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【レビュー】GHISALLO「GE-110」
評価:5
大手問屋「フカヤ」のプライベートブランド、GHISALLOによるエンデュランスロードフレーム。
三船雅彦氏の監修による「ブルベ向き」スペックのエンデュランスロードになっています。
購入動機
まずは購入するまでの流れを書いていきます。
1年9ヶ月の検討期間
私がフレームを買う際は、割と即決であることが多いです。しかし、今回は購入に至るまでは1年と9ヶ月ほど掛かりました。

そのあたりの詳しい流れはこちらの記事に書いています。
購入に至るまでに時間がかかったのは、それまでに「ブルベ向き」や「ロングライド向き」と謳っていたエンデュランスロード系のフレームのほとんどが、現場を大して見ずにイメージと思い込みで作られたようなものが多かったからです。
プロ選手たちに供給されてフィードバックをもらったレーシングロードは、まさに「現場の声」が反映されています。しかし、かつてのエンデュランスロードは「一体誰の声を聞いたらこうなるのか?」と首を傾げたくなるようなものが多かった。「ロングライドなんて柔らかくてアップライトなポジションを取れるようにしておけば良いんでしょ?」という製品ばかり。
「今回もどうせまたそうなんだろう」と最初は思っていました。

しかし2022年12月、年明けの発売に先駆けて行われた試乗会で乗ってみると、そのイメージは覆されます。ハンドルの落差はキッチリ出ているし、走りもエンデュランスロードにありがちな「カーボンのグレードを下げて反応を遅くしました」感が無かったのです。目の覚めるような加速ではないものの、一般的なレーシングロードに近い反応性を持っていました。
この時、「このフレームは今までの自称”ロングライド向き”とは違っているのではないか」と思い始めました。

2023年6月には、幕張で二度目の試乗。ここにはGE-110の開発担当者である牧さんが来ていたので色々とお話を聞きました。監修の三船さんから何度もダメ出しをされ、作り直すこと複数回。ようやく合格点が出たのが、販売モデルのGE-110とのことでした。販売直前には、三船さんがLEL(イギリスで4年に1度行われる1500kmブルベ)に参加して最終テストも行っています。
また、ブルベならではの事情を考慮したさまざまなこだわりを反映した話を聞き、「これはちゃんと現場を見て考えられたフレームだ」という確信を得ました。「ブルベの現場」をトップクラスに知るランドヌールである三船さんの意見が随所に反映されているというのは大きい。そして、実際に乗ってみても「現場」の香りを感じ取ることが出来ました。これは、「イメージと思い込みで作られたブルベ用」ではなく、「現場の声を反映して作られたブルベ用」フレームです。

2023年12月、サイクルキューブで行われた3度目の試乗では私物のバッグ類(実際にブルベで使うもの)を取り付けての試乗をさせてもらい、問題がないことを確認。注文に至りました。
購入に至ったポイント
私がGE-110に惹かれた理由は「ブルベ向き」というキャッチに偽りがなく、「現場」の要望を取り入れていたからなのですが、もう少し細かく理由を分割してみます。
- 一般的な”ロードバイク”と同等のポジションと反応性を持っていたこと
- 特殊な機械的ギミックが搭載されていないこと
- 荷物の大量積載を前提とした設計になっていたこと
各項目について詳しく書いていきます。
ポジションと反応性
まず、私が長年描いていた「ロングライド向きのロードバイクフレームの最適解」について紹介しておきます。
自分的にはロングライド(国内1000km以下)向けのフレームを選ぶなら、フレームはオールラウンド系フラグシップを選んで、あとはタイヤとホイールとハンドルとサドルで何とかすれば良いと思ってる。
— ばる (@barubaru24) November 27, 2016
これは、いわゆる「思い込みで作られた(と思われる)エンデュランスロード」に対するカウンターとして書いたものです。
やたらアップライトなポジションを強制し、お尻だけに荷重が掛かるようなフレームは、距離が伸びるほどに乗り続けることが辛くなります。100km以下を快適に走るならアリかもしれませんが、シリアスなロングライドには向きません。ある程度の前傾姿勢と落差が必要です。
また、その手のエンデュランスロードにありがちな「剛性を必要以上に落として足当たりを優しくする」というアプローチも頂けません。それは乗り手が出力を調整すれば良いことで、わざわざ剛性を落として走行性能を落とすのは正しいアプローチとは思えませんでした。

