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長時間ライドにおけるバッテリーマネジメントについて
長時間(≠ 長距離)ライドにおける、電子機器のバッテリーマネジメントについての話です。
まえがき
まずはこの記事を書こうと思ったきっかけから。
サイコントラブルによるキャノボ失敗を知る
昨年末、あるプロ選手が「大阪→東京キャノンボール」に挑戦していました。
大阪から静岡あたりまでは極めて順調。しかし、箱根の目前である三島における報告を最後に報告が途絶えます。報告が復活したのは、スタートから25時間が経過した頃。まさかのタイムオーバーという結果でした。
原因は、残り70km地点でのサイコンのバッテリー切れ。スマホもモバイルバッテリーも枯渇し、道に迷って詰んでしまったとのこと。三島までは16時間を切るペースだったので、順調ならば21時間半くらいでゴールしているはず。サイコンのバッテリー切れというたった一つのトラブルで、3時間半のロスが発生したことになります。
「プロ選手という最上級の脚力を持つ人であっても、電子機器のトラブルで制限時間に間に合わない場合もある」という事実には考えさせられるものがありました。
「気にしなくても良いもの」という認識
この件を通して気付いたのは、「普段から長時間(not 長距離)を走らない方だと、電子機器のバッテリーの持ちに関してあまり考慮に入っていないのではないか」ということ。
プロ選手は毎日高い負荷を掛けてトレーニングをし、きちんと回復して翌日もまたトレーニングをするのが仕事です。恐らく1日200km前後の走り込みは日常的にされていると思いますが、信号の少ない練習コースを選んだ上で、6-7時間程度で走りきってしまうはず。これに対し、ブルベならば200kmの制限時間は13時間半。ボリュームゾーンと言うと、10-11時間くらいでしょうか。倍は掛かりませんが、1.5倍以上の時間がかかっています。

現代のGPSサイクルコンピューターは大体20時間前後のランタイムです。捕捉する衛星の数・画面の明るさ・接続するセンサーといった設定によって増減しますが、概ね15時間程度は持つはずです。
プロ選手の場合で考えれば、どんな設定で使っても1日の練習でバッテリーが枯渇することはまず無いはず。練習後、サイコンを充電ケーブルに繋いでおけば翌日には完全復活。仮に1日充電を忘れてしまっても、なんとか次の日の練習中はバッテリーが持つ計算となります。
こうなると、「サイコンのバッテリー残量は特に気にしなくても良いもの」という認識になっても無理はありません。
ここまで書いたのはプロ選手の例ですが、恐らく「15時間以上サドルの上にいる」というライド経験がなければ、誰であっても「サイコンのバッテリーはライドの最後まで持たない」という認識を持つのは難しいはずです。
例えば、「200km(13.5時間制限)までのブルベしか走ったことがないが、初めて300kmブルベ(20時間制限)に挑戦する」という方の場合も、同じように「サイコンのバッテリー残量は気にしなくて良いもの」と(自覚していなくても)思っている可能性があるということです。
この場合、使っているサイコンが実は20時間しか持たない製品だったり、バッテリーを大量に消費する設定だった場合には、300kmの終盤でサイコンが電池切れに陥る可能性があります。
バッテリーマネジメントという「見えないタスク」
ここまでの話はサイコンに限った話でしたが、現代のスポーツ自転車は実に様々な電子機器に囲まれています。
電動変速・ライト・レーダーetc…。バッテリーが切れても大して影響がない機器もありますが、バッテリー切れに陥ると一気にライドそのものが窮地に追い込まれる機器もあります。近年、電子機器をライドの最後まで動作させる状態を保つための「バッテリーマネジメント」の必要性が高まっていると感じます。
バッテリーマネジメントは、中々外からは見えない話です。ブルベレポートを読んでもわざわざそういう話をする方は稀ですし、基本的には個々人が自分の経験から組み立てているケースが多いと感じます。「ロングライド中のバッテリーの運用をどうするか」ということについて論じた、体系立った資料は、私が知る限りでは存在しません。
本記事を書いたのは、「バッテリーマネジメントという概念が存在する」ということを知って頂き、これから”長時間”ライドに挑戦しようとする方に基本的なマネジメント方法を知って頂くことが目的です。特に、初めて「丸一日(24時間以上)のライド」に挑戦する方には是非読んでいただきたい内容となっています。
長時間ライドにおけるバッテリーマネジメント
長時間ライドにおける、具体的なバッテリーマネジメントについて解説します。
