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【レビュー】CYCPLUS「AS2(旧称: CUBE)」
評価:4
CYCPLUSの超小型電動携帯ポンプ「AS2」シリーズで最初に発売されたモデル。最初は「CUBE」という名前でしたが、現在はAS2という名称になっています。
シリーズ中もっとも小型で軽量(公称97g)なモデルになります。
購入動機
2022年末、CYCPLUSによるクラウドファンディングを見つけて出資しました。
国内代理店によるクラファンではなく、Indiegogoでの全世界的なクラファンでした。
2022年時点でのCYCPLUS
当時のCYCPLUSの日本での評価といえば、「Amazonでパッとしないサイクルコンピューターを売っている中華ブランド」という感じでした。電動ポンプのイメージはありませんでしたが、この時点で「A2」「A7」「A8」という電動ポンプをラインナップしていたようです。Amazonでは2020年から売られていた形跡があります。
2022年当時のラインナップ中、最小のA2でも公称380g。当時、すでに携帯用の電動ポンプとしては181gのminiFumpaが存在していたため、さほど話題に上がることもなかったと記憶しています。
「97g」の衝撃
そして2022年末に発表されたCYCPLUS「CUBE(後にAS2に改名)」ですが、これが当時としては驚異的なスペックを備えていました。
重量、なんと97g。ロードタイヤ2回分という割り切ったバッテリー容量ではあるものの、100gを切ってきました。当時、108gの手動携帯ポンプを使っていた身としては「せめて150gを切る電動が出ないかな」と思っていましたが、一気に100gを下回るとは。
それまで最小とされていた電動携帯ポンプ「miniFumpa」とスペックを比較してみます。
miniFumpa | CYCPLUS CUBE | |
---|---|---|
重量 | 181g | 97g |
大きさ | 68.0*56.0*32.0mm | 65.0*46.5*28.0mm |
最大気圧 | 120PSI | 100PSI |
バッテリー容量 | 7.4V/400mAh | 7.4V/300mAh |
充電時間 | 60分 | 20分 |
充填能力 | 700x23Cタイヤを、30秒で5.1気圧 | 700x25Cタイヤを、90秒で5.12気圧 |
重量は約半分。大きさも一回り小さい。その分だけバッテリー容量とパワーは劣りますが、充電時間は早い。携帯性を考えると実に魅力的なスペックです。
実はこの時点で、Fumpaはひっそりと「nanoFumpa」というCUBEと同等の大きさの製品をリリースしていましたが、日本には入ってきておらず、ほとんど話題になっていませんでした。広報戦略の大切さを感じます。
しかし、「計画段階で97gであっても、クラファン終了後に実際に出てきたものは200gでした~」なんてことは十分有り得そうなこと。名目上「これから作るもののお金を集める」とされているクラファンでは、出来上がったものが想定と異なるのはよくあることです。
かつて、160gを謳う携帯ポンプを買ったら400g超のどデカいサイズが届いた私としては「まぁスペック通りのものは来ないだろう」と思いつつ、クラファンに参加しました。
公称通りのものが届いてビックリ
2023年3月、CUBEが完成したという連絡が。数日後に現物が届きました。
実に驚いたことに、ほぼクラファンで謳われたスペックと同じものが届きました。
細かい部分で違いはあるものの、大きさと重量は公称通り。まさか本当に97gのモノが届くとは思っていなかったので、かなり驚いたのを覚えています。
製品概要
単体での実測重量は97g(仏式対応口金含む)。対応する最大気圧は100PSI(6.8気圧)。
バッテリーサイズは300mAh/7.4V。300mAh/3.7Vのバッテリーが2本、直列に内蔵されています。
現在の空気圧を表示するための液晶画面は備えていません。
使用感
購入から約1年半。上位モデルの「AS2 PRO」を手に入れてからはほぼ出番がありませんが、かつてはライド中に持ち歩いていました。ただ、その間パンクはゼロで、結局家でしか試していません。
