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【レビュー】CYCPLUS「AS2 PRO MAX」
評価:4
CYCPLUSの電動携帯ポンプ。
同社の電動ポンプ「AS2」シリーズで最大のモデルで、バッテリー容量・充填能力ともに一番上に位置するモデルです。
購入動機
こちらはCYCPLUSからのレビュー依頼を受けた提供品です。
「AS2(CUBE)」「AS2 PRO」を購入してレビュー記事を上げた所、先方から「AS2 PRO MAXもテストしてみて欲しい」というご連絡を頂き、レビューすることになりました。

ファーストインプレッション記事はこちらですが、そこから約半年使ってみての感想をレビューとしてまとめておきます。
製品概要
実測重量は205g(仏式対応口金含む/ホース・シリコンケース除く)。対応する最大気圧は120PSI(8.16気圧)。
バッテリーサイズは600mAh/11.1V。600mAh/3.7Vのバッテリーが3本、直列に内蔵されています。
液晶画面には空気圧が表示可能ですが、BARとPSIから選択可能です。
使用感

レビュー用として提供いただいてから約半年、主にフロアポンプの代わりとして活躍しています。厳密な空気管理が必要なシーンに適しています。
比較対象は、弟分である「AS2 PRO」です。
本製品の位置づけ

CYCPLUSの小型電動ポンプ「AS2」シリーズには3種類のラインナップがあります。特徴を比較した表を以下に示します。
AS2(CUBE) | AS2 PRO | AS2 PRO MAX | |
---|---|---|---|
発売時期 | 2023/3 | 2024/3 | 2024/3 |
重量(本体のみ) | 97g | 120g | 205g |
大きさ | 縦: 65.0mm 横: 46.5mm 厚: 28.0mm | 縦: 70.0mm 横: 49.0mm 厚: 28.0mm | 縦: 81.0mm 横: 60.0mm 厚: 32.0mm |
最大気圧 | 100PSI (6.8bar) | 120PSI (8.1bar) | 120PSI (8.1bar) |
液晶画面 (空気圧表示) | なし | あり | あり |
充填速度 | 25C/6.8気圧 150-160秒 | 25C/7.5気圧 90秒 | 25C/8.1気圧 79秒 |
充填回数 | 25C/6.8気圧 ×1回 | 25C/7.5気圧 ×2回 | 25C/8.1気圧 ×4-5回 |
充電端子 | Type-C | Type-C | Type-C |
充電時間 | 20分 | 30分 | 60分 |
バッテリー | 300mAh×2 | 420mAh×2 | 600mAh×3 |
延長ホース | 付属しない | 付属する | 付属する |
シリコンカバー | 付属する | 付属する | 付属する |
今回レビューするのは、一番右の「AS2 PRO MAX」。液晶画面付きで、設定した空気圧で自動停止する機能を持っています。サイズやバッテリーも、シリーズ中で最大です。
ツール缶やサドルバッグに入れるには少々大きいですが、その分かなりパワフル&入れられる本数が多めです。
パッケージ

本体サイズが大きいので、箱のサイズも大きめです。
パッケージの中身は以下の通り。

- 説明書(7ヵ国語)
- 本体(シリコンケース取付済)
- Type-Cケーブル
- 予備パッキン
- 米式バルブ用ノズルピン
- 延長ホース
- 延長ホース用仏式アダプタ
- ボール用ノズル
- 防水バッグ
内容物のラインナップはPROと同じですが、PRO MAXはケーブルが「TypeC-TypeC」になっています。PROは「TypeA-TypeC」でした。
最初からシリコンケース(発熱による火傷防止)、延長ホースが付属しており、ユーザビリティが考慮されています。ファーストモデル(AS2)では別売りだった延長ホースが最初から付属するようになったのは、昨今流行っているTPUチューブの影響も大きいのでしょう。TPUチューブに延長ホースなしの電動ポンプを使うと、熱で溶けてしまうので。
重量

単体重量は205gと公称通り。
付属するシリコンケースの重量は26gで、延長ホースは24g。実用時のセット重量は255gとなります。
手動携帯ポンプは大抵200g以下なので、セット重量を考えると「携帯ポンプとしてはかなり重め」です。
大きさ
同じシリーズの他の機種とサイズを比べてみました。


一番左がAS2 PRO MAX。「AS2」と「AS2 PRO」はそこまで大きさの違いがありませんが、「AS2 PRO MAX」は明らかに大きい事が分かります。

シリコンケースを付けなければツール缶にもギリギリ入ります。かといってシリコンケースなしでは実用上厳しいので、持ち運ぶ際にはサドルバッグやフロントバッグに入れることになるでしょう。
使い方
使用方法は以下の通り。

