上手く取れない
こちらの記事に書いた話ですが、GE-110に乗り始めてから気になっていたのが「立ちこぎで自転車を左右に振った時に上手くリズムが取れない」ことでした。試乗時にはそんなことは無かったので、何か私の入れたパーツに問題があったはず。
そこでやろうと思ったのが以下の対策です。自転車の前半分に問題がありそうだったので、そこにターゲットを絞りました。
- ステムを剛性の高いものに変える。
- ハンドル幅を420→400mmに狭くする。
- ホイールを変えてみる。
上の記事で1と2は実施済み。1はあまり効果を感じず、2は割と効果がありました。
残るは3です。この時に使っていたホイールはSHIMANO「WH-R8170-C36」。全体的な走りは悪くないのですが、少し横剛性が弱いのか、ゼロスタートやヒルクライムのように横方向に大きな力が掛かる時に頼りなさを感じる……ような気がする。
キクちゃんからのアドバイス
そんな話をTwitterに書いていた所、(多分)日本で一番スポーツ自転車のホイールを組んできた人であるPAX CYCLEのキクちゃんからこんなアドバイスを頂きました。
フロントにラジアルスポークがあるホイールを使ってみたら、もしかしたらその悩みが解消されるかも?
「ラジアルスポーク」というのは、「ハブの中心からリムに向かって放射状にスポークが最短距離で伸びる」スポークのことです。
リムブレーキ用ホイールの前輪は、普通ラジアル組です。左右ともにラジアルスポークしかありません。
一方、ディスクブレーキ用ホイールの前輪は左右クロス組の事が多く、ラジアルスポークを持つホイールは多くありません。ディスクブレーキはスポークを伝って制動力を伝えるため、クロス組を採用することが多いわけですね。
ただ、一部のブランドは前輪の片側だけにラジアルスポークを配置したパターンのホイールを販売しています。
キクちゃん曰く、前輪のラジアルスポークは「縦に地面に直結することで進む感覚を得る」そうで。確かに言われてみればリムブレーキのホイールで、今回感じている「リズムの取れなさ」は感じたことがありません。
そんなこんなで、「ラジアルスポークを前輪に持つホイールを試してみよう」と思い立ちました。
ラジアルスポークを前輪に持つホイールを探す
ディスクブレーキ用ホイールの前輪にラジアルスポークを持つブランドの一例を以下に示します。
ブランド | モデル |
---|---|
Campagnolo | G3パターンを採用したモデル |
Fulcrum | 2:1パターンを採用したモデル |
Vision | Metron/Trimaxの上位モデル |
Roval | ALPINIST/TERRA |
SPINERGY | ほぼすべてのモデル |
大手ブランドだと大体これくらい。一番下のSPINERGYはPBOスポークです。
例外的にカーボンスポークを採用したモデルのみラジアルスポークを持つブランドは多いですが、ステンレススポークのモデルは左右クロスであることがほとんど。
いきなりカーボンスポークに行ってしまうと、スポークパターンの効果なのか素材の効果なのか良くわからなくなるので、ステンレススポークのブランドから選ぶことにしました。
そこで頭に浮かんだホイールが、今回取り上げる「シャマルカーボン」です。
シャマルカーボンという選択肢
シャマルカーボンは、カンパニョーロから2020年夏に発売された、ディスクブレーキ用ホイールです。
「シャマル」という名前は付いていますが、リムブレーキ時代のシャマルとはまるで別物。レーシングホイールではなく「グラベルも行けるエンデュランスホイール」という大幅な路線変更が行われています。
簡単にスペックをまとめると以下の通り。
項目 | 内容 |
---|---|
リム素材 | カーボン |
リムハイト | フロント: 35mm / リヤ: 40mm |
リム内幅 | 21mm |
スポークパターン | 前後ともにG3組(24本) |
スポーク素材 | ステンレス |
ニップルホール | なし |
重量 | 1585g |
このホイールが発売された当時はリム内幅は19mmがロード用の標準で、21mmは広い方でした。グラベル向きというコンセプトで広げたのでしょうが、現在となっては普通の内幅です。
リムハイトが35/40mmとディスクでは低めながら、1585gとなかなかの重量級。カーボンリムなのに。