比較対象は同じくCYCPLUSの「AS2 PRO」と、Fumpa Pumpsの「nanoFumpa」です。
本製品の位置づけ
CYCPLUSの小型電動ポンプ「AS2」シリーズには3種類のラインナップがあります。特徴を比較した表を以下に示します。
AS2(CUBE) | AS2 PRO | AS2 PRO MAX | |
---|---|---|---|
発売時期 | 2023/3 | 2024/3 | 2024/3 |
重量(本体のみ) | 97g | 120g | 205g |
大きさ | 縦: 65.0mm 横: 46.5mm 厚: 28.0mm | 縦: 70.0mm 横: 49.0mm 厚: 28.0mm | 縦: 81.0mm 横: 60.0mm 厚: 32.0mm |
最大気圧 | 100PSI (6.8bar) | 120PSI (8.1bar) | 120PSI (8.1bar) |
液晶画面 (空気圧表示) | なし | あり | あり |
充填速度 | 25C/6.8気圧 150-160秒 | 25C/7.5気圧 90秒 | 25C/8.1気圧 79秒 |
充填回数 | 25C/6.8気圧 ×1回 | 25C/7.5気圧 ×2回 | 25C/8.1気圧 ×4-5回 |
充電端子 | Type-C | Type-C | Type-C |
充電時間 | 20分 | 30分 | 60分 |
バッテリー | 300mAh×2 | 420mAh×2 | 600mAh×3 |
延長ホース | 付属しない | 付属する | 付属する |
シリコンカバー | 付属する | 付属する | 付属する |
今回レビューするのは、一番最初に発売された「AS2」。最小・最軽量で、空気圧確認のための液晶も備えていない最もシンプルなモデルです。バッテリーサイズも最小、価格も一番安くなっています。
パッケージ
クラファンで入手した初期モデルなので、箱の名義は「CUBE」。最近のロットでは「AS2」に変更されているようです。商標上の問題でもあったんでしょうか?
パッケージの中身は以下の通り。
- 説明書(7か国語)
- 本体
- シリコンケース
- Type-Cケーブル
- 予備パッキン
- 米式バルブ用ノズルピン
予備パッキンが付いているのは良心的です。消耗する部品なので。
重量
単体では公称通りの97gです。付属する専用のシリコンケースは19g。2つ合わせても116gと非常に軽量です。
大きさ
再掲の画像ですが、一番左のAS2が一番小さいことが分かります。ただ、真ん中のAS2 PROとの差はわずか。
ツールケースにもスッキリ収納が可能となっています。他社のものより口金の出っ張りが小さいのも収まりが良い理由でしょう。
使い方
他の機種とは操作方法が異なるため、説明書を見ないと使い方はわからない気がします。
使用方法は以下の通り。
- スイッチをシングルクリックすると、インジケータが点灯する。
- インジケータが点灯して3秒以内に、スイッチをダブルクリックすると充填が開始される。
- スイッチをシングルクリックすると充填が止まる。
連続でトリプルクリックをしても起動せず、シングルクリックから一呼吸置いてダブルクリックする必要があります。誤動作防止の意図があるのでしょう。
nano Fumpaは「スイッチ長押しで充填開始」でしたが、ツール缶などに入れればスイッチが長押しされる状況は普通に起こるものです。一方、AS2の起動方法は意図しないと中々再現できない動きです。誤動作はしにくいでしょう。
nano Fumpaは50秒で停止しますが、本製品は自動停止しません。スイッチを再度シングルクリックするか、電池が切れるまで動作し続けます。
充填能力
内幅15mmのナローリムに、前提内幅17mmの25Cタイヤを取り付けた状態でテストしました。
ストップウォッチを使い、充填開始から90秒でストップ。5.48気圧まで充填できました。公称スペックが「25Cタイヤを90秒で5.4気圧」なので、ほぼ目標の性能を達成しています。
試しに150秒の充填も行ってみましたが、6.51気圧まで入りました。本製品の上限は100PSI(6.8気圧)なので、これくらいが上限と考えて良さそうです。
