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Garmin「RTL515」をお借りしました
Garminのレーダーテールライト「RTL515」をお借りしました。
お借りした経緯
まずはお借りした経緯から。
使うほどに気になる「本家」の性能
最近、2つ目のレーダーテールライトを購入しました。

iGPSPORTの「SR mini」です。今のところ大きな不満もなく、レーダーとしての探知精度にも問題はありませんでした。
ただ、それでも周囲で複数のレーダーを持っている人から聞かれるのは「やっぱり探知精度はGarminが一番」という話。
元々、自転車用のレーダー製品を売り始めたのはGarminが最初。2015年から販売を続けるGarminには長い期間で積み重ねられたノウハウがあるはずで、探知精度の高さにも納得できます。
レンタルの提案をいただく
気になる本家Garminのレーダー性能。ただ、本家のレーダーはかなり高価です。
大体のメーカーは20000円以下の値段でレーダーを販売していますが、Garminの定価は34800円。2020年発売ということで充電端子はmicroUSBですし、テールライトとしての使用時間もちょっと心もとない。レーダー精度を試すだけのために買おうとはちょっと思えませんでした。
そんな時、以前ELXEEDの電動ポンプを貸していただいたビリ☆カンさんから、「使っていないのでお貸ししましょうか?」とのご提案が。なんとありがたいご提案。二つ返事でお願いすることにしました。

ということでお借りしました、Garmin「RTL515(写真中央)」。
本家のレーダー性能はいかなるものか、しばらくテストさせて頂けることになったのでした。
Garmin「RTL515」ファーストインプレッション

