「TPUチューブの乗り心地を数値化する」実験レポート

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目次

実験の流れ

今回は、「チューブ乗り心地を数値化」することを目標に実験を始めました。

前の章では、本実験で計測した値について示しましたが、最初から「この値をこうやって計測するべき」と判明していたわけではありません。大学の実験レポートと違って、手順が用意されているわけではないですからね。

「何の値をどのように計測すればよいのか?」「取れた値をどのように計算すれば、今回欲しい”乗り心地の指標”となるのか?」を考え、試行錯誤しながら実験を進めました。

本章では、実験の経緯を時系列で紹介していきます。

① まずは「伸び」を計測

まず考えたのは、単純に「伸び」を測る方法です。

ラテックスチューブは手で引っ張ると伸びます。かなり伸びます。その乗り心地は、自転車のチューブでも最高と言われています。一方、TPUチューブは手で引っ張ってもほとんど伸びません。乗り心地は「硬めである」と言われます。

このことから考えると、「新品状態での伸びやすさ」と「乗り心地」の間には相関性がありそうだ、という予想が立ちます。

ΔLの計測結果

800gのオモリを下げて「伸び」を見る

そこでまずは、前章で示した方法で、「20cm区間が800gのオモリを吊るした状態で20cm+何mmになるか?」を計測しました。その結果を一覧表にしたものが以下になります。

素材製品伸び
[mm]
TPUPIRELLI「SMARTUBE RS」4.5
TPUGuee「Aerolite」4.5
TPURevoloop「RACE」1.5
TPUCYCLAMI「ROAD(オレンジ) 30g」3.0
TPUCYCLAMI「ROAD(グリーン) 30g」3.0
TPUPanaracer「Purple Lite」2.5
TPUEclipse「Road」2.0
TPUSCHWALBE「AEROTHAN」1.5
TPUP&P「TPU Tube」2.0
TPUBARBIERI「NXT TPU Tube」1.0
TPURideNow「ROAD TUBE 24g」2.5
TPUCYDY「TPU Inner Tube 28g」3.5
TPUMagene「EXAR TPU tube」1.0
ラテックスVittoria「Competition Latex」21.0
ブチルPanaracer「R'Air」7.0
ブチルBRIDGESTONE「EXTENZA 75g」6.5
ブチルSCHWALBE「EXTRA LIGHT」11.0
ブチルHutchinson「GOOD DEAL」3.0

この表の内容を、「伸びる順」に並べたグラフが以下です。

800gのオモリを吊るした時の伸びΔL

素材別に色分けをしてみましたが、かなり綺麗に分かれました。

ピンク: ラテックス」が最も良く伸び、20mm前後。圧倒的な伸びやすさです。

グリーン: ブチル」はラテックスの次で、4.5~11mmの範囲。ラテックスほどは伸びませんが、TPU群よりはよく伸びる。今回は70g台の軽めのブチルチューブを3本入れましたが、唯一含めた100g台の標準的なブチルチューブは伸びが少ないことも分かります。

ブルー:TPU」はやはり最下位。伸びにくかったです。

ブチルチューブの中で、SCHWALBE「EXTRA LIGHT」が最も伸びが大きかったのは予想外でした。「よく伸びるブチルチューブといえばR’AIR」と思っていたので、当然そうなると思っていたからです。

EXTRA LIGHTは、チューブについて様々なテストをしているNAOさんが選ぶ「一番乗り心地が良かったブチルチューブ」だそうで。世の中、まだまだ知らない名品があるものですね。

しかし、体感とは一致しない

素材ごとの傾向は大体わかりました。伸びやすさでは、ラテックス > ブチル > TPU。

しかし、伸び量と、体感の快適さが一致しません

ラテックスチューブが1位であることには文句がないのですが、「R’AIRの3倍乗り心地が良いのか?」「Gueeの5倍乗り心地が良いのか?」と言うと、それはさすがに違うだろうと。

見た目はプラスチッキーだが、乗り心地は軽量ブチルを凌ぐGuee

また、個人的には「R’AIRやEXTENZAよりも、GueeやSmartube RSの方が乗り心地が良い」と感じていました。伸び量だけ見れば軽量ブチルの方がTPUより明らかに上なのですが、それをもって乗り心地が比較出来ているとは思えなかったのです。

TPU内の順位でも違和感がありました。私が一番乗り心地が悪いと感じたRideNowが思ったよりも上位に来ているのです。Purple Liteより上に来るというのは、私の感想ではちょっとありえない。