近年は、SPECIALIZEDがウルトラロングライダーであるJack Thompsonを「Roubaix」の開発ライダーに加えるなど、シリアスなロングライドの現場の声を反映したエンデュランスロードも増えています。元々はプロのクラシックレース「パリルーベ」のために作られたRoubaixですが、現在のRoubaixは一般のサイクリストが荷物を持ってウルトラロングライドをする用途がメインターゲットに変化。トップチューブバッグ用のアイレットや、泥除け用のアイレットも備えています。
しかし、このツイートを書いた2016年当時は「一体どんな用途を狙って作ったのかが分からないエンデュランスロード」が多かったんですよね。

そんな理由から、ある程度タイムを気にするキャノボやブルベのようなロングライドでは、GIANT「TCR」のようなオールラウンドフレームの上位モデルを使って走行性能を確保し、必要な荷物はバイクパッキング用のバッグで積載する方向性が正しいのでは?と私は思っていたのです。

その点、GE-110は、ゴリゴリのレーシングロードのような反応性はないものの、一般的なロードバイクの反応性や巡航性能を兼ね備えていると感じました。ポジションも、(スタックが少し高めではあるものの)エンデュランスロードとしてはハンドルの落差が付けられるようになっています。
機械的なギミック
エンデュランスロードには、レーシングロードには搭載されないような機械的ギミックを搭載した製品が多いです。

TREK Domaneの「ISO Speed」、SPECIALIZED Roubaixの「Future Shock」、Wilier Granturismoの「ACTIFLEX」などが代表的です。
これらは確かに乗り心地を良くする点では有効なのですが、個人的には機械的ギミックを避けることにしています。理由は、「壊れうるパーツが増えるから」です。
機械的なギミックが増えれば、当然パーツ数も増えます。パーツも経時劣化するので破損することもあるでしょう。何日も走り続けるシリアスなロングライドでは、思いもよらぬ箇所が破損して走行不能になることもあるので、出来るだけその確率は下げておきたいのです。
GE-110には特に機械的なギミックもなく、シンプルなフレームワークである点が気に入りました。
荷物の積載を前提とした設計
ブルベでは、距離が伸びるほどに大量の荷物を持って走る必要が出てきます。サポートがあるわけでもないので、距離が伸びれば対処すべき天候やトラブルの幅も増えてくることが理由です。

こちらは、1200kmを走るPBPの時の装備例。ボトルはダブル、フロントバッグに大型サドルバッグを搭載し、さらにダウンチューブ下にはツール缶も搭載しています。
最近はシンプルなフレームにもバッグやストレージを後付け可能にするアイテムは存在しているのですが、出来ることならばスムーズで綺麗にバッグ等を取り付けたいもの。


その点、GE-110はトップチューブとダウンチューブ下に荷物積載用のアイレットを搭載。ボルトオン式のトップチューブバッグや、ダウンチューブへのツール缶の搭載が容易です。
また、「空荷状態よりも、荷物を積載したほうが走行が安定する」という独特の設計をしている点も気に入りました。詳しくは「積載性能」の項で述べます。
購入→納車

1年9ヶ月の検討期間を終え、2023年12月にGE-110を注文。2024年1月に納車となりました。

パーツの大半は、前に乗っていたBIANCHI「INFINITO CV」からの載せ替えです。
納車から1年半、参加した全てのブルベをGE-110で走りました。
製品概要
実測重量は、フレームが920g(Mサイズ)、フォークが376g(カット前)。素材は「ハイモジュールカーボン」とされています。
普通はフレームとフォークのみのセットが多いですが、GE-110のパッケージ内容は以下です。
- フレーム&フォーク
- カーボンハンドル
- カーボンステム
- カーボンシートポスト
- ヘッドパーツ
シートポストは27.2mmの円形。タイヤサイズは最大32Cまで対応。トップチューブ上と、ダウンチューブ下にアイレット(ダボ穴)あり。
カラーは、オキシダイズドシルバーとシャイニングホワイトの2色となっています。私はオキシダイズドシルバーを購入しました。
使用感

