この記事は約 12分で読めます。
【レビュー】CYCPLUS「AS2 PRO」
評価:5
CYCPLUSの電動携帯ポンプ。
前作「CUBE(AS2)」は空気圧表示のないモデルでしたが、今回レビューする「AS2 PRO」はリアルタイムの空気圧を表示可能な液晶画面が追加されています。指定空気圧まで入ると自動停止する機能付き。
購入動機
私は本製品の前作である「CUBE(AS2)」を持っています。前作の発売から約1年経って発表された「AS2 PRO」ですが、液晶が追加されただけだと思っていたので、当初は購入するつもりはありませんでした。
しかし、台北ショーのCYCPLUSブースで性能比較表を見て購入を決意。帰国後に即購入しました。
購入までの詳しい経緯は以下の記事に書いています。
かいつまんで理由をまとめると以下のとおりです。
- CUBEに比べて、空気の充填速度が大幅にアップしている。
- CUBEに比べて、充填可能な気圧上限が100PSI→120PSIにアップしている。
- それなのにサイズはCUBEとあまり変わっていない。
要は「サイズは大して変わっていないのに、パワーアップしている」という点に惹かれたわけです。CUBEはなかなかの性能ではあったものの、実用空気圧(6気圧程度)まで入れるには結構な時間(100秒程度)を要しました。スペック通りならば、AS2 PROでは所要時間が60秒程度になります。
台湾から帰国すると売り切れだったネット通販の在庫が復活したため、即注文しました。
製品概要
単体での実測重量は119g(仏式対応口金含む)。対応する最大気圧は120PSI(8.16気圧)。
バッテリーサイズは420mAh/7.4V。420mAh/3.7Vのバッテリーが2本、直列に内蔵されています。
液晶画面には空気圧が表示可能ですが、barとPSIから選択可能です。
使用感
購入から約半年、ブルベ時のパンク修理用として持ち歩いています。その他、飛行機輪行では目的地到着後にタイヤを指定空気圧に戻す用途でも使用しました。
比較対象は同じくCYCPLUSの「AS2(CUBE)」と、Fumpa Pumpsの「nanoFumpa」です。
本製品の位置づけ
CYCPLUSの小型電動ポンプ「AS2」シリーズには3種類のラインナップがあります。特徴を比較した表を以下に示します。
AS2(CUBE) | AS2 PRO | AS2 PRO MAX | |
---|---|---|---|
発売時期 | 2023/3 | 2024/3 | 2024/3 |
重量(本体のみ) | 97g | 120g | 205g |
大きさ | 縦: 65.0mm 横: 46.5mm 厚: 28.0mm | 縦: 70.0mm 横: 49.0mm 厚: 28.0mm | 縦: 81.0mm 横: 60.0mm 厚: 32.0mm |
最大気圧 | 100PSI (6.8bar) | 120PSI (8.1bar) | 120PSI (8.1bar) |
液晶画面 (空気圧表示) | なし | あり | あり |
充填速度 | 25C/6.8気圧 150-160秒 | 25C/7.5気圧 90秒 | 25C/8.1気圧 79秒 |
充填回数 | 25C/6.8気圧 ×1回 | 25C/7.5気圧 ×2回 | 25C/8.1気圧 ×4-5回 |
充電端子 | Type-C | Type-C | Type-C |
充電時間 | 20分 | 30分 | 60分 |
バッテリー | 300mAh×2 | 420mAh×2 | 600mAh×3 |
延長ホース | 付属しない | 付属する | 付属する |
シリコンカバー | 付属する | 付属する | 付属する |
今回レビューするのは、真ん中の「AS2 PRO」。液晶画面付きで、設定した空気圧で自動停止する機能を持っています。サイズやバッテリー容量も中間サイズ。
個人的には最も性能バランスが良いのがAS2 PROだと考えています。
パッケージ
