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「TPUチューブの乗り心地を数値化する」実験レポート
結果サマリ
今回の実験の結果と、そこから分かったことを整理します。
計測した値
各チューブに対して、以下の値を計測しました。
- 伸び: ΔL
(縦方向の)伸び量 - 重量: m
チューブの重量 - 扁平幅: w
チューブを平らに置いた時の幅 - 肉厚: t
チューブの肉厚
求めた指標
計測した値を用いて、以下の指標を算出しました。
- FlexIndex
伸びを重量で割ったもの。 - Soft_A
伸びに断面積を掛けたもの。
→ 縦方向の伸びやすさを表す - Comp_R
幅を、肉厚とヤング率で割ったもの。
→ 横方向の伸びやすさを表す
その結果を以下に示します。
| 素材 | 製品 | Flex Index | Soft_A | Comp_R |
|---|---|---|---|---|
| TPU | PIRELLI「SMARTUBE RS」 | 137.2 | 56.2 | 9.378 |
| TPU | Guee「Aerolite」 | 126.1 | 58.4 | 10.876 |
| TPU | Revoloop「RACE」 | 38.7 | 23.1 | 3.889 |
| TPU | CYCLAMI「ROAD(オレンジ) 30g」 | 99.3 | 34.4 | 6.428 |
| TPU | CYCLAMI「ROAD(グリーン) 30g」 | 99.7 | 35.4 | 8.527 |
| TPU | Panaracer「Purple Lite」 | 62.2 | 35.2 | 5.431 |
| TPU | Eclipse「Road」 | 56.8 | 28.0 | 4.197 |
| TPU | SCHWALBE「AEROTHAN」 | 34.2 | 24.4 | 1.883 |
| TPU | P&P「TPU Tube」 | 45.4 | 32.9 | 3.910 |
| TPU | BARBIERI「NXT TPU Tube」 | 22.4 | 18.0 | 1.580 |
| TPU | RideNow「ROAD TUBE 24g」 | 101.2 | 21.0 | 4.372 |
| TPU | CYDY「TPU Inner Tube 28g」 | 119.9 | 37.8 | 8.350 |
| TPU | Magene「EXAR TPU tube」 | 27.5 | 15.2 | 1.371 |
| ラテックス | Vittoria「Competition Latex」 | 316.7 | 660.7 | 30.306 |
| ブチル | Panaracer「R’Air」 | 85.9 | 233.4 | 9.029 |
| ブチル | BRIDGESTONE「EXTENZA 75g」 | 85.9 | 188.2 | 9.940 |
| ブチル | SCHWALBE「EXTRA LIGHT」 | 143.8 | 306.0 | 14.569 |
| ブチル | Hutchinson「GOOD DEAL」 | 29.7 | 121.0 | 3.371 |
ここで求めた指標から、縦軸にSoft_A、横軸にComp_Rを取ったマップが以下となります。

ほぼ綺麗に比例したグラフとなったため「あれ?」と思って、縦軸と横軸の式を整理してみた所、どちらも「1/E: ヤング率の逆数」に比例していることが判明しました。
今回の結果から言えること
「チューブの伸びやすさ=乗り心地の良さ」であると仮定すれば、以下のことが言えそうです。
(ロード用に限れば)
素材のヤング率でTPUチューブの乗り心地は大体決まってしまう
構造的な値(幅・肉厚)は乗り心地に大きく影響しません。といっても影響がゼロというわけではなく、「性格」「味付け」と言ったくらいの影響はあります。
そうなるのは「ロードバイク用のTPUチューブ」という制約があって、肉厚・幅の選択範囲が広くないことが理由であるはず。ファットバイク用のTPUチューブや、極薄のTPUチューブであれば、構造の影響が出てくる可能性はあります。
