フレームオーダーの記録 (2本目/2019年 細山製作所 QUARK)

PBPをちょうど半年後に控えた2019年2月に納車となった、2本目のオーダーフレーム。

1本目の経験をベースに、1000km以上のロングライドに適した方向に修正を加えました。果たして想定通りの乗り味になっているでしょうか?

実走インプレッション

2019年2月から現在まで2年4ヶ月。走行距離は約15000km。

その間に、2回のSR、1回のSR600、1回のPBP(1200km)といったイベントをこなしています。一部のブルベはディスクロードであるINFINITO CVも使いましたが、9割以上のブルベはこちらのオーダーフレームで走りました。

比較対象は、1本目のオーダーフレーム(スチール)と、BIANCHI OLTRE XR4(カーボン・リムブレーキ)、INFINITO CV(カーボン・ディスクブレーキ)です。

重量

フレーム単体で1746gと、1本目に比べると150g増。しかし、フォークがカーボン化したことで、-400g。フレームセット状態では-250gと軽量化しました。

完成車状態での重量は、ペダルレスで7.5kg。ペダル(両面SPD)込で7.8kgと、スチールフレームとしてはかなり軽量に仕上がっています。

剛性感

「前: 硬め、後: 柔らかめ」のフレームです。期待した通りの剛性感に仕上がりました。

「前: 硬め」は、ヘッドの大径化によるもの。やはりコラム径を1インチから1-1/8インチに変えるとかなり差を感じます。Ritcheyのフォークも剛性は十分にあり、一本目のフレームよりも反応が早くなりました。信号スタートや立ちこぎでタイミングが遅れる感が無く、気持ちよく走れます。

過去の経験と照らし合わせると、私はヘッド周りの剛性の高さ(=反応性の良さ)を「気持ちよさ」として感じるようです。あまり硬すぎる必要は無いんですが、やはり1-1/8インチ程度の剛性感は欲しいですね。自転車を始めた当時に使っていたコラム径が1-1/8インチだったので、体に馴染むのでしょう。

 

「後: 柔らかめ」は、BB周辺がスチールフレームらしさを残しているということです。昨今のBB周りをガチガチに固めて圧入BBを使ったカーボンフレームとは違い、巡航時にはトップチューブに対して左右にBBが微妙に動きます(いわゆるウィップ)。ウィップはロスでもあるのですが、人間的にはこれが合ったほうが乗りやすくなると思ってます。

足への跳ね返りが少ないので疲れにくいですし、ブルベ終盤でペダリングが雑になっても進んでくれる感じがあります。

快適性

今回は快適性向上のために、2つの新機軸を盛り込みました。

 

1つ目は、カーボンフォーク。Ritcheyのカーボンフォークは剛性も十分でしたが、乗り心地も良かったです。ストレート形状ではなく、微妙にベンドしている形状も効いているのでしょうか。

ハンドル周りの突き上げは1本目のフレームよりも緩和されました。細山さんの作ってくれた鉄フォークも中々快適ではありましたが、素材自体に振動減衰機能があるカーボンの方が乗り心地には分があります。手のしびれが出るまでの距離が伸びました。

2つ目は、チェーンステーの延長。1本目が408mm、今回は410mmです。たった2mmではありますが、サドル側の突き上げが緩和されたように思えます。

チェーンステーが長くなると快適性が上がる一方で反応性が落ちる傾向があると言われますが、パイプ大径化における剛性向上と相殺されたのか、反応性が落ちた印象はありません。

巡航・スプリント

1本目のフレームは、踏み込みから加速まで1テンポの遅れがありました。2本目のフレームも最新鋭のレースフレームであるOLTRE XR4と比べると多少は溜めがあるように感じますが、1本目より機敏に反応します。

前述の通り、ある程度BB周辺にウィップがあるため、リズムを合わせてペダリングすると軽い力で巡航出来る感触があります。

ド平坦の4.2kmコースで同じ日にINFNITO CVと走行タイムを比較したことがあるのですが、同じパワー・同じポジションで走った際にタイムに差は出ませんでした。一応、INFINITO CVはエアロ形状を取り入れてるはずなので、丸パイプのフレームの方が空力的には不利になるはずなのですが。

スプリントはこのフレームでは特にする場面はないのですが、戯れにスプリントしてみると割りとスピードは乗ります。1本目では45km/hくらいしか出ませんでしたが、こちらのフレームは50km/hくらいまでは何とか。やはりヘッドの大径化が効いている気がします。

ヒルクライム

1本目のフレームは「ヒルクライム時にフレームがしなる感覚がある」と書きました。2本目のフレームはそういった感覚はなし。これはヘッドとパイプの大径化の効果だと思います。

 

2019年に走ったSR600福島はこのフレームにナローリムのシャマルを装着して臨みましたが、非常に良く登ってくれました。

 