前作「CUBE」よりも付属品が増えており、少し大きなパッケージとなっています。
パッケージの中身は以下の通り。
- 説明書(7ヵ国語)
- 本体(シリコンケース取付済)
- Type-Cケーブル
- 予備パッキン
- 米式バルブ用ノズルピン
- 延長ホース
- 延長ホース用仏式アダプタ
- ボール用ノズル
- 防水バッグ
前作に比べて付属品がかなり増えています。
ユーザーの要求を分かっているなーと感じるのは、最初から延長ホースが付属するようになったこと。CUBEには付属せず、後から別売りで発売されました。
延長ホースがないと振動して熱を持つ電動ポンプを手で持っていなくてはなりません。0からの充填には1分以上の時間が掛かるため、その間ずっと振動を手に受け続けるのはかなり不快です。
また、CUBEがリリースされた2023年からの1年で熱に弱いTPUチューブの普及が進んだことも大きかったのだと思われます。電動ポンプでTPUチューブに空気を入れるなら延長ホースが必須ですので。
重量
単体での重量は119g。公称120gなので、ほぼ公称通りと言って良いでしょう。
他社製品だとここに追加で口金を付ける必要があり、出っ張ってツールケースなどに入らないことも。しかし、AS2 PROはこの状態で口金付きです。直接、チューブのバルブに差し込んで使うことが出来ます。
ただ、実使用時にはシリコンケースと延長ホースは必須となるでしょう。シリコンケースは火傷防止用、延長ホースは手を離して使う&熱くなる口金がチューブのバルブと直接接触しないために必要だからです。
シリコンケースは+19g、延長ホースは+24gとなります。最大構成で162gですが、中程度の手動携帯ポンプでもこのくらいの重量はあるので十分に軽量だと思います。
大きさ
前作「CUBE」と並べて大きさを比較してみます。左がCUBE、右がAS2 PROです。
確かに少しだけ大きくはなっていますが、大きく印象は変わりません。
ブルベの際は、ツールケースに入れて持ち歩いています。出っ張りが少ない形状なので、すんなりツールケースに入るのが良いですね。
ライバル製品であるnanoFumpaは口金部分を外さないとツールケースに入りません。
使い方
使用方法は以下の通り。
- 口金またはホースをバルブに接続する。
- ◯(電源)ボタンを長押しして電源を入れる。
- +ボタンと-ボタンで目標気圧を設定する(最大120PSIまで)。
- 電源ボタンを短く押すと充填開始。
- 目標気圧に達すると、電源が自動的に切れる。
使っている際の様子を動画に撮ってみました。
液晶にはリアルタイムの空気圧が表示され、指定した気圧に達するとピタッと停止します。これが思いのほか便利に感じられました。
液晶の付いていないモデル(CUBE, nanoFumpa)では、事前に「◯秒間充填するとXX気圧」という情報を覚えておき、ストップウォッチで計測しながら手動停止する必要がありました。特に不便には感じていなかったのですが、指定気圧で自動停止する楽さを知ってしまうと「今までこんな面倒なことをしていたのか」と感じました。
また、リアルタイムに空気圧が液晶に表示されると、仮に口金・ホースの接続に失敗していた(空気が漏れている)場合にすぐに気づくことが出来ます。数値が上がっていかないので。液晶がない機種だと、失敗していても気づくことが出来ません。
デフォルトの空気圧表示はPSIですが、+ボタンと-ボタンを同時押しするとBAR(気圧)表示に切り替えられます。PSI表示の場合は1PSI単位、BAR表示の場合は0.1BAR単位で設定可能です。
この空気圧の単位設定は再起動しても保存されます。
充填能力
色々なリム幅・タイヤに対して、実際に充填した際の秒数を計測してみました。それぞれ、冷え切った状態からのスタートです。熱を持った状態で連続実行すると性能が低下します。
タイヤ幅/リム内幅 | 設定空気圧 | 秒数 |
---|---|---|
700x25C / 17mm | 6.0bar(88PSI) | 60秒 |