Garminのレーダーテールライト「RTL515」のファーストインプレッションです。
製品の位置づけ
RTL515は、Garminのレーダー製品としては第2世代として発売された製品です。
第1世代: RTL500
2015年発売、記念すべき初のレーダー。テールライト機能も付いていますが、おまけ程度という印象。先述のiKubu社がクラファンをしていた「Backtracker」に見た目はそっくり。
既に販売終了しており、手に入りません。
第2世代
2018年、テールライトとしての機能を強化した第2世代がリリースされます。
RTL510はテールライトとしての機能が大幅に強化されました。
第3世代
2020年、第3世代の2製品が同時発売となります。レーダー機能のみの「RVR315」と、レーダーテールライト「RTL515」です。この世代の製品は記事執筆現在でも販売中です。
RVR315はレーダー機能に特化したモデル。テールライト機能はありません。ライト機能を省いたことで全長が短く、シートポストの突き出し量が少なくても使用可能です。
そして今回取り上げるRTL515はテールライトを搭載したモデル。RTL510のマイナーチェンジ版です。
第4世代
2022年、今度はテールライトに加えてカメラ機能付きのレーダーが発売されます。
RCT715はドライブレコーダーとしても使用可能なレーダーテールライトです。現在のGarminのレーダーラインナップの中で最上位機種となっています。
スペック
RTL515の全体的なスペックについて紹介。
比較対象として、Magene「L508」、iGPSPORT「SR30」、iGPSPORT「SR mini」のスペックを並べます。
Garmin RTL515 | Magene L508 | iGPSPORT SR30 | iGPSPORT SR mini |
|
---|---|---|---|---|
発売 | 2020年6月 | 2022年11月 | 2023年7月 | 2025年4月 |
定価(税込) | 34800円 | 17490円 | 16830円 | 13750円 |
サイズ | 縦: 98.6mm 厚: 39.6mm 横: 19.7mm | 縦: 94.0mm 横: 38.0mm 厚: 25.0mm | 縦: 99.0mm 横: 39.7mm 厚: 20.3mm | 縦: 77.0mm 横: 37.0mm 厚: 19.0mm |
重量 | 71g | 65g | 68g | 50g |
バッテリー | 3.8V 1400mAh | 3.7V 1500mAh | 3.7V 1400mAh | 3.7V 1100mAh |
充電時間 | 3時間 | 3時間 | 3時間 | 2時間 |
充電端子 | microUSB | USB-C | USB-C | USB-C |
レーダー機能の 最大ランタイム | 16時間 (デイフラッシュ) | 16時間 (ライトOFF) | 25時間 (ライトOFF) | 20時間 (ライトOFF) |
レーダー検知距離 | 140m | 140m | 150m | 160m |
レーダー探知角 | (水平) 40° (垂直) 20° | (水平) 40° (垂直) 20° | (水平) 40° (垂直) 20° | (水平) 45° (垂直) 35° |
検出可能な 後方車両の相対速度 | 10-160km/h | 10-120km/h | 10-120km/h | 4-110km/h |
一度に検知可能な 車両数 | 8台 | 8台 | 8台 | 8台 |
やはり発売が2020年と最古参なだけあって、後発品よりもスペックは見劣りします。バッテリーサイズはそこそこ大きいですが、充電端子はmicroUSB。探知可能距離も短め。重量も重い。
ただ、レーダーとしての本懐である「後方車両の探知精度」は今なお他機種と比べても、多くの人が高い評価を与えています。これはスペック表からは分からないこと。実際に使ってみて私もその評価には納得しました。
続いて、テールライトとしてのスペックも比較。
Garmin RTL515 | Magene L508 | iGPSPORT SR30 | iGPSPORT SR mini |
|
---|---|---|---|---|
点灯(ハイ) | 20lm/6時間 | 20lm/6時間 | 20lm/?時間 | 12lm/5時間 |
点灯(ロー) | - | 6lm/8時間 | 6lm/?時間 | 6lm/8時間 |
プロトン | 8lm/8時間 | 6lm/8時間 | - | - |
点滅 | 昼用: 0-65lm/16時間 夜用: 0-29lm/16時間 | 0-20lm/10時間 | 昼用: 0-65lm/20時間 夜用: 0-20lm/?時間 | 昼用: 0-25lm/7時間 夜用: 2-12lm/7時間 |
消灯 (レーダーのみ) | (不明) | 16時間 | 25時間 | 20時間 |
明るさ カスタム機能 | × | ◯ | × | ◯ |
ブレーキ時の 点滅 | × | ◯ | ◯ | ◯ |
車両検知時の 点滅 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
こちらも後発機種と比べると出来ることは少なめです。アプリからの明るさカスタム機能はなく、ブレーキ連動の点滅もなし。個人的にはブレーキ連動の点滅は無くても別に問題はありません。むしろ無い方が良いくらい。



なお、本体の操作ではシングルレーダーモード(ライトは消灯・レーダーは動作)を使うことは出来ませんが、ペアリングしたEdge上から「ライト」の設定を選び、ライトモードを「オフ」にするとシングルレーダーモードで使うことが可能です。
重量

重量は72g。公称71gなので実測は少し重め。レーダーテールライトとしては中間くらいの重さです(50-100gで分布)。
各部詳細


正面と背面。LEDは高輝度を1灯のみ。

レンズも拡散系のものというよりは、フロントライトのような集約系に見えます。

上から見た図。スイッチはここ。そういえばRTL515にはストラップホールがないですね。

横から見た図。LEDは製品上部に1個だけですが、赤いスリットは上下に伸びており、そこから光が漏れる仕掛けになっています。側方視認性も確保。

充電端子はmicroUSB。2020年発売なので仕方ないですが、そろそろ後継機種でType-C版を出して欲しい所。

3台並べて大きさ比較。最古参だからなのか、一番縦長です。
取付

お借りしたシートポスト用マウントを使って取り付けました。

最初はMagene「L508」に付いてきたマウントを使おうとしたのですが、使えなかったので純正のGarminマウントです。

実は、サードパーティーのレーダーテールライトと本家Garminでは、マウント部の角度が90°回転しています。このため、サードパーティーのレーダー用マウントをGarmin用に使おうとしても使えません。マウントのソケット部を90°回転出来るマウントなら使用可能なはず。
アプリからの設定変更
Garmin Connectアプリから設定できるのかと思いきや、専用の「Varia」アプリをインストールする必要があります。