- 口金またはホースをバルブに接続する。
- ◯(電源)ボタンを長押しして電源を入れる。
- +ボタンと-ボタンで目標気圧を設定する(最大120PSIまで)。
- 電源ボタンを短く押すと充填開始。
- 目標気圧に達すると、電源が自動的に切れる。
液晶にはリアルタイムの空気圧が表示され、指定した気圧に達するとピタッと停止します。
なお、AS2 PROのボタンは押したときの感触が「ちゃんと押せてるかな?」程度の手応えしか無いのですが、AS2 PRO MAXはしっかりクリック感があります。ボタンも大きく、押しやすいです。
デフォルトの空気圧表示はPSIですが、+ボタンと-ボタンを同時押しするとBAR(気圧)表示に切り替えられます。PSI表示の場合は1PSI単位、BAR表示の場合は0.1BAR単位で設定可能です。
この空気圧の単位設定は再起動しても保存されます。
充填能力
兄弟機の「AS2 PRO」と充填速度を比較しました。
最初は「内幅17mmのリムに7.6気圧」という条件で測定していましたが、「今はもっと内幅の広いリムにワイドタイヤ&低圧で乗る人が多いだろう」ということで、5.0気圧での測定も追加で行いました。
測定条件 | AS2 PRO | AS2 PRO MAX |
---|---|---|
リム内幅: 17mm タイヤ幅: 25C 目標気圧: 110PSI (7.6気圧) | 94秒 | 93秒 |
リム内幅: 17mm タイヤ幅: 25C 目標気圧: 74PSI (5.0気圧) | 50秒 | 45秒 |
リム内幅: 21mm タイヤ幅: 28C 目標気圧: 74PSI (5.0気圧) | 62秒 | 50秒 |
高圧の7.6気圧では、PROとPRO MAXが互角。
公称スペックでは120PSI(8.2気圧)に達するまでの秒数は「AS2 PRO: 120秒」「AS2 PRO MAX: 75秒」と、1.6倍ほどの開きが出るはずでしたが、現実にはほぼ同等という結果に。何かの間違いかと思い、4回ほど「PRO MAX」で7.6気圧まで空気を充填してみましたが、結果は変わらずでした。高圧に設定すると、思ったほどスピードは出ないようです。
ただ、5.0気圧に設定した場合は「AS2 PRO MAX」のほうが明らかに早く終了しました。そして、その差はタイヤ幅が太くなるほどに大きくなります。
単位時間あたりに送り出せる空気量は「PRO MAX」の方が多いものの、高圧に逆らって空気を入れるパワーは「PRO」も「PRO MAX」も大差ない……のかもしれません。一応、電動ポンプのパワーの基準の一つとなる「バッテリー電圧」はPROが7.4V、PRO MAXが11.1Vと明らかに有利なはずなのですが。
なお、5.0気圧設定では7セットの充填をこなすことができました。
AS2 PRO MAXには、高温時に自動停止する機能が組み込まれています。これは弟分(AS2/AS2 PRO)には搭載されていない機能です。
高温になると液晶に「HOT」という表示が出て、充填が停止します。一定程度冷えないと再開できません。
開発元曰く、「PRO MAXはバッテリーが大きく、動作時間が長いため、過熱防止機能を搭載した。他の2機種は悪影響を与える熱さになる前にバッテリーが尽きるので搭載しなかった」とのことでした。
音
AS2よりはうるさいですが、AS2 PROとは音量に大差はありません。ただ、結構うるさいので家で使う場合には家族に断っておきましょう。
あと、ケースを付けた状態と付けない状態では音量と質に違いが出ます。ケースを付けたほうが音が低くなり、音量も小さくなります。
熱
電動ポンプは、高圧に上げるほど動作時間が長くなり、動作時間が長くなるほど本体温度は上がります。
1回の充填(0→5気圧)では、シリコンケースを付けていれば、火傷するほど熱くはなりませんでした。
前述の通り、PRO MAXには他の2機種にはない「過熱防止」機能が付いています。充填可能な本数は多いですが、3-4回繰り返すとしばらく使用できない状態になります。その場合はしばらく放置して冷却してから使用してください。
空気圧計の正確性
液晶画面で110PSIに設定して充填後、Panaracerの空気圧計で測定してみました。

誤差0.2PSIとかなりの正確さ。
充電

AS2シリーズは、Type-C端子を採用しており、高速充電が可能です。なお、この充電端子は外部の空気を取り入れる吸気口を兼ねているので、塞いではいけません。
充電テストを実施した所、電流値の時間変化は以下の様になりました。

