【レビュー】APIDURA「PACKABLE VISIBILITY VEST」

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評価:4

バイクパッキング製品で有名な、APIDURAの反射ベスト。

EN17353:2020のタイプB3に準拠しています。

目次

購入動機

このベストを購入した経緯から。

フランスで見かける

2023年のPBPでフランスに行った時のこと。

スタート地点近くの自転車屋に入った所、「APIDURAの反射ベスト」を発見。渡仏直前に発売の情報が出て存在は知っていましたが、もう買えるとは知りませんでした。

「買って明日からのPBP本番で使おうかな……」とは思ったものの、気になるのは「規格」です。

PBPのルールには以下の条文があります。

According to French traffic law, a high visibility vest MUST be worn when riding at night (safety standard number EN 1150 or EN ISO 20471). The vest handed to all participants before the starting line is conform to French regulations and it is highly recommended you wear it during PBP Randonneur.

PBP Rulesより

反射ベストの世界規格のうち、「EN1150」「EN20471」に適合しない反射ベストはPBPで使えないとされているのです。

しかし、APIDURAの反射ベストの規格は「EN17353」。EN1150の後継規格と言われていることは知っていましたが、この頃はあまりEN17353の情報がありませんでした。

これを着て本番で失格になることはないでしょうが、注意を受けるのも嫌だなと思い、この時は購入せず。

やっぱり気になって購入

PBPが終了して帰国後。

やっぱりどうにも気になった&楽天ポイントが結構余っていたこともあり、購入してみることにしました。

製品概要

実測重量は110g(L/XLサイズ)。

適合する規格はEN17353:2020のタイプB3とされています。

カラーは蛍光イエローのみ。

使用感

ナイトライドで数回使用。まだブルベには投入していません。

サイズ感

本製品はS/MとL/XLという2種類のサイズしかありません。

S/Mでは流石に小さいだろうと思い、L/XLを購入しました。

特に圧迫感なく着られています。少し前側がバタつく感じはあったので、こちらのベルクロを締めて調整しました。ここを締めれば、走行風によるバタつきはほぼなくなります。

重量

110gとなかなか軽量です。

腰までの丈のある、いわゆる「ジレ」タイプのものは200g前後の事が多いですが、それに比べると半分程度。

胸までの丈であるオダックス埼玉のベストは69gなので、それよりは少し重いです。

規格への準拠

本製品はEN17353のType B3に準拠しているとされています。

EN17353に関する情報はまだまだ少ないのですが、こちらから規格のPDFを参照できたので、簡単に情報を示します。

EN17353について

EN13753は、「中程度のリスクの状況向けの、視認性を向上させた装備」について定めた規格です。

規格のPDFを見ると、以下の記載があります。

This document supersedes EN 1150:1999, and EN 13356:2001.
(この文書は EN 1150:1999 および EN 13356:2001 に優先します。)

EN17353より

ここを読むと、従来の反射ベスト規格の一つである「EN1150」の後継規格であるようです。

ただし、EN17353は「昼用」「夜用」「昼夜兼用」をタイプ別に分けて定義している点で特徴があります。

EN17353のタイプ

EN17353には以下のタイプが定義されています。

タイプ要件サブタイプ
TypeA
(昼用)
・蛍光生地を使用していること。
TypeB
(暗い状況用)
・反射材を使用していること。B1
(アクセサリ)
B2
(手足用)
B3
(胴体用)
TypeAB
(昼・夕暮れ・暗い状況用)
・蛍光生地を使用していること。
・反射材またはパフォーマンス素材を
使用していること。
AB2
(手足用)
AB3
(胴体用)

本製品の「EN17353」の「タイプB3」は、言い換えると「暗い状況で使われる、胴体用の反射装備」ということになります。

タイプから見ると、昼間の使用は想定されておらず、夜間のみの使用が想定されているモデルということのようです。ヨーロッパのブルベでの使用を想定すると、法律上で反射ベストの着用義務があるのは夜のみなので、これで十分ということなのでしょう。

なお、TypeBは昼間の使用を想定していないので、蛍光生地の使用義務はありません。例えばメインの生地が黒であっても規格は満たすということになりますが、本製品は蛍光イエローを採用しています。昼間でもそれなりに目立つはず。

こちらの記事に書いた誘目性の観点からすれば、夜間でも蛍光生地の存在意義はあると思うので、ちょっとこの規定は意外ではありますね。

本製品がタイプ「AB3」ではなくタイプ「B3」なのは、恐らく蛍光生地の使用面積の下限を満たせなかったからだと思われます。AB3を満たそうと思うと、恐らく腰まであるジレタイプでないと厳しいはず。