今回の実験で求めたヤング率の値を以下に示します。
| 素材 | 製品 | ヤング率 [MPa] |
|---|---|---|
| TPU | PIRELLI「SMARTUBE RS」 | 14.0 |
| TPU | Guee「Aerolite」 | 13.4 |
| TPU | Revoloop「RACE」 | 34.0 |
| TPU | CYCLAMI「ROAD(オレンジ) 30g」 | 22.8 |
| TPU | CYCLAMI「ROAD(グリーン) 30g」 | 22.2 |
| TPU | Panaracer「Purple Lite」 | 22.3 |
| TPU | Eclipse「Road」 | 28.1 |
| TPU | SCHWALBE「AEROTHAN」 | 32.2 |
| TPU | P&P「TPU Tube」 | 23.9 |
| TPU | BARBIERI「NXT TPU Tube」 | 43.7 |
| TPU | RideNow「ROAD TUBE 24g」 | 37.3 |
| TPU | CYDY「TPU Inner Tube 28g」 | 20.8 |
| TPU | Magene「EXAR TPU tube」 | 51.8 |
| ラテックス | Vittoria「Competition Latex」 | 1.2 |
| ブチル | Panaracer「R'Air」 | 3.4 |
| ブチル | BRIDGESTONE「EXTENZA 75g」 | 4.2 |
| ブチル | SCHWALBE「EXTRA LIGHT」 | 2.6 |
| ブチル | Hutchinson「GOOD DEAL」 | 6.5 |
異素材での乗り心地を比較するのであれば、今回作成した指標「Flex Index」はなかなか良さそうな値に思えます。ただし、幅が細いチューブを「乗り心地が良い」と過大評価する可能性があります。
なお、今回の実験では「伸び」のみにフォーカスしています。要は「大きな衝撃が来た時にどれだけ追従するか」しか見ていないとも言えます。乗り心地に影響を及ぼすであろう振動減衰などについては盛大に無視していますので、そこの特性については別の試験が必要になるでしょう。
各TPUチューブの所感
さて、今回試験した各TPUチューブの所感です。
別格の快適さを持つ2本
最初に私は「GueeとSmartube RSの乗り心地で区別がつかなかった」と書きましたが、実験の結果からそれは正しそうであることが確かめられました。どちらのチューブも「伸びやすさ」の観点では非常に近しい位置にあることが分かります。そして、TPUチューブの中では明らかにこの2本のチューブは別格の位置にいることも分かりました。
その秘密は、「素材のヤング率が低い」こと。つまり、柔らかくて伸びやすい素材を使っているということです。数値的には一般的なTPU(パープルライトなど)の6割程度。超柔らかい。
まさにこの2本は「新世代TPUチューブ」と言えると思います。絶対的な乗り心地ではラテックスチューブには叶わないはずですが、軽量性と乗り心地で考えると、現在もっとも進んだチューブかもしれません。

乗り心地の悪かった2本
「乗り心地が悪い」と感じたMageneとRideNow 24gに関しても、大体その理由は見えました。
Mageneで私が感じたのは「路面の段差で跳ねやすい」ということでした。微振動はそれなりに取ってくれるものの、とにかくボヨンと跳ねる。ちょっとした道路のギャップでも跳ねてしまい、すぐに使用をやめました。単純に不快だったことと、跳ねている間は一切路面にパワーが伝わらないからです。
こちらは素材のヤング率がかなり高いです(51.8[MPa])。これだけで正直乗り心地は悪くならざるを得ません。弾性が非常に強いことから、「硬いバネ」ような挙動になると思われ、幅が狭いことから横方向にも伸びにくい。肉厚もあるので、チューブが曲がりにくく、路面追従性も出ない。結果として、「跳ねやすい」という感触に繋がったのではないかな、と。