主にブルベ、ロングライド、ディスクブレーキ向け装備の実験機として使用。200/300/400/600kmの各カテゴリのブルベで使用しました。
納車からの1年半で、走行距離は約10000km。色々なホイールと組み合わせて使っていますが、メインはCampagnolo「Shamal Carbon」です。
パーツ構成
現在のパーツ構成は以下のようになっています。
| 部位 | 製品名 |
|---|---|
| ハンドル | 3T「ERGONOVA TEAM(400mm)」 |
| ステム | FSA「SL-K MTB STEM(110mm)」 |
| ヘッドパーツ | FSA「No.69 SRS Headset」 |
| STI | SHIMANO「DURA-ACE ST-9001」 |
| ブレーキ | GROWTAC「EQUALブレーキキャリパー」 |
| クランク | SHIMANO「DURA-ACE FC-R9100-P」 |
| ホイール | Campagnolo「SHAMAL CARBON DB」 |
| シートポスト | Bontrager「XXX Seatpost」 |
| サドル | Fabric「Scoop Radius Pro」 |
| ペダル | SHIMANO「PD-M9100」 |
INFINITO CVに引き続き、メカニカルディスクブレーキでの運用です。
Di2を選ばなかったのは、飛行機輪行をする可能性が大きかったことが理由。昨今はリチウムイオンバッテリーの規制が厳しく、Di2だとバッテリーを指摘される可能性を考慮しました。また、「ブルベ中にバッテリー残量を意識する電子機器を少しでも減らしたかった」ことも理由です。
ケーブルのハンドル内装が前提のフレームなので、本来はDi2+油圧で組まないと変速もブレーキ性能も厳しくなるのですが、EQUALブレーキの組付けに定評のあるサイクルキューブ長谷川店長が実用上問題のないレベルに仕上げてくれています。
重量
前述の通り、フレームの実測重量は920g、フォークは376gでした。

公称重量は850g(Sサイズ無塗装)であることを考えると、Mサイズ塗装済みで920gは妥当な重量。そして、フォークは公称400gながら、実際には376gと大幅に軽い個体が来ました。

そこまで軽いパーツを選んだわけではないのですが、SPDペダル付きで7.31kgとかなり軽量に仕上がりました。ペダルなしだと、ちょうど7.0kgです。
ディスクロードでブルベ用と見ると、かなり軽量と言えます。
フレーム形状

エンデュランスロードらしく、同サイズのレーシングロードフレームと比べるとスタックは高めなジオメトリ。ただ、首長に見えにくいデザインを採用しています。ドロップドシートステー採用。

積極的にアピールされているわけではありませんが、各チューブはカムテール形状を採用。ケーブルもハンドル内装が前提と、エンデュランスロードながらエアロ性能も意識されています。

シートクランプも、エアロを意識した臼型の埋め込みタイプ。

個人的には、ハンドル周りはエアロよりもメンテナンスのしやすさを優先して欲しかった所ですが。ケーブルをハンドルに内装としたのは、「フロントバッグを付けやすくするため」という狙いもあったようです(開発の牧さん談)。ただフロントバッグを付けるとエアロ的には台無しですが。
ポジション出し
色々と苦労したのがポジション出しです。「ケーブル内装」「スタックが思ったよりも高かった」ことにより、ハンドルが欲しい低さまで下がらず苦労しました。

その苦労の跡はこちらにまとめました。
結局、最終的にはFSAのSL-K -12°ステムを購入。なんとかポジションが出ました。
走行性能
主にブルベやファストラン視点での走行性能について書いていきます。

参考までに、Cyclowiredでのレビューはこちら。
加速
「エンデュランスロード」という言葉から受けるイメージよりは剛性も高く、反応性も良いです。モッサリ感はありません。ただ、フラグシップのレーシングロードほどの反応性もありません。長時間(ここでは数十時間)を一定ペースで踏み続け、ダメージが残りにくい剛性感にチューニングしてあるのでしょう。