EN17353のB3では、厳密にはEN1150を満たすことが出来ない可能性があり(蛍光生地の要件を満たせない)、EN1150を求めたPBP2023のルールを満たしていたのかは微妙なところです。もっとも、PBP2023では明らかに基準を満たさない反射タスキで走っていた人も多く見かけたので、あまり厳しく取り締まる気が無さそうでしたが。

要求される反射材の面積

EN1150とEN17353では、両方とも「使用すべき反射材の最低面積」が規定されています。

規格身長反射材の最低面積
EN1150~158cm0.08㎡
158~176cm0.09㎡
176cm~0.10㎡
EN17353
(B3/AB3)
~140cm0.06㎡
140cm~0.08㎡

EN1150→EN17353で、反射材の最低面積は減っています。基準が緩くなっているように見えます。

反射材の配置

ベスト自体の面積は小さいですが、縁の部分にも反射材を配置して反射面積を稼いでいます。反射材の質もよく、少しの光でかなり反射することが分かります。

しかし、一つ一つの反射剤の幅が狭く、「EN17353の規格を満たすだけの反射剤の面積(0.08㎡以上)を満たしているのか?」と思って、EN1150準拠のPBP公式ベストと並べてみました。

案外、こうして並べてみるとPBPベストと同等くらいの反射材の面積がありそうには見えます。縁に付いた反射材が面積に貢献しているのでしょう。

反射材のパターンが複雑すぎて面積を測定するのが難しいですが、規格の最低限の面積は満たしていそうに見えます。

着用時の様子

実際に着用して走ってみました。

妻に後ろから見てもらいましたが、「反射パターンが複雑で、路上の反射板とは明らかに違うことが分かるので目立つ」という感想でした。

ただ、このベストは丈が短めなので、前傾を深めるとちょっと見えにくくはあるようです。裾部分にも反射材が付いているので見えないことはないですが。腰まで長さがあり、縦ラインの反射材が付いたPBP公式ベストに比べると少し劣る印象です。

丈が短いこともあり、バックポケットへのアクセスはしやすいと感じました。

PBPに関する言及

本製品はPBPの直前に発売されました。

かなりPBPを意識して設計されたようで、製品ページにもPBPに関する言及があります。

EN 17353:2020 タイプ B3 は、一部のオーダックスや超長距離レース (パリ・ブレスト・パリなど) で夜間視認性衣服の着用が義務付けられている欧州規格です。この規格には、イベント主催者が参照することがある古い EN 1150 および EN 20471 規格が組み込まれています。

APIDURAサイトより

これを見る限りではPBPでの使用は出来るように見えます。ただ、2023年のPBPのルールにはEN17353への言及はなく「EN1150かEN20471」と規定されていました。

一応、公式にEN1150の後継規格ではあるようなので、多分使っても大丈夫だったのでしょう。

恐らく、次回2027年にはEN17353への言及もあると思われますが、タイプB3で許容されるのか、タイプAB3まで求められるのかは不明です。

なお、LELを主催するAudax UKのサイトにもこのベストの紹介があるので、設計に何らか関わっている可能性はあります(APIDURAもイギリスの会社)。

その他

製品名に含まれる「パッカブル」は、この裏面ポケットに本体を収納できるという意味です。

輪行袋「ウルトラSL100」と比べてもかなり小さくなります。ただ、一度この状態にするとシワシワになってしまいますが。

腰まであるジレタイプの反射ベストはかなり畳んでも大きいので、持ち運びのしやすさという点ではメリットがあります。

まとめ

軽量でバックポケットへのアクセスが良い割に、反射材を多く使っていて目立つ反射ベスト。

丈が短いので、前傾姿勢が深い人には不向きかもしれません。ある程度上体の起きたポジションであれば後方からも目立ちます。肩口にも反射材があるので、前方からはどんな姿勢でも目立つはず。

果たして次回PBPで使えるのかは分かりませんが、国内ブルベでは特に問題になることはないと思います。今後、私も使ってみる予定です。

評価

対象モデル:  APIDURA「PACKABLE VISIBILITY VEST」
年式: 2023年
定価: 8679円
購入価格: 8679円
公称重量: 106g(S/M)
実測重量: 110g(L/XL)

価格への満足度

5/10

反射ベストとしてはかなり高価。

総合評価

8/10

見た目よりも反射材の使用量は多く、目立つ。軽量さと視認性のバランスが良い。

著者情報

年齢: 39歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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