恐らくですが、このヤング率の高さは耐熱性を高くした影響と見てます。肉厚の厚さはパンク対策。ある性能を上げようとしたことによるトレードオフとして、TPUらしすぎるTPUチューブが出来上がってしまったのでしょう。
熱やパンクへの堅牢性という意味では、TPUチューブの中で最強クラスだと思います。
RideNowの乗り心地の悪さは、Mageneとは若干ベクトルが異なります。「跳ねる」というよりは、「手に衝撃が直撃する」印象。(普段は特にどこも痛くならない)100kmを走っただけで手と尻が痛くて、帰宅後にすぐにチューブを外したほどです。
RideNowも「ヤング率は高い」「幅は狭い」というMageneとの共通の特徴がありますが、「肉厚は薄い」という違いがあります。今回測定した中で、RideNowは最も薄いTPUチューブでした。恐らく、Revoloopの「Race Ultra」や、Tubolitoの「S-tubo」と同程度の薄さでしょう。
「幅が狭い」かつ「肉厚は薄い」ということは、「断面積が小さい」ということ。外力を受け止めて吸収するだけの余力が素材の体積的にないんじゃないか?と。今回は振動の話はほぼしてきませんでしたが、振動を吸収するだけの素材量が足りないのだろうと推測しています。
今回実験したRideNowは24gのものでしたが、ロード用だけでも19g/24g/36g/45gのラインナップがあります。仮に全て同じヤング率の素材を扱っていたとしても、36gや45gはもう少し振動を吸収してくれそうな気がします。19gは想像したくありません。
中庸なるパープルライト
乗り心地マップでど真ん中の位置にいるのが、Panaracer「Purple Lite」です。
「輪郭」の記事で読むまで気づかなかったのですが、Purple Liteの箱の裏には「莱德诺公司」の文字。これはRideNowの会社です。構造やバルブの作りが良く似ていたので驚きはありませんでした。
ただ、個人的には全然駄目だったRideNowの24gに比べると、Purple Liteの乗り心地は「ちょっと硬いけど、概ね不満はない」レベルでした。そのことは、今回の実験で求めたヤング率を見ても分かります。RideNowが37[MPa]に対し、Purple Liteは22[MPa]。明確に値が低く、つまり柔らかい素材を使っているということです。構造はRideNowに良く似ているけど、TPUの配合が別物だということですね。
価格も安く、乗り味は中庸。バルブの作りもしっかりしており、初めてのTPUチューブとしては最適な1本と言えそうです。
数値的には良くないRevoloop
一時期愛用していたRevoloop。ブルベでも使っていたくらいなので、そこまで乗り心地が悪い印象はありませんでした。
しかし、ヤング率を見ると34[MPa]と、今回テストした中では上から4番目の硬さ。表面の質感はサラサラしているのでなんとなく伸びやすそうなイメージを持っていましたが、伸びにくい素材を使っています。
それでも乗り心地にあまり不快感を感じなかったのは、幅の広さが秘密かもしれません。約32mmと、幅に関しては今回テストした中でも最大クラス。こうなると、横方向には伸びやすくなります。上限タイヤ幅は30Cまでと小さめなのにも関わらず、幅を広く確保したのは、乗り心地を確保するための作戦だったのかな、と勝手に推測しています。
(2025/12/6: 追記)

AmazonのRevoloop製品ページを見ていたら、こんな画像を見つけました。どうやらRevoloopは「7層の多層構造」を取っているようで。表面はハード層で耐パンク性能を稼ぎ、その下は2層のソフト層、そして中心には空気抜けを防ぐためのバリア。
多層構造を謳っているTPUチューブは珍しく、Revoloopの他だとContinental「Conti TPU」と、Vittoria「Ultra Light Speed」くらい。しかしこの2つは恐らくRevoloopと同じ工場で作らている可能性が高く(バルブの作りと根本の処理が共通)、多層を採用しているのは「Revoloop系」のみしか見当たりません。