② 肉厚や幅の影響を均した「Flex Index」を出してみる

「伸び」だけを見ても、乗り心地の比較指標としては不十分そうであることが分かりました。

次に考えたのは、「肉厚や幅の影響を排除して比べられないか?」ということです。

「伸び」だけで比較した場合、チューブの構造について何も考慮していません。肉厚や幅はそれぞれのチューブで異なるわけで、これらの影響を排除したら近い条件で比較ができるのではないか、と考えました。

指標: Flex Indexを提案

そこで測定値を使って、以下の指標を提案しました。

ΔL(伸び)を、m(重量)で割ったものです。1000を掛けているのは、普通にΔL/mをすると「0.011」のような小さな数値になってしまうので、比較しやすいようにするため。

「肉厚と幅で割るんじゃないの?」と思った方もいるでしょう。その通りです。でも、この指標を提案した段階では「肉厚を測る方法が思いつかなかった」のでした。

細く、薄く、折り返しが厚いTPUの肉厚を測ることは難しい

TPUチューブは薄くて変形しやすい。それに加えて折り返しの部分が厚くなるため、ここを避ける必要があります。そのための方法が思いつきませんでした。

そこで、代わりの値として採用したのが「m: 重量」です。今回は「w: 幅」「t: 肉厚」が欲しいわけですが、実は重量にはこの2つの値が含まれます

紐状の物体の重量を求める式は以下です。

各文字の意味を説明すると、「A: 断面積」「ρ: 密度(体積あたりの重量)」「L: 物体の長さ」です。今回、チューブの断面積は以下の式で表すことが出来ます。

これを重量を求める式に代入すると、以下のようになります。

ここで「w: 幅」「t: 肉厚」なので、重量には肉厚も幅も含まれているということです。

「肉厚を測れないので、仕方なく重量で代用した」ということになるのですが、重量には「ρ:密度」も含まれています。密度は材料ごとに異なるものですが、これで割ると素材ごとの影響を排除できます。期せずして、「ラテックス・ブチル・TPUを同じ尺度で比較できる」ことになったのでした。

Flex Indexの計算結果

先程の計算式を使ってFlex Indexを算出した結果を表にまとめたものが以下です。

素材製品Flex Index
1000×ΔL/m
TPUPIRELLI「SMARTUBE RS」137.2
TPUGuee「Aerolite」126.1
TPURevoloop「RACE」38.7
TPUCYCLAMI「ROAD(オレンジ) 30g」99.3
TPUCYCLAMI「ROAD(グリーン) 30g」99.7
TPUPanaracer「Purple Lite」62.2
TPUEclipse「Road」56.8
TPUSCHWALBE「AEROTHAN」34.2
TPUP&P「TPU Tube」45.4
TPUBARBIERI「NXT TPU Tube」22.4
TPURideNow「ROAD TUBE 24g」101.2
TPUCYDY「TPU Inner Tube 28g」119.9
TPUMagene「EXAR TPU tube」27.5
ラテックスVittoria「Competition Latex」316.7
ブチルPanaracer「R'Air」85.9
ブチルBRIDGESTONE「EXTENZA 75g」85.9
ブチルSCHWALBE「EXTRA LIGHT」143.8
ブチルHutchinson「GOOD DEAL」29.7

この表の内容を、「Flex Indexが大きい順」に並べたグラフが以下。上にいるものほど、「乗り心地が良い」はずです。

Flex Indexの計算結果

やっぱり一番値が大きいのはラテックス。しかし、その後の序列には変化が生じています。

R’AIRやEXTENZAはかなり下に沈んでしまいましたが、最下位というほどにはなっていません。私が「そこそこ乗り心地が良い」と感じたTPUチューブと同じくらいの位置にいます。

GueeやSmartube RSの値はラテックスのだいたい半分くらい。「2倍快適」と言われると納得できる範囲に収まっています。

やっぱりRideNowの位置が変

今回の実験の問題児・RideNow 24g

その他も大体私としては納得が行く序列となったのですが……ちょっと待ってください、相変わらずRideNowがめちゃめちゃ上位にいます。私の感覚では最下位なのに。

私の感覚がおかしい可能性もあるのですが、他の序列は大体感覚と一致している以上、方向性は多分合っている。でも、RideNowだけが大きく出る。RideNowを含めて説明可能な序列になるような、違う指標を考えてみることにしました。