CUBEのパッキンの出来はnano Fumpaよりも良いです。確実にバルブをホールドしてくれますし、既に空気の入っているタイヤに取り付ける時も空気の抜けが少ない。延長ホースを使えば関係のない話ですが、ホースなしで使う場合にはここの性能も重要です。
充填回数
1回の充電で270秒間使うことが出来ました。
仮に25C/5.5気圧で良ければ、3本分充填出来る計算です。6気圧を超えると2本が限界のはず。
音
電動ポンプはモーターを凄い勢いで回すため、それなりに大きな音が発生します。振動もそれなりに発生します。
使用の様子を動画に撮ってみました。うるさいので音量は絞ってください。
ただ、他の超小型携帯ポンプと比べると、低出力のAS2の音量は小さめです。
こちらは4製品の電動ポンプを50cmの位置で動作させた時の騒音グラフです。AS2は他の3つと比べるとかなり音量は小さい事がわかります。ただ、家の中で使う場合には家族に断っておいたほうが良いでしょう。
熱
モーターを高速で動かすので、電動ポンプの本体はかなりの熱を持ちます。充填秒数にもよりますが、50-60℃くらいまでは上昇するはず。
そこで大事になるのがこちらのシリコンケース。これを付けた状態であれば素手で本体を触ることも可能になります。
特に延長ホースが付属しないAS2は「充填中はずっと手で持っている」ことを想定されています。充填中は振動も辛いですが、熱も辛いはず。素の状態ではなくシリコンケースをつけて使うことをオススメします。
シリコンケースから露出しているこちらの口金部分はかなり熱くなるので、手で触らないように注意してください。
充電
公称充電時間は20分。1.5Aでの充電とされています。
実際に充電してみると、17分半で満充電となりました。大半の時間は1.5Aどころか2Aを超えており、かなりの高速充電です。
これだけ早ければ、仮に空気の充填に失敗してもモバイルバッテリーさえあれば復活は可能でしょう。
防水性
防水性はありません。「雨の中では使用しないように」と書かれています。
持ち運ぶ時にも防水ケースに入れたほうが良いでしょう。ダイソーで売っているA7サイズの小さなチャック袋がフィットします。
延長ホース
「CUBE」には延長ホースが付属しません。というか、取付可能な延長ホースが存在していませんでした。
本体の発売から半年ほど経って、専用の延長ホースが発売。こちらも購入しました。
それまで手で持っていなければならなかったものが、ハンズフリーで使えるように。手で持っていると振動と熱が辛かったので、順当に進化を遂げたと言えます。
CUBEから1年後に発売された「AS2 PRO」には、最初から延長ホースが付属するようになりました。ユーザビリティをしっかり考えていますね。
まとめ
非常に小型かつ軽量で携帯性に優れた電動ポンプ。
この製品が登場したことで競合他社も同程度のサイズの製品を出すようになり、一気に「電動携帯ポンプ」の時代が進んだ印象があります。
最大気圧は6.8気圧と少々パワーは不足していますが、最近の低圧傾向を鑑みるとほとんどの人にとっては十分な能力と言えるでしょう。延長ホースを買えばハンズフリーで使えて作業性もアップします。
登場当時は何の不満もなくAS2を使っていましたが、1年後に兄弟機「AS2 PRO」が登場。こちらは液晶付きで「指定空気圧で止まる」という機能を持っていますが、使ってみると非常に便利。これを一度体験してしまうと、自分で秒数を確かめながらストップしなければ行けないAS2はちょっと不便に感じるようになってしまいました。
小型・軽量を追求したい方にはAS2をオススメしますが、そうでない方にはAS2 PROのほうをオススメします。差額は3000円ほどのはずですが、それだけの価値はあるはず。
現在、CYCPLUS製品の5%割引クーポンコードが発行されています。
対象:ストア内すべての製品
回数制限: なし
評価
対象モデル: CYCPLUS「AS2(旧称: CUBE)」
年式: 2023年
定価: 16599円
購入価格: 約10000円(クラファン支援)
公称重量: 97g
実測重量: 97g
価格への満足度
これだけの機能を詰め込んで10000円は安かった。
総合評価
電動ポンプの時計の針を一気に進めた逸品。パワーは控えめだが小型軽量。
著者情報
年齢: 40歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。