多層の場合、例えば表面のハード層のヤング率がかなり高ければ、全体のヤング率も高く出るはず。ただ、実走時にソフト層がどのように振る舞うのかは良く分かりません。この画像では「Soft Layer(Rolling Performance)」とあることから、転がり抵抗を減らすためにソフト層を入れているようですね。
もしかすると、こうした多層構造により、「(全体としての)ヤング率は高いけれど、乗ってみるとそこまで乗り心地が悪くない」という現象が生まれるのかもしれません。
伏兵・CYDY
ちょっと驚いたのが、CYDYのTPUチューブです。
1本990円と最安価格帯に属するTPUチューブであるにも関わらず、今回のテストではGuee・Smartube RSに次ぐ堂々の総合3位(Soft_Aでは3位、Comp_Rでは4位)に付けました。
構造を見ると恐らく、Purple Liteと同じRideNow製ではないかと推測されます。ヤング率もPurple Liteに近いので、TPU素材の組成は近いのかもしれません。それでもPurple LiteよりCYDYが上位に来たのは、「肉厚が薄い」「幅が広い」という特徴から。肉厚がかなり薄い(今回で下から2番目)のでRideNowと同じく微振動を拾う可能性がありますが、「めっけもの」の性能の可能性はあります。
現在販売されているCYDYのチューブはVer.3。Ver.1とVer.2を試してバルブ周りの品質がイマイチだったため、Ver.3は「手元にあるのに実走していなかった」状態でした。今回の結果を見て、ちょっと実走してみたくなりました。
耐熱性と乗り心地に関係がある?
ここからは若干の妄想を含む、私の勝手な予想です。話半分でお読みください。
Mageneのヤング率の高さについて
今回の実験で一番ヤング率が高かったチューブはMageneでした。では、なぜMageneのチューブはそこまでヤング率が高いのか?

こちらは、MageneのTPUチューブのセールスポイントを紹介している記事です。私が気になったのは以下の部分。
【試験条件】
・カーボンリムを使用して、ブレーキを掛けながら12.5km/hで回転させる
・ブレーキ面の温度が240℃になるまで監視し、この温度で10秒間保持する
・その後ブレーキを解除し、リムの温度が60℃以下になったら、再度ブレーキをかけ、同様のテストを合計3回行う
・その後24時間放置し、空気を入れて気密性をテストする【試験結果】
・EXAR TPUチューブは、本テストをクリアした
・競合の他社製TPUチューブは、本テストをクリアできなかった
他のTPUチューブが耐えられない240℃でも大丈夫な耐熱性。他のテストでは300℃まで試しているようですが……
もしかして、これがヤング率の高さの原因なのでは?と思いまして、ChatGPT先生に聞いてみました。その回答が以下です。
TPUの耐熱性や耐熱変形(熱いとダレないか)を上げるとき、材料屋はだいたい次のようなことをします:
・ハードセグメントの比率を上げる
・芳香族系の成分や耐熱グレードの原料を使う
・フィラー(シリカ、カーボンブラックなど)を加えるこういう手を組み合わせて「高耐熱TPU」を作るので、
耐熱性を上げる設計 ≒ ハードセグメント多め・フィラー多め
→ どうしても ヤング率が高く、硬い材料になりがち
これが本当なのかはしっかりと裏を取ったわけではありませんが、軽く検索した限りだと本当っぽいです。となると、「耐熱性の高いTPUチューブはヤング率が高い→乗り心地が悪い」という可能性が高くなるわけですね。
各チューブのリム・ディスク対応状況
さて、ここで今回テストしたTPUチューブについて「リムブレーキ」での使用を認めているかどうかを見てみましょう。
| 素材 | 製品 | リム | ディスク | ヤング率 →素材の硬さ [Mpa] |
|---|---|---|---|---|
| TPU | PIRELLI「SMARTUBE RS」 | × | ◯ | 14.0 |
| TPU | Guee「Aerolite」 | × | ◯ | 13.4 |
| TPU | Revoloop「RACE」 | △ | ◯ | 34.0 |
| TPU | CYCLAMI「ROAD(オレンジ) 30g」 | ◯ | ◯ | 22.8 |