③ 素材そのものの柔らかさ「Soft_A」を出してみる

さて、ここで一つの転換がありました。

肉厚の計測方法を思いついた

これまではチューブの肉厚を正確に計測する方法が思いつかず、断面積を重量で代用していました。しかし、突如「マイクロメーターがあったじゃないか」と閃きまして。

マイクロメーターなら肉厚を計測可能

マイクロメーターであれば、折りたたみ部分を回避したうえでチューブの中央付近の肉厚を計測できます。また、挟む部分もそれなりに厚みがあるので素材を押しつぶすこともなく。これで何とか肉厚を計測することが出来ました。

その結果を、扁平幅と共に以下に示します。

素材製品扁平幅
[mm]
肉厚
[mm]
TPUPIRELLI「SMARTUBE RS」28.6 0.218
TPUGuee「Aerolite」30.8 0.211
TPURevoloop「RACE」31.9 0.242
TPUCYCLAMI「ROAD(オレンジ) 30g」29.0 0.198
TPUCYCLAMI「ROAD(グリーン) 30g」33.4 0.177
TPUPanaracer「Purple Lite」29.2 0.241
TPUEclipse「Road」28.7 0.244
TPUSCHWALBE「AEROTHAN」22.2 0.367
TPUP&P「TPU Tube」27.7 0.297
TPUBARBIERI「NXT TPU Tube」24.9 0.361
TPURideNow「ROAD TUBE 24g」26.2 0.161
TPUCYDY「TPU Inner Tube 28g」30.6 0.176
TPUMagene「EXAR TPU tube」23.2 0.327
ラテックスVittoria「Competition Latex」23.8 0.661
ブチルPanaracer「R'Air」22.5 0.741
ブチルBRIDGESTONE「EXTENZA 75g」24.5 0.591
ブチルSCHWALBE「EXTRA LIGHT」22.8 0.610
ブチルHutchinson「GOOD DEAL」21.0 0.960

「素材そのものの柔らかさ」が出せる

さて、肉厚が測れると何が嬉しいか。「素材自体の柔らかさ」を計算できるようになります。以下は、今回のような引張試験で良く使われる、伸び量を求める式です。

ΔL: 伸び」「F: 加えた力(800gのオモリ)」「L₀: 元の長さ(20cm)」「E: ヤング率」「A: 断面積」です。この式を整理すると、以下のようになります。

ここで、FL₀はどちらも今回の実験で定数となっているので、L₀も定数ということになります。そして、「E: ヤング率」は「素材の伸びにくさ」を表す値。そうなると、1/Eは「素材の伸びやすさ」を表すことになります。

この式から、「ΔL: 伸び」と、「A: 断面積」を掛け算すると、「素材の伸びやすさ」の指標が求められるわけです。また、断面積は、「w: 扁平幅」と「t: 肉厚」をかけ合わせれば算出できます。肉厚が計測できたことによって、ようやくこの値にたどり着けたわけですね。

この指標を今回、「Soft_A」と呼ぶことにしました。

Soft_Aの計算結果

先程の計算式を使ってSoft_Aを算出した結果を表にまとめたものが以下です。

素材製品Soft_A
(断面積×伸び)
→素材の柔らかさ
TPUPIRELLI「SMARTUBE RS」56.2
TPUGuee「Aerolite」58.4
TPURevoloop「RACE」23.1
TPUCYCLAMI「ROAD(オレンジ) 30g」34.4
TPUCYCLAMI「ROAD(グリーン) 30g」35.4
TPUPanaracer「Purple Lite」35.2
TPUEclipse「Road」28.0
TPUSCHWALBE「AEROTHAN」24.4
TPUP&P「TPU Tube」32.9
TPUBARBIERI「NXT TPU Tube」18.0
TPURideNow「ROAD TUBE 24g」21.0
TPUCYDY「TPU Inner Tube 28g」37.8
TPUMagene「EXAR TPU tube」15.2
ラテックスVittoria「Competition Latex」660.7
ブチルPanaracer「R’Air」233.4
ブチルBRIDGESTONE「EXTENZA 75g」188.2
ブチルSCHWALBE「EXTRA LIGHT」306.0
ブチルHutchinson「GOOD DEAL」121.0