なぜ、今「バッテリーマネジメント」が必要なのか
「まえがき」で述べた通り、近年は自転車周辺の電子機器が非常に増えました。
電子機器に囲まれた現代のロングライド
ライトやスマホは当たり前として、マップを表示可能なサイクルコンピューターはもはや準必需品。油圧ディスク化に伴って電動変速を使う人も増えましたし、ライドの記録を残すアクションカメラを付けている人も増加傾向にあります。リアビューレーダー・電動ポンプ・スマートウォッチ等々、挙げればキリがありません。
実際に使っている人を見たことはありませんが、「リアルタイム空気圧モニター」なんて製品も登場してきていますし、今後ますます自転車周辺の電子機器は増えていくはずです。
しかし、電子機器である以上、動力は電気。その電源は乾電池のような交換可能バッテリーか、機器に内蔵された充電可能バッテリーです。ハブダイナモのような発電装置が無い限り、バッテリーは有限であり、いつか尽きます。
ライドの致命傷に繋がる「バッテリー枯渇」
一部の電子機器は「あると助かる」ものではなく、もはや「走行継続の基幹システム」と言えるでしょう。
夜間走行中にライトのバッテリーが尽きてしまえば、その時点で走行続行は不可能。ナビゲーションをさせていたサイクルコンピューターが沈黙してしまえば、この先進むルートが分からず、道に迷ってタイムオーバー。スマホのバッテリーが尽きてしまえば、リタイヤしようにも駅がどこにあるかも分かりません。
電子機器のバッテリー枯渇が、ライドにおける「致命傷」となるケースがあり得るわけですね。
バッテリーマネジメントの必要性
現代の電子機器の多くは「充電式」です。

乾電池式であれば、予備を持っていれば即・残量100%に復帰が可能。持っていなくても、コンビニに辿り着ければ乾電池を購入して復帰が可能です。

しかし、充電式ではそうも行きません。一度バッテリーが枯渇してしまえば、数時間の「停滞」を余儀なくされます。 モバイルバッテリーを持ち歩いていたとしても、動作可能な状態になるまで充電するには、それなりの時間が掛かるはず。
「いつでもどこでもリカバリーできるわけではない」という制約があるからこそ、行き当たりばったりではない、計画的な「マネジメント」という攻めの姿勢が不可欠なのです。
「バッテリーマネジメント」の基本フロー
人それぞれバッテリーマネジメントの方法は異なるはずですが、まずは私の考える基本的なフローを示します。
| # | フェーズ | ステップ | 具体的なタスクと目的 |
|---|---|---|---|
| 1 | ライド前 | 装備の棚卸し | 持参する電子機器をすべてリストアップ。 「管理対象」の総数を確定させる。 |
| 2 | 最大稼働時間の把握 | 各機器が100%で何時間稼働するかを把握。 計算の「定数」を定める。 | |
| 3 | 一斉フルチャージ | 前日までに全機器を100%に。 すべての計算の起点を「最大値」で揃える。 | |
| 4 | ライド中 | リアルタイム残量管理 | 「残り時間(最大稼働時間 - 使用時間)」を 常に計算しながら走る。 |
| 5 | 適時の補給 | バッテリーが切れかけたら、 予備電池への交換や給電の実施を行う。 | |
| 6 | 宿泊地でのリセット (道中で宿泊する場合のみ) | 宿泊を挟む場合、全機器を100%へ。 累積した計算誤差と不安を一掃する。 | |
| 7 | ライド後 | 装備の最適化 | 実績に基づいて、電子機器の取捨選択を行う。 (#1 に戻る) |
毎回厳密に全てをやっているわけではないですが、大体こんな感じです。それぞれの行程について見ていきます。
#1: 装備の棚卸し
まずは、自分がライド中に持参している電子機器の数を把握します。
具体的な電子機器の例を部位別に挙げます。
| 収納部位 | 電子機器の例 |
|---|---|
| 身体 | 携帯電話(スマホ・ガラケー) |
| スマートウォッチ | |
| デジタルカメラ | |
| 自転車 | フロントライト |
| テールライト | |
| 電動変速装置(Di2・eTap等) | |
| サイクルコンピューター | |
| リアビューレーダー | |
| センサー類 (心拍・パワー・ケイデンス・スピード) | |
| アクションカメラ | |
| バッグ等 | モバイルバッテリー |
| 電動ポンプ |
どうでしょう? 数えてみると、「意外と電子機器を持ち歩いているんだな」と驚いたのではないでしょうか。
一つのアイテムを複数持っているケースもあります。