ブルベの最高峰「PBP」において日本人最速タイムを持つ三船さんが監修しているということで、納得の味付けです。
スプリント的な大出力を受け止めるのは不得意です。1000Wで踏むと、柔らかさが顔を出します。ブルベでは1000Wで踏むシーンなんてないはずなので問題はありません。

前に乗っていた「INFINITO CV」はエンデュランスロードとは言え、「パリルーベ」のようなプロのクラシックレースをターゲットとしたフレームでした。1000W超で踏んでも応えてくれるフレームではありましたが、巡航時の脚当たりはそれなりにハードです。400kmブルベまでは使用しましたが、それ以上の距離はちょっと辛いと感じていました。
同じ「エンデュランスロード」というカテゴリでも、目的とする用途によって特性は随分違うということですね。
巡航
前述の通り、一定の出力で踏み続けるのに適した剛性感で、30-35km/hくらいのスピードでの巡航が気持ち良いフレームです。持ち前のカムテール形状でエアロ性能も高いはず。

基本的にブルベは単独で淡々と走るシーンが多いので、エアロ性能が良いのに越したことはありません。ただ、フロントバッグを付けるような距離(私の場合は400km以上)だとその性能は発揮されませんが。
73mmとやや低めのBBドロップに加え、61mm(Mサイズ)というやや大きめのトレイル値から来る直進安定性もあり、良い意味でボーっと長時間走れるフレームでもあります。
設計担当の牧さんいわく、「このフレームは30Cタイヤを履いた際に最も自然なハンドリングになるように設計した」そうです。32Cや28Cのタイヤではそれほど違和感は出ませんが、26Cのタイヤを履いた時は、あまりにクイックなハンドリングになってしまって驚きました。
このフレームを使うなら、30C±2mm程度のタイヤをオススメします。
登坂

こちらもブルベ的な一定ペースの登坂だと気持ちよく登ってくれます。昨年の600kmブルベでは、緩いけど30km以上ある坂をえんえん登るようなコースを走りましたが、こういうコースには最適。
逆に、ガシガシ登る用途には向かないでしょう。本気のヒルクライムレースに使うならもう少しレーシング寄りのフレームをオススメします。
元々のフレームセット重量は軽いですし、登坂性能はそこそこ良いと思います。1300g以下のホイールを合わせれば、グランフォンドや山岳ブルベにも十分対応できるはずです。
コーナーリング
コーナーリングの挙動は「自然」です。ブルベではそもそも攻めたコーナーリングはしないのですが。

凄いのは「荷物を積んだ時のコーナーリング」。めちゃくちゃ安定します。むしろ、荷物を積んだほうが安定すると言ってよいでしょう。
詳細は「積載性能」の項目で語ります。
快適性
快適性は、カーボンフレームとしては至って普通だと思います。特別な機械的ギミックを搭載しているわけではなく、INFINITO CVのカウンターヴェイルのように特殊なカーボンを使っているわけでもありません。ペダリングの際の脚当たりは上質な感触がありますが、フレーム全体の振動減衰性には特筆すべきものはないと思います。
Cyclowiredのインプレでも、アルディナの店長は「乗り心地」については言及していませんが、それも納得。そこはあまり重視されていないフレームだと思うからです。最大32Cまでのタイヤに対応しているわけで、乗り心地はそちらに任せるということなのだと思います。
なお、このフレームのBBは圧入式のBB86を採用しています。最初は汎用性を重視してJIS BBで作っていたそうですが、それだと地面からの突き上げがキツくなったため、あえての圧入式としたそうです。
積載性能
GE-110は「荷物を積載しても走行性能が落ちにくい」ロードフレームです。むしろ、「荷物を積載して乗り味が完成する」ロードフレームかもしれません。
大量のアイレット
GE-110には、通常のダウンチューブとシートチューブのボトルケージ用アイレットの他に、トップチューブバッグ用アイレットと、ダウンチューブ下のストレージ用アイレットが付属します。