山岳ツーリングも何度か行いましたが、そういった淡々と登る走りには適したフレーム特性です。

タイムアタック的なヒルクライムはこのフレームではしていませんが、荷物を積まない状態ではそこそこ速いはずです。

ダウンヒル・コーナーリング

ダウンヒルとコーナーリングの安定性は1本目のフレームを踏襲しています。ジオメトリは同じなので。

やはりちゃんと「フレームの芯が出ている」感じがあり、変な癖もないので安心してダウンヒルをこなすことが出来ます。ブルベではアップダウンが非常に多く出てくるので、この特性は非常に大切ですね。

直進安定性も高く、いい意味で「ボーッと」乗れるフレームです。

泥除けとの相性

26C+フルフェンダーの組み合わせは余裕のクリアランスでした。

 

こちらは28C+フルフェンダー。割りとギリギリでしたが何とかなりました。BR-9000の上限が25Cなので28Cは実は無理やり付けています。真面目にこの構成で走るなら、BR-R9100に交換します。

見た目

今回は何と言っても塗装の綺麗さに尽きます。ウエムラ塗装さんの本気を見た気がします。イメージ以上の格好良さで本当に満足の行く見た目になりました。

私以外のインプレ

「乗らずにインプレ」という名物コンテンツを持つブログ「フィクションサイクル」さん。なんと、私のフレームを「乗らずにインプレ」して下さいました

FICTION CYCLES

『自転車に乗らず「見た目」だけでインプレ記事は書けるのか?』 この内容の記事を書いて早4年が経過。 ふとツ…

流石と言うか何というか、「本当に乗ったんじゃないか?」と思うくらい的確な内容です。納車2日後に書かれたもので、私ですら大して乗っていないんですけどね。

 

大石:「まず試乗して最初に感じたことはとても乗りやすいということだね、どの場面でもとても安定してる。快適性に対するアプローチはかなり的確に作用してると言って間違いない。どこか特別に尖った工夫があるわけじゃなくて技法としては普遍的、だからこそ乗りやすい。」

菊池:「僕もそれに近い意見ですね、外見は普通のクロモリバイクっぽいけど、乗った感じは今風のバイクで懐古主義的なスチール感は無かった。」

この辺りはまさに私の目指した方向性そのものを言い当てられていますね。見た目と乗り手の情報からある程度はオーダーフレームの特性は想像可能だと思われますが、ここまでズバリ当てられるのはさすがフィクションサイクルさんです。

 

大石:「ジオメトリーを詳しく見てないけど、設計的にはピュアレーシーなバイクの2段階手前くらいの印象。パラメーター的にここを詰めると反応性が早くなるよってところを意図的に引き下げてる感じかな、変な意味じゃなくピーキーさはまったくないね。フロントフォークの肩下がちょっと長いタイプだけど、ちゃんとこれを加味して作ってるからバランスよくまとまってるよ。ただ適当にカーボンフォークを突っ込みましたというのとは違う。逆に悪く言えば若干の緩慢さはもちろん付いて回るけど、トレードオフで現れるネガティブ要素をこれ見よがしに論(あげつら)うほど僕は野暮じゃない(笑)。」

これもまさにその通り。反応性はヘッドとパイプの太さに頼っていて、ジオメトリは安定志向です。それは1本目のフレームからそうだったんですが、写真からここまで読み取れるのは凄い。

 

菊池:「このオーダーバイクの仕上がりを見て思ったのが、このスペックのバイクをもし市販車で手に入れようしたら、どこのブランドあたりが近しいのでしょうか?」

大石:「それは悩ましい問題だね、たぶん無い(笑)。というかこのジャンル自体が選べるほど存在しないよ、もちろん際どく近しいものはあるけどドストライクは絶対無い。」

菊池:「ライダーの用途に合わせてピンポイントで寄せていけるというのがオーダーの最大のメリットというのは納得です。ただそれなりにノウハウが必要なので万人向けというわけにはいかない。」

なんかこの記事自体のまとめもこれで良いんじゃないか?と思える内容ですね。

反応性は欲しいけど、安定性も欲しい。泥除けや太タイヤを付けられる余裕は欲しいけど、軽くしたい。そして赤×黒のカラーがいい。この条件でストライクな既製品はそうそう見つからないでしょう。

この記事を見た段階では「8割くらい当たっている」とフィクションサイクルさんにお返事しましたが、今にしてみると9割くらい当たっている気がします。あえて間違っている所を探すなら、このフレームは大してハンガー下がりは大きくない(70mm)ことくらいでしょうか。

総合評価

ロングファストランに適したフレーム特性を持ちつつ、泥除けやサドルバッグ等の拡張性も備えてブルベ適正を持つフレームに仕上がりました。

残念ながら、このフレームを導入した最大の目的であるPBPの時間内完走は叶わなかったのですが(2時間オーバーで完走)、それはフレームの影響ではなく単純に私の戦略の失敗によるもの。フレームは良い仕事をしてくれたと思っています。

その後は参加したブルベは雪が降ってDNFした1回以外はすべて完走。初のSR600もそこまで苦労すること無く完走に導いてくれました。

この2年間で乗り方も分かってきて、「相棒」と呼べる一台になったと思っています。

 

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この記事を書いた人
ばる
ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019年の2回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)