私の場合、普段のブルベならば「フロントライトを2つ、テールライトを2つ」持ちます。1000kmを超えるコースの場合、「フロントライトを3つ、テールライトを3つ、サイコンを2つ」となります。

600kmブルベ(40時間制限)に私が参加する場合の装備の具体例を以下に示します。
| 収納部位 | 電子機器の例 | 製品名 |
|---|---|---|
| 身体 | 携帯電話(スマホ・ガラケー) | Google「Pixel 9a」 |
| スマートウォッチ | Garmin「Forerunner 265S」 | |
| デジタルカメラ | – | |
| 自転車 | フロントライト | CATEYE「VOLT800 NEO」 |
| CATEYE「VOLT800」 | ||
| テールライト | CATEYE「OMNI5」×2個 | |
| 電動変速装置(Di2・eTap等) | – | |
| サイクルコンピューター | Garmin「eTrex 32x」 | |
| リアビューレーダー | – | |
| センサー類 (心拍・パワー・ケイデンス・スピード) | (パワーメーター) 4iiii「Precision 2」 | |
| アクションカメラ | – | |
| バッグ等 | モバイルバッテリー | maxell「MPC-CS5000」 (容量: 5000mAh) |
| 電動ポンプ | CYCPLUS「AS2 PRO」 | |
| その他 | CATEYE「BA-4.8」 ※VOLT予備バッテリー |
灰色になっているのは「持ち歩いていないもの」です。リアビューレーダーは、特別トンネルが多いコースには付けていきますが、そうでない場合は装備に入れないことが多いです。
#2: 最大稼働時間の把握
#1でリストアップした機器に対し、各機器の最大稼働時間を把握します。
最大稼働時間の把握方法は主に2つあります。「公式発表のスペックに書いてある数字を見る」のと、「自分で事前に計測する」方法です。基本的には前者で良いと思いますが、いまいちメーカーの発表が信用できない場合は後者の方法で調べておく必要があります。
例として、先程の表に、各機器の「スペック上の最大稼働時間」を追記します。
| 収納部位 | 電子機器の例 | 製品名 | 最大稼働時間 | 実測稼働時間 |
|---|---|---|---|---|
| 身体 | 携帯電話(スマホ・ガラケー) | Google「Pixel 9a」 | 30時間 | 30時間 |
| スマートウォッチ | Garmin「Forerunner 265S」 | 15日間 | 13日間 | |
| デジタルカメラ | – | |||
| 自転車 | フロントライト | CATEYE「VOLT800 NEO」 | 12時間 (ローモード) | 15時間 (ローモード) |
| CATEYE「VOLT800」 | 8時間 (ローモード) | 10時間 (ローモード) | ||
| テールライト | CATEYE「OMNI5」×2個 | 60時間 (点灯) | 60時間 (点灯) | |
| 電動変速装置(Di2・eTap等) | – | |||
| サイクルコンピューター | Garmin「eTrex 32x」 | 25時間 (アルカリ電池) | 30時間 (eneloop pro) | |
| リアビューレーダー | – | |||
| センサー類 (心拍・パワー・ケイデンス・スピード) | (パワーメーター) 4iiii「Precision 2」 | 100時間 | 90時間以上 | |
| アクションカメラ | – | |||
| バッグ等 | モバイルバッテリー | maxell「MPC-CS5000」 (容量: 5000mAh) | – | – |
| 電動ポンプ | CYCPLUS「AS2 PRO」 | 25C/7.5気圧 2回 | 28C/6.0気圧 2.5回 | |
| その他 | CATEYE「BA-4.8」 ※VOLT予備バッテリー | – | – |
一番右の列には、実際に測定した「最大稼働時間」のデータを追記しました。結構、スペックとは違う値が出るものです。
さて、ここで触れておくポイントが「ライド時間と最大稼働時間の比較」です。
例えば600kmブルベを走るとすれば、制限時間は40時間です。稼働時間が、ライド時間よりも十分に長ければ、道中にバッテリー管理をする必要はなくなります。例えば、100時間使えるパワーメーター。ライド前にバッテリーが満タンになっていれば、40時間のライド中にバッテリー切れに陥ることはまず無いでしょう。
そうしたものを除けば、上の表のうち稼働時間をライド中に管理しなければならないのは以下の4機器だけです。
- スマートフォン: Google「Pixel 9a」
