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FARSPORTS「Xtreme R4」ファーストインプレッション
FARSPORTSのカーボンホイール「Xtreme R4」を1ヶ月間レンタルし、レビューすることになりました。本国ラインナップにはなく、日本代理店による別注モデルとなっています。
本記事では開封~少し乗った時点でのファーストインプレッションを書いていきます。
レビューの経緯
まずはこのホイールをレビューすることになった経緯から。
シクロクロス東京にて

2025年2月。お台場で開催された「シクロクロス東京」を観戦に行きました。
レース会場ということで様々なブースが出展されているわけですが、その中に「TRYCLE」のブースがありました。そこで展示されていたのが、今回レビューするFARSPORTS「Xtreme」です。

実はTRYCLE代表の田渕さんとは10年以上前から面識があります。2015年のPBPに彼も参加していまして、打ち上げで同じテーブルでした(記事の下から2番目の写真)。
その後もネット上では交流はありましたが、お会いする機会はなく。シクロクロス東京のブースにて10年ぶりの再会を果たすことになりました。
それから数日後、「先日のホイールに興味があればレビューをお願いできますか?」というご依頼を頂きました。実のところ、FARSPORTSのホイールはかなり気になっていた(スポークが前後18本と極端に少ない)こともあり、お受けすることに。
この段階ではYoeleoのホイールを借りていた期間だったため、「4月になってからお借りに伺います」とお返事をしたのでした。
希望したホイール
FARSPORTS「Xtreme」シリーズは、日本の代理店である「コザキトレイディング」による別注モデルです。日本国内向けに需要がありそうなチューニングになっているとか。
ラインナップは2種類。前後45mmハイトの「R4」と、前後50mmハイトの「R5」です。
「5mmしか違わない2種類のみ」というのはちょっと不思議なラインナップです。普通は「40/50/60」とか、「35/50/60」にするものですが。
私の用途(ブルベ・ロングライド)だと、リムハイトは低いほうがありがたいので、45mmハイト「R4」のレンタル希望を伝えました。
ちなみに、ここ最近私が使ったホイールのリムハイトは以下のとおりです。
製品名 | 前輪ハイト | 後輪ハイト |
---|---|---|
COG’S「DR40HL-DB Aero-SP」 | 40mm | 40mm |
Campagnolo「Shamal Carbon DB」 | 35mm | 40mm |
Elitewheels「DRIVE 40D」 | 40mm | 40mm |
Yoeleo「SAT NxT SL2」 | 35mm | 50mm |
FARSPORTS「Xtreme R4」 | 45mm | 45mm |
私が前輪のハイトを低くしているのは横風対策のため。今回のXtreme R4は最近使った中では最も前輪のリムハイトが高いホイールということになります。果たして横風耐性はどんなもんでしょうか?
稲城へ借りに伺う
4月11日、稲城にあるTRYCLEに伺いました。
「宅配便で送りましょうか?」とはご提案いただいたのですが、15km程度しか離れていないので「直接取りに行きます」と回答しました。

この日、田渕さんは宮ケ瀬の2号店に行っているということで、他の店員さんにご対応頂きました。ここTRYCLEは中華系ホイールを色々と扱っていることもあり、その辺りの話が聞けて面白かったです。
FARSPORTS「Xtreme R4」

FARSPORTS「Xtreme R4」のファーストインプレッションです。
本記事執筆時点での使用距離は約100km。主な用途はブルベ・夜練です。
パッケージ内容
今回は箱で送られてきたわけではなく、直接ショップまで取りに伺いました。
店員さんに「付属品はありますか?」と伺った所、「一切ありません」とのお答えでした。定番な付属品と言えば「チューブレスバルブ」「予備スポーク」ですが、それらも付属しません。
チューブレスバルブはリムとの相性が大きいので、出来ればリムと相性の良いバルブを付属して欲しいところです。探すのは結構大変。
ホイール各部
ホイールの各部を見ていきます。
リム面


マットと言えばマットに見えるし、グロスと言えばグロスに見える、独特な仕上げです。TRYCLEのサイトでは「グロッシーブラック」と書かれています。
「FAR」と小さめに書かれたロゴ。シールっぽさはないので水転写でしょうか。