今やディスクブレーキのホイールは50mmハイトでも1300g台のものが出てきています。35/40mmハイトで1585gは明らかに重い。荒れた道を走っても問題ないように丈夫に作ってあるということなのでしょうが。スペック的には全く魅力を感じられないホイールです。
ただ、このホイール、実際に使った人からの評判はすこぶる良いのです。
2021年のサイスポに掲載されたホイールインプレッションでも、三人のレビュアーがそれぞれ高評価を付けていました。私が良く行くショップの店長も実際に乗ったことがあるそうですが、「凄く良かった」との感想。
(集計記事を公開できていませんが)先日行ったホイールのアンケートでも、シャマルカーボンを持っている方が満足の声を書いているケースが多かったのです。
これは気になる。
ちょうどシャマルカーボンを安売りしていた場所を見つけたので購入してみたのでした。
Campagnolo「SHAMAL CARBON」
Campagonolo「SHAMAL CARBON」のファーストインプレッションです。
ホイール各部
まずはホイールの各部を見ていきます。
リム面
UDカーボンのグロスコート。写真では上手く映りませんが、かなり綺麗な表面です。
ロゴなどは全てデカール。ちょっとここは安っぽさはあります。BORAなどはデカールではないですからね。
バルブホールは少し盛り上がって整形されています。
ハブ
カンパらしい、カップアンドコーンのハブ。CULTやUSBではなくスチールベアリングですが、回転性能は悪くありません。
スポーク
実測1.6mmの細い丸スポークを採用。
スポークパターンは片方ラジアル・片方クロスのG3組。これが欲しかった。
片側はストレートプル、片側はJベンドの変則的な構成です。
リムベッド
カンパのハイエンドホイールの特徴であるホールレスリム。これならばチューブレス運用でもリムテープに悩む必要がありません。フックは付いています。
バルブ
専用のチューブレスバルブが付属します。名作であるカンパのタイヤレバーも。
重量
前輪が733g、後輪が861g。合計で1594gです。
公称1585gなので、ほぼ公称通り。カンパは公称よりも50gくらい重いことが多いので、珍しい。
組み合わせるパーツ
ホイールに組み合わせるパーツの紹介です。
今回は比較のために、一旦前のホイール(WH-R8170)からタイヤとチューブを移植しました。まずはクリンチャー運用です。
その後、チューブレス運用に切り替える計画でした。
クリンチャータイヤ+チューブ
タイヤは、WH-R8170に付いていたHutchinson「Blackbird クリンチャー 28C」をそのまま移植。
チューブは、パナレーサーのTPUチューブ「パープルライト」です。
チューブレスタイヤ
シャマルカーボンはリムベッドに穴のないホールレスリムです。であれば、シーラントを使わない「ピュアチューブレス」での運用が可能です。
シーラントという不安定なものに頼るのが好きではないので、条件が揃えばピュアチューブレス運用を試してみたいと思っていたのでした。
現在、ロード用のピュアチューブレスタイヤを出しているのは日本のiRCだけです。
iRCのタイヤは組付けが物凄く硬いので避けていましたが、今年8月発売の第6世代になってからは組み付けやすくなったという評判だったので、試してみようと思いました。
シーラントを使わないのでパンク時の自動修復は出来ませんが、そうなったらチューブを入れればよいと考えていました。ベタベタのシーラントを掃除する手間がなく、そのままチューブを入れられますので。
組付け
ホイールにパーツを付けてセットアップしていきます。
ディスクローターの取り付け
ディスクローターはそのままWH-R8170から、RT-CL900を移植します。
シャマルカーボン、なんといまどき珍しい「外セレーション」固定専用のホイールでした。大体は内セレーションと外セレーションの両方に対応していますが、カンパは外セレーションらしいです。
タイヤの取付(クリンチャー)
クリンチャータイヤの取り付けは特に苦労もなく終わりました。一度取り付けていたタイヤなので、ある程度伸びていて取り付けが行いやすかったです。
タイヤの取付(チューブレス)
こちらは苦戦しました。まず片側のビードすらリムベッドに入らない。いきなりタイヤレバーを使いました。