残念ながらここから設定できることは無いに等しく、後発のレーダーテールライトのように「ライトの明るさを変える」といった機能はありません。サイコン等がなくても、レーダーが捕捉した内容をモニターすることが主目的のアプリのようです。
サイコンとのペアリング


サイコンとペアリングすると、上記のようにセンサーの一つとして認識されます。
なお、Garminのサイコンと接続すると、電源のON/OFFが同期されました。サイコンを起動するとレーダーも同時に起動。サイコンを終了すると、レーダーも終了します。それはつまり常にスリープ待機中ということで、電池の消費が気になるところですが……。
レーダーとして
さて、本懐たるレーダー機能の感想です。Magene「L508」とiGPSPORT「SR mini」との比較で書いていきます。
ペアリングしたサイコンは、Garmin「EDGE530」です。Garmin製のレーダーは、Garminのサイコンからだとかなり細かい制御を行うことが可能です。
サイコンでの表示

レーダーが後ろから迫る車両(車・バイクなど)を探知すると、アラート音が鳴り、画面の端にアニメーションが表示されます。「◯」が1台の車やバイクを表現しています。
この表示フォーマットは他のレーダーでも同じです。
検出精度
噂通りの高精度です。誤検出もほとんどなし。
追いついてきて等速になった車両についても、他のレーダーよりも少しだけ(1-2秒程度)長く捕捉しつづける印象。さすがレーダーの元祖かつ10年の歴史があるだけあって、ソフトウェアの出来は高水準のようです。
ただ、気になったのは「複数車線の道で、複数台数の車両が走っている」ようなケース。SR miniはほぼ全台数を漏れなく捕捉しましたが、RTL515は数台を見逃すことがありました。どちらも8台までの同時捕捉に対応していますが、複数台数の捕捉の正確性には差があるようです。なお、L508はRTL515よりも更に多くの車を見逃していました。

一車線の道で、まばらに車が走っているようなケースでは、RTL515・L508・SR miniのどれも検出精度には大差ない印象でした。
テールライトとして
次にテールライトとしての感想です。
被視認性
前述の通り、1LEDで直進性の強いレンズを採用。なるべく遠くから見えることを優先しているようです。


SR mini(左)と、RTL515(右)で配光を比較してみました。RTL515はかなり照射範囲を絞っているように見えます。

試しにVolt800と並べてみましたが、良く似た配光です。つまり、RTL515の配光はフロントライトっぽい感じということ。中心のポイントは光がかなり遠くまで飛ぶはずですが、少しでもポイントがズレるとあまり遠くからは見えないでしょう。
自転車が走る道路は直線道路だけとは限らないわけですから、テールライトとしてはもう少し拡散系のレンズにしたほうが適していると思うのですが……始祖のGarminがこういう配光なので、サードパーティーも似たような設計のものが多いですね。
こういった1LEDの爆光系のテールライト、真後ろを走るとものすごく目に光が刺さる(フロントライトを後ろに向けているようなもの)ので私は好きではありません。なので、シングルレーダーモードの使用法を聞いてからはライトOFFで運用しています。
5年目の新機能
発売から約5年が経過したRTL515ですが、なんと最近になってリリースされたファームウェア(v3.36)で新機能が追加されました。
レーダー接近モードのON/OFF