バルブホール周辺にはデカールらしいデカール。モデル名が書かれています。

バルブナットの座りが良くなるように、ホールの回りを盛ってあります。こういう細かい所に気づくブランドは良いブランドです。
ハブ


くびれのある細めのハブです。フリー機構はスターラチェット。

FARSPORTSのレギュラーラインナップの「EVOs」シリーズのハブは寸胴でもう少し太いことから考えると、あえてハブの剛性を落としているのかもしれません。

フリーボディは大胆な肉抜き済み。Yoeleoのフリーボディも似た形に肉抜きをされていました。
スポーク
スポークはFARSPORTSオリジナルの幅広カーボンエアロスポーク。

実測で最大幅が5mmもありました。初期レーゼロのアルミスポークを思い出すような「きしめん」形状です。
交換用スポークが付属しないので1本あたりの重量は不明ですが、細めのカーボンスポークよりは重そうです。


前輪は左右2クロスで20本(本数は左右1:1)。


後輪も左右2クロスで20本です(本数は左右1:1)。
あまりクセのないオーソドックスな組み方ですが、通常24本のディスクブレーキ用ホイールよりも4本ずつスポークが少なくて住むのは、引張強度の高いカーボンスポークの効果でしょうか。
ちなみに、FARSPORTSの本国モデルは前後ともスポーク18本で、2:1組になっています。
リムベッド
内幅は公称24mm、外幅は公称30mmと、現行のロード用カーボンホイールでは最も太い部類に入ります。


実測結果は、内幅24.37mm、外幅31.45mmでした。外幅については公称よりも1mm太いですが、表記の外幅はリム外周部の幅を採用しているようです。
断面を見ると少しリム中央が膨れた形をしているので、そこを測ると31mmになります。

FARSPORTSのホイールはニップルホールレス。カーボンスポークかつニップルホールレスのホイールは大変珍しいです。
カーボンスポークで人気のあるVONOAのスポークはホールレスのリムでは組めない構造をしていることが理由ですが、最近VONOAもホールレスリム用のカーボンスポークを発表。今後は情勢が変わるかもしれません。
重量
Xtreme R4の公称重量は1210±30gとされています。


実測重量は、564+671=1235g。誤差の範囲内に収まっています。少し重めの個体を引いたでしょうか。とはいえ、45mmハイトで1200g代前半は「強烈な軽さ」と言ってよいでしょう。
リム重量・スポーク重量・ハブ重量ともに公開されていないので、どの部位で軽さを出しているのか良く分かりません。仮に「スポーク1本: 4g」「ハブ前後: 350g」とすれば、リム1本あたりの重量は362gになります。24mm内幅/45mmハイトで362gは相当な軽さ。

ちくわさんの記事で、35mmハイトで350gとあります。362gという重量は大外しはしていなそう。
組み合わせるパーツ

DRIVE 40D、SAT NxT SL2と同じく、Hutchinson「BLACKBIRD 28C クリンチャー」と、Panaracer「パープルライト(TPUチューブ)」を組み合わせて使用します。チューブありのクリンチャー運用です。
取り付け後のタイヤ幅は32.3mm。28mmタイヤが4mmも太くなっています。内幅24mmに取り付けると表記幅より2.5mm太くなるはずですが、BLACKBIRDは更にそこから2mm太くなりました。やっぱり旧ETRTO設計なんですかね?
レンタル期間の前半はクリンチャー、後半はチューブレスレディでテストを行う予定です。
ディスクローターは、RT-CL900を取り付けました。ロックリングも付属しないので、シマノのロックリングを使用しました。
走行前の点検
今回は工場直送ではなく、代理店→TRYCLEのルートを通っています。TRYCLEでテンション確認とセンター調整は行っているとのことだったので、今回はショップでの追加点検は行っていません。
Xtremeシリーズはショップ購入が前提のホイールなので、基本的には整備された状態で受け取れるのが良いですね。
価格