| TPU | CYCLAMI「ROAD(グリーン) 30g」 | ◯ | ◯ | 22.2 |
| TPU | Panaracer「Purple Lite」 | △ | ◯ | 22.3 |
| TPU | Eclipse「Road」 | ◯ | ◯ | 28.1 |
| TPU | SCHWALBE「AEROTHAN」 | ◯ | ◯ | 32.2 |
| TPU | P&P「TPU Tube」 | 不明 | 不明 | 23.9 |
| TPU | BARBIERI「NXT TPU Tube」 | ◯ | ◯ | 43.7 |
| TPU | RideNow「ROAD TUBE 24g」 | △ | ◯ | 37.3 |
| TPU | CYDY「TPU Inner Tube 28g」 | △ | ◯ | 20.8 |
| TPU | Magene「EXAR TPU tube」 | ◯ | ◯ | 51.8 |
ぱっと見ではありますが、「ディスク専用→ヤング率が低い」「リムブレーキでも使える→ヤング率が高い」という傾向があるように見えます。
リムブレーキでの使用を考慮した場合、熱に耐える必要があります。カーボンリムかアルミリムかにもよりますが、ブレーキ部分で発生する熱はおよそ200℃。長いダウンヒルだとそれ以上になることもあります。この事から考えると……
リムブレーキでの使用を認める
↓
素材の耐熱性を上げる必要がある
↓
ヤング率が上がる
↓
乗り心地が悪くなる
という推論が成り立ちます。幅や厚みである程度、乗り心地の硬さを緩和することは可能であるはずですが、どうしてもヤング率の寄与度を考えると限界があります。
新世代TPUチューブは取捨選択をした?
今回の実験でダントツの成績を残したGueeとSmartube RS。これらはディスクブレーキ専用です。
TubolitoやRevoloopにも「ディスクブレーキ専用」モデルはあります。極薄の「S-Tubo」「Race Ultra」がそれ。これらは恐らく「薄すぎるから」という理由でリムブレーキでの使用を認めていなかったのだと思います。S-Tuboの肉厚は公称で0.15mmなので、確かに素材の耐熱性を上げてもリムブレーキで使うのは怖い気がします。
しかし、GueeやSmartube RSは別に薄くはありません。両者とも厚みは0.2mmを超えており、TPUチューブとしては標準的な厚さ。にもかかわらず「ディスクブレーキ専用」としたのは何故か。
それは恐らく「耐熱性を捨てて、柔軟性を取った」からではないかと推測しています。200℃まで耐えずとも、60℃くらいまで耐えられれば夏の野外走行でも何とかなるはず。極端な耐熱性を度外視することで、ヤング率を下げて柔軟な素材を採用。それがこの乗り心地に繋がったのでしょう。
これは「リムブレーキを販売対象から外す」という決断をしたということにもなるわけですが、現在のディスクブレーキの普及状況を見て「問題ない」という判断がされたのではないでしょうか。

Smartube RSはPIRELLIとしては3代目のTPUチューブです。初代は「Smartube」、二代目は「Smartube EVO」、そして3代目が「Smartube RS」。実は初代Smartubeは「リムブレーキでも使用可」でした。

しかし、2代目「EVO」になったときにディスクブレーキ専用となり、リムブレーキでは使用不可になりました。私はEVOは使ったことがありませんが、写真で見る限り既に3代目「RS」のような柔らかそうな素材に変わっていることが分かります。
恐らくこの初代→2代目となる段階でリムブレーキへの対応をやめ、柔軟性を意識した素材にシフトしたのではないでしょうか。
今後、「薄くないのにディスクブレーキ専用を謳ったTPUチューブ」が出てきたとしたら、それは乗り心地を重視したチューブである可能性が高いのでは……と予想しておきます。
この「耐熱性を下げて柔軟性を出した」という推測が当たっているとすれば、GueeやSmartube RSといった新世代TPUチューブをリムブレーキで使うのは本気で危険であるはずなのでやめたほうが良いでしょう。
TPUチューブは、使用上の注意を良く読み、ご使用ください。
