Elitewheels「DRIVE 40D」ファーストインプレッション

この記事は約 12分で読めます。

Elitewheelsのカーボンホイール「DRIVE 40D」を1ヶ月間レンタルし、レビューすることになりました。

本記事では開封~少し乗った時点でのファーストインプレッションを書いていきます。

本記事でレビューするDRIVE 40Dは、Elitewheelsからお借りしたものです。1ヶ月間の使用後、返却予定です。

目次

レビューの経緯

まずはこのホイールをレビューすることになった経緯から。

2度のレビュー依頼

2023年春、Elitewheelsからホイールのレビュー依頼を頂きました。

しかし、当時はPBPシフトの真っ最中。PBPはリムブレーキで参加することを決めていたため、ディスクブレーキのホイールをレビューするだけの時間はなし。ホイール自体には興味はあったものの、この時は依頼をお断りさせて頂きました。

そして、2024年11月。再度ホイールのレビュー依頼を頂きました。

この時点では冬コミに向けて原稿2本を同時進行中だったのですが、年明けからはスケジュール的にも特に問題はありません。一度お断りしたのに再度お声がけを頂いたということで、「来年1月からならお受けします」と回答。先方もそれでOKとのことだったので、2025年1月よりホイールを使用させて頂き、レビューをすることとなりました。

1ヶ月間のレンタルでレビューをすることに

レビューにあたっては、こちらから「1ヶ月間のレンタルでお願いしたい」という希望を出させて頂きました。

こういったレビュー依頼の場合は「レビュー終了後、そのまま譲渡」ということも多いのですが、ホイールは非常に高額(国内定価173000円)ということもあり、レビュー作業の対価としては見合わない(ホイールの価値が高すぎる)ことが第一の理由。

もう一つの理由は、家にホイールを置く場所がもうないからです。先日、シャマルカーボンを買ってしまったこともあり、既に限界ギリギリ。一時的にホイール保管のスペースを空けました。

1月中はElitewheelsのホイールにしっかり乗り込み、2月に詳細レビュー記事をアップするということで合意となりました。ホイールは2月上旬に返却する予定です。

「DRIVE 40D」を希望した理由

レビュー対象のホイールは「DRIVE 40D」をお願いしました。

現在、Elitewheelsのディスクブレーキ用ロードホイールは以下の4系統が存在します。

シリーズリムスポークフリーボディ
Drive Helix CSカーボン(波型)カーボンスターラチェット
Drive Helix SSカーボン(波型)ステンレス(CX-RAY)スターラチェット
Drive カーボンカーボン4爪
Marvelカーボンステンレス(Pillar)4爪

私が希望したのは、上から3つ目の「DRIVE」シリーズの40mmハイトモデル。理由は以下の3つです。

  • カーボンスポークを試してみたい。
  • スターラチェットよりも爪式フリーボディが好き(防水性能)。
  • 普段使っているディスクブレーキ用ホイールのハイトが40mm前後である。

以前からカーボンスポークのホイールには興味があったので、この機会に試させていただこうということで。波型リムにも興味はありましたが、まずはオーソドックスなリムで挙動をみたいということもあって、ノーマルのDRIVEシリーズを希望しました。

私のメイン用途であるブルベでは、空力性能を十分に発揮するシーンは多くありません。それよりは横風に強いほうが優先度が高くなります。そうした理由から、DRIVEシリーズでもっともリムハイトの低い40mmのモデルを選びました。

普段使っているホイールの前輪のハイトが40mm前後であることも「40D」を選んだ理由です。やっぱりハイトが近いほうが比較を行うには良いと思いますので。

なお、私が普段使っているホイールの前輪のハイトは以下の通り。

・Campagnolo「Shamal Carbon」: 35mm
・SHIMANO「WH-R8170-C36」: 36mm
・Cog’s「DR40HL-DB Aero-SP」: 40mm

DRIVE 40D ファーストインプレッション

12月末、ホイールが宅配便で届きました。

本記事執筆時点での使用距離は約250km。主な用途はブルベ・夜練です。

パッケージ内容

中国から直送の宅配便で届きました。レンタル品ではありますが、普通に購入した時と同様のパッケージ内容であると思われます。

ホイールバッグは付属せず、厚手の不織布にホイールが梱包された状態で届きます。

シャフト部分はきちんと養生されており、破損などはありませんでした。

付属品。紙の冊子3つ、ロックリング、そしてスペアのカーボンスポークが4本。

チューブレスバルブも2本付属。「MANA」という文字が入っています。

ホイール各部

ホイールの各部を見ていきます。

リム面

T800/T1000をミックスしたカーボンリムは非常に綺麗。最近はマットコートのカーボンリムが多いので、グロスコートのリムは逆に新鮮ですね(昔はグロスコートばかりでしたが)。