TRYCLEでの販売価格は188000円です。他のショップでの販売が見当たらないので、これが定価なのかどうかは分かりません。
価格としてはElitewheels「DRIVE(約180000円)」と同じくらい。Yoeleo「SAT NxT SL2(159000円)」より少し高い価格帯です。日本の大手代理店が間に入ってこの値段はお得感はあります。
実走の感想

まだ100km程度しか乗れていませんが、実走の感想です。
空気圧は、前6.0気圧/後6.5気圧に設定。
重さ
ここ最近使ったホイールの中で一番軽い実測1235gということで、自転車自体がかなり軽くなります。シャマルカーボンよりは350gも軽いので、持って分かる差がありました。
漕ぎ出し・加速
漕ぎ出しは中々の鮮烈さ。想像されるリム重量は362gであり、外周の重量の軽さが効いている気はします。左右クロスでこの感触なので、本来のFARSPORTSホイールの2:1だと更に鮮烈かもしれません。

前回、カーボンスポークであるDRIVE 40Dに乗った際には失速感があったので、今回も「失速感はあるだろうな」と予想していたのですが。実際乗ってみると、そういった感触はなし。カーボンスポークの特性としてそういう感触があるのかと思っていましたが、そういうわけでもなさそうです。それとも、この平べったい形状が相殺しているんでしょうか?
乗り心地
こちらもカーボンスポークなので硬いことを予想していましたが、これも予想を覆す乗り心地の良さ。シャマルカーボンほどではないものの、ここ最近乗ったディスクブレーキ用ホイールでは2番目の快適性の高さです。

内幅24mmのエアボリュームの大きさが効いているのかもしれませんね。
登坂
普段登っている短い坂でしかテスト出来ていませんが、普段と同じ出力なのに速いタイムで登ることが出来ました。リム重量の軽さが一番の要因だと思いますが、スポークパターンなどで適切な剛性が出ていてリズムが取りやすいのも効果が出ている気がします。
横風耐性
ここ最近乗ってきたホイールの中では最もリムハイトが高いホイールという事もあって、強風の環境下では横風に前輪を押される感触はありました。ただ、コントロールを失うほどではなく。

以前使っていた同程度のハイトであるHUNTのホイールよりは風の影響は少ないようには感じました。
外幅が広めのリムは横風に強くなる傾向があるということで、外幅31mmのFARSPORTSは安定性が高いのかもしれません。
チューブレス装着テスト
装着だけですが、チューブレスタイヤのテストを行ってみました。
Yoeleo「SAT NxT SL2」が内幅23mmでかなりチューブレスタイヤのビード上げに苦労したわけですが、今回の「Xtreme R4」は内幅24mm。内幅が広いほうがビードが上がりにくい傾向はあるので、今回はどうなのか確認しておきたかったのです。

……あっさりとタイヤブースター(8気圧)でビードが上がりました。内幅24mmもあるのにこれだけビードが上がりやすいということは、リムの設計と製造が巧みであることが伺えます。
チューブレスタイヤでのテストも行う予定ですが、これはかなり作業が楽そうですね。ホールレスリムということもあり、チューブレステープの影響も考えなくてよいですし。
まとめ
FARSPORTS「Xtreme R4」のファーストインプレッションでした。

まだそれほど乗り込めているわけではありませんが、全方位の性能が優秀なホイールという印象です。「SAT NxT SL2」についても同じようなことを書きましたが、それよりも更に+0.5点ずつ高い感じ。
設計に疑問を感じる点もなく、チューブレス運用でのビードの上がりやすさも良い。カーボンスポークでホールレスという点も先進的です。横風耐性は少し気になりますが、45mmハイトともなると仕方ないところでしょう。前輪のみ35mmや40mmが選べたりすると個人的には嬉しいです。
最初に書いたように、個人的にFARSPORTSのホイールには興味を持っていました。ただ、いまいち購入に踏み切れなかったのは「直販しか入手の手段がなかった」ことが一つの要因。その点、FARSPORTSの代理店が日本に出来て、ショップを介して買えるようになったのは大きいですね。しっかり整備された状態で手に入りますし、補修部品も手に入るはず。
ブルベでこのホイールを試せるかは分からないのですが、GWのライドはこのホイールで行う予定です。ロングライドでの感触が今から楽しみです。
著者情報
年齢: 40歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。