「レーダー接近モード」のON/OFF機能です。
レーダー接近モードとは、「レーダーが車を探知した時に、強点滅して後ろにアピールする機能」のこと。この機能は従来ではOFFにすることは出来ませんでしたが、今回のファームウェアでついにOFFにすることが出来るようになったわけです。
5年も経って実装された理由
なんで5年も経ってこの機能が実装されたのか? 恐らく、フランスの道路交通法が改正されたことが理由です。
フランスの道交法の話。
— ばる (@barubaru24) April 25, 2025
昨年11月に「自転車のテールライトの点滅禁止」と道交法が改正されました。
根拠法令は以下の「V.」の部分。https://t.co/58qslQSzd2
2024年11月から、フランスでは自転車のテールライトの点滅が禁止されました。車両を検知した時に強点滅するレーダーテールライトはその規制に引っかかるわけです。この規制を回避するため、レーダー接近モードのOFF機能が実装されたということなのでしょう。
後続車両への煽りだと思われる?
私にRTL515を貸してくださったビリ☆カンさん、現在はレーダーテールライトを使用されていないとのこと。なぜ使用しなくなったのかを聞いてみた所……

後ろを走っていたバイクに追いつかれて、「煽ってんのか??」って言われたんですよね……バイクが近づくと強点滅することでそう思われたみたいです。
レーダーテールライトの強点滅は自動的に行われるもの。しかし、それを知っているのはレーダーの持ち主だけ。後続車両からすれば近づいた途端に強い光でパッシングされた格好になるわけで、「手動で煽ってきた」と思われても不思議はありません。特にRTL515の配光はかなり目に刺さりますし、視点の高さが自転車と近いバイクには煩わしく感じられたのでしょう。
今回、「レーダー接近モード」のON/OFFが選べるようになったことで、ビリ☆カンさんも「それならまた使えますね」と喜んでおられました。さっさと実装してほしかった機能ですね。
兄弟機「RTL516」
RTL515には兄弟機が存在します。型番1つ違いの「RTL516」です。
実はこれはドイツ専用にチューニングされたRTL515。ドイツのショップであるBike24などでは売られていますが、日本から購入することは出来ません。

このサイトでは何度か書いていますが、ドイツの道路交通法(StVZO)は自転車のライトについてかなり厳しく規定しています。テールライトについても例外ではありません。
その違いについては、ライトモードの違いを見ていただくとわかりやすいでしょう。以下はGarminのマニュアルからの引用です。

RTL516は「ソリッド(点灯)モードのみ」。さらに明るさが「5ルーメン」と、RTL515の1/4に設定されています。「レーダー接近モード」も搭載されておらず、車が近づいても点滅しません。
ドイツではフランスと同様にテールライトの点滅が禁止されています。また、明るさにも上限があり、最大で15cdまでとされています。要は、「眩しすぎる光を後ろに向けてはいけない」とドイツの法律ではなっているということです。

ルーメン・照射角が分かると、カンデラ値を計算することは可能です。

この写真から推定すると、RTL515の照射角は約45°。ここでカンデラ値を15cdと置くと、光源のルーメン値は5.7ルーメンと推定されます。どうやら、5ルーメンというのはドイツの法律上の上限値を狙った光源の明るさのようですね。
ドイツの法律に世界が従う必要もないのですが、テールライトのカンデラ値の上限値を定めるのは妥当だと思います。やはり、RTL515の仕様(光源の明るさ・レンズの集約具合)はテールライトとしては不適切なのではないかと、RTL516のスペックを見て改めて感じました。
まとめ
お借りしてきたGarmin「RTL515」のファーストインプレッションでした。
さすがにレーダーの始祖たるブランドの製品だけあって、5年前の機種ながらレーダー機能は実にしっかりしています。ハード性能は最新世代のものに劣るはずですが、積み重ねられたレーダーのノウハウ(ソフトウェア面)がそれをカバーしているということでしょう。
一方、ライトとしての性能(というか設計)はイマイチです。フロントライトのようなレンズをテールライト向けに採用するのは疑問ですし、光源も用途に対して明るすぎると思いました。あまりにも眩しいテールライトは逆効果(後続を眩惑する可能性もある)ので、次期バージョンが出るのであれば改善願いたい所です。
RTL515は1ヶ月ほどお借りする予定です。その間に、他ブランドのレーダーテールライトといろいろ比較を行い、記事化したいと思っています。
著者情報
年齢: 40歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。