この表の内容を、「Soft_Aが大きい順」に並べたグラフが以下。上にいるものほど、「素材そのものが柔らかい」はずです。

Soft_Aの計算結果

やはり素材で見ても、圧倒的にラテックスが柔らかい。次いでブチル群。そして最下位はTPU群です。「伸び」のグラフよりも更にくっきりと素材ごとに分かれた感じですね。

ここでTPU群の中だけを見てみると、大体私の主観の「乗り心地ランク」通りに並んでいるように見えます。MageneとRideNowの序列は入れ替わっていますが、それ以外は大体同じ。ブチルを含めると序列がおかしいのですが、この指標では密度ρを使っていないので、異素材の比較が難しいようです。一方、同じ素材同士の比較であればこの指標は割りと使えそうに見えました。

④ 扁平幅の影響を考慮した「Comp_R」を出してみる

さて、次に気になったのは「扁平幅」の影響です。

私が実走で「乗り心地が悪い」と感じたチューブについてスペックを眺めてみると、「扁平幅が細い」という共通点がありました。具体的にはRideNow(26.2mm)やMagene(23.2mm)ですが、どちらも実走したTPUチューブの中では最も細い部類に入ります。

ここで、「もしかしたら、幅が狭いチューブは乗り心地が悪くなるのではないか?」という仮説が浮かんできました。

幅と伸び(横方向)の関係を考える

そのことをChatGPTに聞いてみた所、こんな例え話が返ってきました。

ChatGPTによる謎の例え話

うどんて。すごい例えが飛び出してきましたが、確かに説明としては納得感があります。そして、うどんの幅にも様々なものがあります。稲庭うどんは細めですが、山梨ほうとうは幅が広い。幅が広い方が、引っ張った時に伸びやすいということはイメージ出来ます。

伸びの縦と横

これをTPUチューブの話に戻すと、「横方向の伸び」というのは、「扁平幅に比例する」ということです。詳細は省きますが(たわみの公式を使用)、横方向の柔らかさ(Comp_R)は以下で表すことが出来ます。

w:扁平幅」「E: ヤング率」「t: 肉厚」です。この式を日本語で説明すると、「横方向の伸びやすさは、扁平幅に比例し、肉厚に反比例する」ということになります。「横方向の伸びやすさ≒乗り心地の良さ」と過程するならば、「扁平幅が広ければ乗り心地が良く、狭いほど乗り心地が悪い」「肉厚が厚ければ乗り心地が悪く、薄ければ乗り心地が良い」ということになります。

「横方向」とは言っていますが、チューブは円断面なので、地面から見て垂直方向の動きに関係してくる柔らかさということになります。路面の段差を踏んだ時の変形に効いてくる要素なので、突き上げや跳ねやすさに関係する要素のはず。

これまでΔLと置いていたのは、写真で言うと「縦方向の伸び」。そして、今話題としているのは「横方向の伸び」に当たります。ここまで求めた指標である「Soft_A」は、「縦方向の伸び」を基準にしています。
明確な分析は出来ていませんが、この「縦方向の伸び」と「横方向の伸び」は、実走では異なる感覚として現れてくると思われます。

Comp_Rの計算結果

先程の計算式を使ってComp_Rを算出した結果を表にまとめたものが以下です。

素材製品扁平幅
[mm]
Comp_R
TPUPIRELLI「SMARTUBE RS」28.6 9.378
TPUGuee「Aerolite」30.8 10.876
TPURevoloop「RACE」31.9 3.889
TPUCYCLAMI「ROAD(オレンジ) 30g」29.0 6.428
TPUCYCLAMI「ROAD(グリーン) 30g」33.4 8.527
TPUPanaracer「Purple Lite」29.2 5.431
TPUEclipse「Road」28.7 4.197
TPUSCHWALBE「AEROTHAN」22.2 1.883
TPUP&P「TPU Tube」27.7 3.910
TPUBARBIERI「NXT TPU Tube」24.9 1.580
TPURideNow「ROAD TUBE 24g」26.2 4.372
TPUCYDY「TPU Inner Tube 28g」30.6 8.350
TPUMagene「EXAR TPU tube」23.2 1.371
ラテックスVittoria「Competition Latex」23.8 30.306
ブチルPanaracer「R’Air」22.5 9.029
ブチルBRIDGESTONE「EXTENZA 75g」24.5 9.940
ブチルSCHWALBE「EXTRA LIGHT」22.8 14.569
ブチルHutchinson「GOOD DEAL」21.0 3.371