- フロントライト: CATEYE「VOLT800 NEO」
- フロントライト: CATEYE「VOLT800」
- サイクルコンピューター: Garmin「eTrex 32x」
ライド中は、この4機器以外のバッテリー状況については常に把握しておく必要がありますが、それ以外の機器については「考えなくて良い」ことになります。もちろん、スタート前にちゃんとフルチャージされていることが前提です。
#3: 一斉フルチャージ
ライドの前日を目安に、電子機器のフルチャージを行います。
充電式の機器は、コンセントに繋いで充電。電池式の機器は、新しい電池に交換しておきます。

ブルベ界隈では、前日の充電の儀式を「充電峠を越える」などと呼びます。
各機器の「充電時間」を把握しておくことも重要です。道中、ホテルなどに宿泊する場合には、そのホテルの滞在時間内に充電を終える必要があります。あまりにも充電に時間が掛かる機器を選ぶと、滞在時間内に充電が終わらないことになるからです。
例えば、iGPSPORT「VS1200」ライトは3時間で充電が完了しますが、TREK「Ion Elite R」ライトは充電に12時間掛かります。どちらのライトもバッテリー容量は5000mAhで同じですが、これだけの差があるわけです。
#4: リアルタイム残量管理
さて、ここからはライド中の話。各機器を「何時間使ったか」を常に把握し、「あと何時間使えるか」を考えながら走行します。
私の場合は、先述の4機器が管理対象になります。
- スマートフォン: Google「Pixel 9a」
- フロントライト: CATEYE「VOLT800 NEO」
- フロントライト: CATEYE「VOLT800」
- サイクルコンピューター: Garmin「eTrex 32x」
「スマートフォン」「サイクルコンピューター」は、ライド開始から終了までずっと起動しているもの。一方、「フロントライト」は、夜間やトンネルを抜ける間だけ起動するものになります。
自転車用の電子機器の場合、だいたい使用パターンは2つに分かれます。
「ライド開始から終了までずっと起動しているもの」か「夜の間だけ使うもの」です。
前者は、スマホ・サイコン・センサー類など。後者は、ライト類です。私は、ライト類は日没とともに点灯し、日の出とともに消灯します。
こうすれば、前者はスタートから現在までの時間で計算し、後者は日没(=点灯)から現在までの時間で計算出来ることになります。
仮に、朝6時スタートの600kmブルベで、夜24時(18時間後)に320km地点のホテルに到着。翌朝6時にリスタートし、22時(40時間後)にゴールするとします。日没は18時、日の出は5時とします。
そうなると、ホテルに到着した時点での各機器の「残り使用時間」は以下のようになります。
| 機器名 | 最大稼働時間 | 使用時間 | 残り使用時間 |
|---|---|---|---|
| Google「Pixel 9a」 | 30時間 | 18時間 (6-24時まで) | 12時間 |
| CATEYE「VOLT800 NEO」 | 15時間 (ローモード) | 6時間 (18-24時まで) | 9時間 |
| CATEYE「VOLT800」 | 10時間 (ローモード) | 6時間 (18-24時まで) | 4時間 |
| Garmin「eTrex 32x」 | 30時間 | 18時間 | 12時間 |
機器が4つくらいなら何とかなりますが、個数が増えていくと覚えていなければならない数値が増えていきます。あまり電子機器を多くするのも考えものだということです。
#5: 適時の補給
今回の私の例では、ライド中にバッテリー切れに陥る機器はありません。そうならないような機器の選び方をしているからなのですが、「稼働時間は短いが、どうしてもこの機器を使いたい」ということもあるでしょう。
例えば、Garminの最新サイコン「Edge850」の最大稼働時間は、わずか12時間です。今回の例のようにスタートから18時間後にホテルに到着する場合を想定すると、ホテル到着の6時間前にはバッテリーが枯渇します。そうなった場合は、拡張バッテリーパックを使うか、モバイルバッテリーから給電してやらなければなりません。
拡張バッテリーパックであれば純正のGarminマウントを使えば対応できますが、モバイルバッテリーを使う場合はトップチューブバッグなどのモバイルバッテリーの格納スペースを用意しておく必要があります。
#6: 宿泊地でのリセット
さて、無事に宿泊地まで辿り着けました。ホテルであれば各部屋にコンセントがありますので、そこから充電を行うことが出来ます。寝る前に、再度の「充電峠」というわけですね。