元々はトライアスロンバイクで導入された、「ボルトオン」式のトップチューブバッグ。最近はエンデュランスロードでも、ここにアイレットを設けたフレームが増えています。
ストラップが不要になるので膝でストラップを擦ることもなくなり、底面がトップチューブに固定されるので左右に倒れにくくなります。つまるところ、トップチューブバッグを使う上でのストレスが格段に少ない。

ダウンチューブ下のアイレットにはツールボトル用のボトルケージをスッキリと固定。ここにアイレットがなくても、ELITEのVIPクリップを使えばボトルケージの増設は可能です。ただ、クリップとフレームの間に泥が溜まったり、BBが太すぎてボトルケージの位置をあまり下げられない=大きめのツールボトルを付けるとタイヤに当たってしまう、といったことが起こり得ます。
GE-110のダウンチューブ下のアイレットは限界までBBに近い位置に設けられており、大きめのツールボトルを付けてもタイヤクリアランスが確保できるのが嬉しい所。
また、前述の通り、ケーブルをハンドルに内装することでフロントバッグも取り付けやすくなっています。
マスの集中化
ここまでは他のエンデュランスロードでもよくある工夫ですが、これ以降はGE-110特有の工夫の話になります。
まずは、「マスの集中化」。
モーターサイクルで良く使われる用語で、「重い部品を出来るだけ重心に近い部分に集中させて運動性能を向上する」ことを指します。

GE-110のダウンチューブ上・シートチューブのボトルケージ用アイレットは、なるべくBBに近い位置に重量物が集中するように配置されています。ダウンチューブ下のボトルケージ用アイレットも、BBに近い位置に付くように配置されているのは、先程述べた通り。
ここで、GE-110の製品説明を引用します。
「ブルベ」で必要な装備を積載できるようにアイレット位置を工夫し、「マスの集中化」を実現。
重量物をできるだけBB付近に近づける事で、積載走行時の操作性を向上することに成功しました。
私は最初これを読んだ時、「荷物を付けても走りのクオリティをなるべく落としませんよ」という意味であると捉えました。しかし、実際に荷物を取り付けて乗ってみると……むしろ、空荷の時よりも走りが良くなったように感じられたのです。特にコーナーリングやダンシング時の安定感の向上が顕著に感じられました。
そんな感想をTwitterに書いてみると、GHISALLO公式アカウントから以下のリプライを頂きました。
その違いに気付くばるさんは、さすがですね。
— GHISALLO (@GHISALLO_fukaya) June 13, 2024
そうなんです「マスの集中化」=「積載前提」の設計になります
つまりBB付近に「ある程度、積載した方が安定する」を狙っています pic.twitter.com/M48uCWDPes
つまり、GE-110は「「荷物を積載して乗り味が完成する」ロードフレームということですね。
積載前提のカーボン積層
もう一つ、面白い工夫が「積載前提のカーボン積層」です。

開発担当の牧さんによると、この黄色で示した部分のカーボン積層を強化しているとのこと。つまり、ボトルケージの根本部分ですね。
ここの積層が弱いフレームに重い荷物を付けた場合、自転車を左右に振った際にボトルケージの根本が揺れ、ボトルケージに取り付けた荷物全体が揺れることになります。荷物とフレームが違うリズムで揺れることにより、自転車の振りが重くなったり挙動が不安定になるというわけですね。例えば、ダウンヒルのコーナーで遠心力が掛かるようなケースでも同じことが言えます。
普通のロードフレームはせいぜい500mlのドリンクボトルを付ける程度しか想定していないわけで、わざわざここの積層を強化するなんてことはしません。特にレーシングロードフレームは、少しでも動的性能を上げるために神経を注いでいます。荷物を乗せる前提の積層をするはずもない。
その点、GE-110はボトルケージの根本がガッチリと荷物を支えるため、自転車を左右に振っても荷物がしっかりと追従します。結果として、振りが重くならないわけですね。