7.6bar(110PSI) | 94秒 | |
700x28C / 21mm | 6.0bar(88PSI) | 67秒 |
兄弟機(AS2 / AS2 PRO MAX)と、700x25Cタイヤに6.0bar入れる秒数を比較してみました。
機種 | 秒数 |
---|---|
AS2 | 110秒 |
AS2 PRO | 60秒 |
AS2 PRO MAX | 60秒 |
AS2に比べてAS2 PROは1.8倍速度が早く、AS2 PROとAS2 PRO MAXの充填速度はほぼ同じでした。
なお、AS2 PROで「700x25Cタイヤ」「6.0bar」の設定で充填を実施した場合(冷却のためのインターバル10分)、3回の充填でピッタリ電池が切れました。28Cタイヤの場合は恐らく2.5回くらいで電池切れとなるでしょう。
音
そこそこうるさいです。室内で使う際には家族に断っておきましょう。屋外で使う場合には、周囲に人がいない時を狙ったほうが良いです。ただ、nanoFumpaと比べると高音成分が少なく耳障りな音ではないと感じました。
騒音計で計測した、1m離れた地点での音量は以下の通り。
機種 | 音量 |
---|---|
AS2 | 65.0dB |
AS2 PRO | 70.0dB |
5dBほどAS2 PROのほうが音が大きかったです。音量の差で言うと1.78倍の差になります。
熱
25Cタイヤを88PSI(6.0気圧)まで上げた時の本体表面温度は45℃前後。延長ホースの口金付近は50℃程度でした。
高圧に上げるほど動作時間が長くなり、動作時間が長くなるほど本体温度は上がります。やけどを防止するため、実際に使用する際にはシリコンカバーを付けた状態で使うことをオススメします。
AS2 PRO MAXには一定温度で自動停止する機能が付いていますが、AS2 PROには温度による自動停止機能は付いていません。
メーカーに確認した所、「AS2 PROはバッテリーが小さく最長でも200秒程度しか動作しないため、温度上昇もたかが知れている。このため、温度による自動停止は設けなかった」とのことでした。
一方、「AS2 PRO MAXはバッテリーが大きく400秒程度動作するため、過熱防止制御を入れた」とのこと。AS2 PRO MAXは長時間使用すると、「HOT」という表示が出ます。ちなみに表面温度60℃で停止するように設計されているそうです。
空気圧計の正確性
110PSIに設定し、空気の充填を完了。この際の空気圧を別の空気圧計で計測します。
108.6PSIと表示されました。Panaracerのデジタルゲージの正確性の議論は必要ですが、十分な精度ではないかと思います。
充電
Type-C端子を搭載し、約2Aでの充電が可能です。充電完了までの時間を計測した所、きっかり30分でした。公称通り。
前述の通り、AS2 PROは「25Cタイヤを6気圧まで3回上げられる」能力を持っています。それでも電池切れとなった場合、モバイルバッテリーなどから10分ほど充電すれば1回充填可能な分の電力を補充できることになります。
なお、本製品の充電端子は給気口を兼ねています。「防水のために塞いでおこう」と思ってType-C端子用のゴムカバーを付けるのはご法度。カバーを付けても構わないですが、ポンプとして使用する際には外してから使用してください。
防水性
本製品には防水性はありません。このため、雨が降っても濡れない状態で持ち運ぶ必要があります。
付属の防水袋は大きすぎるので、ダイソーでチャック付き収納袋を買ってきて、AS2 PROを入れて持ち運んでいます。A7サイズの袋がジャストフィット。
便利だったシチュエーション
まだ導入後にパンクには遭遇していませんが、飛行機輪行で非常に便利でした。先日、北海道で開催された「霧立400」には、AS2 PROを持参しました。
飛行機輪行では、自転車を預ける前にタイヤの空気を抜くように言われることがあります。これは、上空で周囲の気圧が下がった際にタイヤがバーストする可能性があるため。