Pixel 9aは、残り使用時間が12時間です。充電しないと電池切れになるので、充電します。
VOLT800 NEOは、残り使用時間が9時間です。次の夜は18~22時までライトを使う予定なので、4時間あれば十分。実は充電する必要がありません。ただ、念のため充電はしておきます。仮に、コンセントの数が少ない場合は、VOLT800 NEOの充電の優先度は下げます。
VOLT800は、残り使用時間が4時間です。充電しないと電池切れになるので、充電します。
eTrex 32xは、残り使用時間が12時間です。乾電池の機器であるため、充電は行えません。翌朝6時にホテルを出るまでは電源を切っておけますが、それでも翌日は6~22時までの16時間を走行します。ということは、翌日の終盤に電池切れに陥る可能性が高いです。
これに備えてコンビニで乾電池を買っておくか、あらかじめ乾電池をサドルバッグなどに入れておけば瞬時に復帰することが出来ます。
#7: 装備の最適化
ここからはライド後の話です。
ライドが終わったら実績を元に装備の入れ替えや、取捨選択を行います。持っていても使わなかった機器は「次は持たない」という選択をすることもありますし、「あれがあれば助かったのにな」という時は機器を追加することもあります。
それが終わると、また次のライドに向けて準備を進めるために「#1: 装備の棚卸し」へと戻るわけです。
応用テクニック
ここからは、バッテリーマネジメントを上手く進めるための応用テクニックを紹介していきます。
持ち歩く電子機器を厳選する
先に述べた通り、持ち歩く機器が増えれば増えるほどバッテリーの管理は大変になります。
管理する対象が増えると、脳のリソースを消費します。「認知負荷が高まる」ということですね。本来は「何かあった時の余裕」として残しておくべき脳のリソースが圧迫され、判断ミスやパフォーマンスの低下を招きます。電子機器は便利なものですが、それに縛られてしまっては本末転倒です。
そこで、あえて電子機器を「引き算」していくことも必要だと私は考えています。自分に本当に必要な電子機器だけを持ち、不要なものはあえて持たない選択をするということです。

私の場合、ブルベ用のロードバイクには機械式変速装置を必ず使うことにしています。Di2のバッテリーの稼働距離は700~1000km。1200kmブルベであれば、ライド中にバッテリーが尽きる可能性があるからです。充電ケーブルを持ち歩くという手もありますが、管理する電子機器は増やしたくない&飛行機輪行の時に面倒という理由で私はDi2導入を見送っています。
レーダーテールライトも、よほどトンネルが多いルートであれば持ちますが、それ以外のブルベでは使用していません。残念ながら現状のレーダーテールライトの稼働時間は長くても10-15時間という所で、300km以上のブルベではバッテリーが尽きる可能性があります。
「あると便利」の裏には、「面倒を見なければならない」という手間が存在するのです。
ライド時間よりも明らかに最大稼働時間が長い機器を使う
フローの説明でも述べましたが、「目標とするライドの時間よりも、明らかに最大稼働時間が長い機器を使う」というのは、バッテリーマネジメントを円滑に進める上で重要です。
私の場合、一番長い時間走り続けるのは1200kmブルベの90時間。それよりも稼働時間が長い機器ならば、走行開始前の充電さえしっかり行われていれば、走行中の管理対象から消してしまえることになります。
例えば、4iiiiのクランク型パワーメーター「Precison 3+」は、CR2032電池×1枚で400時間持つとされています。スタート前に新品の電池に変えておけば、PBP(1200km)でもLEL(1500km)でも、終了までバッテリーが尽きることはないでしょう。
バッテリー交換式の活用
最近は充電式の機器が多いですが、古風な乾電池式を使うのも一つの戦略です。
例えばeTrex 32xは単三電池×2本で稼働します。アルカリ電池では25時間の稼働ですが、リチウム乾電池という特別な電池を使うと45時間稼働します。バッテリーが尽きても、電池さえ交換すれば即時に復活するのも強みですね。
また、CATEYEのVOLTシリーズは「カートリッジバッテリー」という方式を採用しています。ボディの後ろ半分がバッテリーケースになっており、ここを取り替えることで即時復活するというもの。カートリッジバッテリーの予備さえ持っていれば、こちらも充電の時間無く復活します。
サイコンは設定で稼働時間が大きく変わる
あまり知られていませんが、GPSサイコンのバッテリーの持ちは設定内容によって大きく変化します。
主に、バッテリーの持ちに影響を及ぼす設定は以下の2つです。