iRCは一部のホイールとの相性を自社で確かめて相性表を出しています。そこではシャマルカーボンもテスト対象になっており、「嵌合性: ◎(タイヤレバーなしで可)」とあるんですが……全然無理でした。タイヤレバーをフル活用してなんとか組み付け完了。
このタイヤが発売したのが夏で、今が冬なのも関係はあるかもしれません。ゴムは寒くなると固くなるので。次やる機会があれば、ぬるま湯にしばらく漬けてから試そうと思います。
ただ、ビード上げは一発で完了。石鹸水すら使わず、フロアポンプでビードが上がりました。シーラントが飛び散らなくて楽です。
これで組み付け完了です。
ホイールの調整
今回のホイールは通販購入です。このまま走り出すのはちょっと怖いので、工賃を払ってプロショップで調整してもらうことに。
テンション調整と、玉当たり調整をやってもらいました。
実走の感想
まだ走行距離は70kmほどですが、今のところの感想を書いておきます。
クリンチャーでの走行
クリンチャーでは、前のWH-R8170と同じく、前6.0気圧/後6.5気圧に設定。
タイヤとチューブ、そして空気圧はそのままなのですが、明らかに乗り心地が良いです。G3組の効果なのか、カンパのカーボンリム(ちょっと特殊らしい)の効果なのかは分かりませんが、非常に真円度が高い感触。かなり滑らかに転がります。路面追従性という意味でも良好。
ハブも並のベアリングのはずですが、とにかく失速感が少ないのも特徴です。恐らくシャマルカーボンのリム重量は480g前後。このハイトだと最近は400g台前半であることが多いので、肉厚があるのでしょう。重量はありますが、その分だけ慣性も効いていて失速しにくいのだと思われます。
横風にも煽られにくいですが、これはリムの形状うんぬんよりもリムの重さで耐えている感はあります。
懸念だった「立ちこぎでのリズムの合わなさ」も解消されていました。重量的には重くなっているので振りにくくなりそうなものですが、ラジアルスポークが入ったことの効果でしょうか? ハンドルから地面まで一本芯が通った感じがあり、立ちこぎでもちゃんと左右の振りについて来てくれる感触があります。
ちなみに、フリーボディの音はとても静かです。ただ、ショップいわく「グリスが多い最初だけ。そのうちうるさくなります。」とのことでした。
チューブレスでの走行
SRAMの空気圧計算サイトで今回の条件を入れると、「前:4.7気圧/後輪:5.0気圧が適正」と出ましたので、その通りに設定。
クリンチャーでこれだけ印象が良いので、チューブレスに変えたら更に良くなるはず……と思ってのチューブレス化でしたが、これが見事に的中。素晴らしい乗り心地です。
使い古された言い方ですが、「路面に絨毯が敷かれている」「舗装したばかりの路面を走っている」、そんな感触です。思わず笑みがこぼれてしまったほど。
重量がクリンチャーに比べて片側40gほど重いので漕ぎ出しに重さはありますが、ホイールの転がりとタイヤの低抵抗が相まって、失速が異常に少ないのであまり気になりません。登りもそこまで遅くなかったです。
「早くこれでブルベを走ってみたい」と思いました。
まとめ
シャマルカーボンのファーストインプレッションでした。
正直、予想したよりもかなり良かったです。気に入りました。使った人たちが口を揃えて「あのホイールは良い」というのにも納得です。レース用途でなければ、メリットが勝る人も多いはず。
なんというか、「全ての挙動に気品がある」とでも言いましょうか。あまりホイールに対して走行感の上質さを感じたことはなかったのですが、シャマルカーボンにはそれを感じました。
重量があるので加速は少しパワーが要りますが、失速しにくさで帳消しとなっている感じ。レーシングホイールだったらそれは駄目ですが、シャマルカーボンはエンデュランスホイール。長い直線で足を止めて休むこともあるでしょうが、そういった時にこのスムーズさは魅力です。
しかし、スチールベアリングでここまで転がると、USB化・CULT化したらどうなるのか気になります。かなりお高いのですぐにやる予定はないですが、そのうちベアリングのアップグレードをしてみるかもしれません。
シャマルカーボンで走るブルベが今から楽しみです。
著者情報
年齢: 40歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。