2015年のPBP、「オールラウンドモデルのロードフレームにバイクパッキングで荷物を積載するのがファストロングライドの最適解である」と考えていた私は、LapierreのXELIUSに大量の荷物を積載して走りました。空荷では鮮烈な走りを見せるXELIUSも、これだけ荷物を積んでしまうと非常に鈍重に感じられたことを覚えています。それは恐らく、フレーム側が「積載を前提としていない」からだったのでしょう。ツール・ド・フランスを走るためのフレームなので、そこは仕方がない。
そこまで考慮して、GE-110はボトルケージの根本の積層を強化したわけです。これはブルベの現場を知らないと思いつかない発想だと思います。
フレームバッグが付けやすい
私は付けていないのですが、GE-110はフレームバッグを付けやすいフレームだと思います。

同サイズのフレームに比べて前三角が大きめに設定されており、さらにボトルケージの位置が低いため、トップチューブ下の空間が大きいのです。
私はフレームバッグを使わないので恩恵はあまりないのですが、フレームバッグユーザーにとっては大きなボトルと共存出来る点でメリットがあるはずです。
フェンダーへの対応
ここまで「ブルベの現場を知っている」と褒めちぎってきましたが、一点だけ不満なのが「フェンダー(泥除け)への対応」です。
ブルベは雨でも開催されますので、フェンダーが必要になることもあります。ツーリング車やグラベルロードなどには、フレームのエンド部分にネジ穴が設けられていて、そこに汎用のフェンダーをネジ止め出来るようになっています。

また、Cerveloのエンデュランスロード「Caledonia」には、取り外し可能な専用のフェンダー用ブリッジが付属します。
しかし、GE-110にはそういったフェンダー取り付けの機構は設けられていません。「ブルベ用」を謳うにあたっては、画竜点睛を欠くのではないかと思いました。
牧さんにもその辺りは突っ込んでみましたが、監修の三船さんがSKSのフェンダー(ネジ穴不要)を愛用しているためか、そこには特に三船さんからの要望はなかったとのこと。ただ、この手のシートステーから生やすタイプのフェンダーって、根本がテールライトの位置と被るんですよね。

そこで、私は知人に「GE-110専用の泥除けブリッジ」を作ってもらいました。

これで、テールライトと場所の取り合いをすることもなく、フェンダーを取り付けられるようになりました。
GE-110ユーザーで、フェンダーの付け場所に悩んでいる方がいたら、NAOさんに相談してみると良いかもしれません。

フロントフェンダーには、SKS「S-BOARD」を使っています。
見た目
私が初めて購入したロードバイクはGHISALLO「GC-3」というフレームだったのですが、こちらのフレームはこんな見た目でした。

「GHISALLO」ロゴ、フレームの片側5個。純正フォークなら6個です。付属していたシートポストにも1箇所、ステムには2箇所のロゴ。片側8箇所、両側でなんと16箇所もロゴが入っていました。当時(2008年)は「とにかくロゴが多いほどカッコいい」みたいな価値観があったのは事実ですが、それは別々のロゴであってこそ。同じロゴが16箇所はさすがにやりすぎです。

それから15年経って発売されたGE-110は、GC-3とは真逆。横から見た時にブランドロゴは一つも見えません。ある意味、テストフレームのような無地っぷり。

唯一ロゴが入っているのが、ダウンチューブの上側。横から見た時には全く見えず、乗り手からしか見えない部分です。


シートチューブには、ギザッロ教会のバッジ。代わりに、ヘッドチューブは全くの無地です。
良く言えばシンプル、悪く言えば殺風景。とある人は「道具にしか見えない」と言っていましたが、見た目の意匠を求める人には物足りなく感じるのも仕方ないと思います。
個人的には「目的のために作られた道具」感が気に入っています。実用のための道具というのは特有の美しさがあると思っているからです。個性はフレーム以外のパーツで出す方向性で仕上げました。

曖昧な表現になってしまいますが、エンデュランスロードとしては「シュッとしている」感じなのも気に入っている点です。
価格
カーボンフレームに、カーボンハンドル・カーボンステム・カーボンシートポストが付属して税込253000円。今の御時世を考えると、かなり安いです。
問屋のプライベートブランドというのも大きいですが、相当色々頑張ってこの価格になったようでした。
名称
発売元であるフカヤの創立110周年記念モデルとして企画されたことが由来だそうです。
フカヤの創業は1911年なので、110周年は2021年。GE-110の発売は2023年なので、発売までには2年掛かったことになります。恐らく、三船さんの要求に応えて作り直していたのがこの2年なのでしょう。
類似モデル
GIOSからはGE-110とそっくりなエンデュランスロード「BREEZE」が販売されています。