- バックライトの明るさ
明るいほど画面は見やすくなるが、バッテリーを消費する。 - 捕捉する衛星数
多くなればなるほど位置情報は正確になるが、バッテリーを消費する。
接続するセンサーの数でもバッテリー消費は増えますし、開いている画面の種類(マップ画面はバッテリー消費が多い)でも変化しますが、この2つの設定に比べたら影響は微々たるものです。

一番厄介なのが、最近のサイコンに大体付いている「輝度自動調節」という機能。
これは、サイコン画面に付いている環境光センサーで周囲の明るさを検知してバックライトの明るさを自動で調整するという機能。しかし、往々にしてこの自動調節は「明るすぎる」方向で調整されます。そうなれば、みるみるバッテリーは消費されていき、スペック表に書かれている時間よりも短い時間でバッテリー切れに陥ります。
この記事の最初で書いたプロ選手は、機種不明ですがGarminのEdgeシリーズを使っているようでした。仮にEdge840であればカタログスペックであれば26時間持つはず。しかし、捕捉衛星数が多い&バックライトが明るければ17-8時間程度でバッテリー切れになることは十分にあり得ます。

私は基本的には「輝度自動調節はOFF」にした上で、「視認できる限りで一番低い明るさ」に設定しています。こうすれば、稼働時間は大体固定されます。Edge840の場合、「輝度10%: 40時間」「輝度20%: 36時間」程度は稼働することを確認しています。
バックライトの明るさにはこだわってください。
充電式バッテリーは劣化する
スマホなどのバッテリーが劣化することは有名ですが、自転車用の電子機器に使われているバッテリーも、充電を繰り返すと劣化していきます。
よく使われるリチウムイオンバッテリーの場合、「300回の充電サイクルで、初期の80%程度の容量に減る」のが相場とされています。
例えば、購入当初は30時間動いたサイコンも、1年使い倒したら24時間しか動かないかもしれないということです。
電子機器を使う年単位で使ったら、再度稼働時間の確認をするようにしましょう。
アクションカメラは相当の豪脚向け
近年はライドの記録を残すために、アクションカメラを付けて走る人も増えました。ただ、これは相当に走力がある人でないとオススメできません。
アクションカメラは、付属バッテリーで撮影可能な時間は1時間半~2時間ほど。それが終わればバッテリーを交換する手間が発生します。仮に、ブルベで1日16時間ほど走行したとして、その過程を全て録画しようと思うと10回ほどバッテリーを交換しないとなりません。
ではモバイルバッテリーを繋ぎながら録画するのはどうか。仮に16時間を撮影しようと思うと、計算上は30000mAh 〜 35000mAh程度の容量が必要です。これだけの容量を持つモバイルバッテリーの重量は400-500g。かなり重い。自転車の重心が変わる重量です。
16時間のうち8時間を録画しようと思っても20000mAhくらいは必要です。それでも重量は300-400g。重い。
そして、宿についたら、今度は枯渇したモバイルバッテリーを充電しなければなりません。これだけの大物となると、宿の滞在時間で充電が終わるかは未知数です。
このように、アクションカメラは「管理の手間」と「重量」の面で相当の負担になります。例えば、PBP(90時間制限)でアクションカメラを付けて時間内完走するのだとしたら、アクションカメラなしで80時間以内に走行するくらいの脚力は要求されるでしょう。
映像を残すことを優先するか、結果を残すことを優先するか。事前によく検討したほうが良いと思います。もしくは、脚力で殴れるように鍛錬を積むのも手です。
まとめ
以上、長時間ライドにおけるバッテリーマネジメントについてお話しました。
いきなり全部をやるのは無理なので、まずは「自分がどんな電子機器を持って走っているのか」「その電子機器の稼働時間はどれくらいか」ということを調べ、意識する所から始めてみてください。何度か繰り返すうちに、自分なりのルーティーンが掴めてくると思います。
ここで述べたことの大半は私の意見であり、完璧なものではありません。恐らく、ロングライドの達人たちは各々経験から編み出したマネジメント術を持っているはずです。この記事は一つの意見としてお読みいただければと思います。
電子機器のバッテリートラブルが原因となったライドの失敗がこれで少しでも減ってくれれば嬉しく思います。
著者情報
年齢: 41歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。
# これまでに著者が乗ってきたスポーツ自転車の履歴はこちらの記事にまとめています。