まとめ
「TPUチューブの乗り心地を数値化する」実験レポートでした。
とても長くなりましたが、大変興味深いことが分かって個人的には満足しています。「素材の柔らかさ(ヤング率)がほぼ全て」という結果ではありましたが、それだけに素材(の配合)がとても大事であることが分かりました。
今回は話が発散することを防ぐため、新品状態での「伸び」だけにフォーカスして乗り心地との関連を探りました。また実験する機会があれば、振動や幅、塑性変形後の挙動についても考えてみたいですね。
最後に書いた耐熱性の議論が合っているとすれば、GueeやSmartube RSと言った新世代TPUチューブは「ディスクブレーキ化が進んだからこそ生まれた」存在であると言えます。リムブレーキがメインのうちは、こういった製品は生まれることが出来なかったはずです。

絶対的な快適性はラテックスのほうが上でしょうが、空気圧保持や軽量性を考えると、新世代TPUチューブは「総合性能トップ」と言える位置まで到達したのではないでしょうか。
「ディスクブレーキ化の最大の恩恵は、タイヤ・リム設計の自由度が上がり、太タイヤ化・低圧化・エアロ化が出来るようになったことである」とは良く言われますが、「チューブに対する熱問題を考える必要がなくなった」というのも実は大きな変化だったのかもしれません。
TPUチューブは恐らくまだ進化の途中です。これから更に良いものが出てくるはず。今から楽しみでなりません。
追記(2025/12/8)
なんとなくSmarTUBE RSとGueeを軽く手で引っ張ってみた所、SmarTUBE RSの方が確かによく伸びる感触がありました。
「もしかして計測を間違えたのか?」と思って800gのオモリを吊るして再計測してみるも、結果は元のものと同じ。でも、SmarTUBE RSの方がよく伸びる感じがある。これは何故か?
TPUの場合、ある程度伸びると硬くなる性質(ひずみ硬化)と呼ばれる現象があるようで。そのひずみ硬化が起こる点(比例限界)は物質によって異なると。

下手な手書きグラフで申し訳ないんですが、大体イメージはこんな感じで。このグラフの傾きがヤング率に相当すると考えてください(傾きが大きい=硬い)。比例限界を超えたひずみ(今回で言うと伸び)に至ると、ひずみ硬化が始まります。そこからはグラフの傾きが大きくなって、硬く感じられるようになります。

今回の実験では800gのオモリを吊るしましたが、これは塑性変形(伸び切る状態)を起こさないためにかなり小さめの値としました。このグラフで言えば線形域で収まっているはず。そして、線形域の傾き(=ヤング率)は、SmarTUBE RSとGueeは大体同じくらい。800gのオモリを吊るすと同じくらい伸びるということです。
しかし、手で引っ張ると比例限界に達してしまう。そして、その比例限界の位置がGueeの方が小さく(Aの位置)、SmarTUBE RSの方が大きい(Bの位置)のではないか……と推測しています。だから、手で引っ張ると「SmarTUBE RSのほうが伸びる」と感じられる。SmarTUBE RSも更に引っ張ると比例限界を迎えますが、その時の伸びはGueeよりも大きい。
この記事の初版では「手で引っ張った時にSmarTUBE RSの方がよく伸びると感じられるのは質感から来るバイアスではないか」と書いていましたが、こちらは削除しました。確かに手で引っ張ると、SmarTUBE RSの方が伸びます。
しかしこの差が実走でどう出るのかは、今回の実験では分かりません。「測定方法」に書いていますが、今回の実験は「新品状態で800gのオモリを下げた時の静的変化」を見ているだけなので、実走行時の挙動を全て説明できているわけではなく。その条件でも、ある程度は指標と実走行時の乗り心地に相関があったのが興味深い点です。
もし次の実験をする機会があれば、この辺りを考慮に入れた実験を出来ればと思っています。
著者情報
年齢: 41歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。
# これまでに著者が乗ってきたスポーツ自転車の履歴はこちらの記事にまとめています。