デカールは、「シルバー」「ブラック」から選択可能です。今回はシルバーでお願いしました。遠目で見ると白ロゴに見えますが、シルバーです。他社はリムの曲率とデカールの曲率を揃えるものですが、DRIVEは直線的なデカールであるのが個性的。

ハブ

ハブはセラミックベアリングを使用しているとのこと。

それを示すデカールがハブ軸に巻かれていますが……個人的には「何故黄色にしたんだろう」と思ってしまいました。MAVICのようにブランドカラーが黄色なら分かるんですが、Elitewheelsのサイトには黄色っぽさはありません。セラミックにも黄色いイメージは無いはずですし。

走行中に目に入る部分なので、ここはもう少し主張を抑えた色(白やグレー)のデカールにして欲しいところ。

ここでもセラミックベアリングをアピール。

スポーク

幅3.2mm、厚さ1.5mmの扁平形状のカーボンスポークを採用。カーボンスポークとしては細い部類に入るはず。

同社のカーボンスポークの解説ページは存在するんですが、なぜか数値の部分が全て「XNUM」という文字列になっていて具体的な値が分かりません。というか日本語訳が明らかにおかしいですね。日本語ページでは「当社のカーボンスポークは3本で4.3g」となっていますが、英語ページでは「ステンレススポークは1本で4.3g」となっています。前者は明らかにおかしく、後者のほうが正しい。英語ページの内容を読んだほうが良いと思います。

スポーク重量は、3.1g。ニップル込で3.5g。ステンレススポークはニップル込で5g程度が相場なので、前後48本分ならばスポークだけで72g軽くなる計算です。さらにDRIVE 40Dは前輪のスポークが3本少ないので、更に10gほど軽くなっています。

前輪は、ドライブ側がラジアル・ノンドライブ側がクロスの2:1。スポーク本数は21本です。

シャマルカーボンの記事にも書きましたが、前輪にラジアルスポークを含むのはなかなか珍しい。

後輪は、左右ともにクロス。ただし、ドライブ側が16本・ノンドライブ側が8本の組み方になっています(通常は左右12本ずつが多い)。

ちなみに、スポークは1本単位で追加購入も可能です。補修パーツが手に入るのは嬉しい所です。

リムベッド

内幅は21mmと、現在のオーソドックスな太さ。外幅は28mmです。フックあり。

リムベッドにはニップルホールが空いています。チューブレステープは貼り付けられた状態で届きますが、端が浮いているなど丁寧な処理とは言えません。

クリンチャー運用ならこのままでも良いと思いますが、チューブレス運用をするならテープを自分で貼り直したほうが良いと思います。もしくは一度クリンチャータイヤを取り付けて、チューブの圧力でテープをリムに押し付けるか。

重量

公称重量は1260±30g。

実測重量は1287gでした。前後のチューブレステープを-20gすると1267g。公称通りと言って良いと思います。40mmハイトで1200g台はかなりの軽さ。カーボンスポークの軽さが効いています。

全体の重量から、リムの重量を推測してみます。

部位重量
スポーク+ニップル157g
(3.5 × 25本)
ハブ(前後)360g
(推定120g+240g)
リム(前後)??? g
合計1267g

差分を出すと、リム2本で750g。1本あたり約375gと推定できます。

グロータックのEQUALリム(40mmハイト/内22mm/外29mm)がリム重量400gなので、そこから更に25g軽いということ。グロスコートだと前後10gずつは重くなるはずなので、リム自体がかなり軽めに仕上がっていることが伺えます。

組み合わせるパーツ

今回は、Hutchinson「BLACKBIRD 28C クリンチャー」と、Panaracer「パープルライト(TPUチューブ)」を組み合わせて使うことにしました。チューブありのクリンチャー運用です。

本ホイールはチューブレス運用にも対応していますが、シーラントを入れてしまうと綺麗な状態で返却することが難しい。バルブホールからリム内側にシーラントが滲み出てしまうこともあるので、今回はクリンチャー運用で行きます。

タイヤの組付けには特に苦戦しませんでした。

ディスクローターは、RT-CL800を組み合わせました。ロックリングは内セレーションに対応しています。

走行前の点検

私は昔、完組ホイールを通販で買った際の苦い経験があるため、必ずショップでテンションが揃っているかをチェックしてもらうことにしています。

DRIVE 40Dはほとんどテンションの狂いがなく、特に修正するところはありませんでした。振れなども無かったとのことで、組み立て品質は高いことが伺えます。

価格

直販サイトでの定価は、1189ドル。現在のレートで、187000円です。時折行われるセールでは15万円前後になることもあるようです。

国内サイトで購入する場合は、稲城「TRYCLE」の運営するオンラインショップが一番安く買えそうです。173000円。納品前点検や、アフターケアの面でも安心度は高いでしょう。