この表の内容を、「Comp_Rが大きい順」に並べたグラフが以下。上にいるものほど、「横方向に伸びやすい」はずです。

Comp_Rの計算結果

こちらも主観の乗り心地に近い並び順となりました。

RideNowの位置がやはり高すぎる気もしますが、それより序列が下のものはRideNow並かそれよりも幅が細いものが並んでいます。その中で乗ったことがあるのは、EclipseとRevoloopとMagene。Magene以外はもう少し上にいても良い気がしますが、私の主観が「横方向の伸びやすさ」をあまり感じられてなかった可能性もあります。

前に示したComp_Rは比例式であり、Comp_R = (定数)×w/(Et)となるはずです。ただ、今回はチューブ同士の相対評価に使えれば良いので、Comp_R = w/(Et)という式で計算しました。

⑤ 乗り心地マップを作ってみたが……

さて、「縦方向の伸びやすさ」を考慮した指標・Soft_Aと、「横方向の伸びやすさ」を考慮した指標・Comp_Rが出揃いました。

これを縦軸・横軸に置いてグラフ化してみたら、縦横の伸びやすさから乗り心地のマップが出来るはず。反映している指標は「伸びやすさ」だけで、振動減衰の具合などは考えていないので見落としはありそうですが、まずはプロットしてみましょう。

乗り心地マップを作成

以下が、縦軸を「Soft_A」、横軸を「Comp_R」としてプロットしたマップになります。ラテックスやブチルが交じるとかなり見づらくなってしまったので、TPUチューブのみに限っています。

ざっくり、「右上ほど伸びが良い」「左下ほど伸びが悪い」ということになります。あくまでも「伸び」の要素しか今回は見ていませんが、主観の乗り心地と一致する綺麗なマップが出来上がりました。

綺麗過ぎる……ということは?

たしかに出来上がったマップは綺麗です。いや、しかし綺麗過ぎるのです。

こんなに綺麗な正比例なグラフになるというのは、ちょっと作為的でもあります。これは、縦軸と横軸が何かの指標に強く相関があるのではないかと考えました。

まず、縦軸のSoft_Aの式は以下です。

ここで、引張試験の式は以下でした。

Soft_Aの式にΔLの式を代入すると、以下のように整理できます。

FL₀は今回の実験では定数なので、「Soft_Aはヤング率の逆数(1/E)に、定数をかけたもの」ということです。Soft_Aという名前をつけましたが、実はこれは「ヤング率の逆数」だったわけですね。

一方、横軸のComp_Rの式は以下です。

これはつまり「CompRは、ヤング率の逆数(1/E)に、w(幅)/t(肉厚)をかけたもの」ということです。

幅と肉厚はチューブごとに異なりますが、実はどのチューブを見ても「w/t」の値は多少ばらついても狭い範囲に収束しています。今回テストしたTPUチューブは「ロードバイク用」「極薄ではなく、ノーマルの厚みのもの」という条件で集めたものです。範囲は以下のようになっています。

  • 幅 w
    23–33mm の範囲
  • 肉厚 t
    0.17〜0.36mm 程度

決められたタイヤ幅の中に格納する必要があり、膨らんだ状態で肉厚をそれなりに確保する制約があることから、どちらも選べる範囲が狭いわけですね。この事から、w/tは「多少のばらつきはあるが、定数に近い値になる」ということです。

⑥ 結局「ヤング率」に収束する

ということで、「縦方向の伸びやすさはヤング率の逆数に比例」「横方向の伸びやすさはヤング率の逆数に(ほぼ)比例」ということになりました。

この事から導き出される結論は以下です。

(ロード用に限れば)
素材のヤング率でTPUチューブの乗り心地は大体決まってしまう

幅や厚みが多少変わっても、あまり乗り心地には影響がありません。結局は「乗り心地には、素材の硬さが一番寄与度が大きい」という、あまり面白くない結論となりました。

ただし、これはあくまで「ロード用のTPUチューブ」に限った話です。ロード用タイヤに収めるという制約があるので、幅や肉厚は似通った値にせざるを得ない。だからヤング率で乗り心地が決まる。

しかし、ファットバイク用の超幅広のチューブだったら、幅の影響は大きく効いてくるはずです。

厚みを極端に薄くした超軽量TPUチューブでも乗り心地に影響があるでしょう。

耐久性重視の極厚TPUチューブであるBARBIERI「ROCCIA」。多分通常のTPUチューブの倍くらいの肉厚があり、これも恐らく特徴的な乗り心地になっていると思われます。あまり乗り心地は良くないと予想しますが……。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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