La routeのインタビューで開発の牧さんが言っていましたが、GE-110は工場(中国か台湾)のオープンモデルの金型を使っていて、カーボン積層とアイレット位置をオリジナルにしているそうです。
BREEZEもGE-110と同じオープンモデルの金型を使用したのだと思いますが、前三角内のアイレットの位置は異なりますし、ダウンチューブ下のアイレットも省かれています。アイレット根本の積層を強化するような工夫もおそらくはされていないでしょう。「マスの集中化」や「積載前提のカーボン積層」は実現されていない可能性が高いです。
正直、空荷の状態でBREEZEに試乗した限りでは、GE-110との差は体感できませんでした。しかし、荷物を積載した場合には差が出るのではないかと思います。
その他
私はTwitterのリスト機能で、密かにGE-110に乗っている方のリストを作っています。

現在、その人数は42人。同じブランドの同じモデルでこれだけ多くの人が乗っているケースも珍しい気はします。「人と被りたくない」と考える人も多い中で、それでも選ばれるのは「ブルベ用エンデュランスロード」としての機能性が評価された結果なのでしょう。

こちらはサイクルモードで展示された、三船さんのGE-110。大阪から自走でやってきたそうです。パーツアッセンブルが参考になります。
まとめ
「ブルベ用のエンデュランスロード」というコンセプトから想像されるよりも、遥かに「走る」フレームです。そして、荷物を大量に積んだ状態でも、その「走る」感触が落ちにくいフレームでもあります。
私が長年描いていたファストロングライド用ロードバイクの最適解である「オールラウンドモデル+バイクパッキング」を、私の想像よりも洗練された形で示してくれたGE-110。私の用途と思想的には、本当にストライクど真ん中なフレームです。
2024年度は体調の優れない状態のブルベも多かったのですが、参加した分は全て完走。SR資格を取得することが出来ました。

La routeのGE-110記事を書いた安井さんは「日本の道を見据えたエンデュランスロード」と評していましたが、まさにその通り。「日本の舗装路」×「ブルベ的な距離(200-1200km)」を快適に走るならば、過剰な快適性よりも大事なものがある。それは、適度な剛性を備え、荷物を積んでも運動性能が鈍らないこと。そんな思想が結実したフレームだと思います。逆に、グラベルを含むようなロングライド(ジャパニーズオデッセイなど)はちょっと苦手かもしれません。
ブルベの最高峰であるPBPに限れば、道は基本的に舗装路なので、GE-110には適しているでしょう。実際、三船さんは2023年のPBPをGE-110で完走しています。RAAMにもhideaさんがGE-110で参加していますし、デビューからわずか2年で「LEL」「PBP」「RAAM」を完走しているフレームというのはすごいですね。

私にとって最初のロードバイクは「GHISALLO」でした。15年経って、またGHISALLOに戻ってこられたことを嬉しく思います。
「ブルベ用エンデュランスロード」という製品シリーズは是非今後も継続してほしいと思います。一定の需要があるはずなので。現場の声をちゃんと拾って作られたフレームは貴重です。
今後しばらくはGE-110でいろいろなブルベを走っていく予定です。そしていつか、このフレームでイタリアのギザッロ教会に行ってみたいですね。
評価
対象モデル: GHISALLO「GE-110」
年式: 2023年
定価: 253000円
購入価格: 253000円
公称重量: 850+400g
実測重量: 920+376g
価格への満足度
今の御時世、色々付いてこの価格は安すぎる。
総合評価
ブルベ用途で使う場合の評価。現場の声が反映されたブルベ用エンデュランスロード。
著者情報
年齢: 40歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。
# これまでに著者が乗ってきたスポーツ自転車の履歴はこちらの記事にまとめています。