実走の感想

年始の200kmブルベを含めて、250kmほど走行しました。空気圧は、前6.0気圧/後6.5気圧に設定。

重さ

まず、自転車を持ち上げた時に明らかに軽いです。シャマルカーボンが前後で1585gなので、ホイールだけで約300g差。持って分かる程度には違いました。

漕ぎ出し・加速

停止状態からの漕ぎ出しの軽さが印象的です。リム重量が軽いこともあると思いますが、シャマルカーボンの記事に書いたように前輪のラジアルスポークも効いている印象。縦に一本芯が通った感触があり、スッと前に出てくれます。高速域から追加で加速する際の反応も良かったです。

反面、足を止めた時の失速も早い印象。軽量リムの宿命かもしれませんが。セラミックベアリング採用を推していますが、あまりその効果は感じられません。

乗り心地

他のサイトのインプレを見ると「乗り心地はあまり良くない」という評判が多いですが、私はそこまで乗り心地が悪い印象を持ちませんでした。

DRIVE 40Dは、リムが円形を保ったまま(縦に潰れず)転がっていく感触が強いです。「リムが硬い」「カーボンスポークが変形しにくい」「スポークパターン」のいずれか、もしくはこれらの組み合わせでそう感じるのかなと思います。

平滑な路面では氷の上を滑るように転がっていきます。反面、荒れた路面では確かに突き上げを素直に伝えてくる印象はありますが、ステンレススポークの一般的なホイールに比べて突き上げが強いかと言うとそんなこともなく。

千葉の荒れた路面を含んだ200kmブルベを走ってみましたが、尻や手のひらのダメージは普段と変わりませんでした。

突き上げが強めに出やすいTPUチューブを使っての感想がコレなので、乗り心地の良いブチルチューブ(R’Airなど)を使えば緩和は十分に可能な範囲かと思います。

チューブレス運用にすれば更に乗り心地の良さを得られるとは思いますが、今回は前述の理由で難しく、試せないのが残念です。

登坂

元々DRIVE 40Dは「ヒルクライム用ホイール」としてラインナップされています。登坂は専門分野。

ブルベのルートにも千葉の急坂を登りましたが、確かにヒルクライムでは非常に軽快で、立ちこぎ状態で左右にも振りやすかったです。

今回のブルベでは長い坂は登らなかったので、返却前に一度数キロ単位の坂を登ってみたいとは思っています。

横風耐性

横風耐性は、「良くも悪くもない」印象です。

これまで使ったホイールの横風耐性に対する印象は以下でした。

ホイール横風耐性
HUNT「AERODYNAMICIST 44」悪い
MAVIC「KSYRIUM SL」良い
SHIMANO「WH-R8170-C36」良い
Cog’s「DR40HL-DB Aero-SP」普通
Campagnolo「SHAMAL CARBON」良い

SHIMANO「WH-R8170-C36」やCampagnolo「SHAMAL CARBON」は明らかに横風に煽られにくいので、これらと比べてしまうと一段落ちる印象ですが、DRIVE 40Dの横風耐性は特に悪くはありません。

真冬の伊豆の海岸線(爆風)で使うには辛いかもしれませんが、普段遣いで怖さを感じることはないと思います。

空転音

フリーボディの空転音はそれなりに大きめです。爆音というほどではありませんが。

あまりにも空転音が静かだと、歩道からママチャリが後ろを見ずに車道に飛び出してくることがあるので(ONYXハブで経験あり)、これくらい音がするほうが個人的には好印象です。

まとめ

Elitewheels「DRIVE 40D」のファーストインプレッションでした。

本製品は、いわゆる「中華カーボンホイール」です。私はこの手の製品を使うのは今回が初めて。現物が届く前は、「(失礼ながら)決定的に駄目な部分があるのではないか」と想像はしていました。

ただ、ショップでの点検においても振れやスポークテンションの狂いはなく、乗ってみても左右差や乗り心地などに違和感はありませんでした。また、Elitewheelsはカーボンスポークやフリーボディなど、補修部品もしっかり用意されている点が好印象です。そういった補修部品が用意されていないブランドも多いですからね。


さて、現段階では「カーボンスポークならではの特性」というものを私は感じ取れていません。世間の評判では「乗り心地は良いのにパワーの伝達も良い」と言われることは多いですが、今のところステンレススポークとの感触差は読み取れませんでした。

一口にカーボンスポークと言っても、使用しているカーボン・太さ&厚さ・構造によっても特性は変わってくるはずで、一概に「こういう性質」とは言い切れないのかもしれません。返却までにもう少しハードに使い込んで、DRIVE 40Dのカーボンスポークの性質を見極めたいと思っています。


あともう一つ。出来ればこのホイールでチューブレス運用を試したい気持ちはあります。DRIVE 40Dオーナーの方が、「このホイールの本領はチューブレス」と言っていましたが、実際に乗ってみると恐らくそれは正しいのだろうと思えました。Elitewheels側に確認を取って、問題がなければチューブレス運用も試してみるかもしれません。

著者情報

年齢: 40歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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