となると、いざ目的地に着いたら走り出す前に空気を入れる必要があります。都合よくフロアポンプが空港にあれば良いのですが、そんなことは稀です。
従来の飛行機輪行の際はこうした「大きめの手動携帯ポンプ(フットペダルがあるもの)」を持ち込んで空気を入れていました。しかし、前輪・後輪にロードバイクが走行可能な空気圧まで入れるのはかなりの労力でした。
しかし、AS2 PROならば空気圧を指定して放っておけばOK。走り出すまでの労力が大幅に軽減されました。
AS2 PROはリチウムイオンバッテリーを含む機器なので、預け入れ荷物に含めることは出来ません。手荷物として機内に持ち込む必要があります。バッテリー容量を聞かれた場合には、シリコンカバーを外すと本体に容量が印字されています。
あと、霧立400はチューブレスタイヤで参加しました。チューブレスタイヤは低圧だけあって、出来れば0.1bar単位でしっかり空気圧を合わせたいのですが。手動のポンプでは難しい0.1bar単位のセッティングも、AS2 PROでは簡単に行えたのは良かったです。
自然放電
リチウムイオンバッテリーを含む機器である以上は自然放電が存在します。
長期間サドルバッグやツールケースの中に入れっぱなしにしておくと、「いざ使おうとした時にバッテリー残量がない」という状態が起こり得ます。
目安として、月に一度くらいは充電を行ったほうが良さそうです。毎月1日に充電するなど、定期的に是非。あとは、そういう時に備えてモバイルバッテリーも一緒に持ち歩くと良いでしょう。モバイルバッテリーも自然放電しますが。
まとめ
2024年秋現在で、もっとも性能バランスの取れた電動携帯ポンプだと思います。ロードバイクユーザーの多くにマッチするはず。
AS2 PROは28Cタイヤを6気圧まで1分少々で入れるパワーがあり、2.5本分のバッテリーライフを兼ね備えています。現状のロードバイクユーザーの需要にも十分に応えられるだけの性能を持っていると言えましょう。
また、以下のような点が個人的には良いと感じています。
- 出っ張った部分が少なく、ツールケースなどにすんなり入る。
- シリコンカバーが付属し、熱くなっても素手で操作可能。
- 延長ホースが付属し、ポンプ本体を手で持っていなくても使用可能。
- 操作方法がわかりやすい。
- 空気圧をBAR単位で表示可能。
- 液晶が付いていて、リアルタイムの空気圧を確認可能。
- 設定した空気圧に達すると自動で停止する。
- 動作音は大きいが、あまり耳障りな音質ではない。
- 充電速度が早く(2A)、30分で満充電になる。
操作性や温度、音の大きさや質というのはスペック表からは読み取れない部分ですが、CYCPLUSはどれも良いバランスに仕上げてきています。ちゃんとユーザの立場に立って作っているようで好印象。防水ケースや延長ホース、シリコンカバーが最初から付属するのもそのあたりを意識しているからでしょう。使う立場に立たないと、こういう配慮は出来ません。
電動携帯ポンプはレビューしていないものも含めると既に5-6個試していますが、ユーザビリティの観点でもAS2 PROはベストでした。
今後、もう少し小型化や高性能化は進むと思いますが、現状の電動携帯ポンプでは最高のバランスを持っていると思います。
現在、CYCPLUS製品の5%割引クーポンコードが発行されています。
対象:ストア内すべての製品
回数制限: なし
評価
対象モデル: CYCPLUS「AS2 PRO」
年式: 2024年
定価: 109ドル
購入価格: 16300円
公称重量: 120g
実測重量: 119g
価格への満足度
安くはないが、性能とサイズのバランスを考えると適価。
総合評価
現状で最高のバランスを持つ電動携帯ポンプ。これといった不満がない。
著者情報
年齢: 40歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。