満充電までの時間は1時間25分でした。公称は1時間とされているので、ちょっと長かったですね。
大体1A前後で充電されますが、なぜか3分に1回程度は電流が流れなくなります。何らかの安全装置が働いてるんでしょうか。AS2 PROは2A出ていたはずなので、ちょっと電流は少なめ。もしかしたら、使用したType-Cケーブルがあまり良くなかったのかもしれません。付属のType-Cケーブルを使えばもう少し早くなった可能性はあります。
防水性
電動ポンプは、基本的に防水ではありません。このため、雨が降っても濡れない状態で持ち運ぶ必要があります。
本製品には防水ケースが付属するので、それに入れて持ち運ぶのが良いでしょう。
便利だったシチュエーション
半年使ってみて便利だった使い方を紹介します。
携帯用は「AS2 PRO」に任せて、「AS2 PRO MAX」はもっぱら家の中で活躍していました。
チューブレスタイヤの気圧管理
今年の6-9月は、しばらくチューブレスタイヤを使ってフックレスリムのテストをしていました。

フックレス+チューブレスの場合、30Cタイヤで適正気圧が4気圧前後とかなり低くなります。これだけ空気圧が低いと0.1気圧の感触の差が大きくなるため、なるべく正確に気圧を設定したい。

そんな用途で活躍したのがPRO MAXでした。0.1気圧単位で空気圧を正確に設定可能なので、かなり便利。フロアポンプだと少し入れすぎたりしてしまうんですよね。空気を少しずつ抜いて調整可能な弁を備えたフロアポンプもありますが、調整は結構面倒。その点、電動ポンプは一発で空気圧が決まるので有り難いです。
家で使う場合にはホースは長いほうが良いので、私は「お助けチューブ」の一番長いモデルを更に連結して使用しています。空気圧もちゃんと測れています。
チューブレスタイヤのビード上げ
家の中での活用法、その2です。
チューブレスタイヤのビードを上げる際には、こういったタイヤブースターを使うのが普通です。最近はフロアポンプでもビードが上がるタイヤもありますが、リムとの組み合わせによってはフロアポンプでは上がらないこともあります。
私はタイヤブースターを持っていないので、そうした場合にはCO2ボンベを使ってビードを上げます。ただ、その日はCO2ボンベの在庫が尽きてしまったので、「試しに電動ポンプでビードが上がるか試してみるか」と思ってやってみたのですが……
結果、ビードが上がってしまいました。
電動ポンプは、CO2ボンベやタイヤブースターに比べて「瞬間的な大充填能力」はありません。この能力がないとチューブレスのビードは上がらないかな……と思っていたのですが、電動ポンプは「充填が途切れない」という特徴があります。手動のフロアポンプだと、充填と充填の間に「空気を入れていない時間」が出来てしまいますが、電動ポンプにはそれがありません。絶え間ない充填でビードが上がる……ということなのでしょう。
なお、タイヤとリムの組み合わせによっては電動ポンプでビードが上がらないケースもあるはずなので参考までに。
飛行機輪行(夫婦で行く場合)
今年9月の「霧立400」参加の際の飛行機輪行では、「AS2 PRO」を持参しました。これは、ソロ参加で充填回数がそれほど必要なかったから。夫婦で飛行機輪行をするとなれば、「AS2 PRO MAX」を持参します。

6気圧ならば5-6本は充填可能なはずなので、夫婦で4本分の充填には十分な能力を持っています。
まとめ
少しサイズは大きめで、その分だけ充填可能な本数が多い電動ポンプ。
個人的にはライド時に携帯するには少し大きすぎると感じるため、「家の中」兼「遠征」用に適していると感じました。
家の中で使うのならば、もっと安くて強力なものはあります(↑のボッシュなど)。ただ、4-500gあってサイズ的にも大きな物が多いので、輪行の荷物としては少し大きすぎるはず。その点、PRO MAXはライド時には大きすぎても、旅行鞄に入れる分には問題ない程度のサイズです。PBPのような海外輪行では非常に活用できそうですね。
現在、CYCPLUS製品の5%割引クーポンコードが発行されています。
対象:ストア内すべての製品
回数制限: なし
評価
対象モデル: CYCPLUS「AS2 PRO MAX」
年式: 2024年
定価: 19800円
購入価格: (レビュー用提供品)
公称重量: 205g
実測重量: 205g
価格への満足度
(提供品のため対象外)
総合評価
重量から見た充填速度・本数は優秀。使い勝手も良い。携帯性はそこまで高くない。
著者情報
年齢: 40歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。